弔辞(ちょうじ)を依頼されたら、何を話せばよいのでしょうか。歳を重ねれば弔辞を依頼される機会があるかもしれませんし、そのときになって慌てたくはないと考える方がほとんどでしょう。この記事では、弔辞のマナー、書き方、例文、読む際の注意点、著名人の言葉などについてご紹介します。
また、弔辞を依頼する際に気をつけるべき点についても説明します。ぜひ参考にしてみてください。
<この記事の要点>
・弔辞は故人に贈るメッセージのことで、遺族に対する哀悼の意を表すものです
・弔辞を読む際は、落ち着いた声色で3分程度で読み上げましょう
・弔辞は、霊前に向かって二人称で呼びかけるように読みましょう
こんな人におすすめ
弔辞を依頼された方
弔辞を依頼する方法について知りたい方
弔辞の例文を知りたい方
弔辞のマナーを身に付けておけば、故人はもとより遺族や関係者を不快にすることもありません。まずは、弔辞とは何か、頼まれた弔辞は断れるのかについて解説します。
参考動画:弔辞・友人代表の挨拶の作法(やり方)・マナー【小さなお葬式 公式】 動画が見られない場合はこちら
弔辞とは、葬儀の際に故人に対して贈るメッセージのことです。弔意や、別れを惜しむ気持ちを込めて書きます。
弔辞を読む人は、通夜・葬儀・告別式の際に祭壇に向かって用意した弔辞を書いた紙を読み上げます。家族葬など規模の小さい葬儀では、弔辞がない場合もあります。
大勢の前に立って話したり文章を考えるのが苦手だったりする方は、頼まれた弔辞を断りたくなるかもしれません。
しかし、基本的に弔辞を依頼された場合は引き受けるのがマナーです。ただし、故人とそれほど親しくなかったのにも関わらず依頼された場合には、断っても問題ないでしょう。
弔辞を読む際には、どのような点に気をつければいいのでしょうか。ここからは、弔辞を読む際の流れと注意点について解説します。
弔辞を読む際の流れは次のとおりです。
1. 名前を呼ばれたら遺族に一礼して、祭壇前に進み故人に一礼する
2. 弔辞の上包みは巻紙の下に重ねて持ち、弔辞を広げて両手で持って心を込めて読みあげる
3. 読み終えたら元のように包み、表書きを霊前に向けて壇上に置く
4. 故人に一礼したあと遺族に一礼して席に戻る
弔辞を読み上げる人数は1人ではなく、3人~5人くらいであることが一般的です。そのため、1人で長時間読み続けることは避けたほうがよいでしょう。
ただし、短すぎるのも遺族や参列者に対して失礼になってしまいます。奉読時間は3分程度を目安としましょう。
弔辞を読む際に気をつけるポイントは、落ち着いたトーンで丁寧に読むということです。緊張すると早口になってしまいがちなので、ゆっくり読むことを心がけるくらいでちょうどいいスピードになるでしょう。
また、聞き取りやすいように丁寧に心を込めて読むことも大切です。
弔辞を依頼された場合は、原稿を書く必要があります。ここからは、文字数の目安や具体的な書き方、避けるべき言葉や表現について解説します。
奉読時間の目安が3分程度であることを考えると、弔辞の文字数は800字~1000字程度が目安になります。400字詰め原稿用紙に換算すると、2枚~3枚程度です。
原稿を作成したら、実際にゆっくり読み上げてみて時間を計測してみましょう。
弔辞の書き方のマナーは次のとおりです。
・正式な弔辞は、薄墨の毛筆で巻紙か奉書紙に書く
・原稿は奉書紙で包む
・包む奉書紙の表書きには「弔辞」や「弔詞」と書き、その下に氏名を記入する
・便箋に万年筆で弔辞を書いて一重の白い封筒に入れるのは略式の書き方
弔辞では、忌み言葉は避けましょう。忌み言葉とは、その場では縁起が悪いとされる言葉のことです。弔辞では「重ね言葉」や「死に結びつくような言葉」が当てはまります。
忌み言葉には、以下のようなものがあります。
重ね言葉 | 死に結びつくような言葉 |
・重ね重ね ・たびたび ・またまた ・重々 ・いよいよ ・再三 ・再四 ・ますます ・返す返す ・しばしば ・なお ・再び ・続く ・追って ・次々 |
・切る ・離れる ・浮かばれない ・「四」や「九」 |
直接的な表現を弔辞に使用するのは避けましょう。以下のようなものが代表的です。
忌み言葉 | |
死そのもの | 死んだ・死去・急死 |
死者との別れ | 悲哀・悲痛・哀愁・傷心・慟哭・痛恨 など |
悲しみ | 悲哀・悲痛・哀愁・傷心・慟哭・痛恨 など |
看病 | 看護・介護・手当・介抱・手を尽くす など |
・恩を受ける | 大恩・恩義・恩人・恩情 など |
事故 | 不慮の出来事・奇禍・災禍・災難・悲運・危難 など |
弔辞は、霊前に向かって二人称で呼びかけるように読みましょう。故人に対しての想いを語るわけですから、向ける相手も当然ながら故人になります。何を語るかはその人の自由ですが、遺族や関係者が聞いていることも考えなければいけません。
