葬儀では、普段ほとんど馴染みの無い風習やしきたりに接することがあり、戸惑うことも多いでしょう。守り刀と呼ばれるものもそのひとつに挙げられます。逆さ湯・神棚封じ・六文銭・香典・別れ飯などと同じように、守り刀も全国各地で見られる風習です。
本記事を読むことで、葬儀で用いる守り刀の意味や作法について知ることができます。関連する知識も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
<この記事の要点>
・守り刀とは故人のために用意する葬祭用具で、魔除けやお祓いの意味がある
・守り刀を置く場所は、故人の胸の上または枕元のいずれかが一般的
・安置場所から葬儀会場に移動する際は、故人と共に守り刀も一緒に移動する
こんな人におすすめ
葬儀の「守り刀」とは何かを知りたい方
守り刀の作法に関する基本的知識を知りたい方
守り刀の入手場所について知りたい方
人は意味が分かると心持ちも変わってくるものと言われます。葬儀という非日常の世界であっても、それは同じです。亡くなった方のためにできる、限られたものごとのひとつに守り刀の風習が存在します。
守り刀の意味を知り、気持ちを込めて用意したいものです。そこで、まずは守り刀の意味や位置づけについて紹介します。
守り刀(まもりがたな)とは、亡くなった方のために用意する葬祭用具です。一般的には、20cm~25cmほどの短刀が用意されます。白木無垢の柄(つか)と鞘(さや)で、鍔(つば)無しの短刀であることが多いでしょう。刀袋に納められている形式も広く見られます。刀袋は刺繍で装飾が施された色鮮やかなものもあり、白色とは限りません。
地域によっては短刀ではなく、剃刀(かみそり)・はさみ・包丁・のこぎりなどの刃物を用いることもあります。
逝去後、亡くなった方のために守り刀を用意する風習は、全国各地で見られます。作法については地域ごとに差異があるものの、刃物を用意するという点ではほぼ共通といえるでしょう。
守り刀を用意する目的のひとつは、魔除け・お祓いです。日本固有の宗教である神道では、死を穢れ(けがれ)として捉えます。穢れは魔物、魑魅魍魎(ちみもうりょう)を呼び寄せる悪しきものです。また、穢れは不浄なるものとして忌避されます。
刀には、魔物や魑魅魍魎を遠ざけ、穢れを祓い浄める力があるという信仰があります。そこから守り刀の風習が生まれたのでしょう。古来の神道の影響を受けた風習ともいえそうです。
宗派によるものの、仏教では故人は死出の旅路に出立するという考え方があります。道すがら邪鬼や悪霊に遭遇するかもしれません。守り刀は、護身用に携行する刀、つまり懐刀(ふところがたな)という意味合いを持つということです。
仏式葬儀では、枕飯や枕団子をお供えするとともに、故人に経帷子・手甲・脚絆・足袋・草履などの死装束を旅支度として整えます。守り刀は旅支度のひとつとも考えられるでしょう。
浄土真宗は、阿弥陀如来の導きにより、亡くなった方はただちに成仏するという考え方です。これを「往生即成仏(おうじょうそくじょうぶつ)」といいます。
したがって、故人は死してすでに清らかな仏の身になっているので、浄土真宗においては魔除けやお祓いをする、護身用の刀を携行するといったことは不要とされます。
また浄土真宗では、亡くなられた人の胸元や棺の上に刀ではなく、修多羅(しゅたら)と呼ばれる法具を置くことがあります。
守り刀は宗教の教義によるものではなく、習俗としての意味合いを強く持つため、無宗教で葬儀を行う場合であっても地域事情を鑑みたうえで判断する必要があります。
また、同様の事由から、本来は家族葬・一般葬・直葬といった葬儀形態によって守り刀の有無を判断するものでもありません。守り刀の取り扱いについては、地域事情に詳しい葬儀業者の案内を受けながら対応するのが無難でしょう。
神道では、剣が大切な役割を担うのをご存じでしょうか。歴代天皇の皇位継承のしるしとされる三種の神器があります。三種の神器とは、八咫鏡(やたのかがみ)、草薙剣(くさなぎのつるぎ)、八坂瓊勾玉(やさかにのまがたま)です。神道に基づいて実施される多くの儀式で、神の依代として鏡、剣、勾玉が祀られます。
なかには三種の神器の剣と、守り刀とを混同してしまうケースもあるようです。一方は祀られるもの、もう一方は故人を守るものであるため、意味合いが異なることに注意しましょう。なお、日本では刀といえば片刃を指し、剣は両刃を指すというように区別することが一般的でもあります。
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葬儀は、地域性の強い儀式です。一連の流れのなかで、自分にとっての当たり前が、他所では通用しないことが多々あるでしょう。守り刀に関してはどうでしょうか。故人とのお別れをしなければならない最後の時です。作法についても、失礼のないよう基本的な知識を心得ておきましょう。
