忌明けとは故人の命日から四十九日を迎え、遺族が故人の喪に服す期間を終えることを指します。忌明けの節目では四十九日法要(満中陰法要)を執り行うのが一般的です。
法要の際、出席者から香典をいただいたら香典返しを用意します。その際、挨拶状を送る風習がありますが、挨拶状の書き方がよく分からないという方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、忌明けの挨拶状を書く際のマナーや送り方について解説します。これらの内容を踏まえておけば、失礼のない挨拶状が用意できるでしょう。
<この記事の要点>
・香典返しをする場合、忌明けを伝える挨拶状は香典返しの返礼品と一緒に送る
・忌引明けの挨拶状を書く場合、句読点は使わない
・挨拶状では死や苦しみなどの不幸を表す「忌み言葉」の使用を避けるのがマナー
こんな人におすすめ
忌明けを迎える方
忌明けの挨拶状の内容にお悩みの方
宗派別の忌明けの挨拶状の例文を知りたい方
忌明けの挨拶状の書き方などを確認する前に、忌明けとはどのようなことを指すか分からないという方もいるのではないでしょうか。忌明けは故人が亡くなってから四十九日が経過し、故人への供養にひとつの区切りを付ける大切な節目です。
ここでは、忌明けという言葉の意味、忌明けのタイミングで遺族がすること、仏教以外の宗教における忌明けの概念についても解説します。
仏教では、人の死後四十九日で次の世界の選択にまつわる裁きが下されるとされ、それまでの期間を「中陰(ちゅういん)」あるいは「忌中」と呼びます。この間、遺族は故人をしのび、喪に服して過ごすのがしきたりです。
「忌明け(きあけ・いみあけ)」とは、故人の死から四十九日が経過し中陰の期間が終わることを指します。別の呼び方は「満中陰(まんちゅういん)」です。忌明けには四十九日と呼ばれる法要(満中陰法要)を行い、故人への供養の節目とします。
なお、忌中に似た言葉として「喪中」という言葉も聞いたことがあるかもしれません。喪中は一般的に故人の死から1年間を指し、この期間が終わることを「喪明け」といいます。
忌明けの節目には、多くの遺族が四十九日法要を行います。法要と同時に、遺骨をお墓などに安置する「納骨」を行うケースも少なくありません。
また、宗派や地域によっても異なりますが、四十九日の間は仏壇の扉を閉めるのが一般的です。扉を閉めていた場合、忌明けのタイミングで開けるようにします。
四十九日法要の後には、香典をくださった方に対して「香典返し」をするのが一般的です。「香典返し」では通夜や葬儀で香典をくださった参列者に返礼品を贈り、四十九日法要を終えた報告をすると同時に謝意を伝えます。
四十九日や忌明けという概念は仏教特有のものであるため、仏教以外の宗教には忌明けという概念はありません。
とはいえ、神道では死後五十日で故人を守護霊として祀る「五十日祭」という儀式があり、この儀式の後に葬儀の参列者にお礼の品を贈る習慣があります。これらは、仏教の四十九日や香典返しに相当するものとみなすことができるでしょう。
また、キリスト教においても、故人の死から一定の日数をおいて「記念式」や「追悼ミサ」を行い、その後で葬儀の参列者にお礼の品を贈るなど、仏教の忌明けと類似した習慣がみられます。
忌明けを迎えた遺族は、葬儀の参列者に対して挨拶状を送ります。四十九日を迎え忌明けとなったことを伝える挨拶状は香典をいただいたお礼を兼ねるケースが大半です。
このとき返礼品も用意しますが、事情によっては香典返し自体を行わないこともあるでしょう。ここでは、香典返しをする場合、しない場合の挨拶状の渡し方を解説します。
香典返しをする場合、忌明けを伝える挨拶状は香典返しの返礼品と一緒に渡します。忌明けを迎えるとすぐに、香典返しの返礼品とともに挨拶状を送り、お礼や四十九日法要が無事に済んだことなどを伝えるのが一般的な流れです。
近年では、葬儀のときに香典返しを渡してしまう「即日返し」を行うことも多くみられます。その場合は忌明けの挨拶状は不要であるという考え方もありますが、できれば送ったほうがより丁寧な対応といえるでしょう。
香典返しをしない場合も、挨拶状は送るのが望ましいでしょう。香典返しを行わないケースとしては、家庭における働き手を亡くしたため香典を生活費や子どもの養育費にあてる場合や、故人や遺族の意向で香典を福祉施設などに寄付する場合などが考えられます。こうした理由で香典返しをしない場合には、挨拶状のみを郵送しましょう。
忌明けを伝える挨拶状の書き方や言葉の選び方などに関しては、通常の手紙とは異なる作法があります。
誤って失礼な挨拶状を送ってしまうことのないよう、事前にしっかり確認しておきましょう。ここでは、挨拶状を書く際に押さえておきたい主な注意点について解説します。
弔事の挨拶状を書く際には、句読点は使いません。読点を打つ必要がある場合は1字分スペースを空けるなどして対応しましょう。法事がスムーズに進むようにといった意味合いが込められているともいわれますが、理由については諸説あります。
近年では、業者が作成した印刷の挨拶状など句読点が使用されているものも見受けられますが、手書きの場合はルールを守るのが基本です。
法事関連の挨拶状では、死や苦しみなどの不幸を表す「忌み言葉」は使用を避けます。また、不幸が繰り返し起こることを連想させるという理由から、「ますます」や「重ね重ね」「しばしば」「再三」など、繰り返しの言葉も避けるのがマナーです。別の言葉に置き換えるなどして対応しましょう。
