日本の夏の風物詩ともいえるお盆ですが、時期や風習、呼び方も地域によって異なります。親族が亡くなり、施主として初盆や新盆の準備をしなければならない状況を迎えたとき、わからないことばかりで戸惑うことがあるかもしれません。
そこで今回は、初盆や新盆を迎えるにあたり、何をすれば良いのかについてご紹介します。また初盆を迎える時期や、親族の初盆に向けてのスケジュールを確認しましょう。
こんな人におすすめ
初盆(新盆)の意味を知りたい方
初盆(新盆)の時期を知りたい方
宗派ごとの新盆の違いを知りたい方
お盆は正式には「盂蘭盆(うらぼん)」と呼ばれ、年に一度、故人が家に戻ってくるとされています。特に故人の死後、初めて迎えるお盆を「初盆(はつぼん・ういぼん)」や「新盆(にいぼん・あらぼん・しんぼん)」と呼び、より丁寧な供養が行われます。
故人の最後の追善供養である四十九日よりも前に、その年のお盆期間を迎える場合は、翌年が初盆になります。つまり、四十九日以降の初めてのお盆期間に故人は初盆を迎えるということです。
お盆と四十九日目が重なる場合もあります。お盆の期間は地域によって異なりますが、ここでは新暦の旧のお盆の始まり8月13日の場合でご説明します。
6月25日~6月28日の間に亡くなった場合、49日目がお盆と重なります。四十九日の法要は亡くなった日から49日を越えない吉日に行えばよいので、お盆よりも前に法要はできるため問題ありません。
6月24日よりも前に亡くなった場合、49日目も四十九日の法要もお盆とは重なりませんが、遺族は法要を済ませてすぐに慌ただしく初盆を迎えることになります。
お盆と亡くなってからの49日目とが重なる場合、または四十九日とお盆までの期間が短くなってしまう場合は、初盆は翌年に行うか初盆と四十九日の法要を一緒に行うかのどちらかです。どちらが良いのかは、地域や家によって異なるため、相談をして決めることをおすすめします。
お盆と四十九日の法要が重なることに対して悩むのには理由があります。四十九日の法要は、故人が極楽浄土へ送る儀式とされており、お墓などへ納骨されます。それに対してお盆は、故人をお墓などに迎えに行くことで極楽浄土より地上に戻ってくると考えられています。
そのため、納骨したことで一旦はお墓に入った故人をすぐに迎えることになり、疲れさせてしまうのではないかという考えもあるからです。
お盆には初盆と混同されがちな「7月盆」とも呼ばれる新のお盆と、「8月盆」や「月遅れ盆」と呼ばれる旧のお盆の2種類があります。明治時代に太陰暦から太陽暦に変更されたことがきっかけとなり生まれたとされています。
7月盆を主流とする地域は、東京都や神奈川県、北海道の一部や石川県金沢市、静岡県の一部など限られています。現代でも、旧のお盆である8月盆が主流であるといえるでしょう。
改暦の布告からしてわずか23日後の施行であり、国民がその急な変化に戸惑ったことが理由の一つとされています。また、農家にとって7月は農繁期で忙しいため、落ち着いてご先祖様をお迎えできないという気持ちも原因であると考えられています。
新暦の新のお盆は、2024年は7月13日(土)~7月16日(火)となっています。新暦の旧のお盆は、2024年は8月13日(火)~8月16日(金)です。地域によってはお盆の期間が4日間ではなく3日間のところもあります。
沖縄や関東北部、中国地方、四国地方、九州地方、南西諸島のように、新暦が導入される前の旧暦盆を守り続けている地域もあります。
旧暦盆の期間はその年によって変わるため、9月にずれ込むこともあります。例えば、2025年の旧暦盆の地域でのお盆の期間は、9月4日(木)~9月6日(土)です。
初めて施主として迎える新盆は、これまでに経験がなければ知らないことも多いでしょう。直前になって慌ててしまったり、いたらなかったりすることが出てくるかもしれません。
事前に、施主が新盆を迎えるにあたってしなければならない準備とスケジュールについて確認をし、安心してお盆期間を迎えましょう。
新盆では、菩提寺のお坊さんに家に来てもらい読経をしていただきます。そのため、お寺に連絡をしてお坊さんの予定を聞く必要があります。お盆の期間は、お坊さんは特に忙しい時期なので、余裕をもって1カ月前までにはお坊さんに連絡を入れることをおすすめします。
新盆の法要では、法要後には集まった方々と会食の席を設ける場合が多いため、お坊さんには読経のお願いと共に会食の案内もします。
お坊さんとの間で日取りを決めた後、お呼びする方への連絡をします。連絡の際には会食の出欠を確認しておくとその後の準備がスムーズになるでしょう。
