主要八宗の特徴
主要八宗とは
主要八宗とは日本の代表的な仏教の八つの宗旨のことで、日本八宗とも言います。
天台宗・真言宗・浄土宗・浄土真宗本願寺派・浄土真宗大谷派・臨済宗・曹洞宗・日蓮宗を指します。
各宗派の特徴
主要八宗のそれぞれの教えなどの特徴の解説です。
- 天台宗
天台寺門宗の教えの根本は、菩薩行の実践にあり、菩薩とはお釈迦さまが到達された菩提(悟り)の境地を求め、同時に人々を救うための実践行を行う修行者のことです。
一人一人が、菩薩となり、自ら悟りを追求しながら、人々と互いに手をつなぎ助け合って、すべての存在が平等で、平和な世界を築いていくことを目指しています。天台宗の修行は四種三昧(ししゅざんまい)という、常坐三昧・常行三昧・半行半坐三昧・非行非坐三昧の四種があります。
-
常坐三昧
静寂な堂内に一人で入堂し、坐禅に没頭します。2度の食事と用便以外はもっぱら坐り続けます。 - 常行三昧
念仏を唱えながら、本尊阿弥陀仏の周囲を回り続けます。
堂内の柱間にしつらえた横木を頼りに歩いたり、天井から吊り下げられた麻紐につかまって歩を休めることはできますが、決して坐臥しません。 - 半行半坐三昧
方等三昧と法華三昧があり、比叡山では法華三昧が行なわれています。
五体投地(両手・両膝・額を地面に投げ伏して、仏や高僧などを礼拝すること。仏教において最も丁寧な礼拝方法の一つで、対象への絶対的な帰依を表します。)や法華経を唱えることからなり、歩いたり坐ったりしながら行をすることからこの名があります。 - 非行非坐三昧
毎日の生活そのものが修行となります。
期間や行法が定まっていないので、形を超えた本質に通じなければならず、必ずしも容易とはいえません。
また回峯行も特徴的です。回峯とは文字どおり、比叡山の峰々をぬうように巡って礼拝する修行です。
教典は法華経中心ですが、朝題目夕念仏といい、朝は法華経中心、夕方は阿弥陀経中心で勤めます。
本尊は決まりはありませんが、強いてあげるなら法華経が中心なのでお釈迦様、または本山の根本中堂の本尊が薬師如来なので薬師如来です。人々の病に応じて薬を施し救う仏様です。-
常坐三昧
- 真言宗
「弘法にも筆の誤り」とことわざにもなっているほどの筆の達人、弘法大師 空海が開いた宗派です。
真言宗は真言密教とも言い、護摩壇で護摩木を焚くことで知られています。「即身成仏」を教えの根本とし、これは密教の修行をすれば、誰でも直ちに仏になることができるという教えです。
通常の仏教的考え方では、死んでから仏様になりますが、真言宗の教えは違い、私たちが毎日生きていく上で、仏様のような行いをし、仏様のような心で過ごせば、争いもない平和な世の中になるという考えです。
曼荼羅はこれを図化したものとされています。密教の修行とは、身体の修行である身密・言葉の修行である口密・心の修行である意密で、合わせて身口意の三密修行と呼ばれています。身に印(いん)を結び、口密とは口に真言・経典などを唱え、意密とは意(こころ)に本尊を念じます。
本尊は大いなる智慧と慈悲をもって、すべてのものを照らす根本の仏様、大日如来です。それぞれにご縁のある身近な仏様への信仰は、すべて大日如来につながっています。
主な経典は大日経、金剛頂経です。「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」と唱えます。- 浄土宗
元々は貴族にしか広まっていなかった仏教ですが、初めて民衆の間で広まった宗教が浄土宗です。
宗祖の法然上人は「南無阿弥陀仏」と唱えれば救われると説き、またたく間に民衆に受け入れられました。念仏を唱えることで極楽往生し、極楽浄土で修行し成仏するという考えです。
当時、修行することに価値を置いていた旧仏教の中でこの新しい教えを打ち出され、様々な苦難が続きました。
しかし、大衆のためにというこの教えは、日本中に広まり、皇室・貴族をはじめとして、広く一般民衆に至るまで、この導きによって救われたのでした。本尊は、阿弥陀如来、経典は観無量寿経、無量寿経、阿弥陀経です。
観無量寿経に重きを置き、釈尊時代の王舎城の妃であった韋提希夫人(いだいけぶにん)を対象として極楽浄土に往生する方途が詳説されています。唱える文句は「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」です。浄土宗と浄土真宗の違い
名前も似たような二つの宗派で同じ阿弥陀様を拝み、極楽往生を願うのは共通し、根本的には似ていますが、小さな所では違いがあります。
- お墓
お墓は板に経文を書いた卒塔婆(そとば)が立っていますが、浄土真宗のお墓にはありません。
また戒名のつけ方が浄土宗では「誉」の字を用いた誉号(よごう)をつける事が多く、浄土真宗では男性には「釈(しゃく)」、女性には「釈尼(しゃくに)」を付けます。 - お経
浄土宗を始め、多くの宗派では『般若心経』が読まれますが、浄土真宗では読まれません。(ちなみに日蓮宗でも読まれません。)
- お墓
- 浄土真宗
浄土真宗は見真大師親鸞聖人が開いた宗派で現在、日本で最も信者の多い巨大教団です。
「南無阿弥陀仏」と唱えれば誰でも、死後、浄土で仏になることができると説く「自力念仏」の浄土宗と違い、浄土真宗は「南無阿弥陀仏」と唱えれば、必ず極楽浄土に行くことが約束される「他力念仏」です。
故人は既に極楽に生まれていると考えます。90歳で親鸞がこの世を去ると、浄土真宗は衰微していきますが、第八世蓮如によって再興します。
