仏教には多くの教えや文化、独自の習わしがありますが、そのうちのひとつに「陰膳」というものが挙げられます。遠方にいる家族や亡くなった方を想う瞬間を大切にするという意味では、陰膳について理解を深めておくことはとても重要です。
この記事では、陰膳とはどのような文化・習わしなのかという点を整理したうえで、マナーや用意すべき料理の内容などについて解説します。
<この記事の要点>
・陰膳には、遠方の家族の無事を祈ったり故人を供養をしたりする意味がある
・陰膳を用意する際は、親椀・汁椀・平椀・壺椀・高杯が必要
・用意する料理は精進料理が好ましいが、野菜中心のものであれば問題ない
こんな人におすすめ
陰膳についての基礎知識を知りたい方
陰膳で用意する仏具を知りたい方
陰膳で用意する料理の内容を知りたい方
仏教における習わしのひとつに、陰膳という行為があることをご存知でしょうか。あまり聞きなじみのないものですが、これは「かげぜん」と読み、主に大事な家族や友人などを想う目的で行われます。
一般的な仏教の文化の中でも陰膳は広く認知されていないことも多いため、家族や友人を大事にしていくためにも、これを機にぜひ知識を増やしておきましょう。
まず、陰膳にはなかなか会えない地域で過ごしている家族の無事や健康、そして幸せになるようお願いするという目的があります。陰膳では、遠く離れた家族の分のご飯を食卓に並べ、一緒に食事をしているかのようなイメージを持って食事をします。
現代は通信技術が発達し、たとえ日本と海外という離れた場所でもメッセージのやり取りやビデオ通話などが簡単にできるようになりました。そのため現代ならではの価値観が浸透していると陰膳を行う目的にはピンとこないことも多いかもしれません。しかし、昔は少し生活する場所が離れてしまえば「一生会えないかもしれない」と互いに覚悟しなければならないほど、連絡を取ることが難しかった背景があります。
以上の理由から、陰膳はつい数十年前まで浸透していたものと考えられます。また、戦時中は兵隊として呼ばれた家族と、一切連絡を取ることはできませんでした。そういった時代の中では、陰膳は頻繁に見られた風習だったといえるでしょう。
陰膳にはもうひとつ目的があります。それは、亡くなった家族や近しい友人などを供養するという目的です。
供養とは、亡くなった方が無事に極楽浄土に行けるように祈ることや、その方と過ごした幸せな日々を振り返ることです。その際、亡くなった方のためにご飯をお供えします。
この行為には本来、「極楽浄土に行く間に食べ物に困らないように」という意味も込められているのが特徴です。
亡くなった方に思いを馳せて陰膳としてのご飯を支度すれば、生前のように再び食事を囲んでいるような瞬間に浸れるでしょう。これは亡くなった方をしのぶ行為として、大切なことのひとつといえます。
陰膳にはこのように2つの意味・目的があることで知られますが、昨今では陰膳というと、亡くなった方にお供えするという解釈が強くなってきています。これには、「遠方にいる家族になかなか会えない」という考え方が薄まったことが要因として考えられます。
とはいえ、遠方にいる家族が健やかでいることを祈る習慣が少なくなった昨今でも、大事な家族を想うことは重要です。陰膳のことを耳にした場合は、本来2つの目的があることを覚えておきましょう。
仏教における習わしとして知られる陰膳には、以下のようなよさがあるといえるでしょう。
・大切な家族のことを思い返すきっかけになる
・大切な方の死とゆっくり向き合える
陰膳は、大切な方のことを思い出すきっかけになります。現代ではいつでも連絡が取れるとはいえ、そばにいないとその人の人となりや魅力、一緒に過ごした思い出は自然と薄れていってしまうものでしょう。陰膳は、人との縁やともに過ごした日々の思い出などを大事にするきっかけになります。
また、じっくりと祈りをささげることで自然と「大切な方の死」とゆっくり向き合えるようになるでしょう。かけがえのない存在である家族を亡くしたことでそのショックとなかなか向き合えず、気持ちの整理がつかないときもあるでしょう。その際は、亡くなった方のためのご飯を用意したうえで、ゆっくりと気持ちの整理をつける時間を取るのもよいかもしれません。
しっかりと伝統に従って支度をするのであれば、陰膳は仏教の習わしのひとつなので、まず仏具を用意する必要があります。使用するものには、名前や配置などが決められています。
