葬儀に関連する職業の中には、一般に広く浸透していないものもあります。その中の1つが、遺体衛生保全士です。遺体衛生保全士は故人の遺体を葬儀までよい状態に保つために欠かせない重要な役割を担います。
この記事では、遺体衛生保全士の業務や必要資格、年収などについて詳しく解説します。葬儀で遺体衛生保全士に依頼する場合の費用紹介していますので、ぜひチェックしてください。
<この記事の要点>
・「遺体衛生保全士」とは、遺体の状態を保つための処置を施す仕事
・遺体衛生保全士になるには、日本遺体衛生安全保全協会が実施する試験に合格する必要がある
・遺体衛生保全士の月給は30万円ほどで、それに加えてエンバーミング報償金をもらえるのが一般的
こんな人におすすめ
遺体衛生保全士に興味がある人
遺体はそのまま安置しておくと数日で腐敗してしまいます。最近では都心を中心に「火葬場難民」と呼ばれる現象も起こっており、亡くなってから通夜や告別式、火葬までの時間がかかる場合もあります。
遺体衛生保全士とは遺体の状態を保つための処置を施す仕事です。「エンバーマー」とも呼ばれており、消毒・保存処置はもちろん遺体の修復や化粧なども担います。遺体衛生保全士の処置により、遺体は10日から2週間ほど状態を保つことが可能です。
遺体衛生保全士の業務内容は「遺体の防腐処置」「遺体の身支度」の大きく2つです。似たような仕事にエンゼルケアや湯灌がありますが、遺体衛生保全士との仕事の違いは何なのでしょうか。
ここからは遺体衛生保全士の仕事の流れやエンゼルケアなどとの違いを解説します。
遺体衛生保全士の仕事の流れは、以下の通りです。
【防腐処理】
1.洗浄・消毒
2.防腐剤注入
3.血液や体液の排出
【遺体の身支度】
4.遺体の修復
5.化粧や着付け
腐敗を防ぐためには、遺体に防腐剤を注入したり血液や体液を抜いたりする作業を行います。防腐処置のためには遺体の一部を切開し、防腐剤は動脈から注入、血液は静脈から抜き取ります。
腹部にあけた小さな穴から管を通し、血液や体液・残存物を吸引するのも防腐処置として必要です。こうした部分にも防腐剤を注入し、防腐処置が完了します。
防腐処置のためにあけた穴はもちろん、遺体の状態によってはさまざまな修復をする場合もあります。こうした修復をしたのち、遺体を改めてきれいに拭いたり洗ったりして身支度をするのも遺体衛生保全士の仕事です。
きれいになった遺体に生前気に入っていた衣服や死装束を着せ、死化粧を施します。遺体によっては苦しい表情を浮かべていることもあるので、安らかに眠っているような顔に整える作業も必要となります。
遺体衛生保全士は「エンバーマー」と呼ばれることもあり、一連の仕事は「エンバーミング」といいます。エンバーミングと似た内容で「エンゼルケア」「湯灌(ゆかん)」といったものがありますが、違いは何でしょうか。
エンゼルケアは表面的な処置をする仕事です。遺体の防腐処置をしないのが、エンバーミングとの大きな違いといえます。湯灌は遺体をきれいにして身支度をすることはもちろん、遺族に作業の流れを説明するのも仕事の1つです。
エンバーミングと仕事内容が重複する部分も多くありますが、エンゼルケアと同様に防腐処置をしないのが違う部分になります。
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「防腐処置」と聞くと、特別な仕事内容という印象を受ける方も多いのではないでしょうか。資格はあるものの取得が必須ではない葬儀関連の仕事も存在しますが、遺体衛生保全士になるには資格が必要です。
ここからは、どのような資格が必要なのか、遺体衛生保全士になるための方法を解説します。
遺体衛生保全士になるには、一般社団法人日本遺体衛生安全保全協会(ISFA)が実施する資格試験に合格する必要があります。民間資格ではあるものの、この資格がなければ遺体保全士として働けません。
高齢化が進む中、葬儀関事業の人員不足は深刻です。遺体衛生保全士も人手が足りていないのが現状で、ISFAは資格保有者を徐々に増やしていきたいという意向を明かしています。
ISFAの遺体衛生保全士資格は資格試験に合格すればよいものではなく、受験するためにはISFAが指定する養成施設での学びが不可欠となります。受験希望者は養成施設で2年間エンバーミングに関する知識や技術を習得し、試験に挑みます。
