臨済宗とは何か?教え・特徴・文化・葬儀の流れも解説

臨済宗とは何か?教え・特徴・文化・葬儀の流れも解説

臨済宗は禅宗と呼ばれる仏教宗派のひとつです。禅宗は他の宗派と比べてどのような違いがあるのでしょうか。同じ禅宗の曹洞宗とは共通点もありますが、それぞれ違った特徴もあります。

臨済宗についての知識があれば、安心して葬儀を執り行えるでしょう。この記事では、臨済宗の歴史、教え、特徴、葬儀の流れやマナーについて解説します。また、臨済宗がもたらした文化についても紹介するので、参考にしてください。

こんな人におすすめ

臨済宗の教えに興味のある方

臨済宗の歴史を知りたい方

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禅宗のひとつである臨済宗の歴史

臨済宗は禅宗のひとつです。インドで興った仏教が中国に伝わり、その教えをもとに禅宗が始まりました。その後、日本の僧侶が中国の寺に修行に行き、帰国して広めたのが臨済宗と曹洞宗です。

ここからは、中国の禅宗がどのように発展したのか、そして誰が日本に伝えたのかについて解説します。臨済宗の宗派ごとの寺院についても紹介します。

中国禅宗の歴史

中国禅宗は、達磨大師から始まったとされています。6代目となる慧能禅師が、中国の南部に広がった南宗禅(なんしゅうぜん)の祖です。その系統を受け継ぎ、唐の時代に、臨済宗の祖である臨済義玄(りんざいぎげん)が臨済宗を始めました。

臨済義玄は、悟りを開くことは自分そのものに向き合うことだと考え、教えを広めます。9世紀の当時は、唐の末期を迎えて戦や飢饉により社会は荒廃しており、こうした背景もあって自分を信じるという教えが広まりました。

臨済宗は日本の禅宗のひとつ

日本の禅宗には臨済宗、曹洞宗などがあります。それぞれの宗派が日本に伝わった経緯は次のとおりです。

鎌倉時代に、中国、当時の宋に渡った栄西は、臨済宗黄龍派から禅法を授かった証明である「印加」を受けます。帰国した栄西は、1195年に聖福寺を建立し、禅道場としました。これが日本における臨済宗の元になったといわれています。

鎌倉幕府・室町幕府の庇護を受けて、臨済宗は武家政権などの上流階級を中心に広まっていきました。臨済宗の考え方には禅問答をして悟りを目指すという特徴があります。

一方で、曹洞宗の祖は道元です。道元は、栄西の下で修行を積んだ後、宋に渡ります。禅宗の一派である曹洞宗の天童如浄により印可を受け、日本に曹洞宗を伝えました。曹洞宗は、地方武士や民衆に広まっていきます。ひたすら座禅をする姿そのものが、悟りの姿であるという教えです。

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臨済宗は14派に分かれる

臨済宗は14派に分かれています。それぞれの宗派に本山があり、「臨済宗◯◯寺派」のように、本山の名前を使って、宗派の名前が構成されているのが特徴です。14の宗派は以下のとおりです。

妙心寺派(京都)、南禅寺派(京都)、建長寺派(鎌倉)、東福寺派(京都)、円覚寺派(鎌倉)、大徳寺派(京都)、方広寺派(浜松)、永源寺派(東近江)、相国寺派(京都)、天龍寺派(京都)、建仁寺派(京都)、向嶽寺派(甲州)、佛通寺派(広島・三原)、国泰寺派(富山・高岡)
この中で特に有名なのは、「古都京都の文化財」として世界遺産に登録されている天龍寺です。また、本山ではないものの、相国寺派にも世界遺産に登録されている鹿苑寺(金閣寺)と慈照寺(銀閣寺)、妙心寺派には枯山水の石庭で知られる世界遺産の龍安寺、天龍寺派には「苔寺」と呼ばれる美しい西方寺などがあります。

また、建仁寺は栄西が建立し道元が修行を行った寺です。京都だけではなく、鎌倉などにも有名な本山があります。

臨済宗の教えと修行方法

臨済宗は仏教であり、禅宗のひとつです。仏教は枝分かれしながら、さまざまな教えを加えて発展してきました。ここでは、臨済宗の教えとはどのようなものか、そしてどのように修行をするのかについて解説します。

悟りを得ることを目指す

禅宗では、悟りを得ることが最終目的とされます。悟りとは、仏教の教祖であるブッダが到達したとされる「生死を超えた永遠の真理」のことです。

禅宗において、悟りは「自分の持っている仏性(仏になれる性質や可能性)に気づき、さまざまな執着を捨て去ること」とされます。この悟りを得るために、雑念を持たずに心を集中させる「禅定(ぜんじょう)」と呼ばれる修行を積むのが、禅宗のあり方です。

