葬儀費用の払い戻し・故人の銀行直接請求は可能?法改正後の制度を徹底解説

葬儀費用の払い戻し・故人の銀行直接請求は可能?法改正後の制度を徹底解説

葬儀費用について、「当初想定していたより高額になってしまい、親族だけでまかなうことが難しく困っている」という方もいるのではないでしょうか。葬儀費用を故人の預金から払い戻してもらい、そのお金をあてることができれば、そういった不安も解消に向かうでしょう。

しかし、故人の預金を払い戻してもらうことは、想像以上に難しくなっています。そもそも故人の預金は「相続財産」であり、いくら故人本人の葬儀とはいえ、払い戻してもらうことはなかなかできないのです。

そこでこの記事では、葬儀費用にあてるために故人の預金を払い戻してもらう方法、銀行への直接請求は可能か、さらに法改正で故人の預金を払い戻してもらうための方法がどのようになったかということを中心に解説します。この記事を読んで、費用の心配なく葬儀を行えるようにしておきましょう。

こんな人におすすめ

葬儀費用の払い戻しは可能かを知りたい方

遺産分割前の相続預金の払い戻し制度とは何かを知りたい方

葬儀費用の払い戻し以外に活用できる制度を知りたい方

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葬儀費用の払い戻し(銀行への直接請求)は可能?

たとえば、以下のような事例で葬儀費用の払い戻しを受けたいと考える状況は出てくるでしょう。

夫を亡くして葬儀を行いたいと考えているAさん。相続人は、妻であるAさん(55歳)、長男Bさん、30歳、長女Cさん27歳の3人です。夫の遺産は、1,800万円の預貯金のみ。妻の法定相続分は2分の1であり、預貯金のうち、なるべく半分ほどは相続したいと考えています。

また、夫の葬儀には費用が150万円ほどかかりますが、そのお金をすぐにねん出することが難しい状況です。子どもたちとは仲がよくなく、自分個人の預貯金は150万円もないため、このままでは葬儀が行えない状況です。

上記のような事例でお金が足りずに葬儀を行えないようなケースは、ほかにも数多くあるでしょう。そんなとき、「遺産分割前の相続預金の払い戻し制度」を利用することで故人の遺産を払い戻し、葬儀費用にあてることが可能なのです。

遺産分割前の相続預金の払い戻し制度とは?

遺産分割前の相続預金の払い戻し制度とは、前述のような葬儀費用や配偶者・家族の当面の生活費・各種支払いなどでお金が必要になった場合、銀行から相続預金の払い戻しについて遺産分割を行う前から可能にした制度です。払い戻せる金額の上限はあるものの、葬儀費などをすぐに用意できない際に引き出せる制度に改正されました。

法改正によって葬儀費用の払い戻しが可能に

これまでは遺産分割をする前に故人の預貯金を払い戻すためには、家庭裁判所に仮処分を申請するなどの手間がかかりました。加えて仮処分申請の要件も非常に厳格であり、現実的には遺産分割前に払い戻しを受けることは難しかったのです。また、払い戻しまでの時間も1ヶ月ほどかかる場合があるなど時間がかかっていました。

2019年7月に民放が改正されたことで、一定の上限金額までであれば、家庭裁判所の判断を待つことなく、銀行に直接請求することが可能になりました。

葬儀費用の払い戻し金額の上限ルール

上記の改正を行った民法909条の2では、以下のように払い戻し金額の上限ルールを定めています。

各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。

(引用:民法第九百九条の二

この条文をもとに上限金額を考えると、以下の計算式で上限金額を割り出すことが可能です。

払い戻し上限金額=(相続時の口座残高)×1/3×払い戻しを求める相続の法定相続分
最初にご紹介したケースでは、最初に口座残高が1,800万円あり、妻の法定相続分は2分の1であるため、上記の計算式に当てはめて考えると、300万円を上限として払い戻しを受けることが可能になります。

法務省令によって最高150万円まで払い戻し可能

しかし、このルールとは別に、法務省で遺産分割前の払い戻し金額について、「150万円まで」と定められています。この取り決めは民法とは別のものですが、銀行など金融機関側でも法務省令は遵守しなければいけないため、基本的に払い戻し金額の上限は、最高でも150万円までと考えておいたほうがよいでしょう。

また、口座の残高によっては150万円引き出せない場合もある点に注意が必要です。たとえば口座の残高が600万円で相続人が2人だった場合、1人の相続人が引き出せるのは、100万円になります。

遺産分割前の相続預金の払い戻し制度は本当に使えるのか?

