歴史の授業で出てくる法相宗(ほっそうしゅう)ですが、詳しい内容はよく分からないという方もいるのではないでしょうか。法相宗は現在も残る仏教の宗派ですが、「法相宗は他の宗派と何が違うのか」「総本山はどこにあるのか」といった、疑問を持たれる方もいるでしょう。
この記事では法相宗の教えや歴史、総本山、修行内容などをまとめています。葬儀に参列する際などの参考にしてみてください。
<この記事の要点>
・法相宗は飛鳥時代から奈良時代に開かれた奈良仏教のひとつで、インドの「唯識教学」がもとになっている
・法相宗の修行は「無我」の境地を目指している
・法相宗は葬儀やお墓に対しての儀礼がないので、浄土宗や他宗派の作法で葬儀やお墓の手配をする
こんな人におすすめ
法相宗を信仰している人
法相宗について詳しく知りたい人
法相宗の主な教えは唐(中国)から伝わり、日本の仏教に大きな影響を与えました。ここでは法相宗の特徴や教えについて解説します。
法相宗は飛鳥時代から奈良時代に開かれた奈良仏教のひとつで、インドの「唯識教学」がもとになっています。そのため別名「唯識宗」とも呼ばれるのが特徴的です。法相宗の修行では、この唯識の追求が中心になります。
唯識(ゆいしき)とは、「唯=ただ」「識=心の動き、物事を知る」という意味で、一言で表すと、「この世のすべては心が引き起こしている」という教えです。
精神世界を細分化して観るのが、唯識の思想です。「末那識(まなしき)」や「阿頼耶識(あらやしき)」という深層部分の意識が、心の奥底に眠っているととらえられています。
末那識 | 自己に執着する心 |
阿頼耶識 | 経験の記憶を貯める心 |
法相宗の始まりは、中国の唐からきていますが、唐で生まれた教えのもとはインドの思想が影響しています。ここでは法相宗の始まりや日本での普及の変遷などの歴史を読み解いていきましょう。
インドの思想「唯識」を、「玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)」が先に中国に持ち帰りました。玄奘は数十年かけて「唯識教学」を学び、中国にその教えを伝えたといわれています。
法相宗の開祖である玄奘は、西遊記の登場人物「三蔵法師(さんぞうほうし)」としても有名です。当時、出国が禁じられていた唐の国で、玄奘はインドへと向かいました。帰国後は持ち帰った経典を翻訳するなどしました。最もよく知られる「般若心経」も玄奘の翻訳によるものです。その後、中国に仏教を伝えようと決意したのが始まりです。
唐(当時の中国)に留学した日本の僧侶「道昭(どうしょう)」は、玄奘から法相宗の教示を得て、論書や経典、仏像を日本へ持ち帰りました。また道昭の他にも、智通・智達・智鳳・智鸞・智雄・玄昉といった僧侶が法相宗を広めたという歴史もあります。
奈良仏教には法相宗、三論宗、律宗、華厳宗、誠実宗、倶舎宗の6つの宗派があり「南都六宗」と呼ばれています。
南都六宗は、仏教の研究や教示の追求に重きを置いていた宗派です。当時「仏教の力で国を守る」といった思想も広がり、影響力が増していました。聖武天皇による大仏の建立や、東大寺の整備を進めたのもこの時代です。
法相宗の寺院は、奈良県や大阪府に多く存在します。飛鳥時代から奈良時代に都とされていた「平城京」は、現在の奈良市から大和郡山市に広がる大都市でした。そのため、現在でも奈良市には多くの寺院が残されています。
総本山は、奈良市西ノ京町にある「薬師寺」と奈良市登大路町「興福寺」です。薬師寺の僧侶は、飛鳥時代では智通(ちつう)・智達(ちたつ)、奈良時代では行基菩提(ぎょうきぼだい)が知られています。
法相宗は唯識論を追求した宗派のため、修行は「唯識論」に基づいています。そのため、「あるのは心のみ」「自分の存在を疑い執着のない無心になる」といった状態が修行の目的です。仏語でいうと、修行のなかで「無我」の境地を目指しています。
五重唯識観(ごじゅうゆいしきかん)とは、内容の深さを段階的に分けた5つの瞑想から構成される修行方法を差します。それぞれの瞑想については、下記をご覧ください。
1:遣虚存実識(けんこそんじつしき) | 迷いや執念を捨てて、依他起性(縁起により生滅するもの)と円成実性(真実のあり方)の二つは存在すると考える |
2:捨濫留純識(しゃらんるじゅんしき) | 認識している世界は、自分の心が映した映像として観る |
3:摂末帰本識(しょうまつきぼんしき) | 「私」が「何をする」という主客二元論ではなく、認識そのものの意識に戻る |
4:隠劣顕勝識(おんれつけんしょうしき) | 心王(心の働き)を顕して、心所(煩悩や感覚)を隠した状態であるがままを観る |
5:遣相証性識(けんそうしょうしょうしき) | 無自生を認識し、ただ存在が空であることを観て「円満と完成」そして「真実」を得る |
教えの追求や修行を目的としている法相宗は、葬儀やお墓に対しての儀礼がありません。そのため信徒が亡くなった場合は、浄土宗や他宗派の作法で葬儀やお墓の手配をします。ただし寺院や葬儀社への問い合わせの際には、「法相宗」であることを伝えた上で依頼しましょう。
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インドの思想をもとに、中国で生まれたのが法相宗です。日本の僧侶が中国で学び、その教えや経典を持ち帰りました。平城京で栄えた宗派のひとつで、当時は国への影響力も強かったとされています。
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