終末期を迎えた家族に対して、どのようなサポートをしたらいいのか悩む方も多いのではないでしょうか。終末期のケアは、本人とその家族にとって非常に重要な時間です。この時期に家族がどのようにサポートできるかを理解することで、少しでも穏やかに過ごせるようになるでしょう。
この記事では、終末期に家族ができることについて解説します。身体的、精神的にどのような特徴が見られるのかもあわせて紹介します。
<この記事の要点>
・ターミナルケア(終末期医療)は病気の治療ではなく、痛みを緩和することが目的
・ターミナルケアは病院、介護施設、自宅の3つの場所で受けられる
・終末期には本人が望むことを実現し、リラックスできるように生活環境を整える
こんな人におすすめ
終末期とは何かを知りたい方
終末期のケアについて知りたい方
ターミナルケアの内容を知りたい方
終末期とは、治療の効果が期待できず、余命がわずかな時期のことです。『終末期医療に関するガイドライン』(厚生労働省)では、「数週間から半年程度で死を迎えると予想される時期」と定義されています。
終末期とは、客観的かつ根拠のある理由のもとで患者の病気が治る可能性がなく、数週間~半年程度で死を迎えると予想される時期
引用:『人生の最終段階における医療・ケアの 決定プロセスに関するガイドライン 』(厚生労働省)
基本的に終末期は、複数名の医師の見解にもとづき、回復の見込みがあるかどうかを判断して本人に告知されます。この時期におこなわれる治療は「ターミナルケア(終末期医療)」と呼ばれ、病院や介護施設、自宅で痛みを軽減させることを主な目的としています。
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終末期にある患者には、特有の身体的特徴と精神的特徴が現れます。それぞれを理解しておくことで、患者の状態を把握できるので、しっかり覚えておきましょう。
終末期における身体的特徴は主に以下のとおりです。
・食欲不振
・水分摂取量の低下
・排泄の変化
・循環機能の変化
食欲不振や水分摂取量の低下は、投薬や治療、体力の低下などさまざまな要因によって引き起こされます。排泄の変化は、主に便秘や便失禁、尿量の減少です。循環機能の変化は、腹水やむくみ(浮腫)などが挙げられます。
これらは一度に出現するものではなく、身体機能の低下とともに少しずつ現れます。
参考:終末期の医療とケア - J-STAGE
精神的特徴としては、以下の5つの段階をたどるといわれています。
否認 | 否定の感情が起こる |
怒り | 現実に怒りを抱く |
取引 | 神や仏に祈る |
抑うつ | 受け入れつつある |
需要 | 悟りやあきらめ |
これは、アメリカの精神科医エリザベス・キューブラー=ロスの著書『死ぬ瞬間』で示されたモデルです。人はこの5段階の心理状態を行き来しながら、徐々に死を受け入れていくと考えられています。
参考:鳥取看護大学 [荒井学長通信No.9] 死ぬ瞬間
また、本人だけでなく家族も同じ心理状態をたどるといわれています。どのような過程で死を受け入れていくのかを理解しておくことで、精神的負担を軽減できるでしょう。
ターミナルケア(終末期医療)では、病気の治療ではなく、痛みを緩和するケアがメインです。本人や家族の意思を確認したうえで進められるため、どのようなケアがあるのか理解しておきましょう。
ここからは、身体的ケア・精神的ケア・社会的ケアの3つのケアの内容を紹介します。
身体的ケアは、患者の状態に応じて投薬量や薬の種類を調整して、痛みや症状の緩和を目指します。ターミナルケア開始の判断基準となる食事の対応も重要で、状況に応じて点滴や、胃に直接管を挿入する「経管栄養法」などの処置がおこなわれます。
経管栄養は延命措置の一種となるため、実施するかどうかは本人や家族の意思によるでしょう。そのほかにも、日常生活でストレスを感じないように、排泄や移動に関する環境を整えていきます。在宅介護の場合は、訪問看護や介護サービスを積極的に利用するのがおすすめです。
精神的ケアは、不安や後悔を少しでも減らすための取り組みです。具体的には以下のようなケアをします。
・リラックスできる環境を作る
・思い出の写真や置物などを飾る
・家族や友人と過ごす時間を作る
