「住み慣れた自宅で最期を迎えたい」と思う方は多いですが、実際は病院や介護施設などで亡くなる方が多いのが現状です。「在宅で看取りたいけれど不安がある」と感じる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、在宅で看取るメリット・デメリットや、後悔なく看取るために準備すべきことなどを解説します。介護する家族が看取りの基礎知識を得ることで、患者は最期まで自分らしく暮らせるでしょう。
<この記事の要点>
・在宅で看取るメリットの1つは、患者が慣れた環境で過ごせるため安心感があること
・後悔しない看取りのためには、在宅医療チームの編成や24時間体制の介護などの準備が必要
・在宅で看取る際に利用できる公的サービスには「医療保険」と「介護保険」がある
こんな人におすすめ
在宅で看取るメリット・デメリットを知りたい方
後悔なく看取るために何を準備したらよいか知りたい方
在宅で看取る際に利用できる公的サービスについて知りたい方
在宅での看取りとは、自宅で医療・介護のサービスを受けながら、家族と最期の時間を過ごすことです。医療が発達する前は自宅で亡くなる方が多数を占めていましたが、現代は病院や介護施設などで臨終を迎える方が増えています。
厚生労働省が公表している『人口動態調査(第1-25表、令和4年度版)』によると、昭和26年(1951年)に自宅で亡くなった方は691,901人でした。ところが令和4年(2022年)には273,265人まで減少しています。
自宅で家族の最期を看取る場合、想定されるトラブルなどを把握していないと後悔してしまうかもしれません。ここからは、在宅での看取りのメリットとデメリットを紹介します。自宅と病院どちらを選べばよいか悩んでいる方は、参考にしてください。
在宅で家族を看取るメリットとして、以下の4つが挙げられます。
・患者が最期まで自分らしく生きられる
・患者の住み慣れた場所で過ごせるため、落ち着いた気持ちでいられる
・家族間のコミュニケーションが増えて、生活の質が保たれる
・面会の負担がかからない
病院で最期を迎える場合、患者は慣れない病室で過ごすことになります。体調が急変した際にすぐ対応してもらえるのは安心ですが、必ずしも心穏やかに過ごせるとは限りません。後悔なく看取りたいのなら、自宅で過ごすことも視野に入れましょう。
医療の専門家ではない方が看取りをするのは簡単なことではありません。在宅で看取るデメリットとして、以下の4つがあります。
・自宅だと医療設備に限界がある
・適切なケアができるとは限らない
・緊急時に速やかな対応ができない可能性がある
・想像以上に医療費がかかる場合がある
病院では看護師が痰の吸引や床ずれの処置などを行いますが、在宅の場合は家族がすべてを担うことになります。常に付き添う必要があるため、家族の負担が大きくなることが在宅看取りのデメリットといえます。
在宅で家族を看取る場合、想定外の事態が起こるかもしれません。ここからは、後悔しない看取りのために準備すべきことを5つ紹介します。
1. 患者本人の意思を確認する
2. 在宅医療のチームを編成する
3. 24時間体制で介護できるように備える
4. 患者が安心して過ごせる環境を整える
5. 在宅医療で看取る心の準備をしておく
それぞれ解説するので、在宅での看取りを検討している方は参考にしてください。
在宅で看取る場合、まず患者の意思を確認する必要があります。本人が「安心できるから病院で過ごしたい」と希望しているのであれば、無理に自宅へ連れて帰るのは避けましょう。
意思疎通ができなくなってからでは遅いので、話せるうちに本人の意思を確認しておきましょう。臨終に関する話題は縁起が悪いと敬遠されがちですが、普段から「どのような看取りを希望するか」「延命処置は必要か」など、家族間で認識を共有しておくことが、後悔のない看取りにつながります。
在宅で看取るには、医療・介護の専門家の協力が欠かせません。まずは在宅医とケアマネージャーを探すところから始めましょう。
【在宅医療に必要な専門家】
・訪問看護師
・薬剤師
・在宅歯科医・歯科衛生士
・理学療法士
・管理栄養士
・介護福祉士
患者の状態によって必要な専門家は変わるため、状況に応じて依頼します。患者がどのくらい自力で動けるか確認しながら、ケアマネージャーに相談しましょう。
在宅で看取る場合、24時間体制で患者の様子を見守る必要があります。家族が交代で付き添ったり、在宅医療チームの力を借りたりして介護体制を整えましょう。
日常生活と並行して介護をするため、介護者は適度に休憩を挟み食事や仮眠をとりましょう。家族だけではなく、疲れが出てきたら親戚に連絡して来てもらうのも一つの方法です。また、医療機関と連携して不測の事態に備えましょう。
患者が自宅での看取りを希望する場合は、以前の生活に近い環境を整えてあげると安心して過ごせるでしょう。
たとえば、好きな音楽を流したり好物を用意したりするなど、家族だからこそできることがあります。ただ患者のそばにいるだけでも、安らぎを与えられるでしょう。患者の希望に寄り添った環境を作ることで、残された時間が充実したものになるはずです。
在宅医療でもっとも重要なことは、看取る家族が心の準備をしておくことです。どのような心持ちで家族を見送ればいいのか知っておきましょう。
疑問や不安があれば、在宅医やケアマネージャーに相談するのがおすすめです。終末期の患者がどのような経過をたどって臨終を迎えるのか、具体的にイメージできると安心です。心の準備をしておけば、いざというときでも慌てずに対応できるでしょう。
どれだけ準備をしていても、自宅で家族を看取るのは精神的負担が大きいものです。在宅での看取りが大変な理由として以下の3点が挙げられます。
1. 家族の負担が大きい
2. 長期化すると介護離職の原因になる
3. 後悔が残る場合もある
