人は誰しも年齢を重ねると体力や筋力が低下し、若い頃のように身体を動かせなくなります。身体機能が衰えるスピードに個人差があるとはいえ、もともと活動量が少ない人は歩けなくなるリスクが高いでしょう。
この記事では、高齢の家族が歩けなくなったり、ほとんど外出しなくなったりした場合の対処法を紹介します。高齢者が歩けなくなる理由や、その対策を知ることで家族のストレスや負担が減り、介護される側の気持ちも理解できるでしょう。
<この記事の要点>
・高齢者が歩けなくなる原因には、筋力低下や認知症の進行、骨や関節の疾患などが挙げられる
・歩けなくなってからの余命は個人差があるが、完全に歩けなくなると健康寿命は短くなる
・筋力トレーニングや栄養のある食事を心がけることで、筋力や骨の健康を維持できる
こんな人におすすめ
高齢者が歩けなくなる理由を知りたい方
高齢者が歩けなくなった場合の余命への影響を知りたい方
高齢者が歩けなくなったときの対処法を知りたい方
歩けなくなってからどれくらい生きられるかは人それぞれで、個人差が顕著に出ます。歩行に支障が出ても、すぐに寿命に関わる状況になるとは限りません。余命には持病や運動習慣の有無など、さまざまな要因が関係していると考えられています。
とはいえ、完全に歩けなくなると健康寿命は短くなる可能性があります。身体を動かさなくなることで筋力が衰えてしまうためです。だからこそ、できるだけ長く自分の足で歩く筋力を維持することが大切です。
年配の方から「年を取ると思うように歩けない」と言われたことがある方も多いでしょう。高齢者が歩けなくなる原因として、以下の5つが挙げられます。
1. 加齢による影響
2. 認知症の影響
3. 入院による体力の低下
4. 脊柱管狭窄症による影響
5. 骨や関節の疾患
それぞれ解説しますので、高齢の家族がいる方は参考にしてください。
誰しも年齢を重ねると、筋肉量の減少とともに身体機能が低下する傾向にあります。この状態は「サルコペニア」と呼ばれ、健康寿命を縮める原因のひとつです。
高齢者は些細なことがきっかけで健康を害しやすく、運動不足の場合はさらに体力の消耗が激しいでしょう。腰や膝の痛みなどで歩くのが億劫に感じ、若い頃よりも歩く力が落ちやすいのです。
筋力が落ちると同時に骨や関節の萎縮も進み、歩くのが難しくなる方も多くなります。すると「フレイル」と呼ばれる段階に移行します。「フレイル」とは加齢により心身が老い衰えた状態のことを指しますが、ここで身体機能を回復させれば問題ありません。
認知症のなかでもっとも多いのが「アルツハイマー型」です。アルツハイマー型認知症の患者には、歩幅が狭くなり、すり足でゆっくり歩くようになる特徴があります。
初期段階では歩き方に大きな変化は見られませんが、症状が進むにつれて不自然な歩行をするようになります。さらに背中が丸まって前かがみの姿勢になるため、バランスを崩しやすくなるでしょう。高齢者が転倒すると骨折するリスクが高く、寝たきりになる場合もあります。
高齢者は、急な病気やケガなどで入院する可能性があります。入院中は安静にする必要があるため、活動量が減って体力の低下を招きます。
年齢を問わず、1週間~2週間程度の入院でも想像以上に筋力は落ちます。若い方であればすぐに筋力が戻るかもしれませんが、高齢者の場合は難しいでしょう。そのままフレイルや寝たきりになってしまうこともあるので、なるべく病気やケガをしないように健康に過ごすのが最善の対処法です。
「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」とは、脊柱管が圧迫されることで発症する病気です。
脊柱管は脊椎(せきつい)と呼ばれる椎骨(ついこつ)の固まりが連なって構成されており、骨格標本だと1本の管のように見えます。脊柱管には椎間板(ついかんばん)や腰椎(ようつい)などが付随していて、加齢によりこれらが変形して狭くなり、神経を圧迫してしまいます。
高齢者が不調を訴える要因のひとつに脊柱管狭窄症があり、足腰の痛みから外出を控えるケースも多いようです。
