遺言書は正しい形式に則ったものでなければ、効力がありません。遺言書の内容に不備があると、遺言者の死後相続人間の争いの火種となることがあります。しかし遺言書の内容は複雑で、きちんと理解ができているという方は少ないのではないでしょうか。
遺言書の知識を深めておけば、後々の不要な相続トラブルを避けられます。そこで本記事では、遺言書の概要から正しい書き方、無効になるケースまでご紹介します。多くの人が疑問をもつポイントを中心に分かりやすく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
<この記事の要点>
・遺言書の効力として、財産の分配方法を決めることができる
・遺言者が自筆で作成するか、証人に立ち会ってもらうかなど種類によって異なる規定がある
・遺言書が無効になるケースとして、形式不備や内容の不備があげられる
こんな人におすすめ
遺言書の概要を知りたい方
遺言書の種類と書き方を知りたい方
遺言書が無効になるケースを知りたい方
遺言書とは、死後に自分の財産を「誰に」「どれだけ」渡すのかなどを明記する書面のことです。遺言書で財産の分配先を明示することで、渡したい人に渡したいだけ財産を譲れます。また反対に「○○への相続は行わない」など、特定の人を相続人から外せるのも遺言書の特徴のひとつです。
原則的には、遺言書に記載された内容が優先的に有効になるルールです。遺言書がなかったり効力を持たなかったりした場合、法律で定められた「法定相続」にのっとって相続が決定されます。家族の将来に影響する重要事項である点を理解しておきましょう。
遺言書は、故人の意思を証明する書類として法的に取り扱われます。財産分与の方法を決めるだけでなく、相続人数の増減や相続先の変更も可能です。亡くなった後に家族が変えられるものではないため、不本意な結果を招かないよう理解を深めておきましょう。法的な効力について、7つの観点から具体的に解説します。
遺言書に明確な記載があれば、分与対象とする財産やその割合の指定が可能です。法律上では、法定相続人に関する規定が設けられています。遺言がなければこれにのっとって実行されますが、遺言がある場合は故人の意思を優先的に反映する仕組みです。「子どもに多く相続させたい」という場合、遺言書に明記することで詳しい内訳を決められます。
法定相続人に該当する方に対して「相続させたくない」という意思がある場合、遺言書によって相続人の廃除が可能です。被相続人と相続人の間で問題視される事実があったり、不当な手続きなどによる被相続人に対する非行が見受けられたりした場合に適用されます。
精神的または身体的な虐待なども廃除の要因のひとつです。親族との関係性を明らかにするためにも遺言書を残すことは重要な権利といえるでしょう。
家族関係が複雑化している場合、法的な配偶者とは別の相手との間に「隠し子」が存在するケースもあります。亡くなった後に独断での相続はできませんが、遺言者に名を連ねていれば隠し子への分与も可能です。養子と隠し子は法的な扱いが異なるため、法律の面にも注意しておきましょう。
遺産を相続する対象として、血縁関係にある家族を選択するケースが多く見られます。法定相続人への相続が原則ですが、故人の意思があれば第三者の選択も可能です。本来認められない知人や関係者の他、団体への相続も指定できます。故人との関係性が限定される規定はなく、本人による記載事項が認められると有効化する仕組みです。
場合によっては、遺産相続の過程で事務的な手続きを必要とするケースがあります。このとき「遺言執行者」を指定することで、一連の手続きを委任することが可能です。相続登記や子どもの認知届など、法的な手続きをスムーズに済ませるために重要となります。未成年は、法定相続人であっても遺言執行者として認められないため注意しましょう。
法定相続人に該当する方が未成年の場合、後見人を指定することで財産の管理を委任できます。十分な判断ができない相続人に対して、第三者が適切に財産を管理するための仕組みです。遺産相続の他、以下の内容も後見人の責任として扱われます。
・預金通帳の管理
・年金や公共料金など、収支関係の管理
・不動産の管理や処分方法の決定
生命保険に加入していた故人の遺族は、あらかじめ定められた保険金の受け取りが可能です。すでに受取人を指定している場合でも、遺言書に変更の旨を記載することで別の方へ分与できます。保険会社との契約内容によっては変更が反映されない可能性もあるため、早い段階での意思表明が重要です。
