配偶者との離婚を検討している場合、財産分与の対象になるもの・ならないものが何か気になる方も多いのではないでしょうか。ここでは対象になる「共有財産」と対象にならない「特有財産」について具体例を挙げて解説します。離婚前の財産分与の協議を有利に進めるために、ぜひ参考にしてみてください。
<この記事の要点>
・財産分与には、精算的財産分与・扶養的財産分与・慰謝料的財産分与・婚姻費用分担の4種類がある
・婚姻前から有していた財産や、婚姻中に夫婦の協力とは無関係に取得した財産は分与の対象外
・財産分与の対象になるのは、共有財産として夫婦で協力して築いた預貯金や不動産、自動車、有価証券など
こんな人におすすめ
財産分与について知りたい人
財産分与の対象になるもの・ならないものを知りたい人
財産分与の事例を知りたい人
財産分与とは配偶者と離婚する場合に、夫婦になってから購入した物や預貯金の分配を請求できる制度です。(民法第768条1項)離婚について夫婦で協議する際、「誰がどのくらい財産を受け取るか」「どのような方法で分配するか」を決める必要があります。ここでは、財産分与の種類・割合・対象になる期間について確認しましょう。
財産分与は、主に4種類に分類できます。
【精算的財産分与】
離婚の原因は問わず、結婚している間に夫婦で貯めたお金や維持していた財産を2人で分けます。
【扶養的財産分与】
離婚によって一方の生活が苦しくなる場合、生活能力のある側が一定の生活水準を維持するために財産を分配する。
【慰謝料的財産分与】
DVや不貞行為が原因で離婚する場合、慰謝料の請求が発生します。慰謝料的財産分与は原則、財産分与と分けて請求します。しかし離婚後の金銭に関する事項として、財産分与とまとめて請求・支払いをする場合もあるようです。
【婚姻費用分担】
協議をしている間も離婚成立まで法律上は夫婦です。そのため専業主婦(主夫)は、生活に必要な費用を所得の高い方に請求することができます。婚姻費用の内訳として、子どもの生活費や教育費・医療費・衣食住にかかる費用が挙げられます。
「財産をどのような割合で分配するか」「稼いだ金額に関わらず平等に分けるのか」と、気になる方もいらっしゃるでしょう。基本的に財産分与の一般的な割合は2分の1ずつです。
ただし状況に応じて、2分の1ルールが修正されることもあります。2分の1で分配しないのは、下記のような場合です。
・一方が高所得者(例:医者・経営者)
・独身の頃に貯めた資金を夫婦の住宅購入費用に充てた
・一方の浪費が著しく多かった
・別居期間が長かった
本格的に離婚の条件について協議するタイミングで、財産分与の話し合いも進めることになるでしょう。もし離婚時に財産分与の取り決めをしなかった、または解決できなかった場合でも、離婚から2年以内であれば請求が可能です。
ただし、手続きを後回しにすると気付かないうちに時効になってしまう恐れもあるでしょう。時効や対象となる財産が不明瞭になる前に、財産分与の手続きをすることをおすすめします。
時系列に、財産分与の流れについて紹介します。
1.財産分与の対象になるもの・ならないものを把握
2.財産分与の割合や支払い方法について協議
3.夫婦間で話がまとまらない場合は調停や裁判
4.話し合いがまとまったら離婚協議書を作成
5.財産の移転、不動産の名義変更
財産分与の対象にならないものとして「特有財産」が挙げられます。民法第762条1項によると「婚姻前から一方が有していた財産」「婚姻中であっても夫婦の協力とは無関係に取得した財産」が特有財産となります。ここからは、特有財産として取り扱う財産を詳しく解説します。
親族から贈与もしくは相続された財産は、財産分与の対象になりません。仮に結婚してから贈与・相続した財産であっても、特有財産として保有できます。
ただし例外として、妻(または夫)の協力により財産の価値を維持したり増加したりした場合、財産分与の対象になる場合もあるでしょう。
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結婚前の貯金は、夫婦で形成した財産ではないため財産分与の対象外となります。ただし結婚してから独身時代の貯金を使ったり、共有の口座に入金したりと区分けするのが難しい場合もあるでしょう。
対象になる財産の考え方はさまざまで、独身時代の貯金をそのまま除外する場合と財産形成への寄与分に考慮する場合、家計と切り離された口座のみを対象外とする場合があるようです。
高級な贈り物やブランド品は「財産分与の対象になるのではないか」と話し合いになる場合もあるでしょう。しかし、結婚前や夫婦になってからプレゼントした服やアクセサリーは占有物とみなされるため財産分与の対象になりません。
交通事故による「損害賠償金」や傷病による「保険金」は、財産分与で請求できません。しかし注意が必要なのは「逸失利益」です。
