仏教には多くの宗派があり、それぞれ葬儀の特徴やマナーが異なります。何も知らずに曹洞宗の葬儀に参列し、ほかの宗派とは異なる点に戸惑ったという方もいるのではないでしょうか。今回の記事では、特徴的な曹洞宗の葬儀について見ていきましょう。曹洞宗は禅宗の一派なので、禅宗ならではの特徴がある宗派です。
葬儀の意味やほかの宗派との違い、マナーなどについても総合的に解説します。菩提寺が曹洞宗の方や、曹洞宗の葬儀に参列することになった方は、あらかじめ確認しておきましょう。この記事を読めば、曹洞宗の葬儀について詳しく理解できます。
<この記事の要点>
・曹洞宗の葬儀は釈迦牟尼仏の弟子になるためのもので「授戒」と「引導」の儀式が特徴的
・曹洞宗の葬儀では剃髪から初七日法要まで8段階の儀式が行われる
・香典袋の表書きには「御霊前」がよく使われている
こんな人におすすめ
曹洞宗(禅宗)とはどのような宗派なのかを知りたい方
曹洞宗(禅宗)の葬儀の特徴と他宗派との違いを知りたい方
曹洞宗(禅宗)葬儀の作法やマナーについて知りたい方
曹洞宗は、禅宗に属する宗派のひとつです。中国の僧である天童如浄(てんどうにょじょう)から教えを受けた道元禅師が教えを伝え、瑩山禅師が日本に広めました。
ご本尊は釈迦牟尼仏で、般若心経や修証義がよく使われる経典です。これらの経典は葬儀でも多く読まれます。
禅宗の一派なので、座禅を重視しているのが特徴でしょう。曹洞宗の教えでは、信徒各自が座禅によって悟りを開くことが重要です。寺院においては坐禅会が開催され、多くの場合は檀家だけでなく地域住民にも広く開放されています。
曹洞宗とほかの宗派の葬儀の違いが気になっている人もいるかもしれません。ここでは、主流となっている仏教宗派別に葬儀の特徴をチェックしていきましょう。
曹洞宗の葬儀には特徴的なポイントがいくつか存在します。参列する段階になって迷わないためにも、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
曹洞宗の葬儀は、死後に本尊である釈迦牟尼仏の弟子になるためのものです。したがって、弟子になるために必要な「授戒」が行われます。悟りを開くためには仏の道に入る必要があるため、「引導」と呼ばれる故人を仏の道に導く儀式も行われるでしょう。曹洞宗をはじめとした禅宗系列の宗派では、「授戒」と「引導」が特徴的なポイントです。
浄土宗には、専修念仏(せんじゅねんぶつ)と呼ばれる教えがあります。専修念仏は、念仏を唱えれば仏が救済してくれて往生できるという教えです。曹洞宗のような禅宗系列の宗派では、座禅による修行を重視しているため、ほかの宗派と教えが大きく異なるといえるでしょう。
浄土宗の葬儀では、参列者一同で念仏を唱える儀式があります。葬儀の基本的な意味は、故人を仏弟子として往生させることです。この点においては、曹洞宗と変わらないといえるでしょう。
浄土真宗では、故人は亡くなるとすぐに浄土に導かれると考えています。したがって、葬儀においても成仏を祈ることはありません。葬儀は故人のためのものではなく、遺された家族のためのものという考え方も特徴的です。
授戒という考え方が存在しないのも、曹洞宗とは異なるポイントといえるでしょう。浄土真宗の葬儀は、ほかの宗派と比べると比較的簡素です。
日蓮宗の葬儀では「南妙法蓮華経」と呼ばれる題目を唱えることが重要とされています。題目を唱えることで信心深さを示し、往生できると考えられているためです。
日蓮宗の葬儀において重要なポイントは「開棺」と「引導」です。「開棺」では棺のフタを叩きながら読経し、お供えものを捧げます。開棺の儀式は曹洞宗にはありません。
真言宗には、ひたすら真理を学ぶことによって救いの道が開くという教えがあります。葬儀では「灌頂(かんじょう)」と「土砂加持(どしゃかじ)」という儀式があるのが特徴的といえるでしょう。
