近年は、家族が亡くなった際に葬儀場や民間業者の霊安室に遺体を安置するケースが多くなっていますが、かつてのように自宅に安置することも可能です。故人を自宅に帰らせたいと考える遺族もいるでしょう。
この記事では遺体安置に必要なものや、遺体安置を行う際の注意点、メリット・デメリットを解説します。また、自宅で末期の水をとる方法についても説明しますので、ぜひ参考にしてみてください。葬儀全体の流れについてあわせてご確認することもおすすめです。
<この記事の要点>
・自宅安置の場合、遺体は仏間または畳のある部屋に安置する
・自宅安置の場合は、搬入経路を確認しておく
・室温は18℃以下を保つ
こんな人におすすめ
自宅で遺体安置をお考えの方
自宅で葬儀を行いたい方
自宅で遺体安置を行う際の注意点を知りたい方
自宅で遺体安置をする場合には、用意しなければならないものがあります。ここでは、遺体安置に必要な6つのものについて詳しく紹介しますので、あらかじめ把握しておきましょう。
遺体の安置を自宅で行う際に、まず確認すべきことは安置する場所の確保です。原則として遺体は仏間に安置します。仏間がない家の場合は座敷など畳のある部屋が望ましいです。
とはいえ、今どきのマンションでは洋室しかない家も珍しくありません。その場合は生前に暮らしていた部屋に寝かせましょう。施設に入っていたケースであれば、リビングでも問題ありません。
遺体を安置する寝具は、故人が生前使っていた布団やベッドに、汚れのないシーツや枕カバーをかけるのが基本です。シーツや枕カバーは、必ずしも新しいものを用意する必要はありません。しかし、洗濯したての清潔なものを用意しましょう。
仏式の場合は遺体を安置する際に、死装束のひとつとして、故人に数珠を持たせるのが一般的です。
数珠は故人が使っていたものがあれば、そちらを持たせましょう。なければ、別途用意したもので問題ありません。新たに用意する場合は、遺体と一緒に火葬することを考えて木製の数珠を手配するのがおすすめです。
故人の遺体の上には、守り刀と呼ばれる短刀を置く習慣があります。仏式、神式の両方の葬儀において行われますが、宗派によって扱いが異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。
守り刀の由来は諸説ありますが、大切な故人を魔物や穢れ(けがれ)た魂から守るために用いられているという説が一般的です。守り刀は遺体と一緒に火葬されるため、特にこだわりがなければ燃やすことができる木製を使用しましょう。
遺体の枕元には、故人の魂が迷うことなく成仏できるように、枕飾りと呼ばれるお供え物を置きます。枕飾りに必要なものは以下のとおりです。
・白木台または白色の布をかけた台
・一膳飯
・枕団子
・水
・香炉
・線香
・燭台
・花瓶
・植物(しきみや菊)
・鈴
遺体の腐食を防ぐためには温度管理が重要ですが、室温の調整だけでは十分ではありません。ドライアイスなどの保冷剤を使って遺体を冷やすことが重要です。ドライアイスは、適宜取り替える必要があります。葬儀社に手配してもらいましょう。
斎場や葬儀社の霊安室であれば、搬入の手配から遺体の保存まで専門のスタッフの業務範囲です。一方、自宅で安置する場合は、遺族が対応します。
ここでは「遺体の搬入方法」から「枕飾りの準備」「遺体の保存方法」など、自宅で遺体安置を行う際のポイントを紹介します。ご自身で対応する際の参考になれば幸いです。
戸建て住宅であれば、あまり気にする必要はありません。マンションの高層階まで運ぶケースでは、エレベーターの確認が必要です。奥にストレッチャーなどを入れるためのスペースを設けているエレベーターがあります。管理会社などに問い合わせましょう。
遺体を適切に安置するには温度管理が重要です。特に夏場など気温が高い時期はエアコンで室温を18℃以下にキープします。冬場は暖房を効かせすぎて室温が上がらないよう注意しましょう。加湿器も遺体の腐食が進む原因となり得るので、使用しないほうが無難です。
遺体を寝かせるシーツや枕カバーなどの寝具は白で統一しましょう。また、布団を敷く際の向きにも、仏教における風習があります。遺体の頭が北や西に向くよう枕を配置しましょう。
とはいえ、なかなか向きを整えるためのスペースが確保できないケースもあります。難しい場合は自然な向きで問題ありません。
掛け布団は頭側と足側の向きが逆になるようにかけます。遺体が温まってしまうとよくないため、薄い布団が望ましいです。
遺体を寝かせたら、手を胸元で合掌させて数珠をかけます。数珠には「人間の煩悩を消す」願いが込められているといわれています。玉の数が108の約数になっているのも、仏教でいわれる煩悩の数を表現しているからです。
布団の上には魔除けの守り刀を置きましょう。守り刀は、刃先が故人の顔側に向かないよう注意します。掛け布団の上から刃先が足側を向くよう、胸元に置きましょう。
遺体の枕元に置かれる枕飾りは、「仮祭壇」とも呼ばれることがあります。通夜の場面では「本祭壇」が設けられますが、自宅に本格的な祭壇を準備することは容易ではありません。
通夜が始まる前にも故人を弔いたいという人のために枕飾りが置かれているという考えもあります。さらには、故人の食欲・物欲が浄化されるといった考えもあります。
枕飾りは遺体を自宅に安置する際に設置し、お通夜の準備を始める際、故人を移動させるタイミングで回収するのが一般的です。
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自宅に神棚があるケース行うのが「神棚封じ」です。神棚に死の穢れ(けがれ)が及ばないよう、戸を閉じて白い布や半紙で封印します。
神道のしきたりですが、仏教徒でも神棚があれば行うことが一般的です。忌明けになったら封印を解きます。
