法事の際は、弔意を示すために正しい身だしなみで参列するのがマナーです。身だしなみを整えるにあたり、数珠も用意したほうがよいのかと悩む方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、法事における数珠の必要性やマナーを紹介します。宗派に合った数珠の選び方や素材・色、房に関する知識を身に付ければ、失礼のない身だしなみで法事に参列できるでしょう。後半では数珠の持ち方、持参時の注意点、手入れと保管方法についても解説します。
<この記事の要点>
・数珠の貸し借りは仏教の考えではふさわしくないため、自身の数珠を持参するのがマナー
・略式数珠は幅広い宗派で使用でき、本式数珠は宗派ごとに形や特徴が異なる
・数珠は基本的に片手で持つときは左手で、房を下にして持つ
こんな人におすすめ
法事に参列する予定のある方
法事の数珠について知りたい方
数珠の必要性やマナーを押さえておきたい方
仏式の葬儀や法事では、数珠の持参が求められます。数珠にはさまざまなマナーがあるため、注意が必要です。
例えば、法具である数珠は個人間での貸し借りはできません。数珠がないからといって、数珠に似たブレスレットで代用するのも不適切な行為です。ここでは、法事における数珠の必要性や知識の他、基本的なマナーについて解説します。
葬儀や法事において、読経や焼香のときに使う法具が数珠です。数珠を介して仏様とつながると考えられているため、仏教の行事では欠かせません。数珠には多種多様な形・大きさがあり、宗派によって正式な名称も異なります。
ただし、主玉(おもだま)・親玉(おやだま)・天玉(てんだま)・房(ふさ)といったパーツは同じです。たとえ見た目が似ていたとしても、数珠の構成要素を満たさないブレスレットは数珠の代わりにはなりません。
数珠には所有者の念がこもっているとされています。仏教では所有者の分身・身代わりと捉えられ、お守りや厄よけとしての性質を持つ法具です。したがって、数珠の貸し借りは仏教の考え方やマナーの観点からふさわしくありません。葬儀だけでなく、故人をしのぶ法事でも自身の数珠を持参するのがマナーです。
年齢とともに葬儀や法事に参列する機会は増えるでしょう。信仰する宗教・宗派が特にない場合も、ある程度の年齢になったらマナーとして数珠を持っておくと安心です。略式の数珠は幅広い宗派に適しているため、いざというときに役立ちます。
数珠は仏教における法具です。仏教以外の宗教における儀式では、数珠を用意する必要はありません。キリスト教や神道にも法事に相当する儀式がありますが、他宗教の法具は使わないためです。
「仏教以外の宗教を信仰している」という理由で数珠を持っていない場合、無理に用意しなくても構いません。ただし、仏式の葬儀や法事に参列する機会が多いのであれば、信仰する宗教にかかわらずマナーとして略式の数珠を持っていてもよいでしょう。
数珠はさまざまな種類がありますが、いずれも男性用と女性用で特徴が大きく異なります。男性が女性用の数珠を使うのはマナー違反のため注意しましょう。大きな違いとしては、数珠を構成する玉や数珠自体の大きさが挙げられます。
使用している玉は男性用が直径10mm以上、女性用が直径8mm以下である場合がほとんどです。玉の大きさには幅があるため、手の大きさや使い勝手に応じて自身に合った数珠を選ぶとよいでしょう。
数珠は略式と本式の2種類に分けられます。略式は幅広い宗派に適したタイプです。一方、本式は宗派によって形や特徴に細かな違いがあります。それぞれ用途に合った使い分けがおすすめです。略式と本式の特徴や相違点、目的に応じた選び方について解説します。
略式数珠は別名「片手念珠」と呼ばれる一重の数珠です。最大の特徴は、宗派に関係なく幅広いシーンで使えることでしょう。さまざまな素材・色から選べる点も魅力のひとつです。
また、携帯しやすさを優先し、少ない玉数で作られています。正式な玉数は、煩悩の数と同じ108個です。一方、略式は108個の半分の54個、3分の1に当たる36個のものが多くを占めます。男性用と女性用それぞれの主流のサイズは以下の通りです。
男性用 | 22玉・20玉・18玉 (玉数が多いほど1玉当たりの直径が小さく、18玉が基本サイズ) |
女性用 | 6mm・7mm・8mm(8mmが基本サイズ) |
本式数珠は、形や大きさなど細かい特徴が宗派ごとに異なる数珠のことです。具体的には、サイズや房の数・形状に差があります。一方、略式よりも格式が高く、二重にして使う点は共通です。本式も男性用と女性用があります。主な宗派ごとの特徴は以下の通りです。
