年齢を重ねるにつれて、食欲が減退したり睡眠時間が増加したりと高齢者ならではの兆候が見られるようになります。その背景には、環境の変化や認知症などの要因が潜んでいるかもしれません。
この記事では、食事に手をつけなくなった家族や、寝ている時間が長い家族がいる方に向けて、その原因や対処法を紹介します。介護のストレスや負担を減らしたい人は、ぜひ最後までご覧ください。介護する側の問題を解決することで、高齢者の生活の質を上げられるかもしれません。
<この記事の要点>
・高齢者は身体機能の低下や活動量の減少で食欲不振になり、寝ている時間も長くなる
・食欲不振のときには、少量でも効率よくエネルギーを摂取できる食品を選ぶ
・食事回数が減ると栄養不足になりやすいため、好きなときに好きなものを食べてもらう
こんな人におすすめ
高齢者が食欲不振や寝てばかりになる理由を知りたい方
高齢者が食欲不振になったときの対処法を知りたい方
高齢者の介護について知りたい人
高齢になると多くの人は食が細くなり、寝ている時間が長くなりがちです。その理由として、以下の6つが挙げられます。
1. 加齢による身体機能の低下
2. 活動量の減少
3. 生活環境の変化
4. 精神的な要因
5. 薬の副作用
6. 認知機能の低下
ここからは、それぞれの理由について詳しく解説します。
人は誰しも、年齢を重ねるにつれて身体機能が低下します。もっとも顕著な変化として体力や筋力の衰えがあるほか、味覚・嗅覚にも加齢の影響が生じます。そのため、食事の好みが変わり、味付けの濃い食事を好むようになる方もいるようです。
高齢者は飲み込む力や噛む力が弱くなるため、若い頃と同じように食べられなくなることもあります。さらに胃腸の機能も低下しやすく、以前好きだったものを口にできなくなることも少なくありません。
ある程度の年齢になると、現役で働き続けることが難しく、外出する時間が減少します。すると、運動不足から体力や筋力が低下し、結果的に寝てばかりになってしまう高齢者も多くいます。
活動量が低下すると消費するカロリーも減ります。また、身体の基礎代謝が落ちるので、あまりお腹が空かなくなることもよくあります。
核家族化の影響で一人暮らしになる高齢者は多く、令和2年の時点で65歳以上の単身世帯は男性が15.0%、女性が22.1%となっています(出典:内閣府「高齢社会白書」)。
自分ひとりだけの料理を作ることが煩わしく、既製品などで食事を済ませる方も少なくありません。また、一人暮らしだと生活習慣が不規則になり、決まった時間に食事を摂らないこともあるでしょう。家族と同居している人でも、寝ている時間が長いと食事のタイミングがずれることも想定されます。
何らかの原因で老人性うつなどを発症し、食欲がなくなったり寝てばかりになったりすることもあります。たとえば、長年連れ添った配偶者が亡くなり、悲しみから食事がのどを通らなくなる方もいるでしょう。
これといった理由がなくても、何となく気力が湧かないケースも見受けられます。友人・知人との付き合いがなくなり、孤独感から何事に対しても無気力になる可能性もあります。
高齢になると、薬を飲む機会も増えます。日常的に服用している薬の副作用で眠気を催すこともあるため、もし寝ている時間が突然増えた場合は、処方箋に記載されている薬の成分を調べてみましょう。
抗てんかん薬・抗アレルギー薬など、眠気を催す薬は意外にもたくさんあります。薬の影響で食欲不振や寝てばかりになっていると感じたら、かかりつけ医に相談して別の薬に変更してもらったり、量を減らしてもらったりしてみてもよいでしょう。
認知症と、寝る時間が増える「傾眠傾向」には関連性があります。認知症の初期症状のひとつに睡眠障害があり、人によっては昼夜逆転の生活パターンになることもあるようです。また無気力になってしまうことも多く、周囲から「寝ているのでは?」と勘違いされるケースもあります。
もともと活発だった人が急に寝てばかりの状態になった場合は、認知症の疑いがあるかもしれません。症状が進行する前に、できるだけ早く病院で検査してもらいましょう。
