葬式において納棺とは、簡単に表現すれば「亡くなられた人を棺に納めること」です。葬式では「納棺式」と称して執り行われることも多いように、納棺は故人や遺族、親族にとって大切な時間であり、深い意味を持ちます。
本記事を読むことで、納棺を執り行う際や参加する際に、安心して納棺の場に臨めるようになるでしょう。ポイントをひとつずつ確認しながら、ぜひ参考にしてください。
<この記事の要点>
・納棺には「葬式の体裁を整える」「火葬場のルールに合わせる」「グリーフケア」の役割がある
・仏教の納棺式は開式、湯灌の儀、死装束の準備、閉式の順に行う
・納棺式に参加する際は、湯灌や死装束の支度などできるだけ手を添えることがマナー
こんな人におすすめ
納棺の意味・基礎的知識を知りたい方
納棺式の流れを知りたい方
納棺式参加時のマナーについて知りたい方
納棺について理解を深めていくために、最初に基礎となる部分を見ていきましょう。納棺とは、葬式の際に遺体を棺に移すという単純なことではありません。納棺の役割には複数の考え方があり、タイミングや実施する場所もさまざまです。
葬儀業界のプロの中にも、納棺は大事な場面だと受け止めている人が多数います。ここからは納棺の基礎的知識を紹介します。
葬式の形式によって異なる場合もありますが、下記の3点が役割に挙げられます。
1.「葬式の体裁を整える」
2.「火葬場のルールに合わせる」
3.「遺族、親族の心理的回復(グリーフケア)」
「火葬場のルールに合わせる」とは、一般的に火葬場は棺に納めた状態でないと利用できないということです。見落としがちなのが「遺族、親族の心理的回復」でしょう。葬式は、死別を経験した遺族、親族が心理的に回復していくために必要な仕組みである、という考え方です。
故人のために死装束を整えることや、身体を棺に納めることは、死を事実として受け止めていく過程のひとつです。遺族、親族の心が立ち直っていくためにも納棺は大切な役割を担っています。
多いのは通夜式前に行うケースです。なかでも通夜式が開式する数時間前に納棺を実施するケースが多いでしょう。亡くなってから葬式まで数日間開いてしまう場合には、通夜式前日までに納棺を済ませておくケースも少なくありません.
一部では、通夜式は布団に寝かせたままで執り行い、通夜式後に納棺するという慣習の地域も見られます。納棺式の日程を案内する際、もしくは案内を受ける際には通夜式当日とは限らないと理解しておいたほうがよいでしょう。
納棺にまつわる風習は地域さまざまで、さらに故人や遺族、親族の意向、葬儀業者による対応方法も違ってきます。そのため、納棺の場において、遺族、親族がするこは全国で統一されているというわけでもありません。しかし、納棺で遺族、親族がすることは、一般的に下記の内容が多く見られます。
・亡くなられた人の身体を清める(清拭、湯灌)
・亡くなられた人に死装束を着せる
・亡くなられた人を棺の中に移す
・愛用品などを棺に納める
最近では、葬式当日を迎えるまで葬祭ホール(そのほか葬儀会館、葬儀場など)で遺体安置をしておくケースが増えています。それに伴って、納棺も同じホールで実施することが多くなっています。
納棺は自宅で行うのも選択肢のひとつです。ひと昔前までは、納棺と言えば自宅で行うものでした。現在でも、遺族が自宅での納棺を希望する場合があります。その場合は、葬儀業者による諸条件の確認が事前に必要になります。故人・棺・遺族、親族のスペース、棺が出入りできる間取りなどが問題ない場合は自宅で納棺が可能です。
映画作品の影響もあり、一躍有名になった納棺師という仕事があります。定義は明確ではありませんが、納棺師とは、故人の身体を清め、フューネラルメイクをしたり、死装束を整えたりするなど、納棺式に関わる業務をする人を意味するのが一般的です。
全国的に見ると、葬式で納棺師を手配するケースは多いとは言えません。葬儀業者や湯灌業者、エンバーミング業者が納棺式に関わる業務も担うケースのほうが多数でしょう。
しかし、地域柄で葬式には葬儀業者以外に納棺師の関与が通例となっているところもあります。そのほか、遺体の状態や遺族の希望に応じて納棺師を手配する場合もあります。
