葬儀に参列すると帰りに会葬御礼品が配られます。中にはあいさつ状や500円~1,000円くらいのお茶やのりの品物と一緒にお清めの塩が入っていることが一般的です。特に通夜に参列した経験がない人は、お清めの塩を通夜の後でも使うのか知りたいのではないでしょうか。
どのような由来でお清めの塩を使うようになったかを知ると、お清めの塩の正しい使い方や宗派による違いを理解できます。ここでは、お清めの塩を慣習と宗教の視点から解説します。
<この記事の要点>
・お清めの塩は、死や血などの「けがれ」を払うために使用し、玄関の前で胸、背中、足の順に振りかける
・お清めの塩として使用されるのは、海水のみで作られた塩
・仏教ではお清めの塩は必要ないが、神仏習合の影響で仏式の葬儀でも使用されることがある
こんな人におすすめ
通夜で使用される「お清めの塩」について知りたい方
お清めの塩の使い方が知りたい方
お清めの塩を使用しない宗派があることを知りたい方
通夜の後のお清めの塩は、日本では全国的に行われている慣習です。行わない家庭や地域もありますが、お清めの塩の基本的な情報を改めて確認し、なぜ清めるのか、何を清めるのかなどの正しい考え方を解説します。ここでのキーワードは、日本独特の考え方である「けがれ」です。
不浄なものである「けがれ」を払うという考え方は、日本古来の概念で神道に起因します。「けがれ」とは「死」と死に関連する「血」や「悪行」のことです。神道では「死」によって、不幸やよくない何かがまとわりつき連鎖すると考えられています。不幸の連鎖を断ち切るために塩を使うようになりました。
日本には神仏習合の考え方があるので、仏教の葬儀で神道の概念を併用しても特に問題はなく、昔の日本人にとっては自然なことだったようです。一方異なる解釈として、塩が野菜や肉などの食物を腐りにくくする性質を利用して、昔は故人に塩を撒いていたことが由来であるとする説があります。
神道の概念である「けがれ」を清めるための塩なので、ほかの宗教を信仰していたり、無宗教で気にならなかったりする場合はお清めの塩を行う必要はありません。通夜の会場でもお清めの塩を配らなくなってきているので、後は個人の判断でお清めの塩を使うことになります。
日本では神道・仏教の考え方は文化になっていたり慣習化されていたりするので、信仰していなくても塩で清めないと落ち着かない人もいるでしょう。お清めの塩を使うかどうかは個人の自由です。「必ずしなければならない」ものでも、「する必要はまったくない」ものでもないことを覚えておきましょう。
お清めの塩は、海水のみで作られた塩が基本です。これは日本神話の神様が「けがれ」を清めるために海水で体を洗ったことに由来しています。神道で清めに塩と水を使用するのはこの神話のためです。
お清めの塩として購入できる商品は、「伯方の塩」と「瀬戸のほんじお」があります。どちらも相撲の土俵入りで使用されている、海水100%の塩です。調味料としても使用でき、料理の味をおいしくととのえるので、購入しても無駄にはなりません。
もし海水100%の塩を用意できない場合は食塩で代用しましょう。本来は望ましくありませんが、塩を使わないと不安なときは使っても問題ありません。
ここで具体的なお清めの塩の使い方を紹介します。神道に由来することですが、日本の文化にもなっているので、大人の作法のひとつとして知っておくとよいです。使い方はとても簡単ですが、ひとつひとつに神道の考え方による理由があるので細かく確認しましょう。
「けがれ」を家の中に持ち込まないように、家に入る前に塩で清めます。斎場でお清めの塩が配られないこともあるので、自宅で塩を小袋に詰めて携帯するのもおすすめです。もしくは、家にいる家族に塩を持ってきてもらうか、塩入り小袋を軒先やポストに置いておくと、家に入る前にお清めができます。
塩をつまむ前に水で手洗いをすることが推奨されますが、玄関前では手洗いができない場合が多いでしょう。このようなときは、通夜に行く前に手を拭くおしぼりを用意しておくと便利です。
