若くして母を亡くした後、男手1つで育ってくれた父

父を一言で表すなら、まさに「江戸っ子」。人の好き嫌いもはっきりしていて頑固者。自分の信念を曲げず貫く。父は37歳で会社を立ち上げたのですが、とても職人気質で、父のことを親父と呼んで慕う社員たちの姿を見て私も育ちました。
厳しいながらも深い愛で家族や社員も分け隔てなく大事にしてくれる父は、色々な人に慕われていた人だったと思います。
父の思い出話をあげるなら、本当にキリがありません。私が小学校3年生の時に母を乳がんで亡くし、以来父は男手ひとつで私と兄を育ててくれたのです。
私が20歳になったとき、父は「俺はもう何も言わないからな」と突然宣言しました。その言葉の通り、2つ上の兄も含めて私たちが大人になってからは、一切何も言わなくなったのです。1人の大人として自立した人間として扱ってくれるようになりました。そこからは父子というよりも、1人の対等な大人として父と話し合うことが増えましたね。
私は過去、とある店舗の店長として人員采配や管理をする立場で、ストレスと過労で倒れて救急車で搬送されたことがあります。1番に飛んできてくれた父が最初に言った一言は「よく頑張ったな」。私と父がよく似ているというのも父は感じていたのでしょう。私が最も欲しかった一言を、最初に父が言ってくれたのです。

3回の心筋梗塞の発作。どこかで覚悟を決めていた

父の遺言「葬式なんかあげなくていい」を汲んでくれた

3回目の心筋梗塞の発作があり「そろそろかも...」と考え始めた時に、私と主人で相談し、「小さなお葬式」も含めて3社ぐらいお葬式に関する資料請求をしていました。その中で小さなお葬式は、パンフレットも見やすくプランの内容や料金形態も分かりやすかったので、万が一のことがあったら小さなお葬式にしようと目星をつけていたのです。
ただ悩ましかったのが、父の「葬式なんかしなくていい」という言葉。私と兄は、耳にタコができるくらい言われ続けていて、できるだけ父の思いを反映したいと考えていました。思い悩んでいた時に、担当の方に「葬儀ではなく“お別れ会”にしてみてはどうだろうか？」と提案され、小さなお葬式で執り行うことを決めました。
お正月に身内の親戚一同だけが集うようなアットホームなお葬式。担当者の方の配慮もあり、父の写真が父らしい素敵な額縁に収められ、お葬式という悲壮感はありませんでした。「元気に旅立ってね」というようなお見送り会の雰囲気で父を送り出すことができたと思います。
遺言も反映しつつ、家族の思いもうまく汲み取れた、素敵な思い出となったお葬式でした。

父に最後に送るなら...「お疲れ様」という思い