遺言書は自分の財産の分け方を自由に決められるほか、死後の財産分配に関する相続人の間での不要なトラブルを回避する効果もあります。
ただし、遺言書は民法にしたがった正しい書き方で作成しないと効力を発揮しません。ここでは、遺言書作成にともなって押さえておきたいポイントを解説します。
遺言書には以下の3種類があり、それぞれ書き方が異なります。
・自筆証書遺言
・公正証書遺言
・秘密証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言者が遺言書の全文を「自筆」で作成するものです。自筆証書遺言は特別な手続きが必要なく遺言者一人で作成が完結するため、遺言書の中ではもっとも手軽といえるでしょう。
一方公正証書遺言は、公証役場で二人以上の証人の立ち会いのもと、公証人が遺言者の発言を聞き取りながら遺言書を作成します。
秘密証書遺言の場合も公正証書遺言と同様に公証役場での手続きとなりますが、こちらは遺言書を作成するのは遺言者本人です。作成後、遺言書を二人以上の証人と一緒に公証役場に提出することで、遺言書の効力を保証できます。
遺言書の作成にかかる費用は以下のとおりです。
・自筆証書遺言:0円
・公正証書遺言:相続財産の価額に応じて決まり、100万円以下~1億円で5,000円〜4万3,000円。相続人ごとに分配金額に応じた費用が必要です。
・秘密証書遺言 11,000円
(参考:『公正人手数料令第9条』)
遺言書は、民法の規定に沿った形式で作成しなければ法的効力がありません。これは民法の第960条で「遺言は、この法律に定める方式に従わなければすることができない」と定めているとおりです。
民法では遺言の方式や効力、失効、取消などのさまざまな規定を設けています。遺言書を作成する際には、民法上の遺言の要件をきちんと確認することが重要です。
遺言書は、全ての事例で必要になるというわけではありません。原則的なルールにのっとったかたちで問題ないのであれば、作成する必要性も低いといえます。遺産相続の対象や割合などを決めたい場合や、家族関係が複雑な場合は作ったほうが安心です。遺言書の必要性について、作成するタイミングと併せて解説します。
遺言書は、あくまでも故人の意思を尊重して相続を決定するための書類です。作成は任意であり、「遺言書がなければ相続できない」というものではありません。自分の意思で作成を決定できます。
ただし、作成するのであれば正しいルールを反映する必要があります。不適切な内容が認められた場合、希望していた形と異なる結果を招くかもしれません。家族に迷惑をかける可能性もあるため、作成する予定がある方は規定の理解も大切です。
第三者への相続を希望する方や、分与の割合を法定相続とは異なる形にしたい方は遺言書を作成したほうがよいでしょう。あらかじめ備えておきたいのは以下のような場合です。
・法定相続人に該当者がいない
・子どもがいない
・配偶者や子どもに相続させる割合を変更したい
・財産を渡したくない人がいる
・非嫡出子(隠し子)がいる
・内縁関係にある
・不動産を所有している
家族関係が複雑な場合、亡くなった後に家族間でトラブルが発生するケースもあります。自分自身に特別な希望はなくとも、状況に応じて作成が必要といえるでしょう。
作成時期に明確な規定はありませんが、可能な限り早い段階で書いておけると安心です。寿命で亡くなる以外にも、病気や交通事故などさまざまなきっかけが考えられます。直前になって「作っておけばよかった」と後悔しないよう、早めの作成を心がけましょう。
認知症などで判断力が低下した場合、その時点で作成しても遺言書として効力を持たない可能性もあります。正式に作成した後でも撤回・変更は可能です。必要であれば家族との相談を重ね、万が一の事態でも適切に対応できる環境を整えましょう。
遺言書には、書き方や手続きの方法などの違いによる種類があります。遺言者本人が自筆で作成するか、証人に立ち会ってもらうかなど、種類によって異なる規定に注意が必要です。選択した種類によって適切な書き方も変わるため、それぞれのルールと記載方法を理解しておきましょう。4つの項目に分けて詳しく解説します。
遺言書を、自分自身で執筆する方法が「自筆証書(じひつしょうしょ)遺言」です。相続に関する記載内容を有効化するためには、以下の規定に沿う必要があります。
・実印、認印、母印のいずれかの押印
・日付や氏名など全文が自筆(財産目録の自筆は不要)