その後は本願寺を本山として、巨大教団に発展し、その後、本願寺派、大谷派、髙田派などに分かれています。 その中でも本願寺派と大谷派が大きく、本願寺派の本山が西本願寺であることから「お西」と呼ばれ、大谷派の本山が東本願寺であることから「お東」と呼ばれています。
本尊は、阿弥陀如来、経典は観無量寿経、無量寿経、阿弥陀経で、唱える文句は「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」です。浄土真宗西本願寺派と浄土真宗大谷派の違い
もともと本山の本願寺は1つでありましたが、徳川家康の時代に分裂して今に至っています。
本尊やお唱えは共通ですが、仏壇の荘厳の仕方や作法に若干の違いがあります。仏壇の荘厳の仕方の違いは大谷派は亀の背中の上に蓮軸をくわえた姿の鶴亀燭台があり、本願寺派では銅に漆塗りの宣徳製の燭台が用いられます。
焼香の仕方は本願寺派は抹香をつまんで香炉に入れる時持ち上げずに1回、大谷派は2回と決められています。- 臨済宗
禅宗といえば、すぐに「座禅」を思い浮かべるほど、日本で定着しています。
禅宗には大きく臨済宗と曹洞宗の二大宗派があり、座禅で悟りを開くことと、師から弟子へと教えが伝わることを重要視している点は共通しています。異なる点は「座禅」の仕方が違います。臨済宗の教えは、人間が生まれながらに、誰もが供えている尊厳で純粋な人間性を自ら悟ることによって、仏と寸分も違わぬ人間の尊さを把握するところにあります。
臨済宗の禅は、「看話禅」(かんなぜん)と呼ばれ、師匠が「公案」という問題を出します。弟子はこれを頭だけで理論的に考えるのではなく、身体全体で、理論を越えたところに答えを見いだします。そして、この結果を検証するのが参禅です。師匠と二人きりで対面した弟子が、見解を提示し、これを師匠が確かめるのです。そうして弟子は身体全体で取り組み、悟りを開くというものです。建長寺と円覚寺は現在に至るまで、禅の道場として有名です。
臨済宗は師から弟子へと伝えていくことを重んじますので、それぞれの寺院が独自の流派をもっています。妙心寺(京都市)、建長寺(鎌倉市)、円覚寺(鎌倉市)、南禅寺(京都市)などが臨済宗として有名な寺院です。本尊は釈迦如来です。
特定の経典は定めていませんが、教化には金剛般若経、観音経、般若心経、大悲呪、座禅和讃などを用いています。「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」と唱えます。- 曹洞宗
臨済宗と同じ禅宗でも違いは座禅の仕方ですが、曹洞宗では壁に向かって座って座禅をします。「黙照禅(もくしょうぜん)」といって、余念を交えずただひたすら座禅に徹することをそのまま悟りとする教えです。
坐禅の実践によって得る身と心のやすらぎが、そのまま「仏の姿」であると自覚することにあります。そして坐禅の精神による行住坐臥(ぎょうじゅうざが)(「行」とは歩くこと、「住」とはとどまること、「坐」とは坐ること、「臥」とは寝ることで、生活すべてを指します。)の生活に安住し、お互いに安らかで穏やかな日々を送ることに、人間として生まれてきたこの世に価値を見いだしていこうというのです。この教えを広めたのが高祖・承陽大師道元です。現在、日本最大の寺院数を誇る巨大教団で、本山は永平寺と総持寺(横浜市)です。本尊は釈迦如来です。経典として用いるのは、法華経、金剛経、般若心経などと道元が著した正法眼蔵です。「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」と唱えます。
- 日蓮宗
本尊に向かって「南無妙法蓮華経」と題目を唱えれば、悟りがおのずから得られると説く日蓮宗は、宗祖・日蓮聖人の名を宗派名にしている唯一の教団です。
日蓮宗ではお釈迦さまの説かれた教えの中でも「法華経(ほけきょう)」こそが、世の中を救う絶対最高の教えであるとします。その法華経を説かれ実際に歴史上に存在されたお釈迦さまは「久遠実成(くおんじつじょう)の本仏」が自身を表した姿です。久遠実成の本仏とは、永遠の昔に悟りを開いた仏さまという意味で、法華経も、本仏が経典として、実態を示したものなのです。法華経を日本に広宣流布した日蓮聖人の教説を通して法華経を理解し、実践していくのが日蓮宗です。法華経は本仏の声そのものであり、法華経の功徳すべてが「南無妙法蓮華経」の七文字にこめられていると日蓮聖人は考えました。そこで、「法華経の内容をすべて信じ帰依する」という意味の「南無妙法蓮華経」を唱えることを何よりも重要な修行としています。
日蓮宗と浄土宗の2つの宗派は、末法の世に、民衆救済という志をもって登場したという共通点がありますが、一方は「南無阿弥陀仏」をもう一方は「南無妙法蓮華経」を唱える事で救われると説きました。
また浄土宗が極楽浄土で救われるとしたのに対し、日蓮宗はあくまで現世で救われなければならないとしました。日蓮は、今この現世で起きている事が重要としています。山梨県身延山に建立された久遠寺が総本山となっています。
本尊は曼荼羅です。経典は法華経で、唱える文句は「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」です。日蓮宗の見分け方
お寺から威勢の良い読経や唱和が聞こえてきたら、そこは大体が日蓮宗のお寺です。
日蓮宗では、読経の時には太鼓で、お題目を唱える時には片手で持つ団扇太鼓を鳴らし、その音頭に乗って一斉に念仏を唱え、毎朝夕の題目の唱和を欠かしません。念仏は口の中でつぶやき、題目は高らかに声に出すことです。
そのため日蓮宗の「妙法蓮華経」には、独特の節回しがついています。