高齢になると、骨粗しょう症によって骨が脆くなる方が増えます。また、変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)で歩けなくなる人もいるでしょう。変形性膝関節症とは、膝の関節にある軟骨がすり減ってしまい、骨と骨が直接当たることで痛みが生じる病気です。
骨粗しょう症と変形性膝関節症はいずれも加齢とともに発症する確率が高く、高齢者が歩けなくなる原因の上位に入ります。特に、女性は閉経後に骨が脆くなりやすいため、定期的に骨密度の検査を受けるとよいでしょう。
足腰の衰えは高齢者によくある症状ですが、放置すると寝たきりになるリスクがあります。ここからは、足腰が弱ってきたときに見られる4つのサインを紹介します。
1. 歩く速度が以前よりも遅くなった
2. よく転ぶようになった
3. 短い距離でも休憩なしでは歩けなくなった
4. 立ち上がるのが困難になった
もし該当する項目があれば、目を通してみてください。
体力に自信のある方でも、加齢により歩行速度が遅くなっているかもしれません。日常的に運動する習慣があれば年齢を重ねても体力を維持しやすいですが、若い頃と同じように動くのは難しくなります。
たとえば、青信号が点滅している間に横断歩道を渡り切れなくなった場合は、足腰が弱っていると考えられます。本人は一生懸命歩いているつもりでも、高齢になると活動量が減るため、下半身の筋肉が減って思うように動けなくなるのです。
転倒する回数が増えるのも、高齢者によくある症状の一つです。ちょっとした段差でつまずいたり、何もない場所で足がもつれたりするなど、転倒のリスクは日常生活に潜んでいます。
高齢者が転びやすくなるのは、身体機能が低下するためです。本人が予測する動作と実際の動作にズレが生じ、足が上がらなくなると考えるとわかりやすいでしょう。高齢者の転倒は骨折につながるリスクが高いので注意が必要です。
休憩を挟まないと歩けなくなった場合は、足の筋力が衰えている可能性があります。たとえば、近所のスーパーへの買い出しや公園での散歩など、短い距離でも疲れてしまう方は要注意です。
加齢による体力の低下は避けられないものの、「高齢者だから仕方ない」と身体の変化を見逃すと、のちのち日常生活に支障が生じるケースもあります。フレイルや寝たきりになってしまうリスクも高まるため、体力を回復させるトレーニングが必要です。
加齢により、若い頃は簡単にできていた動作ができなくなることもあるでしょう。椅子やベッドから立ち上がる動作もそのひとつです。支えが必要だったり、足に力が入らなかったりする人は、体力が落ちている可能性があります。
日常の動作に支障が生じると行動範囲が狭くなり、外出するハードルが高くなります。運動不足だとわかっていても外に出るのが面倒になってしまい、ますます足腰が弱るのはよくあるケースです。
高齢者が歩けなくなった場合は、以下のような方法で身体機能の向上を図るとよいでしょう。
1. 歩行器や車椅子などを使う
2. 室内のバリアフリー化を検討する
3. 日常生活の動作をサポートする
4. 家族とのコミュニケーションを増やす
完全に歩けなくなる前に対策を講じることが重要です。高齢の家族を介護している方は参考にしてください。
少しでも自力で歩ける場合は、歩行器を使用すると筋力の維持につながります。歩くのが難しければ、車椅子で外出する機会を作るとよいでしょう。
足腰が痛いと家にこもりがちになってしまう高齢者は多いですが、外の空気を吸うことで五感に刺激を与えられます。認知症になるリスクを減らすためにも、歩行器や車椅子などを活用して行動範囲を広げるのがおすすめです。それが結果として、運動量の増加につながり、体力や筋力の維持にも役立つかもしれません。
室内をバリアフリーにすると高齢者の安全確保ができ、介護する家族の負担も少なくなります。
高齢者のケガや事故を防ぐには、室内の段差をなくしたり手すりを設置したりするとよいでしょう。車椅子で生活する方がいる場合は、玄関にスロープを造ったり出入り口を広げたりする対策も有効です。
介護保険や自治体の補助金制度を利用すれば、バリアフリーにともなう改装工事の費用を助成してもらえます。助成金額は人それぞれ違うため、役場の窓口に問い合わせてみるとよいでしょう。