資格取得とともに遺体衛生保全士に欠かせないさまざまな力を身に付けられ、就職後にはすぐ現場で活躍できるでしょう。
エンバーミングはもともと、カナダやアメリカ北部で実施されていた技術です。海外留学で現地の葬儀関連の学校に通い、本場のエンバーミングを習得するのも遺体衛生保全士を目指すルートの1つでしょう。
しかし留学には高額な費用がかかりますし、講義の内容を理解できるだけの語学力も必要になります。経済的にも精神的にも大きな負担になるため、海外留学を検討する方は少ないといえるでしょう。
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エンバーミングの詳細とメリット・デメリット
遺体衛生保全士の仕事内容に魅力を感じる方は、もし遺体衛生保全士になった場合の就職先や給料なども気になるのではないでしょうか。遺体衛生保全士は特別な学びや資格が必要な仕事なので年収は低くもなく、高齢化などの影響もあり、就職先にも困らないといえます。
遺体衛生保全士の主な就職先は葬儀関連会社です。大手の葬儀社はもちろん、互助会や納棺専門の会社なども就職先として挙げられます。
特殊な業種のため求人を募集している企業は決して多くなく、多くの葬儀関連会社が必要としている人材なので就職活動に難航する可能性は低いでしょう。
遺体衛生保全士の月給は30万円ほどで、加えてエンバーミング報償金をもらえるのが一般的です。30万円の単純計算でも年収は360万円、報償金は賞与などを考慮すると平均年収は500万円前後になります。
経験を積めばその分給与額も上がるので、年齢や経験に見合った年収が保証されている仕事といえるのではないでしょうか。
遺体衛生保全士は、2年間の学びと資格試験合格という難関を越えた方が就ける仕事です。高齢化により亡くなる方が増えており、遺体衛生保全士の処置件数も増加しています。しかし、エンバーミング件数に対し遺体衛生保全士の数が伴っていないのが現状です。
今後もエンバーミングが減少することはしばらくないと予想されているので、これから遺体衛生保全士を目指しても就職先は比較的見つけやすいでしょう。
大切な家族を亡くされた際に、エンバーミングで遺体の状態をよりよく保って最期のお別れをしたいと考える方は少なくありません。防腐処置や遺体の修復などと聞くと高額な印象がありますが、遺体衛生保全士に依頼した場合どれくらいの費用がかかるのでしょうか。
ここからは費用の目安や処置施設について解説します。
エンバーミングにかかる費用の目安は15万円~25万円程度です。費用は、IFSAが設定している基本料金を目安にしているようです。しかし、遺体の状態によって大きな修復が必要な場合は別途費用がかかることがありますので覚えておきましょう。
エンバーミング処置は病院や故人の自宅などではできず、専用の施設でのみ防腐処置などが可能となります。エンバーミングができる施設は、2023年4月時点で全国に69か所あります。エンバーミング希望者増加に伴い、施設も増えていますが近くに施設がないという地域もまだあるのが課題です。
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遺体衛生保全士は遺体の状態を一定期間保つための防腐処置や着替えや化粧といった遺体の身支度を行う仕事です。「エンバーミング」と呼ばれる一連の処置は海外から導入されたもので、処置を希望する方は年々増加しています。
遺体衛生保全士になるには特別な学びや資格が必要ですが、故人と遺族の最期の時間をよりよいものにするための重要な役割を担う仕事だといえます。
小さなお葬式では、遺体衛生保全士の仕事やエンバーミング処置についての疑問やご相談も受け付けています。専用ダイヤルを設置しており、24時間365日体制でお客様のお悩みや疑問にお答えしています。お客様の状況やご要望に合わせて葬儀プランも提案可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
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告別式とは、故人と最後のお別れをする社会的な式典のことです。ホゥ。