相続税基礎控除という言葉を聞いたことがあっても、それが具体的になにを意味するのかあいまいになっている方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、相続税基礎控除の計算方法や相続税の申告不要との関係などについてくわしく解説します。
<この記事の要点>
・相続税基礎控除とは、相続税の計算で課税対象となる金額から差し引いてもらえる金額のこと
・相続税の計算方法は、まず課税価格の合計額を計算し相続税基礎控除額を差し引く
・課税価格の合計額が相続税基礎控除額以下の場合は申告不要
こんな人におすすめ
相続税基礎控除とは何かを知りたい方
相続税基礎控除の計算方法を知りたい方
相続税の申告不要との関係を知りたい方
相続税基礎控除とは、相続税を計算するうえで課税の対象となる金額から差し引いてもらえる金額をいいます。
つまり、相続税基礎控除が大きければ大きいほど相続税の対象となる金額が減り、相続税の額も減るということです。
相続税基礎控除額は、次のように計算します。
相続税基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
これを、法定相続人の数ごとに当てはめて計算すると、次のようになります。
法定相続人の数 | 相続税基礎控除 |
1人 | 3,600万円 |
2人 | 4,200万円 |
3人 | 4,800万円 |
4人 | 5,400万円 |
5人 | 6,000万円 |
6人 | 6,600万円 |
7人 | 7,200万円 |
8人 | 7,800万円 |
9人 | 8,400万円 |
10人 | 9,000万円 |
この計算で用いる法定相続人の数の考え方については、のちほどくわしく解説します。
相続税法の改正により相続税基礎控除は、平成27年1月1日以降に発生した相続から減額されています。
改正前の相続税基礎控除額は、「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」で計算されていました。
従来の基礎控除額の計算であれば、法定相続人の数が2人であれば相続税基礎控除額は7,000万円、法定相続人の数が3人であれば相続税基礎控除額は8,000万円です。これを現在の相続税基礎控除額と比べてみると、基礎控除額が大きく減ってしまっていることがわかるのではないでしょうか。
この改正により、もともと相続税がかかっていた人にとっても増税となったほか、新たに相続税の対象となる人も増加しました。相続税の課税対象者は、相続税基礎控除額の改正前は亡くなった方のうち4%程度でしたが、改正後は8%程度となっています。
改正前の感覚で「うちにはそれほど財産はないから相続税はかからない」と考えていても、改正後の相続税基礎控除額では課税対象となる場合もありますので、確認しておくと良いでしょう。
相続税の計算に用いる法定相続人の数は、どのように考えれば良いのでしょうか。ここでは、法定相続人について解説します。
法定相続人とは、法律(民法)で定められた相続人のことです。
民法では、相続人として、配偶者のほか第一順位から第三順位までが定められています。
第一順位の相続人が1人でも存在すれば、第二順位や第三順位の人は相続人とはなりません。同様に、第一順位の人がいなくても第二順位の相続人が1人でも存在すれば、第三順位の人は相続人とはならないのです。
そして、配偶者がいれば配偶者は常に相続人となります。例えば第一順位の相続人と配偶者がどちらも存在するのであれば、第一順位の相続人と配偶者が一緒に相続人となるということです。
第一順位から第三順位の相続人は、それぞれ次のとおりです。
第一順位
被相続人の子。被相続人により先に亡くなった子がいれば、その亡くなった子の子である被相続人の孫。子も孫も被相続人より先に亡くなっていれば、その亡くなった孫の子であるひ孫。
第二順位
被相続人の両親。両親がいずれも被相続人よりも先に亡くなっていて、祖父母のうち存命の人がいれば、その存命の祖父母。
第三順位
被相続人の兄弟姉妹。被相続人よりも先に亡くなった兄弟姉妹がいれば、その亡くなった兄弟姉妹の子である被相続人の甥姪。なお、兄弟姉妹も甥姪も亡くなっている場合でも、甥姪の子は相続人にはならない。
相続税基礎控除額の計算には、この法定相続人の人数を使います。
養子であっても、相続を受ける権利に違いはありません。例えば実子である長男と長女がいる人が2名の養子を取っていた場合、2名の養子がそれぞれ主張できる相続分は、実子である長男や長女と同様です。
しかし、相続税基礎控除額の計算上算入できる養子の数には制限があります。その制限とは、次のとおりです。
・実子がいない場合:2人まで
・実子がいる場合:1人まで
この制限は、相続税を下げるために多くの養子を取るような過度な課税逃れを防ぐ目的で設けられています。
