「成年後見人」とはいったいどんな人でどのような役割があるのでしょうか。後見人という言葉は耳にしたことはあるけれど、その詳細についてご存知の方は少ないのではないでしょうか。
後見人とは、簡単にいうと「心身の状態や年齢によって、物事の判断能力が欠けている状況にある人を社会的に支援・保護する人」のことを指します。
公的手続きや財産管理などをサポートしてくれる後見人を選任することで、判断能力が不十分とされる方でも生活を維持しやすくなります。
この記事では、後見人の種類や役割、手続きの流れや注意点についてわかりやすく解説します。成年後見人制度を利用する予定のある方は、ぜひ参考にしてください。
<この記事の要点>
・成年後見人とは、認知症や障害を持った方が社会で不利益を被ることがないように手助けをする人のこと
・「法定後見制度」の場合、後見人を選任するのは本人ではなく家庭裁判所
・成年後見制度の申立て手続きをする権利があるのは、本人や配偶者を含む四親等内の親族のみ
こんな人におすすめ
成年後見人について知りたい方
成年後見制度を利用する際の注意点を知りたい方
後見人の申し立て手続きの流れについて知りたい方
ここからは、成年後見人の種類や役割とともに成年後見制度の概要や歴史について紹介します。
まずは、成年後見人や成年後見制度への理解を深めて、制度を利用すべき状況やタイミングについて把握していきましょう。
「成年後見人」とは、認知症や精神障害、知的障害により自分の意思で物事を判断するのが難しい人が、社会で不利益を被ることがないように本人に代わって手助けをする人のことです。
本人の生活を保護する役割を担う成年後見人には、以下の2種類が存在します。
【任意後見人】
将来自分の判断能力が不十分になったときに備えて、事前に後見する人を選定する任意後見制度によって選ばれた後見人
【法定後見人】
家庭裁判所によって選任された後見人で、すでに判断能力を欠いている状態の人を支援する人
成年後見制度は、2000年4月に介護保険制度と同時に施行された制度です。判断能力が不十分で詐欺や脅迫などの標的にされやすい方を守り、助けることを目的とした制度で、任意後見制度と法定後見制度(後見・保佐・補助)の2種類があります。
社会問題として深刻化する高齢者の認知症をはじめ、知的障害・精神障害のある人の生活をサポートするための重要な制度として、成年後見制度は制定されました。
成年後見人の主な役割は、公的な手続きをサポートする「療養看護」とお金の管理をサポートする「財産管理」の2つです。
具体的には、本人に必要な医療や福祉サービスの契約手続きを行ったり、本人の預貯金や不動産などの資産管理を担ったりすることが成年後見人の役割としてあげられます。
ただし、介護や病院への付き添いなど「事実行為」と呼ばれる身の回りの世話や、婚姻や遺言状の作成など本人にしか許されない「法律行為」は、成年後見人であっても行うことができません。
また、任意後見人の場合は任意後見監督人、法定後見人の場合は家庭裁判所へ、業務の進捗を報告することが義務付けられています。これは、成年後見人として果たすべき役割を遂行できているかを家庭裁判所が確認するためです。
人権についての考え方が見直された時代背景が、成年後見制度の制定に影響しています。
かつて判断能力が不十分な人は「禁治者(きんちしゃ)」または「準禁治者」と呼ばれていました。そして、その方たちを社会から保護することを目的とした「禁治産制度・準禁治産制度」が1896年に施行されましたが、禁治者・準禁治者に該当すると戸籍に記載されたり、欠陥のある人かのように扱われたりするなど差別に繋がっていた実態がありました。
その後時代の変化とともに、障害の有無にかかわらず1人の人間として平等に生活を送れるようにする「ノーマライゼーション」の考え方が日本にも徐々に浸透していき、人権を尊重する今の成年後見制度が実用化されました。
成年後見人にはどんな人がなれるのでしょうか。成年後見人になるために資格やスキルは必要ありません。しかしながら、成年後見人になれるか、なれないかについては一定の条件が定められており、成年後見人の種類によって選定方法が異なります。
ここからは、成年後見人になれる人となれない人の特徴や条件をはじめ、成年後見人の選任者についてもあわせて解説します。
本人に判断能力があると判定された場合に適用される「任意後見制度」では、誰でも成年後見人になれる可能性があります。
血縁関係のある家族や親族だけでなく血縁関係のない友人や知人であっても、本人が希望すれば成年後見人になれるのです。
