密教とは?概念や用語、葬儀方法を詳しく解説

密教とは?概念や用語、葬儀方法を詳しく解説

「密教」という言葉を聞いたことがあっても、詳しい内容についてはよくわからないという方も多いのではないでしょうか。

日本では真言宗が密教の代表だといわれていますが、天台宗も密教の思想を多くとり入れています。この記事では、密教の教えや歴史をはじめ、密教の用語、葬儀方法、顕教(けんぎょう)との違いについて紹介します。

こんな人におすすめ

密教とは何か知りたい方

密教と顕教の違いを知りたい方

真言宗と天台宗の教えの違いを知りたい方

このままWEBで調べたい方小さなお葬式についてもっと知る
喪主が必ず読む本プレゼント!無料でお届けいたします。資料請求する
事前準備をすすめたい方喪主が必ず読む本プレゼント!無料でお届けいたします。資料請求する
小さなお葬式LINE公式アカウント

密教とは?

密教は「秘密仏教」の略語です。古代インドで生まれた宗派で、唐(現在の中国)に渡ったといわれています。日本には、遣唐使として唐に留学していた僧侶の最澄と空海によって伝えられました。日本における密教は「純密(じゅんみつ)」と「雑密(ぞうみつ)」の2種類です。ここからは、それぞれの宗派について解説します。

純密

「純密(じゅんみつ)」は「純正な密教」という意味で、以下のような成仏を目的とした内容が取り入れられている宗派です。

・密教の世界観
・経典
・修行形態など

純密は空海と最澄によって唐から持ち込まれ、空海が伝えた真言宗系の「東密(とうみつ)」と最澄が伝えた天台宗系の「台密(たいみつ)」に分けられます。

雑密

「雑密」は純密が体系化する前に信仰されていた初期の密教のことで、以下のような特徴があります。

・地域性の強い信仰が基礎となっている
・経典は存在しない
・体系化されていない
・呪術的な要素が多い
・山岳信仰を起源とした修行

雑密は奈良時代の時点で既に存在していたとされ、古代インドのバラモン教のマントラに影響されたのではないかといわれています。

なぜ密教=真言宗なのか

空海が密教を完全に修得したことで「密教=真言宗」の構図が定着したと考えられています。空海と最澄の密教の修得範囲は以下のとおりです。

最澄 空海
密教の一部を持ち帰る 密教を完全に修得して帰国

最澄は密教を日本に伝えた後、空海を師と仰いで教えを乞いました。そして、後に天台宗は顕教との融合を果たしています。

密教と顕教の3つの違い

密教の概要を把握するうえで、顕教との違いを知ることは避けては通れないものでしょう
特に、天台宗は密教と顕教が融合している宗派であるため、両者の違いを把握することでより知識を深めることができます。

伝える対象が異なる

密教は後述する大日如来が説いた教えや作法などに関する秘密の教えであり、師から弟子へと伝えられ、授かった者以外には公表できないものとされています。

一方の顕教は「この世で苦しむ人たち全員を救済して悟りを開くための教え」であるという点から、大衆向けの宗派であることがわかります。

考え方が異なる

密教と顕教では、悟りの概念と仏になる過程に顕著な違いがみられます。それぞれの考え方は以下のとおりです。

密教 顕教
・自力本願
・この世の肉体は仏の成り代わりである
・修行をすれば誰でも生きたまま悟りを開き、仏になれる
・即身成仏と現世利益の思想
・他力本願
・お釈迦様や阿弥陀如来に祈ることで成仏できる
・死後に仏になる
・悟りは死後の長い時間をかけて得られる
・輪廻転生をする

祈りを捧げる対象が異なる

密教と顕教では、祈る対象が異なります。密教はこの世の真理そのものを説く「大日如来」が祈りの対象です。

宗派や地域によって祈る対象の神様が異なりますが、顕教はわかりやすい言葉で教えを説き、救済してくれる「釈迦如来」などの仏様を祈りの対象にします。

【表で解説】密教の用語

密教には特有の用語があります。知っておくと真言宗や天台宗の葬儀に参列する際に役立つため、あらかじめ確認しておきましょう。

法具に関する用語

密教法具は密教の儀式で使われる法具の総称です。特に「金剛」と名のつくものはセットで使われる法具で、金剛杵(こんごうしょ)は空海の肖像画が右手に持っている法具としても知られています。