なお、ここで算入制限にかかる養子は、普通養子のみです。実の両親が養育できない等の事情で幼いころに行う特別養子は、相続税基礎控除額の計算上も実子と同様に扱います。
父が亡くなり、母と2名の子(長男と次男)が残されたという前提で、相続税基礎控除額を考えてみましょう。この場合の相続税基礎控除額は、4,800万円(3,000万円+600万円×3名)です。
では、この前提で次の事情が生じた場合、相続税基礎控除額はどうなるのでしょうか。それぞれのケースを見ていきましょう。
父の相続について遺産を分ける話し合いをしたところ、2名の子は一切相続せず、母が全財産をもらうことになりました。この場合の相続税基礎控除額は、どうなるのでしょうか。
結論は、4,800万円のままで変動はありません。
相続税基礎控除額の計算で使う法定相続人は、法律で定められた相続人です。そのため、相続で実際に財産をもらわなかった人がいたとしても、相続税基礎控除額の計算には影響しません。
父が、お世話になった知人へ全財産を遺贈するという内容の遺言書を残していました。この場合の相続税基礎控除額は、どうなるのでしょうか。
結論は、この場合も相続税基礎控除額は4,800万円のままです。
相続税基礎控除額の計算で使う法定相続人は法律で定められた相続人ですから、仮に相続人以外に財産を渡すという内容の遺言があったとしても、相続税基礎控除額の計算には影響しません。
父の相続につき、子が2名とも相続放棄をしました。その結果、父の配偶者である母のほか、父の兄弟姉妹や甥姪の計8名が相続人となっています。この場合の相続税基礎控除額は、どうなるのでしょうか。
この場合も、相続税基礎控除額は4,800万円のままとなります。
相続税基礎控除額は、たとえ相続放棄があったとしても放棄がなかったものとして計算することになっているためです。
相続放棄をした結果相続人が8人になったからといって、この8名という人数で相続税基礎控除額を計算するわけではないので注意しましょう。
父の死亡以前に、長男が亡くなりました。長男には、2名の子(被相続人の孫)がいます。この場合の相続税基礎控除額は、どうなるのでしょうか。
この場合の基礎控除額は、次のとおりです。
3,000万円+600万円×4名(母、次男、長男の子2名)=5,400万円
代襲相続が起きた場合には、代襲の結果として相続人となった人(この例では孫)も、相続税基礎控除額の計算上1人としてカウントします。
長男が父の遺言書を勝手に破棄し、相続欠格となりました。長男には、2名の子(被相続人の孫)がいます。
この場合の相続税基礎控除額は、どうなるのでしょうか。
この場合の基礎控除額は、次のとおりです。
3,000万円+600万円×4名(母、次男、長男の子2名)=5,400万円
相続の欠格事由への該当も、死亡と同じく代襲相続の原因となります。そのため、長男が父より先に亡くなった場合と同じく孫が代襲し、相続税基礎控除額にカウントされます。
なお、長男が父を虐待したなどして相続人から廃除をされた場合にも代襲相続が発生しますので、この場合の相続税基礎控除額も5,400万円です。
相続税基礎控除額の位置づけを理解するためには、相続税計算の全体像を知っておいた方が良いでしょう。
ここでは、相続税の計算方法について、流れにそってご紹介します。
まずは亡くなった人が持っていた財産や過去3年以内の贈与などを合計し、そこから債務や葬儀費用などを控除して、課税価格の合計額を計算します。
なお、死亡保険金や死亡退職金を受け取った場合は、その金額から非課税限度額を差し引いた残りも課税価格の合計額に加えます。
死亡保険金や死亡退職金の非課税限度額は、それぞれ「500万円×法定相続人の数」で計算します。
ここでは、課税価格の合計額が、仮に1億円であったとしましょう。
課税価格の合計額から、相続税基礎控除額を差し引きます。これが、課税遺産総額となります。
法定相続人が配偶者と長男、次男の3名であったとすれば、相続税基礎控除額は4,800万円です。
これを課税価格の合計額である1億円から控除しますので、課税遺産総額は5,200万円となります。
課税遺産総額:1億円-4,800万円=5,200万円
課税遺産総額を、法定相続人が法定相続分で財産を受け取ったと仮定して、法定相続分に応ずる各法定相続人の取得金額を計算します。ここでは、相続で実際に誰がいくら財産をもらったのかは一切関係ありません。
例で言えば、次のようになります。
配偶者:5,200万円×2分の1=2,600万円
長男:5,200万円×4分の1=1,300万円
次男:5,200万円×4分の1=1,300万円
この法定相続分に応ずる各法定相続人の取得金額を、相続税の税率表にあてはめて税額を算定します。
【平成27年1月1日以後の場合】相続税の速算表
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