一方で、本人の判断能力が不十分であることを前提とする「法定後見制度」では、後見人を選任するのは本人ではなく家庭裁判所です。
20%に満たない割合で親族(本人・配偶者・四親等内の親族、任意後見受任者)が選任されていますが、法律の専門家(弁護士・司法書士・行政書士など)やその人をよく知る地域の人が選ばれるケースもあります。
参考:成年後見制度の現状(令和5年5月)|「厚生労働省」
任意後見制度、法定後見制度かを問わず、下記に該当する人は成年後見人にはなれません。
・未成年
・破産者(※免責決定を受けていない人に限る)
・行方不明者
・家庭裁判所にて解任歴のある法定代理人・保佐人・補助人
・成年後見人に対し訴訟中または訴訟歴のある人、またはその本人の配偶者及び直系血族
・不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者(※任意後見人の場合)
本人の生活や金銭管理を支援する成年後見人は、信頼に値する人でなければなれないと認識しておきましょう。
なお、法定後見制度に基づき家庭裁判所で選任された成年後見人の決定に対して異議があったとしても、不服申し立てをすることはできません。
ここからは、成年後見制度を利用する際の注意点を4つ紹介します。成年後見制度の手続きには、ある程度の時間と費用を要します。また、本人の親族が手続きに介入するケースが多く、成年後見人は財産管理を行う役割があることから、金銭トラブルに発展することも少なくありません。
成年後見制度の申立て手続きをスムーズにトラブルなく進められるように、利用時の注意点について確認しておきましょう。
成年後見制度の申立て手続きをする権利があるのは、本人や配偶者を含む四親等内の親族のみです。
後見人の選任には審査が必要です。そのため、成年後見制度の申立てから成年後見人の選任までに3ヶ月~5ヶ月程度の期間を要します。また、成年後見制度の利用手続きは複雑で難しいため、親族内で解決できず司法書士や弁護士に必要書類の作成や申立ての代理を依頼するケースもあります。その場合は、後見人がきまるまでにさらに長い期間がかかることが予想されます。
手続きにかかる費用は、手数料や戸籍謄本、医師による鑑定書などの取り寄せに6万円~10万円程度必要になることが一般的です。
その後も、成年後見人が担う業務の内容に応じて月額数万円程度の報酬を支払う必要があり、継続的に費用がかかる点に注意しましょう。
本人の財産管理を行う役割がある成年後見人ですが、あくまでも財産を保全することが義務であり、財産を増やしたり使ったりすることはできません。
被成年後見人に不利益が生じるリスクがあることを成年後見人が担うことはできないので、本人に代わって投資信託や株などの資産運用や相続税対策のための不動産投資を行うことはできません。
また、投資ではなく資産整理を目的とした不動産の売買を行う場合でも、家庭裁判所の認可を得る必要があります。
成年後見人が親族となる場合、被成年後見人からすると身内である安心感がある一方で、金銭トラブルの元となってしまう可能性があります。
本人の財産を成年後見人が私的に利用したために「業務上横領」とみなされ罰則が科せられたり、成年後見人以外の同居家族が本人の財産を使い込み、家族内で裁判沙汰になったりしてしまうことも珍しくありません。
成年後見人に選任された親族には、療養看護や財産管理だけでなく厳正な制約が課せられます。親族だからと安易に請け負わず、後見人になった場合の負担を理解したうえで手続きを進めるようにしましょう。
成年後見人とセットで目にすること多い「未成年後見人」ですが、成年後見人との違いはどのようなところなのでしょうか。
未成年後見人とは、親権者を持たない未成年者が社会で安全に暮らしていけるように、生活のあらゆる場面においてサポートする制度です。
ここからは未成年後見人の特徴と選び方、役割について解説します。
未成年後見人とは、死亡や虐待などが原因で親権者がいない未成年者を保護するために「契約」・「監護養育」・「財産管理」などの法律行為を親権者の代理で行う人のことです。
未成年者が公的な手続きをする際は親権者の同意が必要ですが、親権者のいない未成年の場合は、代理で手続きをする未成年後見人が必要になります。
親権者の遺言状に記された人、遺言状がない場合は、家庭裁判所が選任した人が未成年後見人となります。