「灌頂」は故人の頭に水を注ぎ、苦悩を清めて取り除くために行われます。「土砂加持」は土砂を清め、その上で護符を燃やしながら明真言を唱える儀式です。清めた土砂は最後にお墓に撒くことによって、故人の罪がすべて許されると考えられています。
天台宗の葬儀の特徴は、「顕教法要(けんぎょうほうよう)」、「例時作法」、「密教法要(みっきょうほうよう)」の3つです。「顕教法要」では、法華経を唱えることによって罪を悔い改めます。天台宗では、懺悔して罪を悔い改めれば仏性を高められると教えているためです。
「例時作法」では、故人を往生させるために読経します。「密教法要」では僧侶が決められた印を結び、光明真言や回向を唱えながら故人を供養するものです。天台宗にも曹洞宗と同様に、授戒と引導の儀式が存在します。
臨済宗は、曹洞宗と同様に禅宗に属する宗派のひとつです。葬儀の内容も曹洞宗と似ている部分があり、「授戒」・「念誦」・「引導」の3つの部分から構成されています。
葬儀では最初に剃髪を行い、懺悔文を捧げて故人の罪を告白します。その後は仏の教えを守ることを誓い、清めの儀式を行います。これらの儀式がすべて完了すると故人が仏門に入るというのが、臨済宗の教えです。
曹洞宗における葬儀の流れを詳しく見ていきましょう。実際に参列する際には、迷わないようにあらかじめチェックしておくのがおすすめです。今回は、剃髪から初七日法要までの8段階を順番に確認していきましょう。
剃髪は、故人を仏弟子とするために髪を剃る儀式です。髪を剃るのは、導師と呼ばれる僧侶が行います。
剃髪の儀式を行っている間は、「剃髪の偈」と呼ばれる偈文を3回唱えるのが特徴です。同時に祭壇で香が焚かれるでしょう。剃髪は授戒作法のひとつとされています。
授戒にはいくつかの段階があるため、ひとつずつチェックしていきましょう。最初に行われる儀式は「洒水(しゃすい)」と呼ばれ、清めた水を故人に供えるものです。
洒水が終わると、「懺悔文(さんげもん)」という故人の罪を悔いあらためる儀式が行われます。次の儀式は「三帰戒文(さんきかいもん)」です。三帰戒文は、釈迦牟尼仏の教えを守るという誓いを立てて仏道に入るために行います。
その後は「三聚浄戒(さんじゅうじょうかい)」・「十重禁戒(じゅうじゅうきんかい」と続くでしょう。これらの儀式は聖水を位牌に注いで清めるものです。授戒の最終段階は「血脈授与(けちみゃくじゅよ)」で、釈迦牟尼仏から故人にいたるまでの系図が記されたものが捧げられます。ここまでの儀式がすべて終わると、授戒の儀式は完了です。
入棺諷経では、僧侶が「大悲心陀羅尼(だいひしんだらに)」という回向文を唱えはじめます。僧侶が回向文を唱えている間に参列者が順番に焼香を行うため、順番がきたら焼香を行いましょう。
読経と参列者の焼香がすべて終わったら、「入棺諷経」という言葉を唱えて終了です。読経中に焼香をすべて終わらせるのが基本といえるでしょう
挙龕念誦では、仏具を鳴らして邪気を払う儀式です。この段階でも引き続き読経が行われるでしょう。読経の内容は「大悲心陀羅尼」から「大宝楼閣陀羅尼(だいほうろうかくだらに)」に変更されます。
「大宝楼閣陀羅尼」を唱えながら太鼓や鐃祓(にょうはち)というシンバルに似た楽器を鳴らすのが特徴です。この儀式は鼓鈸三通(くはつさんつう)と呼ばれます。
引導法語は、僧侶が故人を仏の世界に導く儀式です。松明を灯して時計回り・反時計回りの順番で円を描きながら漢詩を唱え、故人に法語を送ります。法語は故人の生前の行いをたたえ、悟りの心境を表したものです。
引導法語は、故人の迷いと邪気をすべて払うためのものといえます。曹洞宗にとって、故人が迷わずに仏道に進むための大切な儀式です。
山頭念誦は、これまでの儀式で仏弟子して迎え入れられた故人が無事に仏になるために行います。故人の仏としての性質が覚醒するように祈願する儀式といえるでしょう。