例で言えば、次のとおりです。
配偶者:2,600万円×15%-50万円=340万円
長男:1,300万円×15%-50万円=145万円
次男:1,300万円×15%-50万円=145万円
それぞれの法定相続人について税額が計算できたらその税額を合計し、相続税の総額を算出します。
例で言えば、次のとおりです。
340万円+145万円+145万円=630万円
計算をした相続税の総額を実際に相続で財産を受け取った割合で按分し、各人の相続税額を計算します。
例えば、例の場合に配偶者と長男が2分の1ずつの割合で財産を相続しており、次男は一切相続しかなったとすれば、各人の相続税額は次のようになります。
配偶者:630万円×2分の1=315万円
長男:630万円×2分の1=315万円
次男:630万円×0=0円
各人の相続税額に各種控除などを加味して、最終的に各人が納付すべき税額を計算します。
例の場合、長男は何ら対象となる控除がないとすれば、長男の納付税額は315万円のままです。
長男の納付税額:315万円
配偶者は配偶者の税額軽減が適用できるので、例の場合には配偶者の納付税額は0円となります。
配偶者の納付税額:315万円-315万円=0円
配偶者の税額軽減については、のちほどくわしく解説します。
参考:『No.4152 相続税の計算 国税庁』
『No.4155 相続税の税率 国税庁』
相続税基礎控除額は、相続税の申告が必要かどうかの判断基準となります。
その判断の方法は、次のとおりです。
上で相続税の計算方法を紹介しましたが、このうち「相続税基礎控除を引いて課税遺産総額を計算する」の箇所に着目してみましょう。
相続税計算のベースとなる課税遺産総額は、次のように計算をします。
課税遺産総額=課税価格の合計額-相続税基礎控除額
つまり、課税価格の合計額から相続税基礎控除額を引いた残りが0以下となれば、相続税は課税されません。この場合には、相続税の申告をする必要もないとされています。
これをまとめると、次のとおりです。
課税価格の合計額が相続税基礎控除額以下である場合:相続税の申告が不要
課税価格の合計額が相続税基礎控除を超える場合:相続税の申告が必要
上でお伝えしたとおり、課税価格の合計額相続税基礎控除額以下であれば、相続税の申告は必要ありません。
ただし、この判断をする際には、下記の2点に注意が必要です。
相続税には、一定の要件のもとで土地が最大8割減で評価をしてもらえる特例があります。この特例を、「小規模宅地等の特例」といいます。
相続税の申告要否を確認する段階で相続税基礎控除額と課税価格の合計額を比べる際には、この特例を適用せずに計算をして比べるようにしましょう。
なぜなら、小規模宅地等の特例を適用するためには、相続税の申告が要件となっているためです。
相続税の申告さえしておけば小規宅地等の特例の適用が受けられて相続税がゼロになったにもかかわらず、申告をしないでいると特例の適用が受けられませんので、結果的に相続税額が発生してしまう可能性があります。
参考:『No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例) 国税庁』
配偶者が相続で取得した財産のうち次のいずれか大きい金額までは、相続税はかかりません。
1.1億6,000万円
2.配偶者の法定相続分相当額
例えば、上で解説をした相続税の計算例において仮に長男も一切財産を相続せず配偶者がすべて相続していたのであれば、相続税は0円であったということです。
しかし、たとえ配偶者の税額軽減を使って相続税が0円となった場合であっても、相続税の申告自体は必要となる点に注意しましょう。なぜなら、配偶者の税額軽減の適用は、相続税の申告が要件となっているためです。
参考:『No.4158 配偶者の税額の軽減 国税庁』
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相続税基礎控除額は、相続税の申告要否を判断するための基準となります。ご自身やご家族にとっての相続税基礎控除額を知っておき、相続税がかかりそうかどうか確認しておくと良いでしょう。
そのうえで、財産総額が相続税基礎控除額をはるかに超えている場合には、高額な相続税がかかる可能性があります。心配な方は、あらかじめ税理士へ相談され、どのくらいの相続税がかかるのか試算をしてもらうことをおすすめします。
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相続税基礎控除とは?
相続税基礎控除はどのくらいの金額?
相続税の申告が必要かどうかの判断基準は?
相続税の申告不要を判断する際の注意点は?
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