小さなお葬式で葬儀場をさがす
納棺を執り行うための基本的な用品や人的サービスは、葬儀業者が提供する葬式のプランやセット内に含まれていることが一般的です。そのほか、エンバーミングや湯灌(ゆかん)など、遺族の希望によって利用される納棺関連サービスもありますので知っておきましょう。
地域によってエンバーミングや湯灌の利用率は異なります。利用の有無は、葬儀日程にも関係してくるので、葬儀業者や家族と十分に打ち合わせを進めましょう。
エンバーミングとは「遺体衛生保全」を意味します。エンゼルケアが表面的な処置に留まるのに対して、エンバーミングは防腐剤注入など身体の内部から処置を実施するのが特徴です。
エンバーミングの施術を受けることのメリットは、「ドライアイスで保冷処置をせずに常温で遺体の保管が可能であること」「感染リスク低減に期待できること」「生前に近い姿の故人とお別れができること」などが挙げられます。
特に最近では、衛生面や感染症対策の観点で注目されているようです。現在流行している新型コロナウイルス陽性者の葬儀においても、エンバーミングにより、通常の葬儀と同様に故人とのお別れをすることが可能な場合もあるでしょう。
エンバーミングを施術するのは、エンバーマーという専門技術者です。重要の高まりに対してエンバーミング施設、エンバーマーの人員が追い付いていない状況も見られます。
略式湯灌は、アルコールを含ませた脱脂綿やお湯で湿らせたタオルで、故人の身体を拭く形式です。対して正式湯灌は、逆さ湯(水に湯を足して作ったぬるま湯)を溜めたタライで身体を洗い清める形式となります。
現代ではタライではなく、業者が訪問介護で使用するようなバスタブを自宅や葬祭ホールに用意して行われることが一般的です。正式湯灌では、身体を洗うだけでなく、洗髪、爪切り、フューネラルメイクまで施されます。
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一般的に、フューネラルメイクだけを頼むことも可能です。故人の肌の質感、色合い、化粧の乗りは生前とは変わってきます。そこで、専門的な経験・技術を持った葬儀業者に頼るというケースは少なくありません。
髭剃り・産毛剃り・整髪といった部分まで対応してもらえることもあるので、希望があれば葬式を依頼する葬儀業者に相談してみましょう。
日本の葬式で多勢を占めるのは、仏教形式です。そのほか、日本固有の宗教である神道や、世界的にも信徒の多いキリスト教など、仏教以外の形式で葬式が営まれるケースも少なくありません。
納棺は、宗教宗派によっても対応方法が変わってきます。特に変わってくるのは死装束です。ここでは主だった宗教について、納棺の特徴を紹介します。
仏教の多くの宗派では、故人に死出の旅路に備えるための死装束を整えます。これには、「人は亡くなると生前の行いについて裁きを受けながら、浄土を目指す旅をする」という考え方があるためです。死装束と言えば、お遍路さんの姿を思い浮かべる人もいるでしょう。
浄土真宗など一部の宗派においては、往生即成仏の考え方から死装束について特段の決まりはなく、旅支度をすることは基本的にありません。
なお、納棺式に僧侶も立ち会うケースがあります。葬式の日程を決める際には、僧侶の意向や予定も確認するようにしましょう。
神道では、神様の姿を想定した死装束を用意します。一般的に神道では、故人は家や子孫を守っていく神になる、という考え方があるためです。ただし、神道では全国各地に数百、数千とも言われるご神体が点在していて、神社によって信仰の対象は変化し、納棺にまつわる決まりごとも変わってくることがあるので注意しましょう。
神職が納棺に立ち会うケースはほとんどありません。棺は、結界を意味する注連縄(しめなわ)と紙垂(しで)が装着されたものを使用するケースが多く見られます。
キリスト教は、仏教や神道のように死装束に関するきまりやしきたりはありません。スーツ・ドレスなどフォーマルな服装にする場合や、生前好んでいたファッションで整える場合など、人それぞれ異なります。
教会によっては、納棺時に神父または牧師が立ち会うことがあります。地域性も影響しますが、納棺の日時については神父または牧師とも確認しておきましょう。