未成年後見人は本来であれば親権者が行うべき手続きなどを代理で行います。そして、親権者のいない未成年者を衣食住に困らせることなく、立派な大人に成長させる責任重大な役割を担っています。
未成年後見人には以下のような具体的な役割があります。
・成人するまでの住居地や医療、教育内容の決定
・未成年者本人が判断を誤って締結した契約の破棄
・預貯金の管理
身の回りの世話全般に加えて、家庭裁判所に未成年者本人の収支管理や報告を定期的に行うことも職務の1つです。
「法定後見人」「任意後見人」「未成年後見人」どれに該当するかによって、後見人の選任方法や対象者が異なります。そのため、後見人の種類に応じた手続きが必要です。
ここからは、各後見人の申し立て手続きの流れや特徴についてお伝えします。複雑に感じられる後見人制度ですが、手続きの流れを知っておけばいざというときに役立ちます。ぜひ参考にしてください。
法定後見人の後見を開始したい場合は、本人・配偶者・四親等内の親族の中から申立人を選定し、下記の流れで手続きを進めていきます。
1. 申立書をはじめとした必要書類を準備する
2. 家庭裁判所に電話をして面談日を予約する
3. 家庭裁判所に必要書類一式を郵送する
4. 面談日に申立人と後見人候補者が家庭裁判所で調査面談を受ける
5. 家庭裁判所が調査結果や提出書類、精神鑑定などを審査し、後見の開始可否判断のうえ、後見人を選任する
6. 家庭裁判所が法定後見の申し立てに対する結果を審判書にて通知する
7. 家庭裁判所が法務局へ登記事項の申請手続きを行う
将来起こりうる心身のリスクに備えて任意後見人を選任したい場合は、任意後見人を選び、下記の流れで手続きを進めます。
1.(判断能力が低下する前に)公証役場で任意後見契約公正証書を作成・契約する
2.(判断能力が低下したら)申立書をはじめとした必要書類を準備する
3. 家庭裁判所に任意監督人申立てのための必要書類一式を郵送する
4. 本人調査・受任者調査・精神鑑定等が必要な場合は鑑定を受ける
5. 家庭裁判所が任意後見監督人の選任を決定し、結果を審判書にて通知する
6. 家庭裁判所が法務局へ登記事項の申請手続きを行う
すでに親権者がいない状態で、未成年後見人の手続きを行う流れは法定後見人と同じです。
1. 申立書をはじめとした必要書類を準備する
2. 家庭裁判所に電話で面談日を予約する
3. 家庭裁判所に必要書類一式を郵送する
4. 申立人と後見人候補者が家庭裁判所で調査面談を受ける
5. 未成年者が家庭裁判所で調査面談を受ける
6. 裁判官の判断により、未成年の親族に対して意向確認をする
7. 家庭裁判所が調査結果や提出書類、精神鑑定などを審査し、後見の開始可否判断のうえ、後見人を選任する
8. 家庭裁判所が未成年後見の申し立てに対する結果を審判書にて通知する
上記で紹介した申立て手続きの他に、ひとり親などで万が一自分の身に不幸があった場合の備えとして、「遺言状で未成年後見人を指定する」という手続き方法もあります。
「小さなお葬式」では、無料の資料をご請求いただいた方全員に「喪主が必ず読む本」をプレゼントいたします。
喪主を務めるのが初めてという方に役立つ情報が満載です。いざというときの事前準備にぜひご活用ください。
\こんな内容が丸わかり/
・病院から危篤の連絡がきたときの対応方法
・親族が亡くなったときにやるべきこと
・葬儀でのあいさつ文例など
「小さなお葬式」では、お電話・WEBから資料請求をいただくことで、葬儀を割引価格で行うことができます。お客様に、安価ながらも満足できるお葬式を心を込めてお届けいたします。
小さなお葬式は全国4,000ヶ所以上※の葬儀場と提携しており、葬儀の規模や施設の設備などお近くの地域でご希望に応じた葬儀場をお選びいただけます。(※2024年4月 自社調べ)
自分ひとりでは生活することが困難な状況にある人を法的に支援・保護する役目を果たす人のことを「後見人」といいます。後見人には「任意後見人」「法定後見人」「未成年後見人」の3種類があります。
後見人の選任を視野に入れている人も、そうでない人も、起こりうる万が一に備えて知識をつけて先手を打つことは非常に大切です。
後見人制度のほかに、事前の備えとして葬儀についてお考えの方は、小さなお葬式にご相談ください。24時間365日体制で、葬儀に関するお客様の想いに寄り添いながらサポートいたします。
お亡くなり後の手続き・直近の葬儀にお悩みの方は 0120-215-618 へお電話ください。
相続人には、被相続人の遺産を一定割合受け取れる「遺留分侵害額請求権」があります。ホゥ。