般若心経といえば、お経のなかでも最もポピュラーだといえるでしょう。仏式の葬儀で唱えられることも多いので、いつもと違うお経を耳にすると「どの宗派の葬儀だろう」と不思議に思う方もいるのではないでしょうか。
浄土真宗は祈りや修行による悟りや成仏ではなく、阿弥陀仏の本願によって救済を受け、極楽浄土に生まれ変わることが宗旨です。このことから般若心経を唱えなくとも、阿弥陀仏に帰依して信心をもつことで往生ができると考えます。
この記事で、浄土真宗について理解を深めて般若心経との関わりを知りましょう。浄土真宗の宗旨や経典と、各宗派の読経方法についてご紹介します。
<この記事の要点>
・浄土真宗で般若心経を唱えないのは、浄土真宗の教義と般若心経の救われ方に違いがあるため
・浄土宗では祈願や食作法の際に般若心経を唱える
・日蓮宗では般若心経を含む妙法蓮華経以外の経を唱えない
こんな人におすすめ
浄土真宗で般若心経を唱えない理由を知りたい方
浄土真宗で重要とされるお経について知りたい方
各宗派における般若心経の扱いについて知りたい方
日本仏教の数ある宗派では、般若心経を唱える宗派が多くの割合を占めます。そのなかでも、浄土真宗は般若心経を唱えない宗派のひとつです。般若心経は仏教の重要な知の結晶ですが、浄土真宗では葬式の際にも唱える必要はないと考えます。この理由を理解するために、浄土真宗の宗旨や経典と般若心経の関わりについて見ていきましょう。
日本における仏教の宗旨は、大きく「聖道仏教(聖道門)」と「浄土仏教(浄土門)」の2種類に分けて考えられます。
聖道仏教は、さまざまな修行や祈りをとおした「自力」によって、悟りを得ることや成仏することを説く宗旨です。天台宗や真言宗をこれに含めて考えます。
浄土仏教は、「阿弥陀仏(阿弥陀如来)」の本願により、観仏や念仏によって極楽浄土に往生することを説く宗旨です。浄土真宗や浄土宗がこれにあたります。
仏教の経典のひとつである「般若心経」は、600巻にもおよぶ「大般若経」の精髄を、300字に満たない経としてまとめたものです。般若心経は聖道仏教の経典であり、浄土真宗では用いていません。
般若心経は、自ら智慧を磨いて修行する先の、悟りや成仏を求める経典です。聖道仏教はこれを経典としますが、自力を頼むなら厳しい修行に耐えることにもなり、簡単な道ではありません。つまり、般若心経は修行を行わなければ成仏できないという考えとともにあるお経ということです。
浄土真宗では、般若心経を経典とせず、代わりに「浄土三部経」を経典とします。浄土宗の宗祖である法然が「他力本願」での念仏による往生を説き、その弟子であり浄土真宗の宗祖とされる親鸞が「信心」による往生を説きました。
浄土真宗では自力本願ではなく「他力本願」、つまり阿弥陀仏(他力)の衆生救済という本願を頼り、その力を信じる心によって極楽浄土に往生できると説きます。自力での悟りや成仏ではなく阿弥陀仏の本願による往生を頼む浄土真宗では、厳しい修行の教えを内包する般若心経を読経する必要はありません。
ここまでは、浄土真宗では般若心経ではなく浄土三部経を経典とすることを解説しました。浄土三部経とは、大無量寿経、観無量寿経、阿弥陀経という3部の経典です。
浄土真宗では大無量寿経を特に重視しますが、3部のすべてに宗旨との密接な関わりがあります。ここでは、浄土真宗を理解するには不可欠な、浄土三部経の内容について見ていきましょう。
浄土真宗において「大無量寿経(仏説無量寿経)」は、浄土三部経のなかで最も重要とされる経典です。親鸞が語ったところによると、7,000巻ほどある仏教の経典のなかで、釈迦の本心を説いているのは大無量寿経だけだといいます。
阿弥陀仏の本願を説いている大無量寿経は、浄土真宗の宗旨の根幹です。釈迦は大無量寿経のなかで、「自分は阿弥陀仏の本願を説いて衆生救済へ導くために生まれた」とも、「大無量寿経は未来永遠に残る」ともいっています。
つまり、阿弥陀仏の本願は仏教の根幹です。これを頼って衆生救済を説く浄土真宗にとって、大無量寿経は最も尊い経典といえます。
「観無量寿経(観経)」は、釈迦と同時代に生きたマガダ国のビンバシャラ王の妃、「韋提希(いだいけ)夫人」に向けた説法を表す経典です。
韋提希夫人が息子の阿闍世(あじゃせ)太子によって牢獄に閉じ込められたとき、釈迦は大衆に向けて「法華経」の説法をしていました。法華経は、誰もが平等に仏になりうることや、この世(娑婆世界)では永遠の寿命をもつ仏が衆生を救済に導いていることを説く経典です。
牢獄に閉じ込められている韋提希夫人に気づいた釈迦は、法華経を説くのをやめ、韋提希夫人に向けて阿弥陀仏の本願と極楽浄土に往生することを説きました。その内容を示したものが観無量寿経です。
「阿弥陀経」は、サンスクリット語で「スカーヴァティー・ヴィユーハ」といい、原題は大無量寿経と同タイトルです。このため、大無量寿経を「大経」、阿弥陀経を「小経」と呼び分けます。