例えば、交通事故により本来取得できたはずの収入が得られなかった場合、加害者に対して逸失利益を請求できます。逸失利益=夫婦で得られるはずだった財産だと考えられるため、財産分与の対象になります。
また暴力事案、労働災害、医療事故によって発生した逸失利益も同様に財産分与の対象になると覚えておきましょう。
夫婦の生計を維持するための債務は、財産分与の対象となります。しかしパチンコや競馬を目的とした個人的な借金は、財産分与の対象になりません。
夫婦で協力して築いた財産は、共有財産として財産分与の対象になります。ここでは、共有財産の具体例について紹介します。
名義を問わず夫婦の預貯金は、共有財産として分配する必要があります。名義が夫婦のものになっていない場合でも、2人で協力して形成した財産ならば分配しましょう。
ただし子ども名義の場合は、状況によって異なります。
・子ども名義の口座に夫婦で貯金:財産分与の対象
・子ども名義の口座にお年玉やお祝い金を貯金:財産分与の対象外
夫婦で購入した土地や住宅は、共有財産になります。そのため不動産の評価額を基準に財産分与することになるでしょう。ローン未返済でどちらかが住み続ける場合は、不動産を引き継ぐ者がローン返済も引き受けるのが一般的です。
しかし住宅ローン未返済で売却する場合「アンダーローン」と「オーバーローン」で選択肢が異なるでしょう。
アンダーローン | ローン残高よりも不動産の資産価値が高い場合、不動産を売却して残金を夫婦で分けられる |
オーバーローン | ローン残高よりも不動産の資産価値が低い場合、売却金を返済に充てて残りの返済分を夫婦で負担する |
自動車も不動産の場合と同様に、ローン返済の状況や売却するのか乗車し続けるのかによって財産分与の方法が変わると覚えておきましょう。
株式や国債といった有価証券は、結婚後に購入したものが対象になります。夫婦で分配する方法として、現物もしくは換金して分けるのが一般的です。もしくは一方が所有し続ける場合、代わりの財産を譲ったり代償金を支払ったりすることもあります。
貯蓄型の生命保険は財産分与の対象になる可能性が高く、保険金を受け取っていない状態でも、保険会社に問い合わせると「解約返戻金額」を試算してもらえます。基本的に夫婦で協力して保険料を支払っていたと考えられる場合、試算した金額を基準に清算します。
退職金は受け取って間もない、もしくは近い将来受給が見込まれている場合、財産分与の対象になります。仕事をしている夫(または妻)を、主婦(主夫)が支えていると考えるため、退職金も分配するのが基本です。
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財産分与の対象になるかどうか、判断しにくい場合もあるでしょう。ここでは、よくある事例として相続した不動産やペットに関する事例を紹介します。
リフォームは、不動産の価値を高める行為だと考えられます。そのため相続した住宅・土地であっても、資産価値の上がった部分に対して財産分与することになるでしょう。
共有口座に入れている相続財産は、共有財産との区別ができるかどうかが判断基準です。相続財産と夫婦で築いた財産が混じっている口座で、生活費も下していた場合、特有財産の判別が難しくなり財産分与の対象になるかもしれません。
同じ口座に入ってくる給与を生活費に充てていたという場合は、相続した財産を区別しやすいため、相続財産を夫婦で分配せずにすむ可能性もあります。
相続した土地に家を建てた場合は、切り離して考えることが難しくなるでしょう。もし土地を相続した者が住み続けるなら、住宅の評価額のうち2分の1を分配できます。
しかし土地の相続人ではない者が住む場合は、土地の取得費用を支払う必要性もあるでしょう。一方で住み続けずに手放す場合は、売却で得た利益を夫婦で分けます。
よく論争になるのは、土地が値上がりし、不動産の価値も変動したときの財産分与です。単純計算で分配できないため、弁護士や不動産鑑定士といった専門家に依頼して解決を目指す場合も少なくないでしょう。
法律上ペットは物(不動)として扱い、家具や家電のように誰が所有するかを話し合いで決めます。どちらがペットの飼い主になるかは「主に世話をしていた者」「離婚後も飼育できる環境がある者」「ペットが特になついている者」が基準になるでしょう。
ただし結婚前から飼っていたペットは、財産分与の対象外になります。
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相続と財産分与はしばしば混同されますが、まったく意味が異なります。財産分与は、離婚するとき夫婦で財産を分配する際に用いられる言葉です。
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