親が亡くなっても、銀行口座はすぐには凍結されません。銀行が口座の取引を止めるのは、家族からの連絡などで名義人が亡くなったことを知ったときです。止まると引き出しも公共料金などの引き落としもできなくなりますが、葬儀費用などがすぐに必要なときは「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」で、相続人が1人で、1つの金融機関につき最大150万円まで引き出せます。
<この記事の要点>
・口座が止まるのは銀行が死亡を知ったとき。死亡届を出しただけでは通常止まらない
・止まる前に引き落とし口座(公共料金・クレジットカードなど)を確認しておく
・暗証番号が分かっても、黙って引き出すと相続人どうしのトラブルや、相続放棄ができなくなるおそれがある
・葬儀費用は払戻し制度(預金額×1/3×法定相続分、1金融機関150万円まで)で引き出せる
・借金がありそうなら、預金に手をつけずに3か月以内に相続放棄を検討する
こんな人におすすめ
死亡後の銀行の手続きについて知りたい方
預貯金口座の引継ぎ方法を知りたい方
銀行口座の凍結前の確認事項を知りたい方
銀行口座は、親族が銀行に死亡したことを伝えた時点など、銀行が名義人の死亡を知ったときに初めて凍結されます。病院で亡くなったときや、役所に死亡届を出したときに、口座が自動で止まることは通常ありません。
凍結されると、その口座では次のことができなくなります。
| 取引 | 凍結後 |
| ATM・窓口での引き出し | できない(キャッシュカードも使えない) |
| 公共料金・クレジットカードなどの引き落とし | できない(未払いになり、請求書や督促が届く) |
| 振込(送金) | できない |
| 入金(年金・給与などの振込を受ける) | 扱いは銀行による。年金は受給停止の手続きが必要 |
| 残高の確認 | 相続人が残高証明書を請求できる |
銀行が名義人の死亡を知るきっかけは、主に家族からの連絡です。ほかに、新聞のお悔やみ欄や取引先からの情報で知ることもあり、会社の経営者や著名人は連絡の前に止められることがあります。ほかの銀行に連絡しても情報は共有されないため、口座がある銀行それぞれに連絡が必要です。
2025年4月からは、亡くなった人が口座にマイナンバーを届け出ていた場合、相続人が金融機関の窓口で申し込むと、どの金融機関に口座があるかをまとめて調べられるようになりました(手数料がかかり、結果が届くまで1か月ほど)。口座のある銀行が分かったら、それぞれの銀行に連絡します。
銀行への死亡の連絡に法律上の期限はありませんが、連絡しないと預金の払戻しや解約などの相続手続きを始められません。引き落としが続いている口座は、引き落とし先を変えてから連絡すると、未払いを防げます。
親が亡くなったら、銀行に連絡する前に引き落とし口座を確認し、葬儀費用の支払い方法を決めてから連絡するのがスムーズです。その後、相続放棄の判断(3か月以内)、遺産分割と預金の払戻し、必要なら相続税の申告(10か月以内)と進みます。
| 時期 | やること | ポイント |
| 亡くなってすぐ〜葬儀前 | 引き落とし口座の確認/葬儀費用の支払い方法を決める | 通帳の記帳・カードの利用明細で、公共料金・カード・家賃などの引き落としを洗い出す |
| 葬儀のあと | 口座がある銀行に連絡する | 口座が止まる。残高証明書を請求できる。口座が分からなければ口座照会(2025年4月〜) |
| 3か月以内 | 相続放棄・限定承認をするか決める | 借金がありそうなら預金に手をつけない |
| 遺産分割まで | 遺言書の確認 → 遺産分割協議 → 預金の払戻し・解約 | 必要書類は遺言書・協議書の有無で変わる(下の「預金を相続する手続き」) |
| 10か月以内 | 相続税の申告・納付(必要な場合) | 葬式費用は遺産総額から差し引ける |
口座が凍結されると引き落としが止まり、電気・ガス・水道・電話などが未払いになります。同居の家族が使い続けるものは、名義と支払い口座を早めに変えましょう。使わなくなるものは解約します。
| 契約 | 主な手続き |
| 電気・ガス・水道 | 名義変更か使用停止を、各社の窓口・Webで申し込む |
| 携帯電話・固定電話・インターネット | 解約か名義の承継 |
| クレジットカード | カード会社に連絡して解約(未払い分は相続の対象) |
| 家賃・保険料・サブスクなど | 契約先に連絡して名義・口座の変更か解約 |
年金・保険証など役所の手続きはこちらをご覧ください。
亡くなった人の口座からお金を引き出すこと自体が、すぐに違法になるわけではありません。ただし、預金は相続人全員で分ける相続財産になるため、ほかの相続人に黙って引き出すとトラブルの原因になります。また、引き出したお金の使い道によっては、借金があっても相続放棄ができなくなるおそれがあります。
やむを得ず引き出すときは、次の3つを守りましょう。
反対に、家族の誰かが黙って引き出してしまいそうなど、相続でもめそうなときは、早めに銀行へ連絡して口座を止めてもらうほうが安心です。
亡くなった人に借金がありそうなときは、預金を引き出したり使ったりせずに、相続放棄をするかどうかを先に決めましょう。相続財産を処分する(使う・売るなど)と、相続することを認めた(単純承認)とみなされ、相続放棄ができなくなることがあるためです。相続放棄と限定承認は、相続が始まったことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所へ申し立てます。
相続放棄は、預金などのプラスの財産も、借金などのマイナスの財産も、すべて引き継がない方法です。限定承認は、引き継いだプラスの財産の範囲内でだけ借金を返す方法で、借金がプラスの財産より多くても、足りない分を相続人が払う必要はありません。借金がどれくらいあるか分からないときに向いていますが、限定承認は相続人全員でそろって申し立てる必要があります。