密教法具の使い方は秘儀のため、公にはされていません。仏門に入り教えを授かった者にのみ正しい使い方が伝授されるのです。法具名と意味は以下の表のとおりです。

法具名 意味や用途
柄香炉(えごうろ) 修法で使用する柄のついた香炉
如意(にょい) 孫の手の形をした、意思疎通を思いのままにする法具
法螺(ほら・ほうら) 穴を開けた大きな巻貝で、吹き鳴らして使う道具。本来は仏様が吹くとされている
金剛杵(こんごうしょ) 煩悩を打ち砕くとされている菩提心のシンボルで、元々はインドの神々の武器。中央に柄がある棒状の法具で、柄の上下に槍状の刃がついている
金剛鈴(こんごうれい) 儀式の際に、神仏と一体化することを目的に鳴らす鈴。金剛杵の片側が鈴の形になったもので、澄んだ音を奏でてくれる
金剛盤 金剛杵と金剛鈴を置く台のようなもの。蓮の花をかたどった三角形で三つの脚がついている

思想や儀式に関する用語

密教の思想や儀式に関する用語は普段なじみのない漢字が多用されていることから、難しい印象を持ってしまう方もいるでしょう。ここからは、用語の意味を1つずつ解説します。

用語 意味
灌頂(かんじょう) 仏の教えを授ける儀式。内容や目的によって種類があり、密教の葬儀では故人が仏の位に入る儀式
阿闍梨(あじゃり) 密教伝道師の最高位。伝法灌頂を受けることで正式な僧侶として認められる
梵字(ぼんじ) 大日如来から受け継いだ神聖な文字。文字そのものが信仰の対象
阿頼耶識(あらやしき) 人間の持つもっとも深い意識。個人という存在の根幹にあり普段は自覚できないとされている
金剛鈴(こんごうれい) 儀式の際に、神仏と一体化することを目的に鳴らす鈴。金剛杵の片側が鈴の形になったもので、澄んだ音を奏でてくれる
声明(しょうみょう) 儀式中の声楽。音階や旋律に関する概念に従って体系化されている

「灌頂(かんじょう)」は真言宗の葬儀でも見られる儀式です

真言密教の修行にまつわる用語

ここからは、真言密教の修行にまつわる用語を紹介します。

用語 意味
護摩(ごま) 密教の祈祷のひとつ。供物を煩悩ととらえて、火の中に投げ込み祈る
真言(しんごん) 仏の真実の言葉。人間の言語では表現できないとされており、隠された意味の中にある真実を指す。仏陀の言葉を翻訳せず、サンスクリット語のまま音写した呪文のようなもの。言語のまま唱えることで、直感的に「仏」を感じることを求める
三密加持(さんみつかじ) 密教の儀礼の基本にあるもので、「口密(くみつ)」「身密(しんみつ)」「意密(いみつ)」の3つを表している。真言を唱えて印を結びながら大日如来と自身を一体化する僧侶向けの修行
阿字観(あじかん) 阿字(月輪に描かれた大日如来を示す梵字)を見つめて行う瞑想方法。一般信者向けの修業

「護摩」は厄除けなどで行ったことがあるという方もいるのではないでしょうか。護摩も実は、密教に関係する儀式のひとつなのです。

真言密教の葬儀方法と特徴

真言密教の葬儀では、他の宗派には見られない独自の儀式がいくつかあります。そのほかにも、真言密教独自の考え方に基づいて故人を見送りする点も知っておくと安心です。

葬儀についての考え方

真言密教では、現世で身についてしまったよくない考えや習慣などを葬儀で浄化するという考え方があります。

葬儀で浄化された故人は、死後も仏の加護を得られるように願いを込めて供養されます。

真言密教独自の儀式がある

真言密教特有の儀式とその意味は以下の表のとおりです。

用語 意味
灌頂(かんじょう) 故人の頭に水をかけることで、大日如来と一体化して仏の位になれるようにする儀式
土砂加持(どしゃかじ) 清めた土砂を護摩で焚き、光明真言を唱えた後に故人にまくと苦痛や煩悩が除かれるとされている
血脈(けちみゃく)の授与 師から弟子へ教法を伝えることを血のつながりにたとえた表現