そのほかにも、好きな音楽をかけたり、好きな香りのするものを置いたりと、本人がリラックスできる空間を作ります。身体に苦痛がある場合は精神的な負担も大きくなるため、身体的ケアと並行しておこなうとよいでしょう。
社会的ケアとは、精神的不安を感じないように外部との接点をもつことです。とくに終末期の患者を支える家族は、精神面や体力面だけでなく、経済的な負担を感じることも少なくありません。そのようなときは、病院のソーシャルワーカーに医療費の支援制度について相談してみましょう。
精神的にも体力的にもつらいと感じる場合は、介護施設への入所や各種サービスの利用を検討することもひとつの方法です。終末期にある本人も「家族に迷惑をかけている」と苦しむかもしれないため、お互いにネガティブな感情を抱かないように多くの人とコミュニケーションをとるとよいでしょう。
ターミナルケアを受けられる場所は、主に以下の3つです。
・病院
・介護施設
・自宅
それぞれのメリットとデメリットを理解して、本人と家族の希望にあった場所を選択しましょう。
病院でターミナルケアを受けるメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット | ・急変時も速やかに対応してもらえる
・家族の介護負担を軽減できる |
デメリット | ・経済的な負担が大きい
・家族と離れている時間が長い |
病院でのターミナルケアは、一般病棟や緩和ケア病棟、ホスピスで受けられます。常に医師や看護師が容体を把握しているため、急変しても速やかに対応できる点が大きなメリットです。
デメリットは、入院費や治療費がかかるため、経済的な負担が大きくなる点です。さらに、面会時間が限られているため、家族との時間をとりにくく、リラックスできる環境を整えづらいことも考えられます。
介護施設でターミナルケアを受けるメリットとデメリットは以下の通りです。
メリット | ・介護のプロに任せられるので安心感がある
・家族の介護負担を軽減できる |
デメリット | ・リラックスできる環境を作ることが難しい
・経済的な負担が大きい |
介護施設でのターミナルケアは、主に特別養護老人ホームや介護付き有料老人ホームで受けられます。介護のプロによる日常生活のサポートや身体的ケアが充実しているため、安心感がある点が大きな魅力です。また、ほかの利用者とコミュニケーションをとる機会が多く、社会的孤立や孤独を感じにくい点もメリットでしょう。
一方で、自宅のようなリラックスできる環境を作ることは難しく、家族と一緒に過ごす時間が減ってしまうことが懸念されます。病院同様に経済的な負担も大きいため、自治体の支援制度や施設の利用料をしっかりと把握しておくことが大切です。
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自宅でターミナルケアを受けるメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット | ・残された時間を家族と過ごせる
・病院や介護施設に比べて経済的負担が少ない |
デメリット | ・身体的ケアの面で家族の負担が大きくなる
・容体が急変したときに速やかに対応できない |
自宅でのターミナルケアは、残された時間を家族と一緒に過ごせる点が大きな魅力です。病院や施設とは違ってリラックスできる空間を作れるため、本人の精神的負担も軽減されるでしょう。
一方で、身体的ケアを家族でおこなう必要があり、体力面での負担が大きくなる点がデメリットです。本人の状態によっては付きっきりで介護をする必要もあるため、訪問看護や介護サービスなどを積極的に利用するのがおすすめです。
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「終末期患者の家族の持つ10のニーズ」とは、家族と患者が最期の時間をよりよいものにするために心構えを示したものです。
終末期患者の家族のもつ10のニーズ
1.患者の状態を知りたい
2.患者のそばにいたい
3.患者の役に立ちたい
4.感情を表出したい
5.医療者から受容と支持と慰めを得たい
6.患者の安楽を保証してほしい
7.家族員より慰めと支持を得たい
8.死期が近づいてきたことを知りたい
9.夫婦間(患者ー家族間)で対話の時間を持ちたい
