家族が「余命」の宣告を受けた際、どのような心構えをすればよいか悩む方もいるでしょう。余命と似た言葉に「予後」があり、違いがわからない方もいるかもしれません。「予後」は病気やケガの治療後の経過や将来の状態を予測するものであり、「余命」はその後どれくらいの時間を生きられるかを示す指標です。
この記事では、予後と余命の違いについて詳しく解説します。家族が余命や予後について伝えられたときにできることも紹介します。
<この記事の要点>
・「予後」とは治療後の経過や状態の見通しのこと、「余命」とは残された時間のことをいう
・予後や余命はおおよその目安であり、正確には判断できない
・予後や余命を知り、治療方針の選択や残された時間の過ごし方を考えることで有意義に過ごせる
こんな人におすすめ
「予後」と「余命」の意味の違いを知りたい方
予後がわかったときにするべきことを知りたい方
余命宣告された後にできることを知りたい方
病気が判明した際に、予後や余命について医師から説明を受けることがあります。このとき、患者や家族は「予後」と「余命」の意味を混同してしまい、ショックを受けるケースも少なくありません。予後と余命はどちらも患者の将来に関することですが、その意味には明確な違いがあります。
ここからは、予後と余命のそれぞれの意味と違いについて解説します。
予後とは、病気の治療をおこなったあとの経過についての見通しのことです。今後病状がどのように進行していくのか、治療をおこなうことでどのような変化が見られるのかといった医学的な変化を予測します。
病気の経過について明確に理解することで、予後の過ごし方のイメージを持てるでしょう。最善の治療を選択するためにも、病気の経過に対する見通しを持っておくことが大切です。
余命とは、あとどのくらいの期間を生きられるかという「残された時間」を指します。余命を宣告されるのは、病気に対して現状以上の治療ができない場合や、回復の見込みがない場合が多いでしょう。
余命は数ヶ月や半年など具体的な期間で伝えられますが、これは過去のデータから導き出した予測にすぎません。宣告された期間を必ず生きられるわけでも、それ以上生きられないわけでもなく、あくまで目安として宣告されるものと覚えておきましょう。
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予後が悪いと伝えられた場合は、経過がよくない状態にあります。具体的には以下のような状況です。
・病気やケガの回復が見込めない
・病状が進行している
・再発の可能性がある
・延命治療が困難である
治療の効果が期待できず、悪化や再発の可能性がある状態の場合に「予後が悪い」と判断されます。病気の種類や進行具合、患者の年齢など多くの状況から判断されるのが一般的です。
医師から予後や余命を伝えられたとき、患者や家族はネガティブな感情を抱いてしまうことがあるかもしれません。それではなぜ、医師は患者や家族に予後と余命を伝えるのでしょうか。ここからは、その理由と重要性を詳しく解説します。
患者の病気の経過を予測し、残された時間を具体的な数字にあらわすことで、治療やケアを選択するのに役立つことがあります。本人や家族にとっては受け入れ難い事実かもしれませんが、これからの時間を有意義に過ごせるように医師は予後や余命を伝えます。
予後や余命を伝えることは、万が一を想定して不安を最小限にする方法のひとつです。過度な期待や誤解を避けることで、現実的な期待をもつことができ、心の準備の手助けにつながるかもしれません。
医師もただ宣告するだけではなく、残された時間をどのように使っていくかともに考えて提案してくれるでしょう。
予後と余命を正確に判断することは難しく、医師は以下のような条件からおおよその目安を算出しています。
・体調や症状の変化
・身体的な活動性
・呼吸や循環動態
余命や予後は患者の状態を診て総合的に判断しますが、医師がもっとも注視するのは患者の体調や症状の変化だといわれています。食事量や病状の変化などを判断して、病気の進行具合を予想します。
大まかな予測であっても、本人や家族が予後や余命について知っておくことで、残された時間を有意義に過ごすことができるでしょう。
予後がわかったときにやるべきことは、主に以下の4つです。
・医師から詳細な説明を受ける
・治療の目標や希望を明確にする
・日常生活を見直す
・人に相談をする
ここからは、前向きな気持ちで治療に取り組むために、やるべきことをひとつずつ解説します。
まずは、医師から病状や経過に関する詳しい説明を受けます。今後の治療方針について決めていく大事な過程になるので、わからないことや不安に感じていることはしっかりと聞くようにしましょう。
このとき、セカンドオピニオンとしてほかの医師の意見を聞くのもひとつの方法です。いろいろな話を聞くことで予後についての理解が深まる場合もあるので、信頼できる機関を利用して情報収集をするとよいでしょう。
予後について理解できたら、次はどのように治療を進めていくのか、希望や目標を伝えます。治療の種類や内容ごとのメリットとデメリットを把握して、最適な治療計画を立てましょう。