高齢者が食欲不振になると、体力や筋力の低下に直結します。ここからは、高齢者が食事をしやすくなる工夫を5つ紹介します。高齢者の食事作りに悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。
1. 少しでも食べやすくなるように工夫する
2. 効率よくエネルギーを摂取できる食品を選ぶ
3. こまめな水分摂取を促す
4. 楽しく食事できる環境を整える
5. できるだけ身体を動かしてもらう
高齢になると若い頃と同じように食事を摂るのは難しく、食べやすくするための工夫が必要です。
たとえば、少量を小分けにして盛り付けることで、小食の方でもおいしく食べられるでしょう。一口サイズのサンドイッチやおにぎりなども喜ばれます。飲み物やスープなどの液体は誤嚥(ごえん)しやすいので、とろみをつけるのがおすすめです。
本人の好物を用意したのに食が進まない場合は、味覚が変化しているかもしれません。食欲不振が続いたら、食べたいものがないか直接聞くのもひとつの手段です。
高齢者は一度に食べられる量が減るため、少量でもカロリーの多い食べ物を選ぶのがおすすめです。以下のように、エネルギーとタンパク質を同時に摂取できる食品を用意しましょう。
【カロリーの多い食べ物】
・牛乳
・チーズ
・卵
・プリン
・カステラ
・サバ缶
・ツナ缶
上記に加えて、腸の働きを整えるために食物繊維の多い野菜や海藻類なども食べてもらうとよいでしょう。ただし、食物繊維を含む野菜は固く食べにくいので、高齢者向けにやわらかく調理して食卓に出すようにしましょう。
水分が不足すると脳の機能が低下し、脳梗塞を発症するリスクが高まります。加齢により体内に水分を溜め込める量が減るため、こまめな水分摂取は欠かせません。
とはいえ、一気に水分を摂取させようとするのは避けましょう。とくに寝ている時間が長い方の場合は、無理に飲ませると誤嚥を引き起こす可能性があります。起きている間に、少量の水を小分けにして飲んでもらうのが最善の方法です。本人が好きなものであれば、お茶やジュースなどでも構いません。
食事を楽しむには、味だけでなく環境も大事な要素となります。その場の雰囲気や食卓を囲む相手によって食事の味が変わる経験をしたことがある方も多いでしょう。
たとえば、食事の準備を手伝ってもらい食欲を刺激することで、食べる時間が楽しく感じられるかもしれません。食卓に敷くランチョンマットを明るい色にしたり、リラックスできるBGMを流したりするのも効果があります。家族と同居している場合は、家族みんなで一緒に食べるとよいでしょう。
高齢者の食欲が落ちる原因のひとつに、運動不足が挙げられます。身体を動かす時間が少ないと消費するエネルギーが減り、食事への関心が薄れて食が細くなってしまいます。
運動不足を解消するためには、近所を散歩したり体操をしたりするなど、できる範囲で身体を動かしてもらう必要があります。健康寿命を維持するために運動は欠かせないので、周囲が声をかけて行動を促すとよいでしょう。
年代を問わず、寝て過ごす時間が長いと体力は低下します。体力が落ちると、以下のような問題に直面することがあります。
1. 栄養不足になりやすい
2. 誤嚥しやすくなる
3. 事故が起こりやすくなる
4. 筋力が低下して寝たきりのリスクが高まる
5. 認知症の進行が速くなる
ここからは、それぞれの原因や対処法などを解説します。
高齢になって食事の回数が減るケースはしばしば見受けられます。食事の回数が減ると、一日に摂取するエネルギーが少なくなるため、必要な栄養を十分に摂れなくなってしまいます。
なかには食べ物の好き嫌いが多い高齢者もいるため、家族や介護施設の職員などが困ることもあります。栄養不足は体力の低下に直結し、体重が減って疲れやすくなる原因となります。
対策としては、好きなときに好きなものを食べてもらうようにしましょう。食事の時間や栄養のバランスなどは気にしすぎず、「食べてくれればよい」と思えば介助者のストレスが少なくなります。
寝ている状態が長くなるほど、高齢者が誤嚥するリスクは高まります。高齢になると飲み込む力が落ちるため、筋力不足に拍車がかかって食事中にむせるリスクが高まります。誤嚥を繰り返すことで肺炎を引き起こし、最悪の場合は命に関わる状況になるかもしれません。