はじめに、仏膳椀(ぶつぜんわん)を揃えましょう。ちなみに陰膳のために使うものは仏様用の仏飯器とは異なります。用意するものは下記のとおりです。
【名前】 | 【読み方】 | 【よそうもの】 |
親椀 | おやわん | ご飯 |
汁椀 | しるわん | 汁物 |
平椀 | ひらわん | 煮物 |
壺椀 | つぼわん | 煮豆 |
高坏 | たかつき | 漬物 |
それぞれの仏膳椀には、置く場所がもともと決められています。最初に親碗は、全体の手前側の左に配置し、その隣に汁椀を置くのが一般的です。奥側には壺椀を右に、その隣の左側に平椀を置きましょう。そして残りの高坏は中央部分に置きます。これでしっかりとした作法に沿った形での支度が完成です。
より仏教のマナーを意識して準備を進める際には、上記の配置を意識するようにしましょう。
しっかりとした仏膳椀をどこで揃えればよいのかわからないときは、仏具店を訪ねるのが最も望ましいでしょう。椀の素材についてのきまりは特に設けられていません。また、葬儀や法要の際に打ち合わせを重ねてきた葬儀社が相談に乗ってくれることもあるため、困ったときは葬儀社に問い合わせてみるのもひとつの方法です。
亡くなった家族に祈りをささげる際には、原則としてまず、仏壇にある位牌の前などに用意したメニューを揃えていきます。なお、このとき使用する食器は仏具でもよいのですが、亡くなった大事な家族により親しみを込めるなら、生前好んで使っていた食器を用意するのがおすすめです。
しばらくお供えした後の陰膳は、家族でいただきましょう。「亡くなった方に向けて用意したから」と長く取っておく必要はありません。
仏教の考え方においては、陰膳は家族がいただくのが原則です。この行為も亡くなった方を思う大切な供養の一環と考えられているためです。
精進料理は、仏教の考え方から来る殺生を避けて用意される料理です。そのため、より適切なマナーに従って準備を進めるのであれば、肉や魚を使ったご飯は避けるようにしましょう。
ただ、具体的なメニューとして決められているものはないため、野菜を中心に作られた料理であれば基本的に問題はありません。ちなみに精進料理は全体的に質素な印象になりますが、これは質素なもので満足しようとすることで、徳を積むことができるという考え方につながっています。
近年は仏教の習わしにもさまざまな考え方があり、いろいろな文化の交わりもよく見られます。従って陰膳でも、家族や亡くなった方の好みに合わせて料理の内容を選んだり、もしくはその日の家庭のメニューと同じものにしたりするなどの風習が見られることも珍しくありません。
精進料理かどうかにはこだわらず、あえて家族が好きなものや故人が生前好きだったものを揃えることも意義のあることです。あくまでも大事な家族を思うことや亡くなった方に祈りをささげることが大切とされています。
ここでチェックしておきたいのは、さまざまな仏教の価値観や教えです。仏教と一口にいっても、細かい宗派や地域によりあらゆる違いが挙げられ、葬儀の形式などにもその違いが色濃く反映されることがあります。
例えば浄土真宗には、「亡くなった方はすぐに極楽浄土に到着する」という考え方があるのが特徴です。このため亡くなった方が極楽浄土に到着できるよう思いを馳せることは、浄土真宗においては意味がなく、実際に陰膳を用意するという文化は存在しません。また、「亡くなった方は旅立ってから、この世の人とは別のものと食べるようになる」という考え方も影響しているようです。
ほかにも宗派や地域独自の文化などによって、作法には違いがある場合があります。陰膳を用意する際には、宗派や地域のルールなどを意識しておくことも不可欠です。
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陰膳は、離れたところで生活している大事な家族や、亡くなった方を大切にする思いから用意するものです。このように2つの意味が存在することは、知識として押さえておきましょう。
小さなお葬式では、葬儀や法要、その他仏教の慣習などを実践する際にもさまざまなサポートをさせていただいております。仏教の考え方や行うべき行事、文化などでお困りの際には、お気軽にお問い合わせください。
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