緩和ケアやホスピスケアの利用も検討することで、多角的な視点から選択をできるようになるはずです。ひとりで考え込まずに、医師や家族と協力して取り組んでいくのがおすすめです。
病気とうまく付き合っていくために、以下のようなポイントで日常生活を見直していきます。
・家族と話し合ってサポート体制を整える
・栄養バランスの取れた食事を意識する
・適度な運動を取り入れる
健康状態に応じて、自宅環境の整備を検討してもよいかもしれません。手すりの設置や段差解消などバリアフリー化を進めたり、医療機器や介護用品を導入したりして、快適な生活環境を意識するとよいでしょう。
患者本人が予後を過ごすうえで、家族や友人などから精神的な支えを得ることも必要です。不安な気持ちや辛い気持ちを一人で抱えずに、心理的なサポートを受けるようにしましょう。
カウンセラーや心理士など、専門機関に相談をするのもおすすめです。また、同じような悩みを抱える人が集まる「サポートグループ」に参加することで、感情の整理や心の負担を軽減できるかもしれません。
余命を宣告されたら、今後の人生の過ごし方を考え直す必要があります。自身の希望や家族のことも考えて、よりよい最期を迎えられるように準備しておくとよいでしょう。
ここからは、余命宣告をされたあとにできることを紹介します。
余命を宣告された際に、まず決めるのが今後の治療方針です。具体的には以下の3つから選択することになるでしょう。
・完治を目指す
・延命治療をおこなう
・緩和ケアをおこなう
完治は、外科手術や放射線治療などさまざまな療法を用いて、病気を取り除いていくことを目指します。延命治療の場合は、完治ではなく「寿命を延ばすこと」を目的にした治療です。どちらも残りの時間をほとんど病院で過ごす可能性が高く、治療費も高額になることが予想されるため、家族とよく話し合って決めるとよいでしょう。
完治や延命を目指さない場合は、緩和ケアを受けられます。緩和ケアは病気による苦痛を減らしながら余生を過ごすことを目的としています。自宅で過ごせるケースもあり、状況によっては外出もできるかもしれません。
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治療方針が決まったら、残りの人生でやりたいことを見つけていくとよいでしょう。これまでできなかったことや、新しくはじめてみたいことなど、やりたいことをリストアップします。
具体的には、以下のような内容です。
・行きたかった場所に出かける
・家族や友人と旅行する
・趣味を追求する
・会いたかった人と再会する
・パーティーを企画する
体調を見ながら医師にも相談して、可能な限りやりたいことを叶えていきましょう。
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万が一に備えて、終活を始めるのもおすすめです。終活とは、人生の終わりに向けた活動のことで、具体的には以下の内容が含まれます。
・エンディングノートの作成
・遺言書の作成
・お墓の準備
・生前整理
保険や相続に関しては、本人の意思がはっきりしているうちに確認しておく必要があります。保険会社に連絡して保険内容の確認をしたり、財産を誰にどれだけ残すかを決めたりすることで、相続に関するトラブルを防ぐ手助けになります。
エンディングノートを活用して、項目ごとにまとめておいてもよいでしょう。ノートにまとめることで自身の今後について整理しやすくなり、家族に自分の意思を伝えることも可能です。
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終活と並行して、葬儀の準備もしておくとよいでしょう。あらかじめ葬儀社の比較検討をしておくと、いざというときにも慌てずに対応できます。
また、以下のような内容も家族と一緒に決めておくと安心です。
・葬儀の規模
・葬儀の形式
・宗教や宗派
・遺影写真
準備をしておくことで葬儀をスムーズにおこなうことができ、家族も慌てずに送り出せるでしょう。葬儀社に生前相談をし、希望に沿ったプランがあるか確認しておくのがおすすめです。
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「予後」と「余命」は医療において重要な概念ですが、それぞれ異なる意味をもちます。「予後」は病気やケガの治療後の経過や将来の状態を予測するもので、「余命」はその後どれくらいの時間を生きられるかを予測したものです。
どちらも患者や家族にとって、適切な治療やケアを選択する際に必要になる指標です。日常生活を見直したり終活をしたり、信頼できる葬儀社を選んでおくことも大切です。
予後や余命を伝えられたとしても、必ずしもそれはネガティブなことではありません。家族で話し合いながら、残された時間を有意義に過ごしていきましょう。
「小さなお葬式」では、終活や葬儀に関するお問い合わせを受け付けています。お亡くなり後の手続き・直近の葬儀にお悩みの方は0120-215-618へお電話ください。
葬儀費用が捻出できないときは「葬祭扶助」を活用することで補助金が受け取れる場合があります。ホゥ。