高齢者が自宅で生活する際は、入浴や食事などの介助が必要になります。自力でできることはなるべくやってもらい、どうしてもできない部分のみサポートするのが理想的です。
たとえば一緒に散歩したり、買い物に付き添ったりするなど、介護の専門家でなくともできることはいろいろあります。そばで見守りつつ、助けが必要と判断したらさりげなく手伝うとよいでしょう。家族の負担が大きい場合は、訪問看護や介護サービスを利用するのがおすすめです。
高齢者が思うように外出できなくなると、社会とのつながりが希薄になりがちです。すると、コミュニケーションの機会が減り、認知機能の低下を招いてしまいます。
そのようなリスクを回避するには、日常的な会話や他者との交流を通じて脳に刺激を与える必要があります。一人暮らしの場合は、家族が電話で連絡をしてコミュニケーションの機会を増やすといいかもしれません。
本人は言葉にせずとも、内心では不安を感じていることもあります。周囲の方々が声をかければ安心できるでしょう。
筋力が落ちて歩けなくなっても、リハビリをすればまた身体を動かせるようになるかもしれません。歩けないときのリハビリ方法は、以下のとおりです。
1. 筋力トレーニングをする
2. タンパク質・ビタミンDの摂取量を増やす
3. 関節の可動域を広げる
4. 歩行訓練をする
高齢者向けのリハビリ方法を知りたい方は、参考にしてください。
筋肉をつけるにはトレーニングが必須であり、年齢に関係なくトレーニングの効果があるといわれています。ただし、高齢者の場合は無理なくできる範囲で取り組みましょう。
【筋力トレーニングメニューの一例】
・椅子に座った状態で片方ずつ足を上げ下ろしする
・椅子に座る直前に10秒間停止して腰を下ろす
・手足を握ったり開いたりする
筋肉は使えば使うほど発達するため、諦めずにできることを繰り返しましょう。時間はかかるかもしれませんが、フレイルの改善につながります。
筋力トレーニングだけでは筋肉を増量できないため、同時にタンパク質やビタミンDを摂取しましょう。
タンパク質は髪・爪・皮膚など、身体のあらゆる部分を形成するのに欠かせない栄養素です。肉・魚介類・乳製品といった身近な食材に含まれているので、日頃から意識して摂取することをおすすめします。
また、きのこや卵などに含まれるビタミンDには、体内のカルシウムの吸収を促す効果だけでなく、骨を強化して筋肉の合成を促進する働きがあります。
寝たきりや長期の入院によって活動量が減ると、肩・肘・膝などの関節が動かしにくくなります。その影響で運動不足に拍車がかかり、さらに身体を動かさなくなるという悪循環に陥りがちです。
狭くなった関節の可動域を広げるには、トレーニングが必要です。しかし、素人が行うのは危険なので、理学療法士などの専門家に教えてもらうとよいでしょう。介護保険のサービスを利用している場合は、自立支援の一環としてリハビリを受けられます。
筋力トレーニングや食事療法と並行して、歩行訓練も行いましょう。普通に歩くだけでも効果はありますが、以下のようなメニューもとり入れてみてください。
・横歩き(カニのように歩く)
・後ろ歩き
・大股歩き
・縦足歩き
・ニーベントウォーク
縦足歩きとは、片方の足のつま先にもう片方の足のかかとをつけ、同じ動作を繰り返して歩く訓練です。膝を曲げた状態で重心を低くして歩くのが「ニーベントウォーク」で、通常の歩行よりもやや負荷がかかります。
高齢者はふとした出来事がきっかけで歩けなくなる可能性があります。普段から運動する習慣をつけて、体力や筋力を維持するとよいでしょう。毎日ウォーキングする、自宅でストレッチするなど、無理なくできる運動に取り組んでみてください。
「足腰が弱ってきた」と感じたら、そのままにしないようにしましょう。早期のフレイル(加齢により心身が老い衰えた状態)であれば、トレーニングや食事の見直しをすることで改善できるかもしれません。この機会に健康寿命を延ばして、生き生きと過ごせる身体を目指してはいかがでしょうか。
「小さなお葬式」では、終活や葬儀に関するお問い合わせを受け付けています。お亡くなり後の手続き・直近の葬儀にお悩みの方は0120-215-618へお電話ください。
葬儀の喪主を選ぶとき、もっとも影響力を持つのは故人の遺言です。ホゥ。