時代が変われば文化や風習も変わります。人生の転換点ともいえる冠婚葬祭についてもそれは同じです。特に葬儀に関しては医学の発展や死生観の変化の影響を大きく受けているので、日本を知る上ではとても重要な文化だといえるでしょう。
葬儀での風習は、地域によって大きく形を変えるのも特徴のひとつです。現代でも古くから伝わってきた風習は各地域に息づいており、それぞれが違った様相を見せます。この記事では葬儀の変遷と現代での各地域における葬儀の風習をご紹介していきます。
<この記事の要点>
・中部地方では前火葬と後火葬を行う地域が入り混じっています
・関西地方では香典袋の水引の色が黄白で、通夜振る舞いを行う地域が少ないのが特徴です
・九州では友引の日にも葬儀を行う地域があります
こんな人におすすめ
全国の葬儀の特色について知りたい方
地方の葬儀に参列予定の方
葬儀の歴史を知りたい方
葬儀の変遷をみてみると、最も変わったものはその埋葬方法です。埋葬の方法には火葬、土葬、水葬、風葬などがありますが、 過去の日本では土葬が多く利用されていました。明治以降は火葬が増えるようになりましたが、 火葬設備が十分に整備されていなかったこともあり、昭和初期までは土葬が続けられていたようです。現在の日本は、ほぼ100%といってもいいほど火葬が利用されています。
伝染病などで亡くなった場合はもちろんのこと、通常の死因であっても疫病の発生などの観点から土葬は危険であるとの見方があり、その土地を確保することも難しいことから一部の地域でしか土葬は行われていません。天皇や皇族に関しては代々土葬にすることが決まっていますが、昭和28年の秩父宮雍仁親王(ちちぶのみや やすひとしんのう)以降、火葬を希望する例が増えています。 また、2012年には今上天皇(現在の天皇)と皇后の意向で、埋葬方法を土葬から火葬に変更する方針で検討していることが宮内庁より発表されたこともあり、これが実現すれば日本の葬儀事情は更に大きく変化することが考えられます。
北海道・東北地方の葬儀の風習を解説します。こちらでは、北海道・東北地方の中から北海道・青森県・秋田県・山形県・宮城県の葬儀の風習をご紹介いたします。
北海道は地理や歴史的な特殊性もあり、葬儀での風習も独特です。法事では赤飯の代わりに黒飯が出たり、霊柩車を使用しないのが一般的であったり、香典に領収書が発行されるといった他では見られない風習があります。
青森県では、葬儀の前に火葬を行う前火葬の形態をとっているのが特徴的です。ほかにも、骨壺にご遺骨を収めずに直接埋葬する、初七日法要を行わない、一般の方でも新聞に死亡広告を出すという風習が見られます。
秋田県でも青森県と同様に前火葬が行われています。ご遺体を洗い清める湯灌後の納棺が一般的で、ご遺骨は2~3週間自宅で安置いたします。また、友引だけでなく丑の日も葬儀を避ける習慣があります。
山形県では、誰かが亡くなると告げ人という2人一組の男性が訃報を近所やお寺に知らせて回ります。葬儀では御詠歌という仏さまを称える歌が歌われ、三十五日や五十七日法要まで一緒に行われるケースも見られます。
宮城県ではお通夜のあとに火葬を行い、ご遺骨を祭壇に祀って葬儀を行います。祭壇はそのまま安置され、八日後にとり払われます。また出棺を見送る際は、男性は白い三角巾を、女性は白い頭巾を身につけてご遺体を見送ります。
小さなお葬式で葬儀場をさがす
続いて関東地方の葬儀の風習を解説します。関東地方は首都東京を擁し、人口も多い地域です。一方で都市部と地方では生活環境や習慣に差があるため、葬儀の面でも様々な差異が見られます。こちらでは、関東地方の中から千葉県・ 茨城県・ 栃木県・埼玉県・ 神奈川県の葬儀の風習をご紹介いたします。