誤嚥性肺炎を防ぐには、むせる回数を減らす必要があります。なるべく意識がはっきりしているときに食事を摂ってもらったり、必ず介助者をつけたりするなどの対策をしましょう。
横になっている時間が長い高齢者は、日常の動作にも注意が必要です。たとえば、トイレに行くために立ち上がろうとして転んだり、ベッドから落ちてしまったりする可能性があります。高齢者が転倒すると骨折するリスクが高く、それが原因で寝たきりになってしまうこともあります。
高齢者の事故を防止するには、以下のような対策をしましょう。
【高齢者の事故防止策】
・ベッドの高さを低くする
・ベッドサイドに転倒防止の柵を取り付ける
・必要なものは手に届く範囲に置いておく
身体機能が低下した高齢者は転びやすいため、事故が発生しにくい環境作りを心がけましょう。
年齢にかかわらず、寝てばかりの状態が続くと全身の筋力が衰えてしまいます。高齢者はとくに筋力が落ちやすく、歩く・立ち上がるなどの日常動作にも支障が出ることがあります。
筋力の低下は活動意欲の減退につながり、結果として、さらなる睡眠時間の増加を招くリスクがあります。
いきなり身体を動かすのが難しい場合は、まずベッドに座って過ごす時間を増やすところから始めましょう。そこから徐々に活動量を増やし、動けるようになれば健康寿命も延びるかもしれません。
傾眠傾向が続くと、認知症の進行は速まります。そのため、毎日会話をする機会を設けるなど、外からの刺激を途切れないようにするのが大切です。なお、早期の段階であれば、認知症の進行を緩やかにすることは可能です。
認知症対策としてできることは以下のとおりです。
【認知症対策の例】
・自分でできることはやってもらう
・デイサービスで同年代の人と交流する機会を増やす
・読書や脳トレなどで頭を使ってもらう
認知症を治す薬は現時点でありませんが、日常生活での刺激を増やすことで症状が落ち着くケースもあるでしょう。
ここからは、高齢者の介護にまつわる質問と回答を紹介します。介護に関わっている方は、ぜひ参考にしてください。
意識障害の具体的な症状を教えてください
認知症やその他の疾患などにより意識障害が生じると、以下のような段階で症状が進みます。
傾眠(けいみん) | 声をかけたり肩を叩いたりすると目を覚ます |
昏迷(こんめい) | 耳元で呼びかけたり、身体を揺さぶったり刺激を与えると目を覚ます |
半昏迷 | 強い刺激を与えた際に反応するものの、目を覚まさない |
昏睡(こんすい) | 強い刺激を与えても反応がない |
なお、傾眠傾向と似た症状に「過眠症」があります。区別がつかない場合は、医療機関に相談してみてください。
食が細くなってしまった高齢者には、なるべく口当たりのよいものを用意しましょう。おすすめの食べ物は以下のとおりです。
■ のどごしのよいもの
お粥、雑炊、うどん、茶碗蒸しなど
■ 冷たいもの
ゼリー、ヨーグルト、アイスクリーム、フルーツなど
■ やわらかいもの
卵料理、豆腐、白身魚など
上記で挙げたもの以外にも、市販の介護食を利用するのもおすすめです。
とくに大きな病気を患っていなくても、明らかに衰弱してきたと感じたときは死期が迫っているかもしれません。この段階になったら、なるべく話しかけて起きている時間を増やすようにしましょう。
死期が近づくと食事を受け付けなくなりますが、無理に食べさせるのは禁物です。口腔内や身体を清潔に保ち、寝室の温度や湿度を調整して過ごしやすくします。最終的には、そばで見守る時間が長くなるでしょう。
加齢にともない食が細くなったり、寝ている時間が増えたりするのは、自然な現象といえます。そばで見守る家族は心配になりますが、あまり気にしすぎないようにしましょう。「お腹が空いたら食べればよい」という寛容な気持ちでいることが大切です。
栄養のバランスは確かに大事ですが、本人の好きなものを好きなタイミングで食べてもらうのが最善の対処法といえます。運動の習慣をとり入れつつ、一定の生活リズムを保つことで健康寿命を延ばせるでしょう。
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年金制度には大きく分けて公的年金制度と私的年金制度の2種類があります。ホゥ。