円満に檀家をやめるための礼儀・手順・費用｜清算前に知るべきこと

檀家をやめるとどうなる？

日本では、先祖代々のお墓を寺院に管理してもらっていることが多いでしょう。しかし、核家族化が進んでいる今、「檀家」ときいてもピンとこない方はいるかもしれません。

まずは菩提寺と檀家の関係性や、檀家をやめることで、どんなメリット・デメリットがあるのか見ていきましょう。

菩提寺と檀家はどういう関係なのか

檀家とは、特定の寺院に所属し、お布施や寄付などで寺院を経済的支援する家を指します。浄土真宗では檀家ではなく「門徒」と呼ぶ場合もあります。そして、檀家が所属する寺院を「菩提寺」といいます。

菩提寺は、檀家から経済的支援をしてもらう見返りとして、法事・法要を優先的に対応、仏事に関する相談、お墓の管理などを行います。

檀家は先祖代々から入檀している可能性があるため、「自身が檀家かどうか分からない」という場合は親族に尋ねてみるのもよいかもしれません。

檀家をやめた後は？失うメリットは？

檀家は法事や法要などの仏事に関して、さまざまなサポートが受けられます。あらゆる仏事について、菩提寺の住職に相談できる安心感は大きいでしょう。また、法要の依頼が殺到するお盆などの時期に優先的に対応してもらえる点や、手厚い供養を受けられる点も、檀家のメリットです。

檀家をやめたあとは、経済的負担は軽減されますが、自身で仏事を執り行わなければいけません。しかし、最近では檀家にならずとも供養や法要を行ってもらえることも多いため、離檀することに大きな問題はないでしょう。

檀家をやめる人がいるのはなぜ？目立つ理由は3つ

これから檀家になろうと考えている人のなかには「檀家をやめる人がいるのはなぜ？」と気になる人もいるのではないでしょうか。檀家をやめる主な理由として、以下の3つが挙げられます。

転居

菩提寺から遠く離れた場所に転居する際、檀家をやめる人が多いのが現状です。お葬式や法要、お墓参りで訪れる際、菩提寺までの距離が遠いと負担が大きいため、離檀するケースが増えています。

継承者不在

跡を継ぐ者がいない場合や、婚家の宗派に従わなければならないときにお墓を撤去せざるを得なくなり、離檀する人もいます。

経済的理由

寺院は、檀家のお布施や寄付によって支えられています。そのため、お布施の他にも寺院を修繕したり改修したりする際の寄付を求められることもあります。

檀家料を納め続ける必要があることが、経済的負担になることもあるでしょう。また、金銭的事情によりお墓が維持できない場合に墓じまいを選択する人もいるようです。

状況によりお墓のことも一緒に考える

離檀する場合、状況によってはお墓を移動させる必要が生じます。お墓を別の寺院に移動するには、お墓の撤去や墓地の返還、改葬の手続きなどについても考えなければいけません。ここからは、離檀したあとのお墓の取り扱いについて解説します。

菩提寺に墓地があるときは要注意

必ずしも菩提寺にお墓があるとは限りませんが、菩提寺の墓地にお墓がある場合には、離壇とともに墓じまいをするのが基本です。ただし、寺院が経営し、檀家でなくても利用できる霊園は異なります。

墓じまいとは？墓地は返すもの

墓じまいとは、お墓を撤去したり、お墓を別の場所に移転して改葬したりして、墓地を返還することを言います。規則により、離檀する寺院にはお墓を置いておけない場合があるため、然るべき手続きを踏んで墓地を更地にし、返還する必要があるのです。

お墓から遺骨を出して改葬するには、墓地がある自治体の「改葬許可証」や、改葬先の「受入証明書」が必要になったりするため、事前に確認しておきましょう。

墓じまいをしたあとはどうする？

墓じまいしたあとの流れについて、いくつかの選択肢があります。親族とも相談したうえで、どのように供養するかを決めましょう。

合祀墓

合祀墓（ごうしぼ）とは、読んで字の如く、合同で祀られるお墓を指します。遺骨を骨壷から取り出し、血縁関係のない第三者の遺骨と一緒に埋葬します。

合祀墓は、お墓の管理をする後継ぎがいない場合や、お墓にお金をかける余裕がないときに選ばれることが増えています。

散骨

散骨とは、遺骨を細かく砕き、故人の思い出の地に撒くことを言います。ただし、無闇に遺骨を撒いて良いわけではありません。他人の土地や、人がいる海などに撒いたりするとトラブルにつながる可能性もあります。

