遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)とは?遺留分の計算方法も解説

遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)とは?遺留分の計算方法も解説

2018年に成立した改正相続法(民法)により、従来の遺留分減殺請求が遺留分侵害額請求へと変更されました。遺留分侵害額請求とはどのようなもので、改正ではどの点が変更されたのでしょうか。

この記事では、遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)の制度を、具体例を交えつつ詳しく解説します。

こんな人におすすめ

遺留分減殺請求が遺留分侵害額請求になった経緯を知りたい方

遺留分侵害額請求になって何が変わったのかを知りたい方

遺留分減殺請求をする方法を知りたい方

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遺留分減殺請求は遺留分侵害額請求になった

遺留分について検索をすると、「遺留分減殺(げんさい)請求」と書いてあるページと「遺留分侵害額請求」と書いてあるページが見つかるかと思います。この2つはどう違うのかと、悩んでしまう方もいるでしょう。

実は、このうち「遺留分減殺請求」は、古い呼び名です。2018年に民法相続法の大きな改正が成立したのですが、この改正の一環で「遺留分減殺請求」が「遺留分侵害額請求」へと変更されました。

また、これは単に名称が変わっただけのことではありません。請求の内容も改正されています。遺留分についての現行の情報が知りたい場合には、遺留分侵害額請求と記載のあるページを参照した方がよいでしょう。

遺留分制度がどのように変わったのか、詳しくは次で解説します。

遺留分減殺請求が遺留分侵害額請求になって何が変わったのか

従来の遺留分減殺請求と現行の遺留分侵害額請求では、遺留分請求の内容が大きく変更になっています。

法定相続人が長男と次男の2名、このうち長男に全財産を相続させる旨の遺言があり、次男から長男に対して遺留分を請求する場面で違いを確認しましょう。遺留分の対象となる財産は次のとおりだとします。

・2,000万円相当の土地
・1,000万円相当の建物
・1,000万円の預貯金

なお、遺留分の割合についてはのちほど解説しますが、この例での次男の遺留分は4分の1です。

「遺留分減殺請求」は現物返還が原則

従来の遺留分減殺請求では、現物返還が原則です。

たとえば、この例の場合に次男から長男に対して遺留分減殺請求がなされると、結果的に次の財産が次男のものとなっていました。

・土地の持分のうち4分の1
・建物の持分のうち4分の1
・預貯金250万円(1,000万円の4分の1)

遺留分減殺請求がなされると、このように、遺留分を請求した人の遺留分相当分がそれぞれの財産から減殺されるのが原則です。この結果として、遺留分を請求した人とされた人とで不動産などが共有となる問題が生じていました。

遺留分を請求する人とされた人とではあまり関係性がよくないことが多いにも関わらず、不動産が共有になってしまえば、その不動産の利用方法などでさらなるトラブルに発展してしまう可能性があります。この点が、問題視されてきました。

遺留分侵害額請求は金銭請求が原則

こうした問題を受け、遺留分請求は原則として金銭請求に変更されました。これに伴い、名称も「遺留分侵害額請求」へと変わっています。

たとえば、上の例で次男から長男に対して遺留分侵害額請求がなされても、不動産などが共有になることはありません。

請求するのは金銭であり、この場合には長男から次男へ1,000万円((2,000万円+1,000万円+1,000万円)×4分の1)の金銭を支払うこととなります。

仮に金銭が一括で支払えない場合には、分割払いについて協議をするなどします。

遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)の基本

遺留分とは、そもそもどのようなものなのでしょうか。また、相続人であれば必ず遺留分の権利があると考えてよいのでしょうか。

ここでは、遺留分侵害額請求の前提となる遺留分制度の基本を解説します。

遺留分とは

遺留分とは、一定の相続人に保証されている相続での最低限の取り分を指します。とはいえ、遺留分を侵害した遺言書などが直ちに無効になるわけではありません。遺留分を侵害した遺言書であっても、有効に成立します。

しかし、その後相続が起きた際に、遺留分を侵害された相続人(「遺留分権者」といいます)から遺言書で財産を多く受け取った人に対して、遺留分侵害額請求がなされる可能性があります。

遺留分侵害額請求とは、上でも解説したとおり、侵害した遺留分に相当する金銭を支払うよう請求することです。この請求がなされると、実際に侵害した遺留分相当の金銭を支払わなければなりません。

この支払は一括払いが原則ですが、一括での支払いが難しい場合には当事者同士で支払期限を協議するか、裁判所に分割払いなどの支払方法を決めてもらうこととなります。

なお、遺留分侵害額請求をするかどうかは遺留分権者次第であり、請求がされなければ遺留分相当の金銭を支払う必要はありません。

遺留分のある相続人と遺留分のない相続人は誰?