一般的には、なぜ悲しいのか、故人との関わり、尊敬していたところ、どんな人物であったか、今はその人を亡くした悲しみにくれている、などといったことを、ご自身の言葉で表現します。抽象的な言葉では伝わりにくいので、それにまつわるエピソードを紹介するとよいでしょう。
また、堅苦しい言葉は使わず、普段通りの言葉で語りかけることが大切です。故人に対しての言葉ですから、いつもどおりのほうが喜ばれます。また、難しいことではありますが、できるだけ感情を抑えて、聞き取りやすい言葉で話すことが大切です。
これらを踏まえた上で、長くなり過ぎないようにまとめましょう。代表は3~5人ほどいるため、落ち着いて読んだ場合に3分程度の長さが適しています。
弔辞の構成と参考表現
1. 導入
2. 知らせを聞いた時の驚きや悲しみの気持ち
3. 故人の人となり・エピソード
4. 現在の心境や思いなど
5. 冥福をお祈りする言葉
これまで弔辞を読んだ経験がない場合、どのような構成で弔辞を考えればよいのか悩む方もいるでしょう。具体的な内容を考える前に弔辞の構成について学ぶ必要があります。そうすれば、遺族やそのほかの方に失礼な弔辞を読んでしまうこともありません。参考表現も一緒にご紹介しますので、弔辞を読む予定がある方は参考にするとよいでしょう。
「◯◯◯でございます 友人と致しまして 謹んで告別の言葉を申し上げたいと思います」
まず導入では、自分の名前と故人との関係性を簡潔に紹介しましょう。
「この度は◯◯君の突然の訃報に接し 信じられない気持ちと 深い悲しみの気持ちで心がいっぱいです」
故人が亡くなった知らせを聞いたときの驚きや、亡くなったことに対する悲しみの気持ちを率直に述べましょう。
「◯◯君 君とは大学の登山部で知り合いましたね ちょうど大学4年生の3月 卒業を前に 君と2人だけで◯◯山に登ったときのことをよく覚えています」
エピソードを交えながら、語りかけるように紹介することが多いようです。故人と自分に関わる2〜3個程度のエピソードがあれば丁度よい長さになります。
「なごりはつきないけど これからは君の分も君の家族を大切にしていこうと思う これまで本当にありがとう」
故人が亡くなってしまった現在の心境や思い、感謝や敬意を示す言葉を述べます。
「◯◯君の冥福を祈ります どうか 安らかに眠ってください」
最後にお別れの言葉を持ってきます。キリスト教や浄土真宗に対しては「冥福を祈る」という言葉を使ってはいけないという意見もあるようです。実際には禁止というわけではないため、それほど気にする必要はありません。
ここからは、実際の弔辞の例文を見てみましょう。弔辞は、故人との関係性によって内容が異なります。ここでは、基本の弔辞の例文・上司への弔辞の例文・孫から祖父母への弔辞の例文を紹介します。
○○○○さんのご霊前にお別れの言葉を申し上げます これが○○さんとの最期のときであると分かっていながらも 現実で起きていると信じられないところが本当です 「○○らしいな」と○○さんはきっと天国で私を笑っていることでしょう
私は○○さんと新卒入社時の同期でした 初めて会ったときから直感ではありますが「この人は自分のよきライバルになる」予感がしていました 入社してから気付けば30年が経とうとしています これまで○○さんとは切磋琢磨しながら さまざまな局面に対して一緒に乗り越えてきました 私にとって○○さんは今でも大きな存在であり頼れる同期です
○○さんは部下に恵まれ 仕事に対していつも前向きに取り組んでいました その姿を見ることで 私の仕事へのモチベーションを高く保つことができていたようです 恥ずかしながら このことにはつい最近気付きました
私が思うように仕事の成果が出ないと悩んでいるときも「いつか努力は報われるぞ」と励ましてくれたことを今でも鮮明に覚えています
今 ○○さんについて考えれば生前の元気な姿ばかりが脳裏によみがえって仕方がありません 長年○○さんは健康診断でも再検査なしの健康そのものでした 突然倒れて入院することになったと聞いたとき 私は不安な気持ちと驚きの気持ちでいっぱいになり仕事もろくに手に付かなかったのを覚えています
「入院生活は退屈していないか」と連絡をしたときも「順調だぞ 心配するな すぐに職場復帰するから」と力強く返答してくれました お見舞いに伺った際も あれこれとお話をしながら「この調子だと退院も近いな」と自分で勝手ながら思っていた部分があります そのため 容体が急変したと知らせを聞いたときは動揺してしまいました
実は 仕事場の同僚とも○○さんが無事に退院できたらチーム全員で飲みに行こうと話していたところです チームメンバーの○○が ○○さんが大好きな日本酒を豊富に取り扱うお店をチームメンバーの○○が見つけていました「2軒目は○○さんが好きないつものラーメン屋にしよう」と具体的に計画を立てていたほどです