さて、このような遺産分割前の相続預金の払い戻し制度ですが、実際のところ、この制度を利用して金融機関から預金の払い戻しを受けることは可能なのでしょうか。

実際にこの制度を利用しようとすると、準備や手続きなどに関して手間や時間がかかり、使い勝手が悪い可能性もあります。以下にこの制度の問題点について、2つご紹介します。

提出する資料の多さという問題点

この制度を利用するにあたっては、提出しなければならない書類が数多くあります。以下に必要書類を記載しますので、参考にしてみてください。

・被相続人(亡くなられた方)の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書
(出生から死亡までの連続したもの)
・相続人全員の戸籍謄本、または全部事項証明書
・預金の払い戻しを希望される方の印鑑証明書

上記のような書類がなければ、金融機関から払い戻しを受けることはできません。このなかで最も時間がかかる可能性があるのは、「相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書」でしょう。相続人全員が近くに住んでいるようであればすぐに集められることもあるでしょうが、相続人の一部が遠隔地に住んでいるような場合には、連絡を取り、事情を説明して書類を取ってもらう必要があります。

また、郵送などで時間がかかる場合もあり、そういったことが重なると、準備までに1ヶ月ほどかかってしまうようなこともあるでしょう。

対応する銀行の少なさという問題点

この制度は前述したとおり、2019年7月から始まったものです。そのため、まだ制度を運用してから日が浅く、対応するための実務環境が整っている銀行や金融機関が限られているという問題もあります。

また、手続きに関しても時間がかかる可能性もあり、すぐに預金を払い戻してもらえない可能性があることも押さえておきましょう。

葬儀費用の払い戻し以外に活用できる制度

このように、遺産分割前の相続預金の払い戻し制度は、「準備のための必要書類が多い」「金融機関側が対応できない可能性がある」などの理由で、活用しにくい制度だとされています。

では、葬儀の費用をまかなうことが難しくなった場合の備えとして、ほかにどのような選択肢があるのでしょうか。以下に3つの選択肢をご紹介します。

葬儀保険

葬儀保険は、葬儀費用をまかなうために生前から故人が加入しておき、死後保険金が支払われるものです。実際の葬儀費用の振替先は、本人名義の口座でなくとも、配偶者や子どもなどに設定することができます。葬儀費用の支払いのための保険という性質柄、保険金の支払いも迅速に行われます。

月額の保険料はほとんどが1,000円以下と少額であり、生命保険などのような厳しい書類審査や医師の診断書なども必要ないため、気軽に入れる点が魅力です。また、高齢になって生命保険に加入しにくいという方でも、葬儀保険であれば加入できる可能性があります。

ただし、葬儀保険期間は1年間、支払われる金額の最高額は300万円までと規定されていることは注意しておきましょう。

社会保険

社会保険の補助を利用して、葬儀費用をまかなうことができる場合もあります。ここでいう社会保険とは、「協会けんぽ」と「組合健保」のことです。これらの被保険者が亡くなった場合には、「埋葬料」という形で補助が支給されます。

実際に埋葬料が支給されるのは、故人の扶養家族や、扶養家族でない場合でも故人が生計を維持していたという方です。もちろん、複数の親族などに支給されるものではありませんので注意しておきましょう。

また、被保険者が扶養していた人が亡くなった場合にも、「家族埋葬料」という形で埋葬料が被保険者に支給されます。

埋葬料は一律5万円となっており、葬儀費用の一部をまかなうことはできますが、少々心もとない金額だといえるでしょう。

国民健康保険

故人が国民健康保険に加入していた場合、喪主に対して「葬祭費」が支給されます。葬祭費を支給してもらうためには、以下の書類を用意して自治体に申請を行う必要があります。

・申請した人が喪主であることを確認できる書類
・印鑑
・銀行の口座が確認できるもの(通帳など)
・故人の健康保険証

葬祭費の金額は自治体によって違いますが、東京23区であれば、一律7万円となっています。そのほかの自治体では1万円~5万円となっているため、申請の際に確認しておきましょう。

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まとめ

葬儀費用は想像以上にお金がかかってしまい、なかにはその金額をねん出することが難しいという方もいるかもしれません。そんな方のために、遺産分割前の相続預金の払い戻し制度はありますが、必要書類なども多く、実用的であるとは必ずしもいえないのが現状です。

この制度以外にも、社会保険、国民健康保険では葬儀費用を助成する制度があります。また、葬儀保険であれば、葬儀費用の大部分をまかなえる可能性もあります。

小さなお葬式ではセットプラン内で葬儀に必要な物品サービス(火葬料金別)が含まれますので、安心して葬儀を行えます。葬儀費用に困る可能性がある方は、ぜひ一度ご相談ください。

監修
信長 洋輔(小さなお葬式 コラム編集長)
信長 洋輔(小さなお葬式 コラム編集長)

株式会社ユニクエスト社員
「小さなお葬式のコラム」の編集長。
葬儀葬式・法事法要だけでなく、終活・老後資金などFP関連の知識にも精通。
葬祭ディレクター1級の資格取得に向けて学習中。
葬儀業界最大級の、合計2000記事以上を管理。
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