自筆証書遺言は、遺言者が15歳以上で自筆と押印ができれば自分1人で作成できるため、実践しやすい形式ともいえるでしょう。特別な手続きなどは必要なく、遺言書の中でも簡易的な方法です。平成31年の法改正によって財産目録に限り自筆でなくても構わないことになりましたが、それ以外の全文、氏名、日付の執筆、押印は遺言書本人が行う必要があります。
作成した日時は必要ですが、この他に指定されるフォーマットはありません。氏名・日付など最低限の情報が十分であれば、遺言書としての効力を持ちます。相続人は遺言書を見つけたら、開封前に家庭裁判所の「検認」を受けましょう。
遺言者が希望する内容を、公証人が聞き取りながら作成するのが「公正証書(こうせいしょうしょ)遺言」です。以下のような規定が設けられています。
・公証役場の公証人に依頼する
・証人2人以上の立ち合いが必要
・印鑑証明書や戸籍謄本といった書類の提出
個人で作成するケースとは異なり、専門的な知識を反映できる点が特徴です。複雑な内容があり相続に不安がある場合でも、公証人に相談することで適切な遺言書を作成できます。亡くなってから「効力を持たない」と判断されるリスクが少ないため、信頼性の高い形式ともいえるでしょう。
公証人への依頼や作成の段階では、少なくとも2度は公証役場に行く手間が発生するため、時間的コストが発生します。完成するまでに長期間を要するケースもあるため、早いタイミングから着手できると安心です。
自分以外の家族や第三者などに知られることなく作成できるのが「秘密証書(ひみつしょうしょ)遺言」です。遺言者のみで作成可能な自筆証書遺言と、有効性を高めやすい公正証書遺言のメリットを兼ね備えた仕組みともいえます。
作成の段階で公証人は必要なく、事前に内容を開示する義務もありません。あらかじめ完成させた遺言書を公証役場に提出し、書類そのものの存在を認めてもらう仕組みです。
手続きの際に内容を見せる必要がないため、記載方法やフォーマットも自由に作成できます。自筆の他、パソコンでの作成や代筆の依頼も可能です。「家族に知られないまま遺志を遺したい」という場合に魅力的な方法といえるでしょう。ただし、遺言自体は公証人は保管しないため自身で保管しなければならないことや、開封時には家庭裁判所の検認を受ける必要があることに注意しなければなりません。
なんらかの原因で緊急の対応が必要になった場合に作成することができるのが、「特別方式遺言書」です。具体的には以下の4パターンがあり、条件を満たすことで効力を発揮します。
遺言書の区分 | 想定されるケース | 条件 |
一般危急時遺言 | 病気などで死亡の危機にある場合 | 3人以上の証人が立ち会う |
一般隔絶地遺言 | 外界から隔絶されている場合 | 警察官1人と証人1人以上が立ち会う |
難船危急時遺言 | 船舶や飛行機が遭難し、死亡の危機にある場合 | 証人2人以上が立ち会う |
船舶隔絶地遺言 | 船舶中で外界から隔絶されている場合 | 船長または事務員1人と証人2人以上 |
特別方式遺言書は公証役場に足を運べない状況において有効化できる方法です。必要な証人の数がそれぞれ異なる点も理解する必要があります。
遺言書は、種類によって書き方が異なります。また遺言者個々の財産状況によっても書面に書く必要のある項目は変わってくるため、注意が必要です。ここでは、遺言書の3種類である「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」それぞれの文例をご紹介します。
遺言書
遺言者◯◯◯◯は、この遺言書によって妻◯◯△△、長女◯◯◇◇、次女◯◯☆☆に次の通りに遺言する。
1.現金5,000万円を妻◯◯△△に相続させる
2.現金2,500万円を長女◯◯◇◇に相続させる
3.現金2,500万円を次女◯◯☆☆に相続させる
4.ここに記載のない財産のすべては、妻◯◯△△が相続するものとする
遺言者◯◯◯◯は、下記のものを遺言書の執行者に指定する。
住所 東京都渋谷区恵比寿◯-◯◯-◯
職業 司法書士
遺言執行者 ●●●●
記
令和元年12月1日
住所 東京都目黒区青葉台◯-◯◯-◯
遺言者 ◯◯◯◯ 印
遺言書
遺言者●●●●は、次の通り遺言する。
第1条 次の者は、私と内縁の妻◆◆◆◆(昭和45年6月20日生)との間に生まれた子であるため認知する。
住所 神奈川県高崎市相生町○○-○○-○○
氏名 ××××××
生年月日 平成元年9月9日
本籍 神奈川県高崎市相生町○○-○○-○○
戸籍筆頭者 ◆◆◆◆
第2条 私は、A銀行の遺言者名義の下記預貯金債権を、認知した××××××に相続させる。
普通預金
支店番号 98765
口座番号 4321987