無宗教や自由葬形式の葬式では、宗教的な縛りはありません。地域の慣習にならうことはありますが、納棺の際には故人に着せてあげたい服や相応しいと思う服を用意するケースが多く見られます。
実例としては、学校や職場の制服・野球やサッカーのユニフォーム・お出かけ着・エプロン・つなぎ・ダンスの衣装・作務衣・ダボ・はんてんといったものが最期の衣装として用意されたケースがあります。
小さなお葬式で葬儀場をさがす
葬式では、自分にとって当たり前のことが当たり前として扱われない場面に遭遇することもあるでしょう。納棺式の流れは、葬式全体の流れと同様に、宗教宗派・地域・執り行う場所・葬儀業者などによって変化するものです。
全国一律で決まった流れがあるわけではありません。ここでは仏教で旅支度を整えながら行う納棺式の流れを一例として紹介します。
開式時間が近くなったら、喪主から順に血縁関係の濃い人から、故人の顔の近くに座します(環境に応じて立ったまま実施することもあります)。大人数であれば、故人の身体を囲むような形になるでしょう。
開式にあたり、葬儀業者の案内に従って、参加者一同で故人の冥福を祈りながら合掌し、一礼をします。
正式湯灌を執り行うため、湯灌業者スタッフが加わります。スタッフが亡くなられた人の頭髪を含めて全身を洗い、髭や産毛を剃り、爪を切り、全身を乾かします。その後、死装束として経帷子(きょうかたびら)を着せ、整髪し、フューネラルメイクを施します。
納棺式参加の遺族、親族は、腕を洗ったり、顔を拭いたり、可能な場合はスタッフと一緒に湯灌の儀を進めていきましょう。なお、湯灌の儀部分を湯灌業者に全て任せてしまう形式をとるケースもあります。
「逆さごと」の風習にならい足元から順番に、死装束として旅支度を進めていきます。下記は、足袋から手甲までの支度品です。
名称 | 解説 |
足袋(たび) | 現代の靴下にあたる |
脚絆(きゃはん) | すね当て。膝下から足首付近までを保護するもの。 |
手甲(てっこう) | 手の甲を守る当て布 |
数珠(じゅず) | 別名は念珠。生前使用していたものを用いる場合もある |
頭陀袋(ずだぶくろ) | 現代の肩掛けスタイルの小物入れに相当。なかには六文銭が印刷された用紙を納める |
天冠(てんかん) | 額に着ける三角の当て布 |
6の天冠は、仏の弟子になる証として着けるものとも言われます。着けると顔の様子が大きく変わってしまうことから、最近は付けずに頭陀袋に納めて持たせるなどの対応を取ることが多いようです。
一旦、旅支度の手は休めます。故人を棺に移す、この部分がまさに納棺そのものと言える場面です。棺用布団の下に敷いてある防水シーツの端を丸めて持ちやすい状態にし、シーツを布担架のようにして使い、故人をゆっくり棺の中に納めます。葬儀業者が主導していきますが、男性中心に参加者も協力し合いながら進めましょう。
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棺桶のサイズや種類、副葬品を入れる際の注意点について
故人が柩に納められた状態で旅支度の再開です。下記に挙げる支度品を整えていきます。
名称 | 解説 |
草履(ぞうり) | 履かせることが難しいときには、棺の内面に立てかけるようにして納めます |
杖(つえ) | 利き手の側に添えるようにして納めます |
編み笠(あみがさ) | 被せてしまうと顔が見えなくなってしまうので、棺の内面に立てかけるようにして納めます |
柩に納めてあげたい品物(副葬品)があれば、ここで納めることもできます。
柩のふたを閉じて、納棺式が終了となります。閉式にあたり、葬儀業者の案内に従って、参加者一同で故人の冥福を祈りながら合掌し、一礼をします。
通夜式まで時間があるとき、式場に移動するまで時間が空くときなど、柩の傍らに枕飾りが設置されますので、喪主から順番に線香を手向けましょう。
副葬品とは、亡くなられた人が愛用していたもの、好んでいた食べ物など、納棺の際に故人と一緒に納める品物のことです。