置く場所は、亡くなられた人の胸の上、または枕元のいずれかが一般的です。胸の上に置くのが通例の地域もあれば、枕元におくのが通例の地域もある、という状況となっています。
宗教の教義上、置く場所に明確なきまりはありません。故人を安置する際は、葬儀業者にお任せするのが無難といえるでしょう。
置き方や向きについても、明確なきまりはありませんが、向きについては下記に挙げるパターンが多く見られます。
置く場所 | 刃先の向き |
胸の上 | 刃先を足方向に向ける(若干斜めに置くことも有り) |
枕元 | 枕飾りと平行になる向きに置き、刃先は状況に応じて左右どちらの場合も有り |
原則として、亡くなられた人の顔や胸に刃先を向けないようにしましょう。
地域的な風習と考えられますが、刀は男性が扱うものとするケースも見られます。神棚に穢れが及ぶのを防ぐ目的でする神棚封じでは、親族以外の男性が行うという風習が残っているところもありますが、これに類するものかもしれません。
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守り刀はどこで入手できるのでしょうか。守り刀という名称ですら耳にするのが初めてという人も少ないでしょうし、ましてやどこで調達できるのかなど知る由もないでしょう。
守り刀は葬儀業者が用意することは一般的です。しかし、必ずしもそうとは限りません。ここでは守り刀の入手方法や用意の仕方を確認しておきましょう。
実際のところ、ほとんどのケースにおいて、守り刀は葬儀業者が用意するものです。葬儀一式費用や〇〇プランといったなかに守り刀も含まれている形式が多く見られます。
故人を安置したあと、葬儀業者がドライアイスなどの保冷処置、枕飾りの設営を実施するのに合わせて守り刀も故人の胸の上か枕元に置いてくれることが通例です。
葬儀業者が用意する守り刀にはレンタル品扱いになるものと、購入品扱いになるものとがあります。どちらも通常は模造の短刀ですが、材質はさまざまです。葬儀進行上において、レンタル・購入について気にする人は少ないと考えられますが、予備知識として知っておくとよいでしょう。
遺体の搬送専門業者に故人を自宅まで連れてきてもらう場合など、家族にて守り刀を用意しなければならないケースがあるかもしれません。短刀を常備してある家庭は少ないでしょう。この場合は、ハサミやかみそりといった刃物で代用するのがひとつの手です。
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故人を安置した後、胸の上または枕元に置く刀ですが、葬儀が進行していく中で故人はひとつの場所に留まっているわけではなく、場所を移していくことになります。
地域性もありますので一概にいうのは難しいところですが、葬儀の流れのなかで守り刀をどう移していくのか紹介します。
基本的には故人の遺体の安置後、なるべく早い段階で守り刀を用意します。納棺を実施するまでは故人の胸の上や枕元など、地域のやり方にならって刀を置いたままにしておくことが通例です。
納棺後は、棺のふたの上置くパターン、胸の上に置いたままにするパターン、死装束の胸元に差し込むパターンなどが見られます。
最初の安置場所から通夜や葬儀告別式の会場に移動する際は、故人と共に守り刀も一緒に移動することになります。
たとえば自宅で納棺したのであれば、納棺したあと棺の上に置かれた守り刀もそのまま移動するということです。出棺時も同様に、守り刀は故人と共に移動します。
守り刀も火葬するのかどうかについては、地域の風習や葬儀業者によって対応はさまざまです。一般的には火葬可能な材質の守り刀であれば、亡くなられた人と一緒に炉に入り火葬されることが多いようです。守り刀がレンタル品であれば、炉に入る前に葬儀業者によって回収されることになるでしょう。
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守り刀には、亡くなられた人の護身用、または魔除け・お祓いといった意味合いで用意する風習があります。宗教的なものではなく習俗ですが、浄土真宗では守り刀を置かないきまりのようなものがあります。
守り刀については、用意から設置など葬儀業者の手によって準備されることが多いでしょう。地域によって色々なやり方がありますので、葬儀業者の案内を受けながら進めることをおすすめします。
葬儀では守り刀を含めてさまざまな風習があり、困ってしまうことが多いかもしれません。小さなお葬式では、ちょっとしたお困りごとにも丁寧に応対いたしますので、お問い合わせください。
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