日本にはさまざまな宗教・宗派がありますが、奈良県天理市を中心に発展した宗教に「天理教」があります。天理教には一般的な仏教や神道とは異なる葬儀の作法があるため、参列する前にマナーを知っておきましょう。
この記事では、天理教の葬儀に対する考えをはじめ、葬儀の流れや香典の包み方など、天理教独自の作法について紹介します。
<この記事の要点>
・天理教は「神道」の一種で、葬儀も神道の形式に近い
・通夜は「みたまうつし」と呼ばれ、魂を故人の身体から有体物に移し、神様に預けるための重要な儀式
・香典袋の水引は白黒か黄白で、表書きは「御玉串料」「御榊料」「御霊前」などが一般的
こんな人におすすめ
天理教の教えを知りたい方
天理教の葬儀について知りたい方
天理教の葬儀に参列予定の方
奈良県発祥の天理教は、200年近い歴史のある宗教です。まずは天理教がどういった宗教か、葬儀に対する考え方や葬儀の特徴などを解説します。天理教は「神道」の一種ですので、葬儀も神道に近いのが最大の特徴といえるでしょう。
天理教は、本部神殿が奈良県天理市にある新宗教のひとつです。「全人類を兄弟姉妹とし、悩みや苦しみのない世界を実現する」という思想が根本にあります。1838年に、天理王命という親神様からの教えを教祖の中山みきが説いたことが、天理教の始まりです。
天理教は教派神道の一種で、葬儀の内容は神式に近いのが特徴です。「借りていた古い身体を返し、新しい身体が見つかるまでの間、魂を神に預かってもらう儀式」を葬儀としています。
身体を返す通夜は「みたまうつし」と呼ばれ、告別式よりも優先して考えることも少なくありません。みたまうつしは、「古い身体から魂(みたま)を移す」ことから付けられた名前です。
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神道の葬儀を執り行う方へ 知っておきたい儀式や流れ
「みたまうつし」という言葉は天理教と神道で使われますが、考え方はそれぞれ異なります。天理教において、身体は神様からの借物です。そのため、亡くなったときに返して、神様に魂を預かってもらうものと考えます。
一方で、神道では亡くなった人の魂そのものが神様となり、その魂が家族を守るべく御霊代(みたましろ)に移るという思想です。「みたまうつし」を告別式よりも重視するのも、天理教と神道の違いだといえるでしょう。
儀式の名称はやや異なるものの、天理教も通夜と葬儀・告別式、そして葬儀後の霊前祭とさまざまな儀式を行います。ここからは、故人が亡くなってから行う儀式を1つずつ紹介します。
通夜は「みたまうつし」とも呼ばれ、故人の身体を神様に返す儀式です。神様に魂を預ける重要な儀式として、天理教では葬儀よりも「みたまうつし」を重要な儀式と捉える傾向があります。
通夜の翌日には葬儀・告別式を行います。詞を唱えたり玉串奉献をしたりと、内容は神道の葬儀に似ています。出棺・火葬された遺骨は安置され、後ほどお墓に納骨されます。
仏教には、初七日や四十九日などの忌日法要、一周忌以降の年忌法要など供養の儀式があります。神道も同様に、初七日と似たような意味を持つ十日祭、四十九日にあたる五十日祭などで故人の魂を供養します。
神道の一種である天理教もこれに倣い、十日祭や合祀祭、一年祭、五年祭、十年祭などの「霊前祭」を行います。
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天理教の一年祭とは?香典の金額を考える際の注意点
天理教の葬儀でもっとも重視されるのは、通夜にあたる「みたまうつし」です。ここからは「みたまうつし」がどういった儀式なのか、どのような流れで執り行われるのかを解説します。
みたまうつしの儀は、亡くなった人の魂を身体から移す儀式です。漢字にすると「御霊移し」もしくは「御霊写し」と書きます。これは、魂を故人の身体から有体物に移し、神様に預けるための儀式です。
みたまうつしは正式には「遷霊祭(せんれいさい)」といい、魂を移す先が決まっているわけではありません。鏡に移すこともあれば、白木で作られた霊璽(れいじ)に移すこともあります。魂が移された先は、御霊代(みたましろ)と呼ばれます。
神道では故人の魂は夜間に動くと考えられているため、みたまうつしの儀は夜に行われます。
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みたまうつしの儀とはどんな儀式?特徴や流れを紹介します
天理教だけでなく、神道と金光教でもみたまうつしの儀という同名の儀式があります。ただし、同じ神道の一種ではあるものの、儀式の流れや作法には異なる部分もあります。細かい部分で混同しないように注意しましょう。それぞれの宗派で行われる儀式の特徴や流れ、作法を把握して、宗派ごとのマナーを守ることが大切です。
天理教のみたまうつしの儀の流れは、以下の通りです。
1. 入場
2. 祓詞奏上(はらえことばそうじょう)
祓詞は、神事の最初に唱えられるお祓いの言葉です。
3. うつしの詞奏上および「みたまうつし」の儀
