禅宗とは、坐禅の修行を重んじる仏教の1派のことです。ただし禅宗という宗派はなく、日本においては臨済宗、曹洞宗、黄檗宗の3宗派をまとめて禅宗と呼んでいます。この記事では、禅宗の歴史、教義、坐禅の思想と日本文化との関係、葬儀の作法などについて解説します。
<この記事の要点>
・禅宗は、臨済宗・曹洞宗・黄檗宗の3宗派があり、各宗派の共通点は座禅の修行という特徴がある
・曹洞宗は「只管打坐」という座禅が重視され、臨済宗と黄檗宗は真理を究明する「看話禅」を行う
・禅宗の葬儀の特徴は「授戒」と「引導」だが、宗派によって作法は異なるため注意が必要
こんな人におすすめ
禅宗について網羅的に知りたい人
禅宗を信仰している人
禅宗の葬儀を控えている人
日本において、禅宗には臨済宗、曹洞宗、黄檗宗(おうばくしゅう)の3宗派があります。各宗派の共通点として、座禅を重んじる修行を行うという特徴があります。
全ての人は自己の内面に仏となることのできる性質「仏性」を持っており、坐禅の修行によって自分の心に向き合い、仏性を再発見することを目指すとされています。
禅宗はどのように始まり、宗派が形成されてきたのでしょうか。歴史と根本的な教えについて押さえた上で、各宗派の特徴について解説します。
6世紀初めに、インドの達磨大師が中国に禅宗を伝えました。その後、中国各地に広まり、五家七宗に分かれました。
日本では中国に留学した栄西が鎌倉時代に臨済宗を開き、同じく中国から帰国した道元が曹洞宗を開きました。また、江戸時代に中国から来日した中国臨済宗の僧侶、隠元隆琦により、黄檗宗が開かれました。
禅宗の「禅」とは、仏教における修行法の1つであり、「禅定(ぜんじょう)」ともいわれます。真理を悟るために、雑念を持たずに心を集中させる瞑想のことです。
また、悟りや真理を伝えるために特定の経典や文字を用いず、心から心へ伝えることを「以心伝心(いしんでんしん)」といいます。
臨済宗は、座禅を行うことによって悟りを得るという教えを説いています。ただ座禅をすればよいのではなく、師が「公案」と呼ばれる課題を弟子に出し、真理を究明する「看話禅(かんなぜん)」が行われます。
特定の本尊は定められていませんが、釈迦牟尼仏を祀ることが一般的です。また、特定の経典もありませんが、「般若心経」や「観音経」がよく読まれます。
曹洞宗では、ひたすら座禅をする「只管打坐(しかんたざ)」という修行を行います。悟りを得るために座禅をするのではなく、坐禅する姿そのものが悟りの姿であるという教えを持っています。
特定の本尊は定められていませんが、釈迦如来を祀ることが一般的です。基本経典は、開祖である道元の著書である「正法眼蔵」、曹洞宗発展の基礎を築いた瑩山の説法をまとめた「伝光録」の2つです。
黄檗宗も臨済宗と同様に、座禅を行うことによって悟りを得るという教えを持ち、「看話禅(かんなぜん)」が行われます。ただし、儀式、仏具、経典の読み方などが中国式であるという特徴があります。
本尊は釈迦如来を祀ることが一般的です。決まった経典はありませんが、「般若心経」や「観音経」がよく読まれています。
禅宗によって坐禅の思想が中国から日本に伝えられました。それだけではなく美意識、美術、文化なども伝えられ、後の日本に大きな影響を与えました。
坐禅の修行を重んじるのが禅宗の特徴ですが、宗派によって坐禅の内容は異なります。臨済宗は、師が弟子に課題を出すことによって真理を究明する「看話禅(公案禅)」が重要視されています。曹洞宗では、ただひたすら座禅をする「黙照禅(只管打坐)」が行われます。
黄檗宗では、「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えながら座禅をする「念仏禅(禅浄混淆禅)」が「看話禅(公案禅)」とともに大切にされています。
以心伝心とは、悟りや真理などの仏法について師から弟子に伝えるために、言葉や文字を用いず、心から心へ伝えることです。
悟りの内容は言葉や文字によっては伝えられないことを意味する「不立文字」や、悟りを心から心へ伝えることを意味する「教外伝別」と同じ意味を持っています。
悟りの内容は心から心へ伝えるという「以心伝心」が重要であるとされていますが、自己修練の入り方として「二入四行論(ににゅうしぎょうろん)」も許容されています。
二入四行論とは、文章から知識を得る「理入(りにゅう)」と、4つの段階における実践を通じて修養する「行入(ぎょうにゅう)」があるとする考え方のことです。