新盆で精霊をお迎えするために必要となるものを確認しましょう。
故人の精霊が迷わず帰って来られるように焚く迎え火と、迷わず帰れるように焚く送り火用の「おがら」があります。「おがら」とは、皮を剥いた麻のことで、お盆の時期になるとスーパーやホームセンターで見かけるようになります。地域によっては「おがら」以外に、松明やロウソク、藁を用いるところもあります。
盆提灯は、故人の精霊が迷わないための目印として、また安らかに成仏していただくための祈りを込めて飾ります。新盆では、清浄無垢の白で故人の霊を迎えるという意味から、白木で作られた白紋天の提灯が一般的です。盆提灯は親族から贈られる場合が多くなっています。
ご先祖さまを迎える舞台となる盆棚や精霊棚と呼ばれる棚は、地域や宗教によって特徴があります。盆棚や精霊棚は仏壇とは別にお盆の期間に設ける特別な棚です。一般的には12日の夕方または13日の朝に、仏壇を清めてから飾ります。
ただし、仏教の中でも浄土真宗は亡くなると浄土へ往生するという考えのため、追善供養を行いません。そのため、追善供養にあたる盆棚や精霊棚は飾りません。
棚にはお位牌、精霊馬、水の子、盆花、お膳、果物、お供え菓子、香炉、リン、ロウソクなどを飾ります。聞き馴染みのない精霊馬、水の子、盆花、お膳について詳しくご説明します。
お位牌は普段は仏壇に飾っているものを移動させ、精霊馬は割りばしや爪楊枝を使いナスで牛、キュウリで馬の人形を作ります。
由来は、「故人の精霊が馬にまたがり荷物を背負った牛を引き連れて帰ってくる」「帰ってくるときは足の速い馬に乗って少しでも早く帰ってきて、帰るときは足の遅い牛に乗ってゆっくりと帰って欲しいという願いが込められている」などさまざまです。
水の子は、すべての精霊に捧げるもので、蓮の葉の上にナスと人参、キュウリをさいころ切りにしてお米と混ぜたものに水気を含ませて盛り付けて飾ります。たくさんのご先祖さまをお迎えするにあたり、すべての精霊に行き渡るように粒にしたものをお供えします。
盆花はキキョウやミソハギ、ヤマユリなど夏の季節の花です。浄土宗や日蓮宗では、ほおずきを飾ります。
お膳は「霊供膳(りょうぐぜん)」といい、通常よりも小さなお膳で「御霊供膳(おりくぜん)」とも呼ばれます。地上に帰ってきた故人の精霊も毎食一緒に食事をしているように振る舞い、お膳でおもてなしをするという意味が込められています。お供えはお盆期間の間、毎食自分たちが食事を頂く前のタイミングでお供えします。
霊供膳のメニューは、不殺生の教えに沿い、肉や魚などの生き物の食材を使わない精進料理です。料理のお膳の配置は飯椀と汁椀の位置はどの宗派でも同じです。しかし、高坏(たかつき)、平椀、壺椀は宗派によって配置が異なるため、注意が必要です。
お膳に乗せる飯椀には白米を大盛にして丸く形を整えてお供えします。汁椀には、お味噌汁またはお吸い物を入れます。出汁は動物性のかつおだしは使わずに、昆布を使います。高坏にはお漬物を二切れ、平椀には昆布で出汁をとり煮込んだ3種類~4種類の食材の煮物を乗せます。壺椀には、おひたしなどを小さな山になるように盛り付けます。
お墓の掃除を行う時期に決まりはありません。お盆期間のお墓掃除は、13日に迎え火を焚く前までに済ませるようにしましょう。新盆であれば、家族以外の人がお盆より前にお参りに来てくださるケースもあります。そのため、月の始めに掃除をして新盆に備えておくのもおすすめです。
お墓の掃除方法は、お墓の周りの落ち葉を拾い、雑草を除去します。墓石は水を含ませたスポンジで洗います。汚れがひどい場合は、石材用洗剤を使いましょう。花筒や線香皿などの小物は、中身を綺麗に取り出し洗います。最後に乾いたタオルで拭きあげます。水気が残っているとコケが付きやすくなります。
盆入りとなる13日の夕方に迎え火を焚きます。昔はお墓の前で迎え火を焚き、提灯の灯りで先導しながら家に帰るという風習がありました。
新盆の法要では、親戚や知人などが集まりお坊さんによる読経をしていただきます。その後、会食を行うのが一般的な流れです。
盆の最終日にあたる16日(地域によっては15日)に、送り火を焚きます。浄土への道中の無事をお祈りしましょう。迎え火のときと同じように、お見送りとしてお墓参りをする地域もあります。
お墓参りや新盆のお宅の訪問、お供えや灯篭流し、白提灯など、新盆ではいつ、何をするのかをご紹介します。