塩の量に決まりはありません。手持ちの塩で全身を振りかけられるように、それぞれの部分にひとつまみ程度を目安に振りかけます。
まず心臓がある胸、次に背中、最後に足の順番に振りかけます。塩を振る順番があるのは、心臓を起点に血の流れとともに「けがれ」が全身をめぐると考えられているからです。上半身を先に、下半身を後に塩を振るイメージなら覚えやすいでしょう。
塩を体に振る順番は大切なことなので、注意しながら行います。配られたお清めの塩は、その場ですべて使い切ってしまいましょう。
服に付いた「けがれ」が移った塩を全部足もとへ払い落としましょう。払い落とさず家の中に入ると、塩に移った「けがれ」も一緒に入ることになりますので、お清めの効果がなくなると考えられています。
足もとだけに振りかける地域や家庭もありますが、問題ありません。それぞれの考え方にそって行いましょう。このときもお清めの塩は使い切ります。
最後の工程である、足もとに落ちた塩を踏みつけてから家の中に入ります。踏みつけて「けがれ」の悪い連鎖を断ち切る考え方によるものなので、忘れずに塩を踏んで家に入りましょう。注意しなくても塩を振り払ってから歩けば、塩を踏みつけていることになるので特別気を付けなくても問題ありません。
死や血などの「けがれ」の概念は神道特有のものです。不吉なものに触れるとけがれの邪気にまとわりつかれるので、塩を主に使用し払い清めます。
神道だけの概念なのでほかの宗教にはこの考え方はあてはまりません。ここでは3つの宗教・宗派をピックアップし「死」に対しての考え方を解説します。
仏教での死は成仏、文字とおり仏に成ることですので、死をけがれとして見ていません。輪廻転生の概念で、生と死を二極化せずひとつの流れとして見ています。死は次の世界で生まれ変わることであり、その世界で徳を積めばよい世界へ行ける教えです。そのため本来であれば、仏式の葬儀にお清めの塩は必要ありません。
日本古来の神仏習合の考え方によって、仏式の葬儀でもお清めの塩を配る風習が残りました。神道や仏教の考え方によって生じた、長い期間をかけて蓄積された風習・慣習が、仏式葬儀でのお清めの塩になったと考えてよいでしょう。
仏教の中でもお清めの塩を強く否定しているのが浄土真宗です。人を惑わす迷信や奇習のひとつとして、故人をけがれと見なすようなお清めの塩は失礼にあたり、必要ないものであるとしています。浄土真宗の葬儀では塩は配られませんので、気になる人は自宅前で清めの儀式ができるように密かにお清めの塩を持参しましょう。
身近な人の死を厳粛に受け止め、故人を多くの人と偲び極楽浄土の世界へ静かに送り出すことを大切にしているのが仏教です。浄土真宗の葬儀では、その考え方に敬意をもって参列するようにしましょう。
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キリスト教では、死後一度よみがえるという復活の概念のため土葬が主流です。少数派ですが火葬をするキリスト教徒もいます。
キリスト教の教えを信じるものは天国へ、信じないものは地獄へ行く考え方です。そもそも死を含めた万事が神の意志により起こることとされていますので、死を悪いこと、けがれと見なすことはありません。死に対する考え方がまったく異なると言えます。
キリスト教の葬儀でも、けがれの概念がないのでお清めの塩は配られません。キリスト教の葬儀に参列することがあれば、教義に敬意をもって故人を送り出しましょう。
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お清めの塩は神道に由来する、死によってもたらされる「けがれ」を清める行いです。昔からの神仏習合の風習で、お清めの塩をする多くの仏式の葬儀がありますが、教義や宗教の違いからお清めの塩を配らない葬儀も増えてきました。
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