相続人であるからといって、すべての相続人に遺留分があるわけではありません。遺留分のある相続人は、次のとおりです。

・配偶者
・子や孫など第一順位の相続人
・両親など第二順位の相続人

一方で、第三順位の相続人である兄弟姉妹や甥姪には、遺留分はありません

遺留分の割合はどのくらい?

遺留分の割合は、原則として相続財産全体の2分の1です。例外的に、第二順位の相続人のみが相続人となる場合には、この割合が3分の1になります。

これに、それぞれの相続人の法定相続分を乗じた割合が、個々の相続人の遺留分となります。具体的な計算については、のちほど例を挙げて解説します。

遺留分侵害額請求には時効がある

遺留分侵害額請求には、時効があります。時効は、原則として相続の開始と遺留分を侵害する遺贈等があったことを知った時から1年です。

しかし、仮に亡くなったことや遺贈があったことを知らないまま年月が経過した場合であっても、相続開始の時から10年が経過することで遺留分侵害額請求をすることはできなくなります。

これを裏返せば、遺留分権者が被相続人の死亡をすぐには知らず、たとえば亡くなってから8年後に亡くなったことや遺言の存在を知った場合には、それから1年間は遺留分侵害額請求をすることができるということです。このようなケースでは忘れたころに遺留分侵害額請求がなされる可能性があるので、注意しましょう。

遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)の対象となる行為とは

遺留分侵害額請求の対象になるもので代表的なものは、遺言です。しかし、そのほかにも遺留分侵害額請求の対象となるものが存在します。

ここでは、遺留分侵害額請求の対象となる行為を確認しておきましょう。

遺言

遺言で財産を渡す行為は、遺留分侵害額請求の対象となります。

相続人へ遺言で財産を渡す「相続させる」遺言も、主に相続人以外へ財産を渡す「遺贈する」との遺言も、いずれも遺留分侵害額請求の対象です。

死因贈与

死因贈与とは、贈与者が亡くなった際に効力が生じる贈与契約です。遺言が遺言者の一方的な行為であるのに対し、死因贈与は双方の「あげます」「もらいます」の意思の合致で成立します。

死因贈与は、遺留分侵害額請求の対象となります。

一定の生前贈与

生前贈与のうち、次のものは遺留分侵害額請求の対象となります。

・相続開始前の1年間にしたもの
・相続人に対して相続開始前の10年間にした贈与のうち、生計の資本などのためにしたもの
・当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってしたもの

生前贈与をしてしまえば遺留分の対象から外れるということはではないため、注意しましょう。

遺留分はこのように計算する

生前贈与と遺言がある場合、遺留分の対象となる価額や各相続人の具体的な遺留分は、どのように計算するのでしょうか。

ここでは、遺留分の具体的な計算方法を紹介します。計算例も見ながら確認しておきましょう。

遺留分の計算方法

遺留分計算のベースとなる「遺留分を算定するための財産の価額」は、次のように計算をします。

遺留分を算定するための財産の価額=相続財産の価額+一定の贈与財産の価額-相続債務の全額
相続財産の価額とは、その相続の対象となっている土地や建物、預貯金などの遺産総額です。なお、被相続人の死亡により支給された生命保険金は、原則としてここには含まれません。

一定の贈与財産とは、上で解説したものです。贈与財産は、原則として相続が起きた時点の価額で計算されます。相続債務とは、被相続人が残した借金や未払金が該当します。

遺留分計算の具体例

それでは、遺留分を具体的に計算してみましょう。

【ケース1】

相続人の状況:父が死亡。法定相続人は長男、次男の2名。
財産の状況:遺産総額は3,000万円。相続債務は200万円。なお、亡くなる5年前に長男に対して、生計の資本として400万円を贈与している。
遺言書:次男に500万円、残りの全額を長男に相続させる旨の遺言がある。