それぞれ解説しますので、参考にしてください。
終末期の患者はいつ容体が急変するかわからず、付き添う家族は気を抜くことができません。心身への負担が大きく、体力と気力を消耗します。十分な睡眠や食事がとれず、気が休まる暇もないのはこたえるでしょう。
人の死に触れること自体が非日常の体験であり、ストレスの根源になりえます。目の前で衰弱していく患者を前に、見守ることしかできないのは家族にとって辛い現実でしょう。
在宅介護が長期間に及ぶと、介護離職につながるケースがあります。在宅介護は24時間体制になるため、仕事との両立が難しいのは致し方ない側面があるでしょう。
介護離職を選択する方の多くは40代~50代であり、年齢の壁によって再就職のハードルが高くなる傾向にあります。結果として生涯賃金が下がり、経済的な問題に直面する人は少なくありません。
家族を看取ったあとで「もっとできることがあったのではないか」と悔やむ遺族は珍しくなく、心にしこりが残る可能性があります。
介護や看取りの在り方に正解はありません。それでも、必要以上に自分を責めてしまう方もいるでしょう。最善を尽くしたなら「これでよかった」と納得し、気持ちに区切りをつけることも大切です。
人が亡くなる直前には、以下の5つの兆候が出てきます。
【臨終の間際に現れる兆候】 | |
呼吸が変化する | ・呼吸が不規則になり、息苦しそうな様子になる ・肩で呼吸するようになる ・呼吸する際に顎が上がる ・喉から湿り気のある音が聞こえる |
意識が薄れる | ・徐々に寝ている時間が長くなる ・幻覚や妄想が見られるようになる ・しっかり話せるときとそうでないときの差が出る ・最終的に昏睡状態になる |
食事や水分を摂れなくなる | ・食欲が減退する ・食事の量が減る ・むせやすくなる ・自力で水分を摂取できなくなる |
手足が冷たくなり、皮膚が青白くなる | ・四肢の血流が悪くなる ・足にむくみが生じる ・足の裏にチアノーゼ(紫色の斑点)が出る ・顔色が白くなる |
尿が出なくなる | ・水分を摂取できないため、尿の量が減る ・やがて尿が出なくなる |
なお、上記の兆候がすべて出現するとは限らず、一部のみの場合もあります。
在宅で家族を看取る場合、医療・介護の公的サービスを活用するのがおすすめです。ここからは、「医療保険」と「介護保険」の2つを紹介します。なお、医療保険と介護保険の併用は原則として認められていません。
医療保険とは、特定の疾病や医師の診断がある場合に利用できる制度です。医師が訪問看護の必要性を認めると適用されます。医療保険を活用することで、病気やケガで治療費が必要になった際に、費用の一部を保険で賄えます。
【医療保険の対象者】
・40歳未満の人
・特定疾病に該当しない40歳以上65歳未満の方
・要支援・要介護の認定を受けていない65歳以上の方
・介護保険第2号被保険者(※)ではない40歳以上65歳未満の方
※健保組合・全国健康保険協会、国民健康保険などに加入している方
ひと月あたりの支給限度額は設定されておらず、利用回数や利用時間を超えなければ、1割~3割の負担となります。
介護保険はおもに65歳以上の方が利用できる制度で、すでに介護認定を受けていることが適用条件です。高齢者が自立した生活を送るための支援を目的としており、ひと月あたりの支給限度額が決まっています。
【介護保険の対象者】
・介護保険の要支援・要介護認定を受けた65歳以上の方
・16特定疾病の対象者で、第2号被保険者の40歳以上65歳未満の方
なお、40歳未満の方は介護保険での訪問看護サービスは対象外とされています。
余命は人によって異なるので、正確な日数は予測不可能です。医師の宣告よりも短くなったり長くなったりすることも大いに考えられます。
病気の終末期に差しかかっている場合は、数日から数週間以内が山場になるでしょう。起き上がったり家の中を歩いたり、日常の動作ができなくなると最期が近づいているかもしれません。
自宅・病院どちらで看取ることになっても、メリットとデメリットがあります。最終的には患者本人の意向を尊重するとよいでしょう。
病院は医療設備が充実しているため、不測の事態が起こってもすぐに対応できる点がメリットですが、慣れない環境が患者のストレスになってしまう可能性があります。一方で、在宅介護の場合は、住み慣れた環境で最期を迎えられますが、家族が介護のすべてを担うというデメリットがあります。
どれだけ全力を尽くしても、看取りには後悔がつきものです。むしろ、後悔のない看取りを実現するのは難しいでしょう。
そのときにできる最善を尽くしたのなら後悔する必要はありません。家族が笑顔で明るく過ごすことが故人の供養になるので、気持ちに区切りをつけて引きずらないように心がけましょう。
終活でやるべきことは多岐にわたります。終活に適齢期はないので、思い立ったらすぐに始めるのがおすすめです。
たとえば、不用品の処理や財産目録の作成など、やり始めると想像以上に時間がかかります。高齢になってからだと気力や体力を保つのが難しいため、なるべく若いうちから身の回りの整理をすると気持ちにゆとりを持てるでしょう。
最期に「充実した人生だった」と思えるようにするには、人生の振り返りが欠かせません。この記事を参考に、終活に取り組んでみましょう。
かつては自宅で亡くなる方が多数を占めていましたが、医療の発達により病院で亡くなる方が増えています。どこで最期を迎えたいかは人それぞれなので、納得できる選択をしましょう。
在宅で看取る場合は、医療チームを編成したり、臨終に向けて心の準備をしたりする必要があります。
「小さなお葬式」では、終活や葬儀に関するお問い合わせを受け付けています。お亡くなり後の手続き・直近の葬儀にお悩みの方は0120-215-618へお電話ください。
四十九日法要は、故人が亡くなってから48日目に執り行います。ホゥ。