「散骨を希望するけど、方法や場所の選定に不安が残る」という方は、専門業者に依頼するとよいでしょう。

永代供養墓

永代供養（えいたいくよう）とは、お墓参りができない遺族に代わり、霊園や寺院が遺骨を管理したり供養したりすることを指します。ただし、永代といっても「33回忌まで」といった期限を設けているケースもあるため、事前に確認しましょう。

檀家をやめるには？離檀の流れ

離檀の流れは寺院によって対応が異なり、さまざまなケースがあります。檀家をやめる際の一連の流れを一例としてご紹介しますので、お役立てください。

離壇

檀家をやめる際は、まず親族に相談しましょう。檀家は、先祖代々から続いていることも多く、親族の承諾なしにやめるとトラブルにつながりかねません。親族と寺院との関係性も鑑みたうえで離檀を進める必要があるため、まずは親族からの承諾を得ましょう。親族から了承を得られたら、寺院に離檀を検討している旨を相談すると良いでしょう。

墓じまい

菩提寺にお墓がある際は、墓じまいをします。お墓の解体・撤去などを代行してくれる石材店や専門業社に依頼するとスムーズです。ただし、寺院によっては依頼できる業者が限定されている場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。

永代供養墓

永代供養墓には、お墓を建てる土地や墓石が不要な埋葬方法もあり、お墓にお金をかけられない事情がある方や、子孫の負担を減らしたい方などにはおすすめの方法です。

離壇料？檀家をやめるときの費用

檀家をやめるときの費用はいくらかかるのか、不安に思っている人は多いのではないでしょうか。離檀料の他に、墓跡の解体・撤去や改葬儀の際にも費用が発生します。「想像より高くついてしまった」という失敗を避けるためにも、各工程で発生する費用の相場感を把握しておきましょう。

ここからは、檀家をやめる際にかかる費用と具体的にどんな工程が生じるのかについて詳しく見ていきます。

離壇料の意味と金額の目安

「離檀料」とは檀家をやめる際に、菩提寺にお渡しするものです。離檀料といっても、お布施と意味は変わりません。これまでお世話になった気持ちとしてお包みするものです。

離檀料の相場は5〜20万円といわれていますが、所属する寺院によって離檀料の金額は異なるため、一概には言えません。離檀料が必要な寺院もあれば、離檀料不要という寺院もあります。

墓石の解体撤去にかかる費用

墓石の撤去、土地を整備する料金は、10〜20万円が相場といわれています。依頼する石材店や、墓石がある土地の大きさ・形状によっても異なります。そのため、複数の石材店に見積もりを依頼してみるのとよいでしょう。

遺骨の改葬で発生する費用

改葬では、遺骨の取り出し、墓石運搬、墓石建立、埋骨という手順を踏まなければならず、各工程に費用が発生します。利用する石材店や業者にもよりますが、改葬にかかる全体の費用は200〜300万円だと考えておくとよいでしょう。

閉眼供養と開眼法要の費用

閉眼供養（へいげんくよう）とは、お墓を閉じる前に行う法要のことで、「魂を抜く」という意味を持ちます。そして、お墓を移動した後に「魂を入れる」ことを開眼供養（かいげんくよう）と呼びます。

お墓から遺骨を取り出す場合には供養の意味を込めて行い、閉眼供養と開眼法要の費用の相場は、3〜10万円です。ただし、お墓を移動させないのであれば開眼供養は必要ありません。

檀家をやめる際のトラブル事例

ごくまれに、離檀を巡り寺院とトラブルになるケースが見受けられます。「離檀料として数百万円を請求された」といったお金にまつわる悪質なトラブルがあります。

また、改葬には寺院の証明印を押印した埋葬証明書が必要になりますが、「離檀料を支払うまで埋葬証明書を発行しない」という寺院もあるようです。

こういったトラブルを回避するためには、一方的な離檀の申し出は避け、寺院との意思疎通を図っておくことが大切です。

あまりにも法外な金額を要求され、話し合いにも応じてもらえない場合には、周囲や弁護士に相談するのがよいでしょう。

寺院への礼を尽くして終わる

檀家をやめる際に大切なのは、先祖代々お世話になった寺院へお礼の気持ちを尽くすことです。ここからは、離檀に際しての菩提寺との関係性や考え方について見ていきましょう。

先祖代々続くお付き合いの終点

離檀は、先祖代々続くお付き合いの終点を指します。菩提寺と檀家の関係は一時のことではなく、先祖代々お世話になってきたことに対する御礼をしてから、離壇することを忘れないようにしましょう。