この場合において、遺留分を算定するための財産の価額は次のとおりです。

3,000万円+400万円−200万円=3,200万円

また、次男の遺留分割合は次のとおりです。

2分の1(全体の遺留分)×2分の1(法定相続分)=4分の1

そのため、次男の遺留分は次のようになります。

3,200万円×4分の1=800万円

これに対して、次男が実際に受け取った財産は500万円です。そのため、残りの300万円について、長男に対して遺留分侵害額請求をすることが可能です。

【ケース2】

相続人の状況:父が死亡。法定相続人は妻、長男、次男の3名。
財産の状況:遺産総額は6,000万円。相続債務はなし。長男が3年前に生計の資本に該当する贈与2,000万円受けています。
遺言書:全財産を姪に遺贈する旨の遺言書がある。

この場合において、遺留分を算定するための財産の価額は次のとおりです。

6,000万円+2,000万円=8,000万円

また、それぞれの遺留分割合は次のとおりです。

 :2分の1(全体の遺留分)×2分の1(法定相続分)=4分の1
長男:2分の1(全体の遺留分)×4分の1(法定相続分)=8分の1
次男:2分の1(全体の遺留分)×4分の1(法定相続分)=8分の1

そのため、各人が姪に請求できる遺留分は次のようになります。

 :8,000万円×4分の1=2,000万円
長男:8,000万円×8分の1−2,000万円(生前贈与)=△1,000万円(請求できる遺留分はなし)
次男:8,000万円×8分の1=1,000万円

遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)をする方法とは

最後に、遺留分を侵害された場合に、遺留分侵害額請求をする方法を見ていきましょう。

遺留分侵害額請求には上で解説をしたとおり期限があります。そのため、請求をする場合には期限を過ぎてしまわないよう注意が必要です。

内容証明郵便で請求をする

遺留分侵害額請求の方法に、法律上決まりはありません。そのため、口頭で請求をした場合であっても請求の効果は生じます。

しかし、一般的には内容証明郵便で請求することが多いでしょう。

内容証明郵便とは、送った郵便の内容や送った日付などの証拠が残る郵便です。いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって日本郵便株式会社が証明します。

遺留分侵害額請求の最も重要なポイントは、期限内に請求することです。そのため、後から「期限内には請求されていない」などと主張されてしまわないために、期限内に請求した記録が残る内容証明郵便で請求することが多いといえます。

参考:『内容証明 郵便局』

調停で請求をする

遺留分侵害額の請求について当事者間で話し合いがつかない場合などには、家庭裁判所の調停手続きを利用することができます。

調停とは、調停委員立ち会いのもと、家庭裁判所でおこなう話し合いです。調停では、調停委員が解決案の提示や解決のために必要な助言はするものの、裁判所が決断をくだすわけではありません。

なお、調停を申し立てる場合であっても、事前に内容証明郵便にて請求をおこなう必要があります。調停を申し立てただけでは、相手方に対する遺留分侵害額請求の意思表示とはならないとされているためです。

参考:『遺留分侵害額の請求調停 裁判所』

訴訟で請求をする

調停においてもなお話し合いがまとまらない場合には、遺留分侵害額訴訟を提起します。遺留分侵害額訴訟では、裁判所が当事者双方の言い分を聞いたり証拠を確認したりしたうえで結論をくだします。

途中で和解をすることも可能です。

遺留分トラブルは弁護士に相談がベター

遺留分のトラブルは、訴訟にまで発展すれば長期化してしまうおそれがあります。また、内容証明郵便を送る際にはその内容が記録されるため、不用意に作成してしまえばむしろ自分に不利となる証拠を残してしまうことにもなりかねません。

遺留分の請求で困ったら、早期に弁護士へ相談することをおすすめします。

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まとめ

遺留分侵害額請求がなされると、当事者間のトラブルに発展してしまう可能性があります。よかれと思って偏った内容の遺言書を作成しても、財産を多く渡した相手を困らせてしまうことにもなりかねません。

遺言書を作成する際には遺留分制度について正しく理解したうえで、遺留分にも配慮した内容で作成するようにしましょう。

監修
池邉和美(なごみ行政書士事務所・なごみ相続サポートセンター所長)
池邉和美(なごみ行政書士事務所・なごみ相続サポートセンター所長)

行政書士・CFP。愛知県常滑市などの知多半島を中心に、遺言書作成サポートや相続手続き支援などを行っている。著書に「残念な実例が教えてくれる『きちんとした、もめない遺言書』の書き方・のこし方」(日本実業出版社)などがある。 URL https://ii-souzoku.com/

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