千葉県の葬儀は都市部とそれ以外の地域とで風習が異なります。葬儀を行う日の朝に火葬を行うところもあれば、葬儀後に行う地域も見られます。一部ではご高齢の方が亡くなった時に長寿銭という点袋を配ります。
茨城県の一部では神式と仏式の混合の葬儀を執り行う市が見られます。ほかに、葬儀の後に放生という鳩を放つ儀式をおこなったり、清めの塩にかつお節を混ぜたりといった珍しい習慣があります。
栃木県では出棺の際に、カゴに切った折り紙や紙幣などを混ぜたものを入れて竿の先に付けて周りに振り撒く花籠振りや、お墓に牡丹餅をぶら下げる風習が見られます。また、一部では土葬を行う地域も残存しています。
埼玉県では、香典を祝儀用ののし袋に入れて渡す場合があります。これは入院見舞いに行くことができなかった人が代わりにと用意するものです。ほかにも、葬儀の参列者に金剛杖を配ったり、玄関で茶碗を割ったりといった風習が残っています。
神奈川県は火葬場の数が少ないため、自宅で葬儀を行うケースが多いようです。家族葬を行う家も増えており、葬儀が小規模な傾向があります。また、一部では納棺の際に参列者間で豆腐を回して食べるという慣習があります。
中部地方では前火葬と後火葬を行う地域が入り混じっているのが特徴です。ご近所同士で協力し合って葬儀を行う昔気質の風習が残っている地区も多く見られます。葬儀に用いる食べ物の面ではそれぞれの地域の特徴が表れています。
新潟県は浄土真宗の檀家が多いのが特徴の地域です。葬儀は自宅で行うことが多く、一部の町村ではご遺体・ご遺骨を火葬場や墓地まで列を組んで運ぶ野辺送りの風習が残されています。また、ご遺骨は骨壺ではなく骨箱に収蔵します。
長野県は県面積が広いため、各地域によって様々な風習が見られます。前火葬・後火葬が共に見られ、互助組織「隣組」の影響力が強いところでは近所の葬儀の手伝いのために仕事を休むこともあるようです。
静岡県でも「班」や「弔い組」といった近隣住民同士の互助形態が機能を残しています。振る舞いやお返しに用いられる食べ物が多岐に渡り、黒豆おこわ・飴を付けた餅など、独特なものが見られます。出棺の際には竹で作った仮門から家を出ます。
山梨県では通夜振る舞いが行われることは少なく、代わりにハンカチやお茶などを配る習慣があります。出棺時に故人が間違えて家に戻ってこないように棺を回転させて方向感覚を狂わせる「棺回し」という儀式を行うことも特徴的です。
石川県も浄土真宗の檀家が多い県で、菩提寺で葬儀を行うケースが多いようです。また、全国的には葬儀では黒い喪服を着るのが一般的ですが、喪主は白装束を着る地域が見られます。お清めの塩をかける時にヌカも塗るという習慣もあります。
福井県は浄土真宗の檀家が多い地区と禅宗の檀家が多い地区に分かれており、それぞれで違った習慣があります。葬儀で赤飯を振る舞ったり、男性の棺にはカミソリ・女性の場合はハサミを一緒に入れたりといった風習が見られます。
小さなお葬式で葬儀場をさがす
関西地方では関東とはまた違った文化が見られます。葬儀の面では香典袋の水引の色が違ったり、通夜振る舞いを行う地域が少なかったりといったことが代表的です。こちらでは三重県・滋賀県・和歌山県の風習をお伝えします。関東地方とはどのような点が異なるのかを比べるのも有意義なのではないでしょうか。
三重県は伊勢神宮があるため、神道の影響力が強い県です。他県よりも神式の葬儀が行われることが多いですが、仏式の要素も取り入れられた独特の様式が見られます。コショウをふんだんに使った「涙汁」という辛い汁が振る舞われる風習もあります。
西日本では通夜振る舞いをしない地域が多いですが、滋賀県ではうどんが振る舞われます。ご遺体の枕元に団子を供える枕団子の数は通常は6個ですが、滋賀県では49個供えます。出棺の際は玄関を用いずに中庭や窓から出す場合があります。
