孤立した状態で死亡した人間が長い間放置されていると体が腐敗していく、とテレビ等で紹介されているのを見たことがある方もいるでしょう。
どうして人間の体は生きているときには腐敗しないのに、死亡した後は腐敗していくのでしょうか。また、死亡してから腐敗するまで発見が遅れることには何か理由があるのでしょうか。人間の遺体が腐敗するまでの過程を知れば、大切な方の遺体を傷めずに対応できるでしょう。
この記事では、人間の遺体が死亡後どのような変化をしていくのか、そして、孤立して死亡されている方を見つけたときにとるべき行動について解説します。現在、遺体の腐敗について疑問を抱えている方は、ぜひ参考にしてください。
<この記事の要点>
・人間の遺体は死亡後、一定の過程を経て腐敗する
・孤立死とは、社会や親族との関わりが一切なく、死亡したときも誰からも看取られなかった状態のこと
・生死の判断ができない方を発見したときはすぐに救急車を呼ぶ
こんな人におすすめ
死亡後の人間の体に起こる変化について知りたい方
腐敗した遺体がもたらす弊害を知りたい方
孤独死・孤立死について知りたい方
死亡した後、そのまま放置されている遺体は徐々に腐敗していきます。では、どのようにして腐敗していくのでしょうか。放置された遺体は下記のように変化していきます。
人間は死亡すると心臓が止まるので、必然的に血液の流れも止まり、血液は体の地面に近い部分へと溜まっていきます。この血液が皮膚から透けて見えるものが「死斑」です。地面より離れた部分の皮膚は青白くなっていきます。
死斑は、死亡後30分前後でまばらにでき始め、3時間ほど経つとその死斑は1つの死斑へとまとまるでしょう。さらにそこから20時間以上経過すると、死斑は固定されます。
死亡してから2時間ほど経つと、体の中では生きているときには起こらない化学反応が起こり、関節が動かなくなって筋肉が硬直します。この現象を「死後硬直」といいます。
初めに硬直するのは顎関節です。そこから順番に身体中の筋肉が硬直し始め、8時間ほど経つと手足の先まで硬直します。しかし、その時点では外部から力を加えて伸ばすとまだ柔らかくなります。その後は再度硬直し始め、さらに10時間ほど経つと硬直のピークに達します。
死後硬直がピークに達すると、次に体の腐敗が始まります。初めに腐敗していく部位は胃や腸の消化器系です。本来は食べたものを消化する胃液等が、死亡後は胃や腸そのものを溶かしてしまいます。
そこからさらに放置していると腸内の細菌と胃腸の融解が進み、それに伴い全身の腐敗も進みます。その際に、体内で発生する腐敗ガスの中に含まれている成分が反応を起こすことで、遺体の腹部は徐々に淡い青色に変色していきます。やがて全身が淡い青色に変色すると、全身に溜まった腐敗ガスによって体は徐々に膨れ上がっていきます。
最終的には全身は暗い褐色に変色し、さらに時間が経つと徐々に黒へと変色します。このときの体からは、腐敗汁が溢れ出ており、肌は溶けて次第に骨が露出し始めるでしょう。
死亡して2時間ほど経つと、体温は徐々に低下していき、次第に気温と同じ体温となるでしょう。人間は死亡すると代謝がなくなり、再生熱がなくなることによって体温が下がります。
体の腐敗が進行すると、遺体の外面には腐敗性水泡が発生します。その中に含まれているものは、ヘモグロビンを含んだ液体と腐敗ガスです。この腐敗性水泡は時間が経つと破れてしまい、遺体は表皮が剥がれて皮下にある真皮が確認できる状態になります。
腐敗ガスは死亡してから数時間の間は胃腸に留まっていますが、2日ほど経つと全身の皮下組織や臓器などにも発生してしまいます。
上記のような腐敗ガスが大量に発生しているような状態を「ティシューガス」といい、ティシューガスは強い腐敗臭を放つと共に遺体の静脈を膨れさせます。この圧に耐えきれなくなった肛門は徐々に開いていき、便が漏れ出てきます。
皮下気腫とは、皮膚の組織内に空気が溜まっている状態のことを指します。死亡直前に肺や気管から漏れ出たガスなどが原因です。人間は死亡した後、適切な処置を行ってもらえず長い期間放置された場合、上記のような変化が身体中に現れます。
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腐敗した遺体を放置していると、以下のようにさまざまな悪影響を及ぼしてしまいます。
・死臭が漂う
・蛆虫等が発生する
・部屋が住める状態ではなくなる
このような二次被害はできるだけ起きないようにすることが大事です。ここからは腐敗した遺体を放置していると起きることについて1つずつ解説します。
人間の遺体は放置していると腐敗するため、必然的に腐敗臭が発生します。この腐敗臭は強く鼻をつくような臭いなので、いくら部屋を締め切っていても徐々に屋外へと漏れ出てしまうでしょう。
さらに、臭いが移りやすいという特徴もあるため、近隣の住宅へ臭いが届いてしまいます。自分の住居の近くで遺体が腐敗していると考えると、被害は腐敗臭だけにとどまらない可能性もあります。