山頭とは墓地を示す用語ですが、出棺前に行われる儀式であるため、斎場などの葬儀をとり行っている場所で行われます。
山頭念誦までの儀式がすべて完了したら出棺です。出棺の際には棺を開け、故人を偲ぶ品を供えます。
火葬前に故人とお別れする儀式なので、回向文を唱えつつ仏具を鳴らして送り出すのが特徴です。出棺の荘厳さが曹洞宗の葬儀における特徴的なポイントといえるかもしれません。火葬が終わったら納骨します。
初七日法要は命日を1日目として数えた際に、7日目にあたる日に行われる法要です。場合によっては火葬後すぐに行われることもあり、 繰り上げ初七日法要と呼ばれます。初七日法要は法要の中で最初に行われるもので、故人が無事に浄土にたどり着けるように祈るものです。
通常どおり7日目に行われるのか、火葬後すぐに行われるのか不明な場合は世話役などに確認する必要があります。
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曹洞宗における葬儀の作法やマナーについて見ていきましょう。疑問に思いがちなポイントは「お布施」「香典」「焼香」の3つなので、あらかじめチェックしておくことをおすすめします。
曹洞宗の葬儀に参列した際に、知らないうちにマナー違反を行ってしまわないように注意しましょう。
お布施とは、葬儀に来てもらう僧侶に対してお礼として渡す献金です。相場は20万円~60万円とされています。
お布施の相場は寺院や僧侶によって異なる場合があるので注意が必要です。不安な場合は、あらかじめ寺院に質問することをおすすめします。
曹洞宗では不祝儀袋に通常の濃い墨を使い「御布施」、または「お布施」と表書きするとよいでしょう。渡すタイミングは斎場に僧侶が到着した場合か、葬儀が終了したあとのいずれかです。切手盆と呼ばれる黒いお盆にのせて僧侶に渡すのがマナーとされているため、しっかり覚えておきましょう。
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香典に関するマナーには、曹洞宗独自のものはありません。葬儀の際に使われる表書きは「御霊前」・「御香典」・「御香料」のいずれかが用いられます。これらの表書きのなかで、よく使われるものは「御霊前」です。薄墨で書くなどの一般的なマナーを守って必要事項を記載すれば問題はありません。
香典袋は、白黒もしくは双銀の結び切りのものを使用します。香典として包む金額は故人との関係によって異なりますが、5,000円~10万円です。
葬儀中に行われる焼香の作法は、宗派によって大きく異なります。曹洞宗の焼香の作法は次のとおりです。
・自分の番が来たら、焼香台の前に進みましょう。
・焼香台の手前で止まり、本尊・遺影・位牌の順に一礼します。
・一礼が済んだら焼香台に進み、右手で香をつまみましょう。
・続いて左手を添えて額に持っていきます。そのまま念じ、焼香を行いましょう。
・1回目の焼香が終わったら、そのまま2度目の焼香を行います。2回目は手を額に持っていかないのがマナーです。
・2回目の焼香が終わったら数珠を両手にかけて合唱し、礼拝してから戻りましょう。
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今回は、禅宗のひとつである曹洞宗の葬儀について紹介しました。曹洞宗の葬儀は「授戒」と「引導」があり、ほかの宗派にくらべて儀式が多く荘厳にとり行われるのが特徴です。
実際に参列する際に迷ってしまわないためにも、あらかじめこの記事で紹介したポイントを押さえておくことをおすすめします。
慣れない葬儀への参列のマナーなど、葬儀に関してわからないことがある場合は、ぜひ小さなお葬式にご相談ください。曹洞宗にも対応しています。
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