真言宗 | 振分数珠と呼ばれ、男女で形は共通するものの大きさが異なる |
浄土宗 | 二連の数珠で金属の輪が付属する点は男女共通だが、大きさが異なる |
浄土真宗 | 男性用は紐房付きの片手念珠、女性用は如連結びと呼ばれる房が特徴の門徒数珠 |
日蓮宗 | 5つの丸い房(菊房)が特徴的な法華数珠。男女で形は共通するものの大きさが違う |
曹洞宗 | 金属の輪が付属する看経念珠。男性用には紐房、女性用には頭付房が付属する |
臨済宗 | 金属の輪が付属しない看経念珠。男性用には紐房が、女性用には頭付房が付属する |
天台宗 | そろばんの玉のような平らな玉が特徴。男女で形は共通するものの大きさが異なる |
葬儀や法事に持参するために購入するのであれば、宗派を問わず幅広く使用できる略式をおすすめします。仏教以外を信仰している方や無宗教の方にも適しているでしょう。初めて数珠を購入する際に、どのような種類や形を選べばよいか分からない方も略式を選択するのが賢明です。
信仰する宗派がある方は、本式の数珠も候補になり得るでしょう。信仰する宗派とは異なる宗派の葬儀や法事に持参しても問題ありません。
ただし、別の宗派に本式を持参するのが気になるのであれば、本式とは別に略式を持っているとさまざまなシーンに対応できます。同じ宗派の家族や親族の葬儀・法事では本式、知人・友人あるいは仕事関係の参列では略式と使い分けられるためです。まずは略式を購入し、後から必要に応じて本式を検討しても遅くはないでしょう。
使用する素材により、数珠の質感や色は多岐にわたります。略式の房は多くの色やデザインがあり、好みや予算に合わせて自由なチョイスが可能です。一方、本式は宗派や地域によって適した色があるため注意しましょう。ここでは、お気に入りの数珠を探す際に役立つ素材の種類や房の形状といった特徴について解説します。
数珠の素材に関しては宗派ごとの決まりはありません。したがって、好みや予算に合わせた素材の選択が可能です。主な素材として、天然石・菩提(ぼだい)樹・木・香木があります。具体的な素材は以下の通りです。
天然石 | 翡翠(ひすい)、水晶、トルコ石、タイガーアイ(虎目石)、オニキス、ローズクォーツ |
菩提樹 (木の実) |
星月(せいげつ)菩提樹、天竺(てんじく)菩提樹、鳳眼(ほうがん)菩提樹、金剛菩提樹 |
木 | ウメ、コクタン(黒檀)、シタン(紫檀)、ツゲ(柘植)、タガヤサン(鉄刀木)、クワ |
香木 | ビャクダン(白檀)、ジンコウ(沈香)、キャラ(伽羅) |
その他 | 琥珀(こはく)、サンゴ、真珠、象牙、ガラス、合成樹脂 |
天然石は、素材特有の色合いや質感を楽しめます。他の素材よりも選択肢の幅が広いため、天然石が持つ意味(仕事運アップなど)で選んでもよいでしょう。木や香木を用いた数珠は軽く使いやすいだけでなく、使うほどに風合いが増す点が魅力です。比較的堅い香木では、表面に彫刻を施した数珠もあります。
お釈迦(しゃか)様が悟りを開いた場所として知られる菩提樹は、数多くの経典で重きを置かれている素材です。菩提樹の数珠は、木材ではなく木の実自体を玉として使用します。菩提樹の種類によって質感や色味はさまざまです。
基本的に数珠の色は好みで選べますが、地域や宗派によって考え方が異なるため、注意が必要です。同じ宗派の方や近くに住む家族や親族、専門的な知識が豊富な葬儀会社に相談すると失敗が少ないでしょう。
特に決まりがないと確認できたら、お気に入りの色を選びます。長年にわたって使う数珠を選ぶ際には、愛着を持てるかどうかも大切な要素です。
数珠の房は、代表的な頭付(かしらつき)房以外にも、菊梵天(きくぼんてん)・ひも房・かがり房・手まり房といった種類があります。それぞれの特徴は以下の通りです。
頭付房 | 基本的な形状で、編み込んで作られた頭から糸をよった房が出ているタイプ |
菊梵天 | 房を切りそろえて整えたふわふわとした質感と球体のような形が特徴 |
ひも房 | 主に2色の打ちひもを使用する。他よりも房の本数が少なく、房自体が長い |
かがり房 | 形状は頭付房に似ている。頭の編み込み部分の装飾性が増したタイプ |
手まり房 | 利休房とも呼ばれ、手まりのように糸を編み込んだ球体のような形が特徴。房の絡まりに悩まされない |
略式は、使いやすさやデザインを優先して房の種類や色を選べます。一方、本式は宗派や地域ごとに房の種類や色が決まっていたり、意味が込められていたりするため、選ぶ際には気を付けなければなりません。房の種類・色に関しても、事前に確認しておいたほうが安心できるでしょう。