不立文字・以心伝心

禅宗の考え方として、「不立文字(ふりゅうもんじ)」があります。これは、ブッダの教えは文字や言葉からではなく修行体験によって伝えるものだとする思想です。

同様の意味を持つ言葉として、悟りや真理を伝えるために言葉や文字を用いず、心から心へ伝える「以心伝心(いしんでんしん)」があります。

看話禅・公案

修行の方法としては、身体的体験を重んじた、座禅や公案が用いられます。座禅は、ひたすら座ることによって身・息・心の調和をはかるという修行です。臨済宗では、師匠と対面する「看話禅(かんなぜん)」という座禅方法で修行をします。

座禅をしている弟子と向かい合った師は、「公案」という問題を出します。問題を出された弟子は考えて回答するわけではなく、座禅で精神を統一させて真理を究明していきます。

臨済宗の特徴

臨済宗の教えを理解したところで、基本的な特徴についても押さえておきましょう。ここからは、祀られる本尊、用いられるお経、5段階の礼拝の方法について解説します。

臨済宗の本尊とお経

臨済宗では、自分の内に持っている仏性に向き合うことを重視するために、特定の本尊を定めてはいません

ただし、釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)をお祀りすることが多いため、「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」と唱えるのが特徴です。あくまでも、修行によって悟りを得ることを目的とする教えなので、浄土真宗の念仏や日蓮宗のお題目のように続けて唱えることはありません

また、特定の経典は定められてはいないものの「般若心経」や「観音経」がよく読まれます。

礼拝の方法

以下の通り、5段階の礼拝の方法があります。

・低頭(ていず):立ったままで頭を下げる
・胡跪(こき):片膝を立ててひざまずく
・揖(いつ):叉手(しゃしゅ)の状態のままで頭を下げる。叉手とは、右手を胸にあてて、右手の上に左手を軽く重ねておおうこと
・門訊(もんじん):合掌した状態で低頭
・大門訊(だいもんじん):両手でぐるりと円を描くように合掌して低頭

お寺の朝夕のおつとめにおいては、三拝(さんぱい)が行われることがあります。立ち上がって合掌し、低頭し、肘を床につけて手のひらを上に向けて礼をする礼拝法です。これを3回繰り返します。

臨済宗がもたらした文化

中国から日本に臨済宗が伝えられた際、美意識や美術、文化なども伝えられました。それらは後の日本文化に大きな影響を与え、現在に至っています。ここからは、幽玄や「わびさび」などの美意識、水墨画、枯山水、茶の湯について解説します。

幽玄や「わびさび」などの美意識

臨済宗とともに伝えられた美意識として、幽玄や「わびさび」があります。幽玄とは、本来は仏教などの中国思想において用いられる言葉で、「神秘的で趣の深いこと」を意味しています。和歌、日本画、茶道などに影響を与えた考え方です。

わびさびとは「質素で静かなもの」という意味の美意識であり、悟りを得るために理解すべきものであると禅宗では考えられています。

水墨画

禅宗の教えに基づいて生み出された美術のことを「禅宗美術」と言いますが、墨一色の濃淡によって描写する水墨画はそのひとつです。当初は禅の思想を表す絵が描かれていましたが、次第に自然の風景を描く「山水画」が一般的になりました。代表的な画家として、中国にも留学した雪舟がいます。

枯山水

枯山水(かれさんすい)とは、禅宗の影響を強く受けた庭園様式です。実際の水を使わずに、石、砂、樹木などによって山と水のある風景を表現するもので、禅寺の庭において発展しました。枯山水の背景には、幽玄思想があると言われています。代表的なものとして、龍安寺、大徳寺、建仁寺などの庭園が挙げられます。

茶の湯

禅宗と深い関わりを持っている文化として、茶の湯があります。臨済宗を中国から日本に伝えた栄西は、宋の禅宗寺院で流行していた抹茶を日本にもたらしました。

茶の湯の発展とともに、茶室、茶道具、懐石料理などにも、禅の思想が取り込まれていくことになります。

臨済宗の葬儀とは

臨済宗の葬儀は、その教えに基づいて執り行われます。自分の持っている仏性に気づいて悟りを得ることが最終目標なので、亡くなった方も悟りへの道筋をたどれるようにする構成です。授戒、念誦、引導などの葬儀の構成とそれらが持っている意味、葬儀の流れについて解説します。

葬儀の構成

葬儀は、次のような3つの構成としているのが一般的です。

・授戒(じゅかい):亡くなった方に仏門に入るための戒律を授けて仏の弟子とする
・念誦(ねんじゅ):僧侶が経典を読み上げる
・引導(いんどう):仏性に目覚め仏の弟子となった故人を導師が浄土へ旅立たせる