阿弥陀経は、弟子との対話形式ではなく釈迦が自ら説く形で、阿弥陀仏の仏国土である極楽浄土と仏の関わりを説く内容です。極楽浄土はすばらしく阿弥陀仏の「名号(南無阿弥陀仏)」をしっかりともつ大切さや、ほかの仏も推奨していることを説いています。
仏国土をよく知る釈迦は、極楽浄土に往生するべきと衆生に説きますが、釈迦であっても仏国土や仏の話を信じてもらうことは困難だったという結びです。
浄土真宗では、日々の「勤行(ごんぎょう)」の際にも般若心経を唱えません。宗派によって根幹とする経典は異なり、読経をする経典の種類や勤行の作法も違います。ここでは、般若心経を中心に、各宗派での勤行の内容や作法の違いについて見ていきましょう。
仏教系の宗教法人のなかで最多の信者数を誇る「浄土真宗本願寺派」は、親鸞の墓所を発祥とする「本願寺(西本願寺)」を本山とします。
浄土真宗本願寺派では、阿弥陀仏の本願により往生することを頼るため、般若心経の読経は行いません。在家の信者は、上述の浄土三部経を読経します。
毎日の読経を推奨していますが、難しい場合は仏前に座って合掌と礼拝をするだけで構いません。焼香の作法は、仏前に正座して軽くお辞儀をしてから頭にあてず1回だけ行い、合掌と礼拝をします。
阿弥陀仏のみを本尊とする「浄土真宗大谷派」は、東本願寺を本山とする、浄土真宗の主要な宗派のひとつです。浄土真宗大谷派でも他力本願による往生を説くため、般若心経の読経は行いません。
毎日の勤行は、「帰命無量寿如来」で始まる「正信念仏偈(正信偈)」を拝読することです。これは釈迦ではなく親鸞が書いた「信心の偈頌(げじゅ)」であり、読経とはいいません。浄土三部経も勤行に含めますが、困難であれば合掌と礼拝を行います。焼香は頭にいただかず、2回つまむことが通例です。
知恩院を総本山とする「浄土宗」は、親鸞の師にあたる法然を宗祖とする仏教教団です。浄土三部経を根本経典としますが、浄土真宗とは異なり、祈願や食作法の際に般若心経を唱えます。
教義は「専修念仏」を中心とするため、日常生活のなかで、「阿弥陀仏に南無(帰依)する」という意味の「南無阿弥陀仏」を唱え続けることが基本です。
できれば朝には仏前に手を合わせます。経典のなかでも大無量寿経の「四誓偈」を中心に読経し、焼香は心を込めて1回行うのが作法です。勤行が難しい場合は、念仏を10回繰り返す「十念」に代えて構いません。
密教を基盤として空海が開いた「真言宗」は、「東寺(教王護国寺)」を総本山とします。現在では約50の宗派があり、最大のものは「高野山真言宗」です。勤行は供養と礼拝を中心としており、仏壇の「荘厳(姿や飾り)」や作法と、般若心経を重視します。
高野山真言宗の勤行には、合掌と礼拝に始まり回向(えこう)に終わるまでの15の手順があり、それぞれにおいて祈りとしての作法が重要です。焼香は香炉に引いた抹香の上に5種香をおき、線香なら3本を立てます。勤行が難しい場合は、般若心経を含む5つの手順を踏む形です。
日蓮を宗祖とする「日蓮宗」は、身延山の「久遠寺」を総本山とする宗派です。「妙法蓮華経(法華経)」を釈迦の本懐にあたる経典とし、妙法蓮華経に帰依することを意味する「南無妙法蓮華経」と唱えることを重視します。般若心経を含む妙法蓮華経以外の経を唱えることはしません。
勤行は、毎日欠かさず続けることが基本です。妙法蓮華経を仏の言葉であり魂であると考えるため、朝の勤行では一字一句を読み間違えないように、妙法蓮華経をもって読経します。焼香は3回か1回を行い、線香なら1本か3本を使うのが作法です。
最澄を宗祖とする「天台宗」は、比叡山の「延暦寺」を総本山とする宗派です。9世紀初頭に始まり、多くの日本仏教の宗派が天台宗から派生しています。根本経典は法華経であり、般若心経も不可欠です。
天台宗の修行では瞑想法の「止観」を重視しており、この修行のあり方は現代の「朝題目・夕念仏」という勤行につながっています。朝には「観音経」や般若心経の読経を行い、夕方は「自我偈」や「円頓章」を読経するのが代表的な修行法です。
焼香は、親指・人差し指・中指の3本で2回行います。勤行が難しい場合は、般若心経の読経だけで構いません。
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浄土真宗は、阿弥陀仏の本願を信じて往生させてもらう他力本願を宗旨とします。南無阿弥陀仏と唱えるときに、阿弥陀仏に帰依する信心をもつことが重要です。極楽浄土に生まれ変わるためには、祈りも厳しい修行も必要ありません。
現世での肉体はいずれ滅びるとしても、仏国土に生まれ変わる阿弥陀仏の救いを信じてみるのもよいでしょう。
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