定期預金
支店番号 65432
口座番号 1098765
令和元年12月1日
東京都中央区日本橋○○-○○-○○
※公正証書遺言文書作成は都度専門家が作成してくれるので今回は割愛します。
遺言書を作成する際は、遺言の内容をきちんと精査することが大切です。遺言書の内容の不備や間違いは、後々相続トラブルを引き起こす危険性があります。ここでは、遺言書に関するトラブルを避ける方法を解説します。
遺言書を作成する際は、相続人個々への分配割合をしっかりと考えて明確にしておきましょう。もしすでに書き留めた遺言書の内容を変更・撤回したくなった場合には、以下の対処で遺言の取り消しができます。
・自筆証書遺言・秘密証書遺言 古い遺言書を破棄
・公正証書遺言 公証役場が遺言書を保管しているため、既存の遺言書を破棄してから前回の遺言を取り消す旨を記した新しい遺言書を作成
遺産相続をスムーズに遂行するためには、信頼できる弁護士への依頼がおすすめです。個人で遺言書を作成すると、どうしてもミスが起きやすくなるでしょう。
弁護士に遺言書作成を依頼すれば遺言書の不備による後々の相続トラブルが避けられます。万が一相続トラブルが起こっても弁護士が代理人として交渉を行ってくれるため、円滑に事態を収拾できるでしょう。
故人に借金などのマイナスの財産があった場合、相続人は遺産相続を放棄するのも選択肢のひとつです。ただし相続放棄をする場合は、マイナスの財産とプラスの財産のすべてを放棄することになります。
相続放棄には、必ず家庭裁判所への「相続放棄申述書」の提出が必要です。家庭裁判所での手続きをしていない場合は、法定相続分に応じて財産を相続しなければいけなくなるため注意が必要です。
遺言書は民法の規定にしたがって作成したものでなければ、遺言書として機能しません。遺言書に不備があれば、遺言者が望む財産分与は叶わなくなってしまいます。ここでは、無効となる遺言書のケースについて確認していきましょう。
「公証人や証人が不要な方法で作成したい」という場合は、日付から具体的な内容まで自分で記入する必要があります。パソコンに打ち込むほうが簡単に感じるかもしれませんが、自筆証書遺言では認められない点を把握しておきましょう。
内容自体に問題がなくても、「自筆ではない」という理由で効力を失います。なんらかの理由で執筆できない場合は、自筆証書遺言以外の手段を選択しましょう。人が書いた文字でも、遺言者本人の筆跡でなければ認められません。ただし、平成31年の民法改正によって、「財産目録」のみ自筆でなくてもよいこととなったので覚えておきましょう。
配偶者と同様の内容を希望する場合でも、2人以上が共同で遺言書を作成する行為は認められません。記載内容に問題がなくても、2人分の署名・押印がされている書類は無効です。家庭環境などを問わず、1人が遺言者となるルールを理解しておきましょう。
共同での作成が無効化されるのは、個人の意思を尊重するためです。他の遺言者によって内容が確定されたり、変更できない状況に陥ったりといったケースを防ぐ目的があります。ただし、それぞれが別紙に記載して同封した場合は有効です。
日付・日時を記載していない遺言書は、無効です。遺言書の日付の書き方には決まりはないため、「○年○月○○日」のように日時がはっきりと分かる表記で書き添えましょう。「◯年◯月吉日」というような、日時が特定できない曖昧な表記も無効です。
日付以外の内容が適切であっても、書類そのものが遺言書として扱われない点に注意しましょう。相続内容を意識しすぎて忘れる可能性もあるため、本文を書き始める前に記入しておくと安心です。
一般的な手紙とは異なる性質を持つ遺言書は、加筆や修正に関するルールも厳密です。修正によって無効になるわけではありませんが、可能であれば新たに作成したほうがよいでしょう。作成日以降に変更が加えられた場合、該当箇所に押印して変更点を説明する必要があります。
「どこをどのように加筆・修正したか」が明記されていない場合、無効化されるケースがあるため注意しましょう。作成途中にミスが発覚した場合でも、別紙を用意して再度書き始めるほうが安心です。
民法では、録音による遺言は認めていません。これは録音の場合は編集が容易であることや、声が遺言者本人のものであるのかを確かめることが難しいなどの理由によるものです。
民法では、レコーダーのような偽造・変造が容易なものによる遺言を厳しく禁じているので注意しましょう。
遺言者が「遺言をするために十分な能力がない」と判断された場合、遺言書の内容が法的に認められないケースもあります。把握しておきたいのは、記載内容ではなく作成当時における本人の状態が影響する点です。
