病気ではないけれど、体力の衰えや食欲の低下など、ちょっとした不調が増えてきたと感じることはありませんか。不調が続くときは、加齢により体が衰弱しているかもしれません。
衰弱は要介護状態の一歩手前だといわれています。症状が進行しないように、日々適度な運動とバランスのよい食事を意識することが大切です。
この記事では、高齢による「衰弱」について詳しくまとめました。衰弱する原因や予防法、万が一のときのための準備についても紹介します。
<この記事の要点>
・高齢による衰弱の症状は、主に「身体的症状」と「精神的症状」に分けられる
・医療機関では衰弱を診断する際に「フレイル基準」が用いられる
・衰弱の予防には「適度な運動」・「バランスのよい食事」・「積極的な社会参加」が大切
こんな人におすすめ
高齢による「衰弱」の症状について知りたい方
高齢による「衰弱」が起きる原因を知りたい方
高齢による「衰弱」の予防法を知りたい方
高齢になると、疲れやすさや体重の減少など体調に不安を感じることがあります。外出が億劫になったり、気分が沈んだりと精神的な不調が現れるケースも少なくありません。
ここからは、衰弱の定義や具体的な症状について解説します。
衰弱とは、年齢を重ねるにつれて感じる心身の活力低下のことです。医学用語では「フレイル」といい、主に高齢による衰弱を指します。厚生労働省によるフレイルの定義は以下のとおりです。
フレイルは、要介護状態に至る前段階として位置づけられるが、身体的脆弱性のみならず精神心理的脆弱性や社会的脆弱性などの多面的な問題を抱えやすく、自立障害や死亡を含む健康障害を招きやすいハイリスク状態を意味する
引用:厚生労働省|高齢者の特性を踏まえた保健事業 ガイドライン 別冊参考資料
運動機能の低下をはじめとした身体的脆弱だけでなく、精神的・社会的な脆弱性も見られるのが特徴です。ほかにも、生活機能に支障が出るといった多面的な問題を抱えやすく、要介護状態にいたる前段階として位置づけられています。
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フレイルと似た意味をもつ「サルコペニア」は、主に筋力の低下を指します。筋肉量の減少によって身体機能が低下しており、転倒や寝たきりになりやすい状態です。
一方でフレイルは筋力低下に加えて、精神機能や社会性の低下も含んでおり、サルコペニアよりも大きな概念です。
サルコペニアが進行すると活力低下を引き起こし、食事量の減少や低栄養など日常生活にも支障をきたすようになります。筋力の低下は認知機能や精神機能とも密接にかかわっており、サルコペニアが悪化することでフレイルも進行すると考えられています。
参考:「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書(各論 2-3 高齢者)
衰弱の要因はさまざまですが、主な原因は以下のとおりです。
・加齢による運動不足
・社会的交流の減少
・栄養不足
運動不足や活動量の減少など、体力の低下につながる状態を「身体的フレイル」といいます。偏った食事によってたんぱく質やカロリーが不足すると、むせたり滑舌が悪くなったり、口腔機能が低下します。
また、日常生活におけるストレスや気分の落ち込みは「精神的フレイル」の原因です。社会的交流が減少すると「社会的フレイル」も引き起こしやすくなるでしょう。
これらの症状は、ドミノ倒しのように連鎖していくと考えられています。フレイルの悪循環を引き起こさないためには、早期発見と対策が重要です。
衰弱と思われる症状は、主に「身体的症状」と「精神的症状」に分けられます。ここからは、衰弱の主な症状を紹介します。
衰弱(フレイル)における主な身体的症状は以下のとおりです。
・疲労感の継続
・体重の減少
・歩行速度の低下
・筋力の低下
・活動量の減少
身体的症状が出てくると日常生活において疲れやすくなり、活動するのが億劫に感じることが増えてきます。次第に筋肉量や栄養が不足し、意図せず体重が減少してしまいます。
筋力が低下すると歩行中や立ち上がり時にふらつきやすくなるため、転倒に注意が必要です。骨折をしたり寝たきりの状態になってしまったりするとフレイルから回復するのが難しくなります。
衰弱(フレイル)の主な精神的症状は以下のとおりです。
・気分が落ち込む
・周囲との交流が減る
・抑うつ状態になる
・意欲が低下する
・眠れない
衰弱による身体機能の低下や社会的孤立によってストレスを感じやすくなり、うつ状態や無気力になってしまうことがあります。記憶力や判断力など認知機能も低下してしまうので、興味関心が薄れやすくなるでしょう。
ほかにも、頑固になったり大らかになったりと、性格的な変化も多く見られます。精神的症状は身体的症状と相互に影響し合っているため、早期回復につとめて生活の質を維持することが重要です。
身体的・精神的に小さな変化からはじまる衰弱を、医療機関ではどのように診断するのでしょうか。ここからは、衰弱の診断方法について詳しく解説していきます。
衰弱の診断には「フレイル基準」が用いられており、主に5つの基準にもとづいて診断されます。
日本版フレイル基準(J-CHS基準) | |
体重減少 | 6か月で、2kg以上の(意図しない)体重減少 |
筋力低下 | 握力:男性<28kg、女性<18kg |
疲労感 | わけもなく疲れたような感じがする |
歩行速度 | 通常歩行速度<1.0m/秒 |
身体活動 | 軽い運動や体操をしているか
定期的な運動やスポーツをしているか |
参考:2020年改定日本版CHS基準(J-CHS基準)
あてはまる項目が1つ~2つでフレイル予備軍の「プレフレイル」になります。3つ以上該当する場合はフレイル状態の可能性があるといえるでしょう。
衰弱は早期に発見して対応していくことが重要です。日常生活において少しでも気になる点があれば、「東京大学高齢社会総合研究機構」が考案したチェックシートを活用した自己診断がおすすめです。