葬儀の構成とその背景にある考え方を理解すれば、葬儀における儀式の意味がよくわかり参列時の心持ちも変わってきます。

授戒

葬儀は授戒の儀式から始まります。内容は次の通り進行します。

1. 葬儀を執り行う僧侶である導師の入場
 
2. 剃髪
実際に髪を剃るわけではなく、カミソリを当てるふりをする。導師は剃髪の偈(ていはつのげ)を唱える。
 
3. 懺悔文(ざんげもん)
亡くなった人が生前の行いを反省して入滅を願う
 
4. 三帰戒文(さんきかいもん)
仏の教えを学び、仏教の修行者となることを誓う
 
5. 三聚浄戒(さんじゅうじょうかい)・十重禁戒(じゅうじゅうきんかい)
亡くなった人を清めるために洒水灌頂(しゃすいかんじょう)という水を棺に注ぐ儀式。これで、正式に仏門に入ったことになる。
 
6. 血脈授与(けちみゃくじゅよ)
お香を焚き「血脈」と書かれた紙を霊前にお供えする。仏の弟子となった証拠となる。

念誦・引導

仏の弟子となった故人を浄土に旅立たせる儀式を行います。内容は次の通り進行します。

1. 入龕諷経(にゅうがんふぎん)
故人を棺に納める儀式。千手観音の功徳を説く「大悲呪」(だいひしゅう)と、故人を弔うための「回向文」(えこうもん)という2つの経文を唱える
 
2. 龕前念誦(がんぜんねんじゅ)
棺を閉める儀式。「十仏名」(じゅうぶつみょう)という経文を唱える
 
3. 起龕諷経(きがんふぎん)
出棺の儀式。大悲呪と回向文を唱える
 
4. 山頭念誦(さんとうねんじゅ)
成仏のために、往生咒(おうじょうしゅ)という経文を唱える。鈸(ばつ)や太鼓を鳴らす
 
5. 引導法語(いんどうほうご)
浄土に旅立たせるための法語を唱える。後半で、導師が「喝」と叫び、故人をこの世から解き放つ

焼香・出棺

念誦・引導までの葬儀の後に、焼香する告別式です。焼香の際には、「観音経」や「大悲心陀羅尼(だいひしんだらに)」などの経文が唱えられます。最後は、導師が回向文を唱え、鈸や太鼓が鳴らされて葬儀が終了です。終了後は出棺となり、棺が火葬場へ向かいます。

臨済宗の葬儀のマナー

宗派によって、葬儀の流れだけではなくマナーも異なります。特に、数珠の種類や持ち方、焼香の手順に気をつけましょう。ここからは、臨済宗の葬儀マナーについて解説します。

数珠と持ち方

略式の片手数珠を使われる方も多くいますが、臨済宗の正式な数珠は「看経念珠(かんきんねんじゅ)」で、親玉1個と煩悩の数と同じ108個の玉を組ひもでつないだものです。また、「振分念珠(ふりわけねんじゅ)」という長い数珠も使われます。

持ち方は、輪をひねって二重にして左手の手首にかけます。合掌する際は、左手の親指と人差し指の間にかけましょう。房の部分は下にくるようにして、右手を添えます。片手数珠の場合も二重にしないだけで持ち方は同じです。

焼香の手順

焼香の手順は次の通りです。

1. 仏前で合掌、礼拝
2. 親指と中指と人差し指でお香をつまみ、香炉にくべる。この際、基本的には、額に押しいただかず香炉に入れる。線香の場合は、1本だけに火をつけ、手であおぐか線香を振って消し、香炉に立てる。
3. 再び、合掌、礼拝

以上の動作を1回だけ行います。ただし、寺院や宗派によって異なることもあるので、不安な場合は寺院に確認しましょう。

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まとめ

臨済宗は禅宗のひとつで、教えとして自分の持っている仏性に気づいて悟りを得ることを最終目的としています。修行の方法としては、身体的体験を重んじた座禅や公案が用いられるのが特徴です。また、禅宗とともに日本にもたらされた思想や文化は、後の日本文化に大きな影響を与えてきました。

臨済宗の葬儀は教えに基づいて執り行われ、亡くなった方も悟りへの道筋をたどれるように構成されます。

禅宗は独特な考えに基づくこともあり、臨済宗の葬儀はどのように執り行ったらよいのかなど悩むこともあるかもしれません。その際はぜひ小さなお葬式にお気軽にご相談ください。24時間365日、コールスタッフが、通話料無料でご連絡をお待ちしております。

監修
信長 洋輔(小さなお葬式 コラム編集長)
信長 洋輔(小さなお葬式 コラム編集長)

株式会社ユニクエスト社員
「小さなお葬式のコラム」の編集長。
葬儀葬式・法事法要だけでなく、終活・老後資金などFP関連の知識にも精通。
葬祭ディレクター1級の資格取得に向けて学習中。
葬儀業界最大級の、合計2000記事以上を管理。
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