例えば、遺言者が認知症を発症していたケースが想定できます。遺言書の内容には法的な問題がなくても、遺族などから「遺言能力がない状態だった」と訴えられるかもしれません。遺族の主張が認められると、作成した遺言書は無効となります。
亡くなった方の過去を証明するのは困難です。遺言能力の観点から不安を感じる場合は、公証役場で遺言書の効力を承認してもらったほうがよいでしょう。作成時の動画撮影など、客観的な映像データも証拠として有効です。
相続に関する内容が具体的に決まっている状況でも、書面に反映できなければ元も子もありません。自分以外の家族や第三者が読んでも理解できるよう、正確な内容を詳しく記載しましょう。
不動産の相続を想定した場合、住所だけでなく家屋番号や底面積といった情報も求められるケースがあります。複数の不動産を所有している方は特に注意が必要です。あいまいな内容で確証を得られない場合は、遺言書が法的な効力を持たないと判断されるかもしれません。
証人を立てる場合、未成年や配偶者でない第三者を選ぶ必要があります。以下のような関係にある方は証人になれないため、要件の詳細も確認しておきましょう。
・未成年
・推定相続人や直系血族
・公証役場の職員
・公証人(遺書作成者)の配偶者
・4親等内の親族
子どもやきょうだいの他、孫や祖父母も要件を満たしません。上記の無効要件以外であれば、特別な手続きがなくても証人として立てて公正証書遺言を作成できます。2人以上の証人を必要とするため、遺言書作成を決めた段階で早めに準備できると安心です。
「他に証人となる人がいない」という状況でも、両親や子どもを証人とするのは適切ではありません。後に発覚すると、一度認められた内容でも無効となります。
遺言書を作成した後で注意したいのは、書類の保管場所です。明確な規定はありませんが、紛失のリスクが低い場所を選ぶ必要があります。自宅での保管が不安な場合は、法務局などの公的機関や貸金庫といった選択肢も視野に入れておきましょう。7つの保管場所をピックアップし、それぞれのメリット・デメリットを解説します。
保管方法の中でも選択しやすく、コストがかからない場所が遺言者本人の自宅です。誰かに任せず独断で決められるため、「遺言書の存在を明らかにしたくない」という方にも向いています。ただし、気付かずに処分したり、必要なときに発見されなかったりといったリスクには注意しましょう。
メリット | デメリット |
・特別な手続きが不要 ・自室の引き出しなど好きな場所を選べる ・コストがかからない |
・誤って処分するリスクがある ・亡くなった後に発見されない可能性がある |
1人で保管し続けるのが不安な方は、あらかじめ相続人に預けておくのもおすすめです。配偶者や子どもといったように複数人と保管場所を共有すると紛失のリスクも軽減できます。単に自分1人で保管するよりも安心度の高い方法といえるでしょう。生前に開封すると、遺言が無効になる点には注意が必要です。
メリット | デメリット |
・亡くなった直後に利用できる ・自宅で保管できる ・コストがかからない |
・亡くなる前に開封すると無効になる |
2020年、法律の改正によって法務局での保管が認められるようになりました。自宅での保管中に紛失したり、第三者によって改ざんされたりするリスクを軽減できる制度です。
作成時に存在を知らない相続人も、1人が交付を請求すると全体に通知されます。相続人全員が知らないままでは交付申請を行わない可能性があるため、いずれかの相続人と共有しておいたほうがよいでしょう。
メリット | デメリット |
・紛失リスクを軽減できる ・遺言書の存在を知らない相続人にも通知できる ・家庭裁判所の検認が不要 |
・保管そのものに気付かない可能性がある |
公証人を介して作成する場合は、原本を公証役場に保管できます。自分で保管する場所を考える必要がなく、改ざんを防止できる点がメリットです。ただし、作成までに時間を要するため不安を感じる可能性もあります。記載する財産の金額によって、手数料が変動する仕組みも理解しておきましょう。
メリット | デメリット |
・紛失や改ざんを防止できる ・遺言書の内容が無効になりにくい ・亡くなった後の検認が不要 |
・公証人との打ち合わせなど手続きが必要 ・証人が2人必要 ・手数料がかかる |
公的な機関に遺言書を預ける方法の他、専門家に依頼して預かってもらう選択肢もあります。弁護士が代表的な例で、作成の段階から相談できる点がメリットといえるでしょう。