新盆のお墓参りは、お盆の月の始めごろからが良いでしょう。新盆を迎えるご家族がお墓掃除を行う時期がお盆の月に入ってからのことが多いため、月の始めごろから13日の午前中が適しています。13日の夕方以降は、精霊が家に帰っていることになるのでお墓参りはしません。
新盆を迎えるご家族は、13日に「お迎えに行く」という意味でお墓参りに行き、帰ってから玄関先や庭先で迎え火を焚きます。
新盆の訪問は、お盆の月の始めごろから、訪問先のお宅の都合に合わせて伺いましょう。新盆法要が行われる当日は、避けるようにします。
遠方やどうしても都合がつかないことから、新盆の法要に参加できずお供えを送りたい人もいることでしょう。その際は、法要の一週間前から前日の間に届くように、新盆のお供えを手配すると良いです。
死者の魂を弔い、火を灯した灯篭を川や海に流す灯篭流しは、地域によっては送り火の一種としてお盆の最終日に行われます。
宗教によって新盆の捉え方は異なります。新盆参りに行く機会もあるかと思いますので、自分自身の宗教だけでなく、異なる宗教の新盆についても知っておきましょう。
真言宗と浄土宗では、新盆は故人を初めてお迎えする日であることから、例年のお盆よりも盛大な供養を行うのが一般的です。これとは逆に、浄土真宗では成仏した仏様は浄土ではなくこの世にいらっしゃるという考え方であるため、わざわざお盆の時期にお迎えする必要がないことから、お盆に特別なことはおこないません。
仏教における初盆や新盆のことを神道では、「新盆祭」や「新御霊祭(あらみたままつり)」と呼びます。神道では、お盆は先祖供養・祖先崇拝の行事の一つとされているため、祖霊舎を掃除したり、季節の果物やお酒を供えたりします。仏教と同様に、迎え火や送り火も行います。
宗教によっても盆行事はさまざまですが、地域差も豊かです。
8月16日に行われる京都五山の送り火は、夏の夜空を彩るお盆の精霊を送る伝統行事です。東山に「大」の字が浮かびあがり、それに続いて松ケ崎に「妙」「法」、さらに西加賀に船形、大北山に左大文字、嵯峨に鳥居形が現れます。これらは京都市登録無形民俗文化財とされています。
8月15日に行われる長崎の精霊流しでは、故人の霊を弔うために船を手づくりし、その船をひきながら街を練り歩き極楽浄土へと送り出す伝統行事です。1メートル~2メートルのものから何十メートルもあるものまで大小さまざまな船には、家紋や家名、町名が記され、船の飾りつけには故人の趣味などが反映されています。
7月13日~7月16日の間に行われる靖国神社のみたままつりは、昭和22年に戦没者の霊を慰める行事として始まりました。3万個を超える提灯や雪洞(ぼんぼり)が参道に並び、大道芸や神輿振りなどが身まれます。
8月12日~8月15日の間に行われる徳島の阿波踊りは、日本最大規模の盆踊りといわれています。江戸時代から続く歴史ある伝統芸能です。踊り手が一斉に踊り歩きます。
盆行事は、さかのぼること飛鳥時代の606年、推古天皇が「推古天皇十四年七月十五日斎会」という行事を行ったことが始まりといわれています。江戸時代以前までは貴族や武士、僧侶といった上流階級の人の行事でしたが、江戸時代からは庶民の間にも広まりました。
宗教や宗派、地域によって時期も違えば行事や風習も違いますが、お盆が先祖の霊を供養することが目的であることには変わりません。
お盆が終われば後片付けをしなければなりません。送り火をした後はお供え物を棚から下ろしましょう。片付けのタイミングも宗派や地域によって異なります。
お供えしていたものは、基本的には無駄にすることなく食べましょう。しかし、お盆の時期は夏であることから、傷んでいて食べられないこともあります。昔であれば、川に流したり、土に埋めたりしていましたが、今は環境面から同じことはできません。
そのため、生ごみとして捨てるしかないものもあります。その際は白い紙に包んで感謝の気持ちを示して処分しましょう。
白提灯は、昔はお焚き上げをしていました。しかし、現在の住宅事情では難しいため、地域のゴミの分別方法に従って処分します。または、菩提寺に相談してみるのもおすすめです。
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初盆や新盆を迎えるにあたり、何をすればいいか、また初盆を迎える時期や親族の初盆に向けてのスケジュールをご紹介しました。宗教や地域によって新盆の準備の違いはあるものの、供養のためにもしっかりと準備をしておきましょう。
直葬とは、通夜式や告別式などの式をはぶき、火葬のみを行う葬儀のことです。ホゥ。