また、真言密教の葬儀の流れについては、以下の記事で詳しく紹介しているので、参考にしてください。

剃髪と授戒がある

真言密教の葬儀では、故人を剃髪することで授戒を与えるという儀式があります。故人を剃髪して仏弟子となることを宣言するという内容です。

剃髪など真言密教の葬儀の特徴については以下の記事でもまとめて紹介しています。

参考:『真言宗の葬儀

天台宗の葬儀方法と特徴

日本の葬儀の起源ともいえる天台宗の葬儀には、顕教の教えも混ざっています。顕教と密教の儀式が交じり合った天台宗独特の葬儀が執り行われます。ここからは、天台宗の葬儀の特徴について紹介します。

葬儀の考え方

天台宗の葬儀では、密教と顕教2つの教えの結びつきにより、故人が参列者とともに仏の教えにたどり着いて成仏できるという考えられています。

顕教と密教の相反する考え方がうまく組み合わさった天台宗では、以下の3つの儀式を大切にしています。

・顕教法要(法華経を唱えることで、日々の懺悔を行う)
・例時作法(お経を唱えることで、死後に極楽浄土にたどり着けることを祈願する)
・密教法要(仏の言葉である真言で故人を弔う)

密教と顕教の経典が読まれる

天台宗の葬儀では、密教と顕教の2種類の経典が読経されることが一般的です。それぞれの経典の種類は、以下の表のとおりです。

密教的な経典 顕教的な経典
・光明供 ・法華経
・阿弥陀経

祀られる仏様が異なる

天台宗は仏様を平等に信仰します。本来、天台宗の本尊は大日如来ではなく釈迦如来ですが、天台宗の故人の仏壇には阿弥陀如来が祀られていることが多くあります。

また、宗派によっては以下の仏様が祀られる場合があることを覚えておくと、弔問時などに役立つでしょう。

・薬師如来
・観世音菩薩
・不動明王
・毘沙門天

「喪主が必ず読む本」無料プレゼント中

「小さなお葬式」では、無料の資料をご請求いただいた方全員に「喪主が必ず読む本」をプレゼントいたします。

病院から危篤の連絡がきたときの対応方法や、親族が亡くなったときにやるべきこと、葬儀でのあいさつ文例など、喪主を務めるのが初めてという方にも役立つ情報が満載です。

いざというときの事前準備にぜひご活用ください。

喪主が必ず読む本

全員に「喪主が必ず読む本」プレゼント 無料資料請求はこちら

「小さなお葬式」で葬儀場・斎場をさがす

小さなお葬式は全国4,000ヶ所以上の葬儀場と提携しており、葬儀の規模や施設の設備などお近くの地域でご希望に応じた葬儀場をお選びいただけます。

まとめ

日本で「密教」というと真言宗を指すことが一般的ですが、天台宗も密教と顕教の要素を合わせて取り入れているため、混乱することもあるかもしれません。さらに、密教と顕教の教えや考え方には異なる点も多くあります。

密教やその他の宗派、葬儀についてわからないことがある際は、ぜひ小さなお葬式にご相談ください。

監修
信長 洋輔(小さなお葬式 コラム編集長)
信長 洋輔(小さなお葬式 コラム編集長)

株式会社ユニクエスト社員
「小さなお葬式のコラム」の編集長。
葬儀葬式・法事法要だけでなく、終活・老後資金などFP関連の知識にも精通。
葬祭ディレクター1級の資格取得に向けて学習中。
葬儀業界最大級の、合計2000記事以上を管理。
運営会社についてはこちら

このままWEBで調べたい方
小さなお葬式についてもっと知る
このままWEBで調べたい方小さなお葬式についてもっと知る
事前準備をすすめたい方 喪主が必ず読む本プレゼント 資料請求する(無料)
事前準備をすすめたい方喪主が必ず読む本プレゼント!無料でお届けいたします。資料請求する
小さなお葬式LINE公式アカウント
小さなお葬式LINE公式アカウント

この記事をシェアする

  • twitter
  • facebook
  • line
基礎知識・マナーを徹底的に解説 葬儀・葬式の流れ