和歌山県では友引だけではなく、三隣亡にも葬儀を避ける習慣があります。出棺時には霊魂が迷わないように故人の茶碗を割って送り出します。ほかに、燃やした藁を屋根の上に投げるといった儀式が行われています。
中部・四国地方では葬儀を避ける日が様々です。清めの塩を撒く儀式にも様々なバリーションが見られ、地域ごとの特色が表れています。 鳥取県・ 広島県・ 徳島県・ 香川県の風習をご紹介しますので、参考までにご覧ください。
鳥取県では一部の地区では友引の日でも葬儀が執り行われます。葬儀の終わりと出棺の時に鉦(かね)という打楽器を鳴らす風習があります。枕団子は送り団子とも呼ばれ、死を連想させることから4個飾るようになったと言われています。
広島県では酉の日も葬儀を行いません。禅宗の喪家では、白木の位牌に白い布をかけて徐々にまくり上げていくという風習があります。また、火葬場帰りに行う清めの塩の儀式は行わない場合が多いようです。
徳島県では、棺に副葬品として、針・糸・ハサミの3点を収める習慣があります。これは故人が旅立っても裁縫道具に困らないようにとの配慮だそうです。ほかに、火葬場帰りの清めの塩を撒く際に竹馬をまたぐという風習も見られます。
香川県では個人の口に含ませる末期の水を脱脂綿ではなくシキミの葉で掬って行います。故人の近親者の女性は火葬場では髪に三角形の白紙を挿す風習があり、これは子どもを産む女性を死の穢れから遠ざけるためであると言われています。
小さなお葬式で葬儀場をさがす
九州では友引の日にも葬儀を行う地域が見られます。東北と比べると前火葬を行う地域は少なく、通夜振る舞いの代わりに食べ物を配るケースが散見されます。沖縄は歴史的・地理的な背景から独特な風習が多く見られます。 鹿児島県・ 佐賀県・ 大分県・ 宮崎県・ 沖縄県の葬儀文化をご紹介します。
全国的には友引の日は火葬場が開いていないのが一般的ですが、鹿児島県では営業しているところがあります。葬儀の場では納棺の時に焼酎を別れの一杯とし、故人にも少し振りかける習慣があります。通夜見舞いとしてモナカを渡すことが多いようです。
佐賀県も滋賀県と同様に枕団子は49個用意します。四十九日法要までの故人の食べ物を用意するという意味合いがあるそうです。また、葬儀が始まる前に遺族で「出立ちの御膳」を食する風習もあります。
大分市内では友引の日でも葬儀を行うことが薦められており、火葬場も開いています。納棺時にモミを炒ったものを入れるのが特徴です。会葬者に餅や団子を配る習慣や、他県でも見られる出棺時の茶碗割り・棺回しといった風習も行われています。
宮崎県でも近隣の県と同様に通夜振る舞いは行わないのが一般的ですが、代わりに菓子やまんじゅう・団子などを配る「目覚まし」という風習があります。また、火葬場へ向かう時は首に「いろ」という白い布を巻きます。
沖縄では豚の三枚肉を供え物にするのが特徴的です。法要をスーコー・お墓参りをナーチャミーと言うなど言葉自体が異なるほか、棺やお墓の形も本土とは異なるなど独自の文化が形成されていることがうかがえます。
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歴史の教科書を見てもわかるように、時代は次々に移り変わっていくものです。その中で廃れていくものもあれば新しく生まれるものもあり、変わらないほうが珍しいとも言えるでしょう。とはいうものの、昔と今を比較してみると確かに大きく変わっているものはありますが、その本質的な部分は現代にまで通ずるものがあります。
医学や科学の発展によって様式が変わったのと同時に、人々の考え方も変化しました。そんな中で、昔の人たちのような故人に対する真摯な想いというのは、現代人にとっても忘れてはいけない大切なことです。
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