廉価品から高級品まで幅広い価格の数珠が市場には出回っていますが、「高価な数珠=多くの恵みが期待できる数珠」ではありません。使用する素材の希少性、加工技術の手間・品質を考慮した上で、数珠の価格を設定しているだけです。
したがって、予算に合った素材や品質の数珠を選べば問題ないでしょう。数珠選びは価格にこだわるよりも、使い続けたいと思えるものを見つけることが大切です。
法事に参列する際は、数珠の持ち方にも気を付けなければなりません。宗派によって細かな作法は異なるものの、基本は共通です。マナーを事前に知っておけば、法事当日も安心して参列できるでしょう。ここでは、数珠の基本的な持ち方や持ち運び方を紹介します。
数珠の持ち方は、使用する場面によって細かな作法が異なります。主なシーン別の持ち方は以下の通りです。基本的に、「片手で持つときは左手」「房を下にして持つ」と覚えればよいでしょう。
場面 | 数珠の持ち方・掛け方 |
着席時で数珠を使わないとき | 左手首に掛ける |
移動するとき | 房を下にして、左手で持つ |
焼香中 | 左手の親指に掛ける(右手で抹香をつまむ) |
合掌・読経のとき | 房を下にした状態で合掌した両手の親指に掛ける 左手の親指に掛けたまま、右手を添えて合掌する |
また、宗派ごとに数珠の作法は細かく決まっています。持ち方や使い方に不安がある方は、事前に家族や親族に確認すると安心です。なお、焼香を上げる直前に慌てて取り出すのではなく、法事開始時には左手に数珠を用意しておきましょう。
法事の最中は、よほどのことがない限り、常に数珠を身に着けておくのがマナーです。畳や椅子の上に放置するといったぞんざいな扱いは、「数珠=自身の分身」という考えにも適していません。やむを得ずに数珠を手放す場合は、数珠袋に入れた上でバッグに収めます。椅子の上に置くのであれば、ハンカチを敷いた上に数珠を置きましょう。
法事に数珠を持参するときは、数珠袋の使用をおすすめします。数珠を直接バッグに入れると、傷が付いたり房に癖が付いたりするリスクが高まるためです。数珠をきれいに使い続けるためにも、数珠の購入時には数珠袋も一緒に用意しましょう。
自身の分身と考える数珠は、厄よけやお守りといった側面を持つため、同じものを長く使い続けたほうがよいとされています。使用後の手入れと正しい保管方法を学び、数珠を長持ちさせましょう。ここでは、数珠の手入れや保管方法について解説します。
使用後の数珠は、めがね拭きのような柔らかい布で、汗や汚れ、ホコリを優しく拭き取りましょう。玉や房の素材は多岐にわたり、組み合わせは多種多様です。どのような素材であったとしても、法具である以上は丁寧な手入れを心掛けなければなりません。洗剤を用いた洗浄や水洗いはNGです。
数珠の房は癖が付きやすく、一度癖が付くと元に戻りにくい傾向があるため、保管する際は注意が必要です。房をなでてきれいに整えた上で、数珠が入っていた箱もしくは専用の箱に入れましょう。数珠掛けを活用するのも癖を防げる保管方法です。
また、木や菩提(ぼだい)樹の木の実で作られた数珠は、防虫剤を一緒に入れると虫食いのリスクを減らせます。保管場所は、直射日光が当たらず、急激な温度変化がない場所(たんすや仏壇の引き出し)がおすすめです。
正しく手入れや保管をして大切に使っていても、経年劣化によって汚れや傷が次第に目立つようになります。他にも何らかの変化が気になり始めたら、なるべく早く専門店に修理やメンテナンスを依頼しましょう。特に、玉を通す中糸や房は傷みやすいため注意が必要です。
品質が良い数珠は、メンテナンスや修理によって長く使い続けられます。例えば、天然石のような希少性の高い素材を使用し、凝った細工が施された数珠には、アフターサービスが付属することもあるでしょう。一方、廉価品の数珠は修理に出すよりも買い替えたほうが安く済む場合もあります。
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故人を偲んで供養する法事において、数珠は欠かせません。数珠の貸し借りはマナー違反であるため、それぞれが数珠を用意する必要があります。葬儀や法事に参列する機会が多い方は、数珠を持っておくと重宝するでしょう。
宗派や地域の慣習に合った数珠の選び方が分からない場合、葬儀会社へ相談するのもひとつの方法です。数珠選びの他にも、葬儀や法事に関して不安がある方は、「小さなお葬式」にご相談ください。専門的な知識を持つスタッフがサポートし、心強い味方になります。
四十九日法要は、故人が亡くなってから48日目に執り行います。ホゥ。