10.自分自身を保ちたい
引用:終末期患者の家族が看護師に求める看護へのニーズ
終末期における患者への声がけや意識することなどが、看護師の視点から10のニーズとしてまとめられています。これらを理解して寄り添うことで、本人も家族もよりよい最期を過ごせるでしょう。
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家族が「余命1ヶ月」と言われた際にしてあげられること
残りわずかしかない時間を過ごす終末期は、家族にもできることが多くあります。そのなかでも大切なことは以下の5つです。家族ができることを知って、有意義な時間を過ごしましょう。
・本人がやりたいことを実現する
・コミュニケーションをとる
・生活環境を整える
・一緒に終活をはじめる
・家族のケアも忘れずに
残された時間で、本人がやりたいと望んでいることを実現してあげるとよいでしょう。具体的には、夫婦や親子で時間を作ったり、会いたい人に会ったり、これまで時間がなくてなかなかできなかったことなどです。
やりたいことを実現するために、エンディングノートを活用するのもおすすめです。希望をリスト化しておけば、気持ちの整理や達成感にもつながるでしょう。ほかにも、好きなテレビを見たり、新しいことに挑戦したりと、小さな楽しみや喜びを通して日々の生活を充実させてあげるとよりよい最後を迎えられるでしょう。
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エンディングノートの書き方まとめ
家族は常に患者に寄り添い、気持ちを受け止めることを心がけます。終末期にある人は、死に対する恐怖や不安など、ネガティブな感情を抱えている可能性があります。自由に体を動かせなくなると、社会的疎外感を抱くことも少なくありません。
家族は話を聞いて感情を共有したり、思い出話をしたりして本人の心の不安を和らげてあげましょう。心のケアを専門とするカウンセラーやソーシャルワーカーともコミュニケーションをとり、精神的ケアに取り組むのも有効な手段です。
本人がリラックスして過ごせるように、静かで快適な環境を整えてあげます。たとえば、以下のような環境を作ってあげると効果的です。
・好きな音楽を流す
・思い出の品を飾る
・温かみのある照明を使う
・好きな香りのするものを置く
病院や介護施設の場合は環境作りが難しいこともあるかもしれませんが、看護師や介護士と相談して、患者ができるだけ落ち着ける環境を作りましょう。
終活とは、人生の終わりをどのように過ごすかを考えるための活動です。残された時間で何をしたいのか、亡くなったあとの希望も考えてそのための準備をしていきます。
具体的な終活の内容は以下のとおりです。
・遺産相続について考える
・遺言書を作成する
・お墓について決める
・葬儀の希望を整理する
終活でおこなうことは多岐にわたるため、終末期にひとりですべてを決めるのは大変な場合があります。本人の意思がはっきりしているうちに取り組み、家族もできる範囲で手伝ってあげましょう。
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終末期のケアに集中しすぎるあまり、家族の身体的・精神的負担が大きくなってしまうことがあります。最期まで充実した時間を過ごすためにも、家族も定期的に休息をとり、趣味や好きなことをしてリフレッシュするのがおすすめです。
必要に応じてほかの家族や友人、専門家のサポートを受けることも検討しましょう。さらに、適度な運動を取り入れたり十分な睡眠をとったりして、健康に過ごせるよう日常生活の見直しもしてみましょう。
終末期とは、病気に対する治療法がなく、余命わずかな時期のことです。本人の心身を支えるためには、家族の身体的・精神的なサポートが欠かせません。
ターミナルケアケア(終末期医療)の内容を理解することで、患者によりよい環境を提供できるようになります。さらに、葬儀やお墓など、亡くなったあとの準備も大切です。ターミナルケアだけに焦点を当てるのではなく、一緒に亡くなったときのことを考えるなど、残された時間を有意義に過ごしましょう。
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