参考:やってみよう フレイルチェック
上記のチェックシートの内容を見ながら、自身の状態を確認してみましょう。軽微な兆候や要因がないか定期的にチェックすることで、要介護状態に陥るリスクを軽減できるかもしれません。
衰弱を予防するには、運動・食事・社会参加の3つの柱が大切です。この3つはお互いに影響しあっており、どれかひとつでも欠けてしまうと成り立ちません。
3つの柱を自分の生活に取り入れて、衰弱を予防していきましょう。
筋力や運動量の低下は衰弱の進行に大きくかかわるため、日々適度な運動を取り入れていきましょう。散歩程度のウォーキングや寝る前のストレッチなど、かんたんな運動を毎日継続しておこなうことで衰弱の進行を防げる可能性があります。
継続して運動をおこなうには、明確な目的を持って前向きに取り組むことが大切です。運動をして筋力を維持できれば、骨折や転倒による寝たきりのリスクも軽減できるでしょう。
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毎日の食事には、筋肉のもととなる魚や肉、卵などを取り入れていきましょう。特に不足しがちなたんぱく質を積極的にとり、バランスのよい食事を心がけることが大切です。骨を強くする牛乳や乳製品を、多く摂取するのもよいでしょう。
ただし、無理に食生活の改善に取り組む必要はありません。栄養やバランスを考えるあまり、ストレスや精神的負担につながる可能性があるためです。ほかにも、よく噛んで食べたり水分をしっかり摂ったりするなど、些細なことからはじめてみましょう。
趣味やボランティアなど、積極的に社会参加するのもおすすめです。社会参加の減少は、衰弱のはじまりになりやすいといわれています。自分に合った活動を見つけて、前向きな気持ちで過ごしましょう。
地域団体やサロンが社会参加のイベントを実施していることもあるので、参加してみるのもおすすめです。同じ地域に住む方との交流は、日々の生活のなかでよい刺激になるでしょう。
高齢による衰弱の症状が現れた場合は、どのように対応したらよいのでしょうか。ここからは、身内が衰弱したときに家族ができることを紹介します。
衰弱状態から回復するには、家族や周囲のサポートがとても大切です。具体的には以下のようなサポートができます。
・一緒に外出や運動をする
・コミュニケーションをとる
・家族や友人と食事をする
特に、ひとり暮らしの高齢者は一人で食事をする「孤食(こしょく)」になりがちです。孤食は料理の品数が少なく、食材も偏りやすくなります。家族や友人と一緒に食事をする「共食」を意識して、コミュニケーションをとりながら食事を楽しむようにしてみましょう。
ほかにも、食事を摂るための口腔機能の維持も大切です。口腔機能が低下すると硬いものが食べられなくなり、ますます食事量が減少してしまいます。よく噛んで食べることや、歯磨きをしっかりするように家族が声をかけてあげるとよいでしょう。
衰弱の進行を防いで生活の質を維持するために、看護や介護サービスを利用するのは非常に有効です。主に以下のようなサービスが適しています。
・訪問看護サービス
・訪問介護サービス
・デイサービス
訪問看護や介護は専門家による日常生活のサポートを得られるので、家族がいない場面でも衰弱の進行を防ぐことができます。必要に応じて心理カウンセリングも受けられるため、精神面でもサポートしてもらえるでしょう。
デイサービスでは同年代の方との交流や適度な運動を通して衰弱の進行を予防できます。これらのサービスを利用することで、安心して自宅での生活を続けられるかもしれません。
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衰弱が進行した場合を想定して、万が一の事態に備えておくことは大切です。本人が充実した最期を過ごせるだけでなく、家族も気持ちの整理と心構えができるでしょう。
ここからは、衰弱が進行した場合の対応について詳しく解説します。
衰弱が進行すると身体能力の低下によって死亡率が上昇し、終末期に入るケースがあります。病気にもなりやすくなるので、本人ができるだけ快適に過ごせるように「終末期ケア」を受けるとよいでしょう。
状況によっては入院が必要になりますが、環境の変化に対応できずストレスを抱えてしまう方も少なくありません。衰弱がさらに進行する可能性もあるため、本人ができるだけ落ち着いて過ごせるようにケアしていきましょう。
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よりよい最期を迎えられるように、気持ちを整理しておくことも大切です。家族との時間を作ったり、コミュニケーションをとったりして、後悔のないように残りの時間を過ごしましょう。
遺言書の作成や葬儀の準備など、本格的に終活をはじめてみるのもおすすめです。葬儀の事前相談をしたり、見積もりをとったりしてあらかじめ葬儀社を決めておくとよいでしょう。ある程度目途を立てておくことで速やかに対応でき、お別れの時間をゆっくり過ごせます。
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高齢になると心身ともに衰弱した状態になりやすく、日常生活において多くの困難が生じます。不調を感じたら適切なケアと対策で衰弱の進行を遅らせて、日常生活を維持できるようにしましょう。
万が一に備えて葬儀の準備を進めておくことで、残された時間を有意義に過ごせます。衰弱を改善するために家族が一緒になって取り組み、ときには専門家の助けを借りながら生活環境を改善していくとよいでしょう。
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御仏前は「仏となった故人の前に供えるもの」という意味です。ホゥ。