すでに引き出してしまったときは、いくら引き出して何に使ったかを記録し、残ったお金は使わずに分けて保管しておきましょう。そのうえで、ほかの相続人に伝えます。引き出したお金は相続財産の一部として、遺産分割の話し合いで精算するのが一般的です。
亡くなった人の暗証番号が分からなくても、預金は受け取れます。銀行の相続手続きでは暗証番号は使わず、戸籍謄本や印鑑証明書などで、亡くなったことと相続人であることを確認するためです。通帳が見つからず口座番号が分からない場合も、戸籍謄本などと本人確認書類を持って窓口に行けば、口座があるかどうかを調べてもらえます。暗証番号を探してキャッシュカードで引き出すのではなく、相続手続きか、次の払戻し制度を使いましょう。
口座が凍結されたあとでも、「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」を使えば、相続人が1人で預金の一部を引き出せます。引き出せる金額は「亡くなった日の預金額 × 1/3 × その相続人の法定相続分」で、1つの金融機関につき150万円が上限です。2019年7月1日に始まった制度で、ほかの相続人の同意はいりません。
例1)A銀行の預金600万円・相続人は子2人(法定相続分 各1/2)
600万円 × 1/3 × 1/2 = 100万円 まで
例2)B銀行の預金1,200万円・相続人は配偶者と子1人(子の法定相続分 1/2)
1,200万円 × 1/3 × 1/2 = 200万円 → 上限により 150万円 まで
手続きには、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍(除籍)謄本、相続人全員の戸籍謄本、払戻しを受ける人の印鑑証明書と本人確認書類が必要です。戸籍をそろえるのに時間がかかることがあるため、葬儀の支払い期限に間に合うかを葬儀社に確認しておくと安心です。払い戻した分は、あとの遺産分割で、その相続人が受け取ったものとして扱われます。
150万円を超える額が必要なときは、家庭裁判所に遺産分割の調停・審判を申し立てたうえで、預金の仮払いを求める方法(仮分割の仮処分)もあります。
口座が凍結されて、葬儀費用の準備が間に合うか心配な方へ。小さなお葬式では、現金のほか、クレジットカード、ローンによる分割払いをお選びいただけます。一部のプランでは後払い(条件があります)もご利用いただけます。お支払いの時期や方法も含めて、葬儀専門のスタッフにご相談ください。
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凍結された口座の預金は、銀行に相続の書類を出して、相続人の口座に払い戻してもらうか、名義を変えて受け取ります。必要な書類は、遺言書があるか、遺産分割協議書があるかで変わります。
| ケース | 主な書類 |
| 遺言書がある | 遺言書(自筆の遺言は家庭裁判所の検認済みのもの)、亡くなった人の戸籍、預金を受け取る人の印鑑証明書 など |
| 遺産分割協議書がある | 遺産分割協議書、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍・印鑑証明書 など |
| どちらもない | 相続人全員が署名・押印した銀行所定の依頼書、亡くなった人と相続人全員の戸籍・印鑑証明書 など |
書類のそろえ方と手続きの流れはこちらをご覧ください。
借金が多そうなときや、口座の残高が少ないときは、凍結を解く手続きを急ぐ必要はありません。借金が多い場合は、預金に手をつけずに相続放棄や限定承認を検討します。残高が少ない口座は、手間と比べて放っておく人もいますが、10年以上取引がないと「休眠預金」になります。休眠預金になっても、相続人はあとから引き出せます。銀行によっては、長く使われていない口座に管理手数料がかかることもあります。
親が元気なうちに、口座の数と引き落とし先、葬儀費用をどう用意するかを話しておくと、亡くなったあとに口座が凍結されても慌てずに済みます。
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親が亡くなったときは、故人を偲ぶことも大切ですが、銀行口座の扱いも早めに確認しておきたいことの一つです。口座は銀行が名義人の死亡を知った時点で凍結されるため、連絡の前に、公共料金やクレジットカードの引き落とし口座を確認しておきましょう。
凍結前に預金を引き出すときは、ほかの相続人に伝え、領収書を残しておくことが大切です。借金がありそうな場合は、預金に手をつけずに、3か月以内に相続放棄をするかどうかを考えましょう。
葬儀費用がすぐに必要なときは、払戻し制度を使えば、ほかの相続人の同意がなくても預金の一部(1つの金融機関につき150万円まで)を引き出せます。預金の相続手続きに必要な書類は、遺言書や遺産分割協議書があるかどうかで変わります。
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参考資料
親が亡くなったら、銀行口座はすぐに凍結されますか?
亡くなった親の口座からお金を引き出してもいいですか?
葬儀費用を亡くなった親の預金から払うことはできますか?
銀行はなぜ名義人の死亡がわかるのですか?
口座が凍結されると、公共料金の引き落としはどうなりますか?
亡くなった親の暗証番号が分かりません。どうすればいいですか?
身内が亡くなったとき、銀行でしてはいけないことはありますか?
凍結された口座を放っておくとどうなりますか?

御仏前は「仏となった故人の前に供えるもの」という意味です。ホゥ。