個人ではなく「家」としての手続き

檀家は「個人」ではなく「家」としてのお付き合いです。離檀する際も「家」として檀家をやめることになります。

そのため、家族・親族間でしっかりと話し合い、家族や親族が納得してから離檀に向けて動き出すことが大切です。

一方的な通知ではなく事前の相談を

お互いの関係を良好に閉じるため、一方的な通知は避けましょう。いきなり離檀したい旨を伝えるのではなく、理由を添えて離檀を検討している旨を相談するのがスムーズです。

寺院の運営は、檀家からのお布施や寄付が大きな柱となっているので、一方的な「離檀」の申し出には良い印象を持たないためです。

寺院に出向いて挨拶するのが礼儀

離檀する際は、やむを得ない事情を除いて、寺院に出向いて挨拶することがマナーです。先祖代々お世話になってきたこと、お墓を守り続けていただいたことへの感謝を、直接伝えましょう。

手紙で挨拶するときの書き方と文例

離壇するにあたり、寺院に御礼状を送るときの書き方や文例を紹介します。

謹啓
時下、貴職におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申しあげます。
長年にわたり、〇〇家菩提寺としてご先祖様をお守りいただきまして、心より御礼申し上げます。

このたび、転居に伴い近隣の霊園で永代供養をして頂くこととなりました。お墓は変わりますが、今後とも変わらずご先祖をお守り供養をして頂ければ幸いに存じます。
末筆ではございますが、ご住職のご健勝をご祈念し改葬のご報告とさせて頂きます。

敬具
平成〇年〇月〇日

このように、先祖代々からお世話になった気持ちを込めて、ここでは横書きで記載していますが、縦書きで封書を出すとよいでしょう。

檀家をやめる前に考えておきたいこと

檀家をやめる前に、「本当に離檀してよいのか」を考えてみましょう。自分ひとりのことだけではなく、家族・親族・子孫のこと、そして檀家でいることのメリット・デメリットと、今一度向き合ってみましょう。

家族、親族、そして子孫のこと

菩提寺とは、「個人」での付き合いではなく「家」としての付き合いです。自身の家族や親族のこと、そして子供や孫、ひ孫の世代までのことを考えたうえで充分に相談し合い、納得のいく結論を出しましょう。

檀家だからこそ得られる恩恵

離檀する前に、檀家であり続けることの意味やメリットについて改めて考えることは大切です。檀家であれば、仏事の一切を専門家に任せることができます。

離檀すると仏事に関する手配や進行を自身で行わなければならず、心身ともに疲弊してしまうことがあるかもしれません。そういったデメリットも想定したうえで検討してみましょう。

遠方であっても続く関係もある

遠方への転居による離檀を検討している方は、あらゆる選択肢を検討してみましょう。遠方であっても、葬儀や法事には駆け付けてくださる寺院はあります。

また、最近はオンラインでの法事、供養代行といった選択肢も増えてきました。檀家と菩提寺における「距離の問題」を解決する選択肢は多くあるのです。

菩提寺が無くなった場合の葬儀や法事は？

離檀を検討している方のなかには、「菩提寺が無くなった場合の葬儀や法事は、どのように行えばよいのか」と不安に思っている方もいるのではないでしょうか。

ここからは、離檀したあとの葬儀や法要についての選択肢を紹介します。

無宗教や偲ぶ会として執り行う

葬儀は、檀家でなくとも「無宗教葬」として行う方法があります。無宗教葬は、宗教的な形式を取らず、故人の好みに合わせてアレンジできるため「自由葬」とも呼ばれます。

宗教的な儀式を行わないため、僧侶を招く必要もありません。故人の好きだった音楽をかけたり、食事を用意したりと、自由に執り行えるのが特徴です。

また、「偲ぶ会」として開催する方法もあります。「偲ぶ会」は、故人とのお別れ会のようなイメージです。家族や親しい身内、友人を招き、故人の好みや施主の意向に合わせて執り行うことができます。偲ぶ会も、宗教的な儀式は必要なく、「会食形式」や「セレモニー形式」といった方法で開催できます。

小さなお葬式では無宗教での葬儀もご案内しております。「無宗教葬の流れが分からない」「離檀したばかりで葬儀や法事が不安」という方は、お気軽にご相談ください。

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まとめ

円満に離檀するためには、「礼の気持ちを尽くすこと」「一方的な離檀の通達はしないこと」が大切です。

檀家は「個人」で所属するのではなく、「家」としての関係性であることも忘れないようにしましょう。親族と相談のうえ、子孫のことまでを考えてから結論を出すことをおすすめします。

墓じまいや改葬を行う際は、各工程の手続きや費用に関する知識も得ることでスムーズに進行することができるでしょう。

葬儀・法要に関する疑問があれば、「小さなお葬式」へお問い合わせください。24時間365日専門スタッフがお客様のサポートをさせていただきます。