専門家に依頼する場合は、保存場所が分からなくなるリスクを抑えるために相続人に共有しておくと安心です。
メリット | デメリット |
・紛失や改ざんを防止できる ・法的な知識を遺言書に反映できる |
・亡くなった旨を専門家に伝える必要がある ・専門家が遺言者より先に亡くなる可能性がある |
「自由に保管したいがセキュリティ面が心配」という方は、貸金庫を活用してもよいでしょう。貸金庫を提供する銀行と契約し、作成した遺言書を保管する方法です。
安全性が高い反面、亡くなった後に家族の負担を増す可能性があります。死亡直後に貸金庫も利用できなくなるため、手続き方法や必要書類をあらかじめ把握しておきましょう。
メリット | デメリット |
・火事や震災の影響を受けにくい ・紛失や改ざんを防止できる |
・亡くなった後に開けるための手続きが必要 ・相続人の身分証明も必要 |
遺言書を保管する方法のうち、金銭的なゆとりがある方に適したシステムが「遺言信託」です。信託銀行と契約して保管してもらうサービスで、作成から執行まで依頼できる場合もあります。保管中にもコストが発生するため、資産家向けに提供されるサービスといえるでしょう。金銭面よりも信頼性を重視したい方におすすめです。
メリット | デメリット |
・書類の作成も依頼できる ・紛失や改ざんを防止できる |
・保管のみを依頼できない ・手数料や保管料が高額な傾向にある |
遺言書に関係する法律の中には、相続人の権利を守る規定もあります。極端に不平等な相続を避けるためのルールでもあるため、知識を蓄えておきましょう。遺言書の種類によっては、開封のタイミングも注意が必要です。ここからは、相続人として理解しておきたいポイントを2つご紹介します。
遺言者が記載した内容のうち、相続人にとって不利となるものを適切に対処する制度が「遺留分侵害額請求」です。代表的な例には、以下のようなケースが考えられます。
・4人のきょうだいに対し、長男のみ相続可能な記載があった
・配偶者にのみ相続し、3人の子どもには適用されない
・明らかに不当な割合での分与が記載されていた
法的に定められる遺留分が受け取れない場合、請求権の行使が可能です。金銭的なトラブルにつながる要素でもあるため、最低限の平等性が図れる相続割合は理解しておきましょう。
自筆証書遺言など、公証役場に提出しない方法を選んだ場合は「検認手続き」が必要となります。遺言書の内容や効力の有無を確認するため、家庭裁判所で行う決まりです。独断で開封した遺言書は無効となるため、適切な流れを把握しておきましょう。
事前の手続きが求められるのは、相続人による改ざんを防ぐためです。具体的な内容は担当者と共に確認します。自宅や貸金庫など任意の場所で保管する場合は、安易に開封せず裁判所まで足を運びましょう。
「小さなお葬式」では、無料の資料をご請求いただいた方全員に「喪主が必ず読む本」をプレゼントいたします。
喪主を務めるのが初めてという方に役立つ情報が満載です。いざというときの事前準備にぜひご活用ください。
\こんな内容が丸わかり/
・病院から危篤の連絡がきたときの対応方法
・親族が亡くなったときにやるべきこと
・葬儀でのあいさつ文例など
「小さなお葬式」では、お電話・WEBから資料請求をいただくことで、葬儀を割引価格で行うことができます。お客様に、安価ながらも満足できるお葬式を心を込めてお届けいたします。
小さなお葬式は全国4,000ヶ所以上※の葬儀場と提携しており、葬儀の規模や施設の設備などお近くの地域でご希望に応じた葬儀場をお選びいただけます。(※2024年4月 自社調べ)
遺言書は自分の財産をどのように残したいのかを示す、遺言者の意思表示です。遺言者の希望を叶えることはもちろんのこと、死後の不要な相続トラブルを避けるためにも、遺言書は規定に則った正しい形式で作成するようにしましょう。
ささいな疑問はぜひ「小さなお葬式」までご相談ください。専門知識を持つスタッフが、お悩みに寄り添い丁寧にアドバイスいたします。
お亡くなり後の手続き・直近の葬儀にお悩みの方は 0120-215-618 へお電話ください。
日付が違う遺言書が出てきた場合どうすればよいの?
拇印はどの指ですればよいの?
遺産をすべて1人に相続させると書かれていた場合はどうなるの?
相続人が放棄した遺産はどうなるの?
英語で遺言書を書いても大丈夫なの?
パソコンで書いた遺言状は有効なの?
人が亡くなった後に行う死後処置と、死化粧などをまとめて「エンゼルケア」と呼びます。ホゥ。