万が一腐敗臭を放っている遺体を発見してしまったら、決して換気をしないようにしましょう。あまりにも強烈な臭いを放つため、換気扇を回したり窓を開けたりしたい気持ちが生じますが、臭いは屋外にも充満しているため、逆に被害は拡大してしまいます。なお、スーパーや薬局に売っている芳香剤や消臭剤では臭いはとれないでしょう。
腐敗した遺体自体や放置されている部屋には、ハエや蛆虫などが大量に発生します。腐敗した遺体に蛆虫が生まれるのは、ハエが遺体に卵を産み付けるからです。体の中でも特に卵が産み付けられやすいのが眼球になります。
ハエは、1回の産卵で100匹以上もの卵を植え付け、放置されていた時間が長い分、比例してその数も多くなります。
しかし、蛆虫の孵化にはそれほど時間を要せず、1日もしないうちに幼虫が生まれてきます。そのハエがまた新たに卵を産み付けるという悪循環が生まれるため、短期間でも大量のハエや蛆虫が発生します。
ハエは小さく飛び回るので、窓を少しでも開けているとそこから屋外へと逃げてしまいます。そうなると、近隣の方の家へと入り込んで、そこでさらに被害を生む可能性があるでしょう。そのため、あまりにもハエや蛆虫の数が多い状況であるならば、害虫駆除から行うようにしましょう。
長い間放置された遺体からは、体液が溢れ出ていることがほとんどです。その体液が壁や床等に染み込んでしまうと、色が移るだけでなく臭いまで移ってしまいます。
体液もまた腐るので、染み込んだ壁や床等の臭いは凄まじく、洗剤等で洗っただけで綺麗になることはないでしょう。場合によっては、その部屋を明け渡した後も、人が住める環境ではなくなるかもしれません。
マンションや団地などの集合住宅の場合、遺体が放置されていた時間が長いと階下にまで体液などが浸出する可能性があります。そうなると、階下の部屋までリフォームしないといけなくなるでしょう。
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遺体は長い間放置されると腐敗してしまいますが、どうして腐敗するまで放置されるのでしょうか。人間が死亡する場所を想像するときに、もっとも多くの方が想像する場所が病院でしょう。
死亡する場所が病院だった場合は、医師や遺族が近くにいるので腐敗するまで放置されることはありません。しかし、自宅等の誰にも気づかれない場所で死亡した場合はどうしても発見が遅れてしまいます。最悪の場合、腐敗がかなり進んでいる状態で発見されるでしょう。そのような死のことを「孤立死」や「孤独死」といいます。
しかし、孤立死と孤独死の意味を正確に理解している方は少ないでしょう。そこで、ここからは孤立死と孤独死について解説します。
孤立死とは、社会や親族との関わりが一切なく、死亡したときにも誰からも看取られなかった状態のことを表します。場合によっては、「死亡後長期間放置されている状態」という意味を含む言葉として使われることもあるようです。
孤独死とは、社会や親族との関わりはあるが死亡するときには誰にも看取られなかった状態のことを表します。孤立死との違いは、死亡したときの故人の状態です。生前に誰とも関わりがなかったときには「孤立死」、生前に誰かしらとの関わりがあったが死亡時に1人だったときには「孤独死」と表現します。
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孤独死の葬儀はどうなる?発見から葬儀までの流れや費用について
普段離れて暮らす祖父母の元へ行ったら、自宅内で亡くなっていたという状況に出遭わないとはいえません。では、孤独死した状態の方を発見したときにはどのように対処をしたらよいのでしょうか。故人の状態で対応の仕方が変わるので、1つずつ解説します。
倒れてはいるが、息があるかどうか定かではないときには、すぐに救急車を呼びましょう。救急車が到着したら、隊員が生死を確認し、まだ息があるようであれば病院に搬送してくれます。一方で、息がなく事件の可能性がある場合は警察へと通報してくれるため、救急車の到着後は自身がどこかへ連絡する必要はありません。
遺体が腐敗して強烈な臭いを放っているときなど、明らかに息を引き取っている場合は、すぐに警察に連絡しましょう。警察が到着して検案が終わるまでは、仮に死因が病気だったとしても不審死として扱われるようです。
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【いざというときのために】自宅で人が死亡しているのを発見したときにすべきこと
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人間の体は、死亡して長い期間放置されていると徐々に腐敗していきます。そのまま放置していると、身体中に腐敗ガスが溜まり人間の体は膨れ上がっていき、やがては周囲に強烈な臭いを放つことになります。
その状態で放置していると、屋外まで臭いが漏れ出て、近所の方に迷惑がかかるという二次被害を引き起こしてしまいます。万が一そのような状態の遺体を発見したら、すぐに病院か警察に連絡するようにしましょう。
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