副葬品は、なんでもOKというわけではありません。不注意により事故に繋がったり、人間関係の不和を生んだりしてしまうこともあります。納棺式に際して副葬品のことも確認しておきましょう。
火葬場ごとに利用規定が定められています。通常は葬儀業者からも案内されますが、利用する火葬場のルールを確認しておきましょう。
ざっくりとした判別基準として言えば、副葬品としてOKなのは「燃えるもの・燃えやすいもの」で、NGなのは「燃えないもの・燃えにくいもの・爆発する可能性があるもの」です。最近は、環境への影響や火葬時間の短縮などの観点から、副葬品の許容範囲が狭くなっている傾向にあります。
花・手紙・折り紙・木製や革製のアクセサリー・写真・少量の菓子など食物・布製の帽子・色紙・将棋の駒数個
燃えるものであっても、ボリュームが大きくなると燃えにくくなってしまうので、副葬品に適さなくなってしまいます。
眼鏡・サングラス・入れ歯・プラスチック製のおもちゃ・クレジットカード・スプレー缶・飲料缶・金属製のアクセサリー・時計・電池・スイカなど大きな果物
火葬炉を破損させる危険性があるもの、ダイオキシンなど有害物質を発生させるもの、燃えるのに時間がかかるもの、溶ける性質のもの、などは原則NGと考えておくとよいでしょう。
故人と他人が一緒に写っている写真は、燃やすことに抵抗感を覚える人もいます。たとえば、家族の集合写真や、旅行で友人と一緒に写っている写真などが挙げられます。どうしても棺に入れたいときには、封筒に忍ばせておくなどして、人目に触れないような配慮をしておくことをおすすめします。
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小さなお葬式で葬儀場をさがす
遺族の立場でも、納棺式に呼ばれた親族の立場でも、礼儀に反するような恰好や振る舞いはふさわしくありません。納棺のマナーは葬式ほど気を遣う部分はありませんが、それでも失礼がないようにしましょう。
適切な対応ができるように、ここでは納棺に参加するときのマナー、注意点について紹介します。
納棺式参加時の服装に明確なきまりはありません。最低限の礼儀として、落ち着いた服装であることは条件でしょう。通夜式当日に納棺をする場合のように、そのあとすぐに通夜式を控えているケースでは喪服で納棺式に臨むことが多いようです。
一方、通夜式当日の前日までに納棺を済ませる場合には、比較的普段着に近い装いで参加するケースが多く見られます。判断に迷ったときには、ほかの親族や葬儀業者に相談してみるとよいでしょう。
亡くなられた人のために出来ることは限られています。納棺式に参加する人は、湯灌や死装束の支度など、可能な場面ではできるだけ手を添えることが礼儀です。遠慮してしまう人も少なくありませんが、故人に感謝の気持ちを込めて、積極的な姿勢で臨みたいところです。
あとから「私も参加したかった」などと苦情を受けるのも困るでしょう。納棺式は、家族だけでする場合、家族と主だった親族だけでする場合、なかには家族親族に加えて近隣の方を呼んで実施する地域もあります。
納棺式に呼ぶ対象をどうするかは、それぞれの事情によって異なりますので、親族や葬儀業者と相談しながら決めることが無難です。
特に納棺式のなかで湯灌の儀を行う場合では、故人の肌を露出する場面もあります。したがって、誰に立ち会ってもらうのかは慎重に検討する必要があるでしょう。
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納棺は、亡くなられた人を棺に納めることです。簡単に表現してしまえば単純に感じるかもしれませんが、納棺の役割には深い意味があります。
納棺では、宗教宗派によって、死装束の準備や納棺式の流れ、作法などが異なります。つまり納棺は、宗教宗派や地域などの置かれている状況によって内容に違いが生まれてきます。
仏教の多くの宗派では、旅支度を亡くなられた人に整えます。納棺式で行う湯灌の儀も大切な場面です。
また副葬品についても、許されるもの・許されないものがあります。判断に迷ったときは、小さなお葬式でも丁寧にアドバイスをさせていただきます。
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