いきなり容体が急変したこと 本当に残念で私を含め会社のすべてのメンバーにとって受け入れがたいことでもあります 遺族の皆さま 友人の皆さまなど○○さんと親交が深かった方は悲しみも特別に大きいことでしょう 何よりも大切にしていた家族を残して先に旅立ってしまった○○さんも 何かしら思い残すものがあったと察しています
○○さん 今まで本当にありがとうございました 私を含め仕事場のチームメンバーは ○○さんがいなければここまで成長できていません 会社を代表し ○○が心からお礼を申し上げます ○○さん 天国でゆっくりと過ごされてください ご冥福をお祈りします
上司への弔辞の例文
○○部長のご霊前に 謹んでお別れのあいさつを申し上げます
○○部長 私たちは 部長の突然の訃報に接し深い悲しみでいっぱいです
思い出すのはお酒の席での陽気なお姿です お酒が入ると歌ったり溌剌としたりして いろいろな楽しいお話を書きせてくださいました
今は悲しみの中におりますが これから私たち社員はご遺志を受け継ぎ 力を合わせて頑張っていく覚悟です
○○部長 これまで本当にありがとうございました
心よりご冥福をお祈り申し上げます
本日 祖父〇〇へ最後のお別れの言葉を伝えるために 今ここに立っていますが ちっとも実感がわきません
祖父はやさしくて楽しくて とても大きな人でした 怒った顔は見たことがありません 子どもの頃は 私の散髪をしてくれましたね
なごりはつきませんが これからもずっと祖父との宝物のような思い出とともに生きます これまで本当にありがとうございました。どうぞ 安らかにお眠りください
著名人の葬儀などは、テレビや新聞などで大きく報じられます。そのときの弔辞はさすがと思わせる、とても心に響くものが多いといえるでしょう。中でも赤塚不二夫先生の告別式でタモリ(森田一義)さんが行った弔辞はとても印象的なものでした。
タモリさんは赤塚先生の告別式で、約8分に及ぶ弔辞を読み上げています。ご自身が赤塚作品に影響された第一世代であるとし、また交友の深さを語りました。途中では赤塚先生の代名詞でもある「これでいいのだ」というセリフを引用し、最後には自分も赤塚作品のひとつだと締めています。
この弔辞の内容自体もとても素晴らしいものなのですが、タモリさんはこの弔辞を即興で作り上げたというところが驚きです。告別式では紙を持って喋っていたのですが、その紙は白紙でした。タモリさんの言葉では、最初は紙に書いていこうと思っていたが、「赤塚さんならギャグでいこう」と、白紙を読み上げる勧進帳(かんじんちょう)でやることにしたそうです。
勧進帳は歌舞伎の演目のひとつで、源義経が弁慶と共に関所から逃げ延びる場面を演じたものをいいます。義経たちは山伏の格好をしていて、それを本当だと信じさせるために弁慶は白紙の勧進帳を朗々と読み上げました。それが転じて、あたかも原稿を読んでいるかのように見えるが、実は即興であるさまを勧進帳と呼ぶようになったそうです。
なぜこれがギャグで落ちがどこにあるのでしょうか。勧進帳の中で関所の通過を許すのが富樫左衛門(とがしざえもん)という人物で、タモリさんのマネージャーがトガシという名前だったからという背景があります。
弔辞においても芸人の心を忘れず、故人の意思を汲み取っているところはさすがだと言わざるを得ません。
葬儀の際に弔辞をお願いしたい方には、マナーを守って丁寧に依頼しましょう。ここでは依頼するタイミングやお礼についての注意点を解説します。
弔辞をお願いする際は、できるだけ早めに依頼しましょう。お願いされた方は、故人の死を受け止めたうえで弔辞を短期間で作成して葬儀に臨まなければなりません。
少しでも早い方がいいので、できれば電話で訃報を伝えると同時に弔辞を依頼しましょう。
葬儀後は何かと慌ただしいものですが、弔辞を読んでくれた方には忘れずにお礼を渡しましょう。葬儀後2日~3日のうちに、お菓子などを渡します。
葬儀後すぐに渡せない事情がある場合には、葬儀直後にお礼を伝えて品物を渡します。
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・病院から危篤の連絡がきたときの対応方法
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弔辞は、故人に対して別れの言葉を告げる最後の機会です。何を伝えたいのか、自分がどう思っているのかを見つめ直した上で想いを伝える必要があります。思い出が深いほど辛く悲しいものではありますが、故人のためにもご自身のためにも、悔いの残らないように言葉にするべきでしょう。
気負ってしまっては意味がありません。あくまでも、自然な言葉を伝えるということが大切ではないでしょうか。弔辞の作成や葬儀に関して悩んでいる方は、小さなお葬式へご相談ください。
お亡くなり後の手続き・直近の葬儀にお悩みの方は 0120-215-618 へお電話ください。
直葬とは、通夜式や告別式などの式をはぶき、火葬のみを行う葬儀のことです。ホゥ。