故人の身体から魂を移す儀式で、うつしの詞はその儀式の最初に捧げる言葉です。
4. 献饌(けんせん)
神前にお供え物を捧げます。
5. 斎主・玉串奉献、しずめの詞奏上、列拝
玉串奉献は仏教における焼香にあたるもので、「心を玉串にのせて神に捧げる」という意味があります。しずめの言葉は、みたまうつしの儀の終わりに捧げる言葉です。
6. 斎員列拝
斎員とは、神式の葬儀において斎主の助手、世話役として働く人のことです。
7. 喪主、遺族、一般参列者の順に玉串奉献および列拝
8. 退場
・玉串奉献(たまぐしほうてん)
玉串とは榊のことで、これを祭壇に捧げる儀式です。斎員から玉串を受け取り、左手に葉がくるように両手で持ち、祭壇の前に行きます。次に葉を祭壇に、枝側を自分に向けて一礼しましょう。
最後に左手を枝側、右手を葉側に移し、時計回りに玉串を回して枝側を祭壇に向け、玉串台に献じます。
・参拝(列拝)
玉串を献じたあとは参拝をします。天理教では、二礼四拍手一拝四拍手一礼が基本です。一般的な神道では「しのび手」といって音を立てないのがマナーですが、天理教では音を立ててもマナー違反にはなりません。
礼と拝の違いですが、礼は軽いお辞儀であるため30度程度の角度、拝は最敬礼であるため90度腰を折ります。
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天理教の葬儀とは?特徴・流れ・参列時のマナーを解説
天理教の葬儀に参列する際は、ほかの宗教・宗派の葬儀と同様に香典を持参します。ここからは、天理教の香典マナーを紹介します。香典袋や金額の目安についても解説します。
香典を包む袋は、市販の香典袋や封筒で構いません。ただし、仏式の葬儀で用いられる蓮の花が書かれたものは使用しないようにしましょう。水引は白黒のもの、あるいは黄白のものを選びます。
表書きは、「御玉串料」「御榊料」「御霊前」などが一般的で、「御仏前」は使用しません。
香典の金額は、仏式の香典の目安と同じで問題ありません。故人との関係性別の香典の目安は以下のとおりです。
故人との関係 | 香典の目安 |
両親・子ども | 3万円~10万円 |
兄弟・姉妹 | 3万円~5万円 |
孫 | 1万円~5万円 |
おじ・おば | 1万円~3万円 |
いとこ | 3,000円~3万円 |
友人知人・会社関係の方 | 3,000円~1万円 |
上記はあくまでも目安で、この金額でなければならないというきまりはありません。金額に迷ったら、ほかの参列者に相談してみてもよいでしょう。
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天理教の葬儀の服装は、黒の礼服で問題ありません、男性は黒いネクタイ、女性は黒ストッキングを着用しましょう。イヤリングやネックレスは真珠のものであれば、着用しても問題ありません。
ただし、天理教には数珠の概念がありません。ほかの宗派と混同して数珠を持参しないように注意しましょう。
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告別式・葬儀での服装について
仏教では四十九日までを「忌中」とし、故人の冥福を祈り喪に服します。天理教でも四十九日にあたる「五十日祭」という儀式があり、五十日祭は神様のもとへ魂が旅立つ重要な節目です。ここからは、天理教の葬儀後の儀式を紹介します。
天理教の五十日祭は、仏式の四十九日に該当する儀式です。天理教では魂を神様に預かってもらうという考えがあり、五十日祭までの50日間、魂はその人の家に残ります。五十日祭は神様のところに魂が旅立つ境目となる日です。
五十日祭の参列者は、玉串料を用意します。包む金額は仏式の香典の目安と同じです。表書きは「御玉串料」「御霊前」を使用しましょう。
五十日祭が終わったら、お供えしたものを参列者といただきますが、これは「直会(なおらい)」と呼ばれる故人を偲ぶ大切な時間です。根本の考え方は異なるものの、四十九日と同じような流れとなっています。
五十日祭を含む葬儀後のさまざまな儀式は「霊前祭」と呼ばれます。仏式の忌日法要・年忌法要にあたるもので、天理教では十日祭・二十日祭・三十日祭・四十日祭・合祀祭・一年祭・五年祭・十年祭などを節目に行うのが一般的です。
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天理教は新宗教のひとつで、「全人類を兄弟姉妹とし、悩みや苦しみのない世界を実現する」という教えを説いています。天理教の葬儀でもっとも重視されるのは、通夜にあたる「みたまうつし」です。みたまうつしは、人の身体を神様に返す儀式で、神様に魂を預ける重要な儀式とされています。
天理教の葬儀やみたまうつしについて疑問がある方は、ぜひ「小さなお葬式」にご相談ください。宗派に応じた作法や流れなど、実績を踏まえた細かなアドバイスをいたします。
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亡くなった方や仏に向けて、香を焚いて拝む行為を焼香(しょうこう)といいます。ホゥ。