神棚封じは家族以外の方が行う必要があります。親族などに行っていただければ問題ありません。葬儀社のスタッフでも対応してもらえますので、頼める人がいなければ相談してみましょう。
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ドライアイスは下腹部や首周りを中心に当てましょう。腐敗は内臓から広がるので主に下腹部を冷やします。そして首の下にも当てて冷やすようにしましょう。顔の周りが変色する可能性があるからです。
室温を低く保った状態で、ドライアイスも使って遺体の温度を下げ続ければ、きれいな状態で葬儀を迎えられます。
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日本の法律では「故人が亡くなってから24時間は火葬してはいけない」と定められています。よって自宅で遺体安置を行う期間は最短で1日です。
しかし、逝去後の翌日に必ずしも通夜ができるわけではありません。2日~3日程度は自宅に安置するのが一般的です。
最長では何日まで自宅で安置することができるかというと、適切に温度管理をした状態で7日間は持つといわれています。
適切な温度管理とは、エアコンを効かせて温度が十分に下がった状態であり、ドライアイスも下腹部と首の下に当てられた状態です。さらには、早期に納棺されていることも重要といえるでしょう。棺に入っているほうが保冷効果は高いといわれているためです。
それでも遺体の腐食は徐々に進行します。葬儀の日が先になってしまったケースでも、4日目には霊安室に移動することが望ましいと考えられています。
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故人が臨終された際に行われてきたさまざまなしきたりがあります。その中のひとつが「末期の水」という慣習です。故人の喉の渇きを潤すため、労いや感謝の気持ちも込めて行われます。
ここでは末期の水を取る方法を解説します。必要な際に迷わないよう参考にしてください。
末期の水の由来は、お釈迦様が亡くなる直前に弟子に水を求めたという話が由来とされています。
そのため、末期の水は正式には死亡する直前に行われるものです。しかしながら、現代の価値観ではなかなか難しいと思います。昨今では自宅に安置された際に行うことが一般的です。
臨終後に病室で看護師が準備をしてくれて、その場で行うこともあります。そのようなタイミングになっても特に問題はありません。
末期の水をとるのは、その場に立ち会っている家族と親族です。故人との血縁が濃い順番に行われます。
まずは配偶者です。次は子供ですが、長男の次は「次男」という見解と「長男の妻」という見解の両方があります。その後は故人の両親、故人の兄弟姉妹、孫と続くのが一般的です。
あくまでその場に立ち会っている方の中での順番であり、遅れて到着する血縁の濃い家族を待つ必要はありません。
まずは小皿などを用意して水を入れておきます。そして、割り箸の先に脱脂綿を輪ゴムなどでくくりつけます。脱脂綿の代わりにガーゼやしきみ、菊の葉や鳥の羽などをつけることも可能です。
次に脱脂綿を水で湿らせて、故人の唇に優しく当てます。喉の渇きを潤すためといっても、多量の水を口の中に入れるのは不作法なので注意しましょう。
最後に故人の顔をきれいに拭いて整えて完了です。地域や宗教によって末期の水のとり方が異なるケースもあります。葬儀社がサポートしてくれるので、迷われるようなら相談しておきましょう。
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自宅で遺体を安置するメリットは、故人との時間をゆっくりと過ごせることです。斎場や葬儀社の安置施設であれば、面会の時間に制限があります。面会時間に制限のない民間の安置施設もありますが、ゆっくりと最期の時間を過ごすには自宅のほうが適しているといえるでしょう。
故人が臨終するのは、ほとんどのケースで病院となっています。自宅で最期のときを迎えたいという方は多いものの、治療や延命措置を行うためになかなか叶わないのが現状です。そのため、火葬前に自宅に戻らせてあげたいと考える方も多いでしょう。
弔問に訪れた方も、自宅安置であれば故人に寄り添って時間を過ごすことが可能です。遺族はご自身の手で、線香やろうそくの火をたやさないように故人を見守ります。
また自宅での安置であれば、霊安室などの使用料は不要です。斎場や民間の安置施設を利用するケースでは付き添いにも費用がかかりますが、自宅なら親族が付き添っているので費用がかかりません。
自宅で遺体の安置を行う際には、デメリットもあります。まずは、自宅に故人を迎え入れる準備をしなければなりません。部屋の準備をして搬入経路も確認が必要です。枕飾りなどの装飾や遺体の安置など、慌ただしい中で作法を調べながらの準備は負担も多いでしょう。
そして何より、遺体を適切に保存して葬儀の時まできれいに保ち続けなければなりません。専門的な知識が求められたり、常に遺体の状態に気を配ったりする必要があります。ドライアイスの準備や交換などの作業を適切なタイミングで行うのも重要です。
また、遺体の搬入搬出の際はどうしても人目に触れます。あまり知られたくない人にとっては不向きといえるでしょう。
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遺体を自宅で安置することが、故人の意向に沿う場合は多いでしょう。遺族にとっても故人とゆっくり過ごすことができる大切な時間です。
とはいえ、自宅での安置はやるべきことが多いため、遺族にとっての負担が大きくなります。そのような場合は、ぜひとも「小さなお葬式」にご相談ください。自宅で安置するケースにおいても、様々なサポートをすることが可能です。
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