禅宗は、「幽玄」や「侘び寂び」といった美意識も日本に伝えました。幽玄とは、もともとは中国の仏教などにおける言葉であり、「趣が深くはかり知れないこと」という意味を持っています。和歌、日本画、能、茶道、俳句などの芸術分野に広く影響を与えた概念です。
侘び寂びとは、「簡素や静寂の中にある趣」のことです。禅宗において、悟りを得るためにはこの美意識を理解すべきであると考えられています。
水墨画は、墨一色で濃淡によって描写する絵画技法です。鎌倉時代に禅僧によって日本に持ち込まれました。
枯山水は、池などの水を使わず、石、砂、樹木などを用いて散水を表現する庭園様式です。禅寺の庭において発達しました。禅宗と深い関わりがあるのが茶の湯です。茶室や懐石料理にも、禅の思想が取り込まれています。
宗派ごとに禅宗の葬儀の作法を解説します。あらかじめ基本的な知識を身に付けておけば、葬儀に参列した際にも慌てずに済むでしょう。
葬儀の流れは次の通りです。
1.剃髪(ていはつ) | 導師がかみそりをあてるふりをします。 |
2.懺悔文(さんげもん) | 故人の生前の行いを懺悔し、成仏を願います。 |
3.三帰戒文(さんきかいもん) | 仏・法・僧に帰依することを誓います。 |
4.三聚浄戒(さんじゅうじょうかい) | 故人を清めるために洒水灌頂(しゃすいかんじょう)という水を棺に注ぐ儀式を経て、仏門に入ります。 |
5.入龕諷経(にゅうがんふぎん) | 納棺の際に行われる儀式です。「大悲呪(だいひしゅう)」と「回向文(えこうもん)」が読経されます。 |
6.龕前念誦(がんぜんねんじゅ) | 棺を閉ざす時に行われる儀式です。「十仏名(じゅうぶつみょう)」と「大悲呪」「回向文」が読経されます。 |
7.起龕諷経(きがんふぎん) | 柩の蓋をするにあたり、「大悲呪」を読誦し、回向文を読経します。 |
8.山頭念誦(さんとうねんじゅ) | 太鼓を打ち鳴らしながら、往生咒(おうじょうしゅ)を唱えます。 |
9.引導 | 導師が引導法語を唱えて、故人を浄土へ送ります。 |
10.焼香・出棺 | 読経中に参列者が昇降し、出棺となります。 |
葬儀の流れは次の通りです。
1.剃髪 | 導師がかみそりをあてるふりをします。 |
2.授戒の儀式 | ・懺悔文(さんげもん) ・三帰戒文(さんきかいもん) ・三聚浄戒(さんじゅうじょうかい) ・十重禁戒(じゅうじゅうきんかい) ・血脈授与(けちみゃくじゅよ) という5種類の儀式を行います。 |
3.入棺諷経(にゅうかんふぎん)・龕前念誦(がんぜんねんじゅ) | 導師が読経し、参列者が焼香を行います。 |
4.挙龕念誦(こがんねんじゅ) | 導師が読経しながら太鼓や鐃鈸(じょうはつ)を鳴らす「鼓鈸三通(くはつさんつう)」という儀式を行います。 |
5.引導法語 | 導師が故人を仏の世界に導く言葉を唱え、線香で円を描きます。 |
葬儀の流れは次の通りです。
1.剃髪 | 導師がかみそりをあてるふりをします。 |
2.授戒 | 懺悔文(さんげもん)・三帰戒文(さんきかいもん)・三聚浄戒(さんじゅうじょうかい)の儀式を行います。 |
3.鎖龕法式(さがんほうしき) | 読経し、棺を閉じます。なお、黄檗宗では唐音で読まれます。 |
4.起龕法式(きがんほうしき) | 棺を式場に持っていく儀式です。 |
5.秉炬方式(ひんこほうしき) | 葬儀のことです。 |
臨済宗では、額に押しいただかずに1回行うのが一般的です。曹洞宗では、1回目の焼香では、額に押しいただき香炉に入れます。2回目の焼香では、1回目よりも少量の抹香をつまみ、額に押しいただかずに香炉に入れましょう。
黄檗宗では、額に押しいただいて3回行うのが一般的です。ただし、地域差などもありますので、事前に菩提寺に確認することをおすすめします。
禅宗においては、香典は「御霊前」ではなく「御仏前」と書かれた不祝儀袋に包むのが一般的です。あるいは「御香典」でもかまいません。中央下部に筆ペンか毛筆を用いて、差出人の氏名を記載しましょう。
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日本において、禅宗には臨済宗、曹洞宗、黄檗宗(おうばくしゅう)の3宗派があります。各宗派の共通点として、座禅を重んじる修行を行うという特徴があります。葬儀の作法は宗派ごとに異なるため、事前に確認してから葬儀に臨みましょう。
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