挨拶状や手紙には、時候の挨拶や頭語・結語などの決められた要素があります。忌明けを伝える挨拶状においては、時候の挨拶は必要ありません。また、頭語・結語は省略も可能ですが、入れる場合は「謹啓」と「謹白」、「拝啓」と「敬具」などをそれぞれ一対で使用します。
ここでは、香典返しをすることを前提とした挨拶状の例文を確認しましょう。挨拶状に用いられる言葉や表現は、仏式、神式、キリスト教式(プロテスタント)、キリスト教式(カトリック)、無宗教の場合などによってそれぞれ少しずつ異なります。
なお、実際に挨拶状を作成する際は、宗教を問わず縦書きが基本です。
仏式の場合、下記のような流れで、葬儀に参列いただいたことへのお礼、四十九日を終え忌が明けたという報告、香典返しの品を贈ることなどを順に述べるのが一般的です。
拝啓
先般 亡祖父 ○○○○ 儀 葬儀に際しましては ご多用中にもかかわらずご鄭重なるご厚志を賜り厚くお礼申し上げます
お蔭様にて ◯月◯日に四十九日の法要を滞りなく相済ませました
つきましては 心ばかりではありますが供養のしるしの品をお届けいたします ご受納いただければ幸甚に存じます
略儀ながら書中をもちましてお礼のご挨拶とさせていただきます
敬具
神道においては、仏教の法要にあたる儀式として「霊祭(みたままつり)」や「式年祭」があります。仏教でいう忌明けにあたるタイミングは「五十日祭」という儀式です。下記に挨拶状の一例を紹介します。
拝啓
先般 亡祖母 ○○○○ 儀 永眠の際はご鄭重なるご厚志を賜り厚くお礼申し上げます
お蔭様にて ◯月◯日に五十日祭を滞りなく済ませることができました
つきましては 心ばかりではありますが偲草のしるしの品をお届けいたします 何卒お納めくださいますようお願い申し上げます
略儀ながら書中をもちましてご挨拶申し上げます
敬具
キリスト教におけるプロテスタントのしきたりでは、故人の命日から1か月後の「召天(しょうてん)記念日」に故人を追悼する記念式を行うのが一般的です。挨拶状に記載する要素は仏教、神道と同様ですが、文中では「召天」などキリスト教に合わせた言葉を用います。
拝啓
先般 亡祖父 〇〇〇〇儀 召天の際はご懇篤なるご弔慰を賜わり心より厚く御礼申し上げます
お蔭様にて ◯月◯日に記念式も滞り無く相済ませました
つきましては 謝意を表したく心ばかりの品をお送りいたしますのでご受納くださいますようお願い申し上げます
略儀ながら書中をもちましてご挨拶申し上げます
敬具
カトリックでは、故人の命日から三十日後に追悼ミサを行います。儀式の名前が異なる以外、挨拶状の流れはプロテスタントの場合と同様です。
なお、人が神のもとに召されることを、プロテスタントでは「召天」、カトリックでは「昇天」と表記する点に注意しましょう。
拝啓
先般 亡祖母 〇〇〇〇儀 昇天に際してはご鄭重なるご芳志を賜り心より厚く御礼申し上げます
お蔭様にて ◯月◯日に追悼ミサも滞りなく相済ませました
つきましては 謝意を表したく心ばかりの品をお送りいたします 何卒お納めくださいますようお願い申し上げます
略儀ながら書中をもちましてご挨拶申し上げます
敬具
無宗教の場合にも、葬儀では基本的には香典を受け取るため、香典返しや挨拶状を渡す必要があります。信仰の宗教があるの場合と挨拶状のベースは同じですが、宗教ならではの表現は言い換えましょう。
拝啓
先般 亡父 ○○○○ 儀 永眠に際してはご鄭重なるご芳志を賜り厚くお礼申し上げます
お蔭をもちまして 諸事万端を滞りなく済ませることができました
生前に故人が賜りましたご厚情に対し心より感謝申し上げます
つきましては 謝意を表したく心ばかりの品をお届けいたします 何卒お納めくださいますようお願い申し上げます
略儀ながら書中をもちましてご挨拶申し上げます
敬具
香典返しをしない場合、忌明けを報告するための挨拶状は郵送で送ります。香典返しをしない理由について簡潔に説明し、理解を求めるようにしましょう。ここでは、香典返しと同封しない挨拶状はどのような点に留意すればよいか、具体的な例文を紹介します。
香典返しをしない場合は、その理由や香典の使い道についての説明を書き添えた挨拶状を送るようにします。挨拶状の文面の中で「香典を子どもの養育費に充てる」「福祉団体に寄付する」といった、香典の使途を説明しましょう。
特に、寄付をするという選択肢は日本ではあまり一般的ではありません。弔問者が納得しやすいよう、寄付をする団体名や寄付の趣旨なども記載するとよいでしょう。
香典返しをしない場合も挨拶状の要素はほぼ同じですが、「心ばかりの品をお送りいたします」といった香典返しに関わる文言を書き換える必要があります。
例えば、香典を子どもの養育費に充てる場合は「誠に勝手ながら ご厚情に甘え 養育費にあてさせていただきたく存じます」、特定の福祉団体などに寄付する場合は、「ご厚志の一部を◯◯へ寄贈させていただきました」といった表現で香典の使途を説明し、理解を求めるようにしましょう。
忌明けを伝える挨拶状を作成する際に注意したいのは、内容だけではありません。挨拶状を書く紙や墨、挨拶状を入れる封筒、封筒に入れる際の折り方などについてもある程度の作法があるため注意が必要です。
ここでは、挨拶状を準備する際に知っておきたいポイントや注意点について解説します。
挨拶状はパソコンを用いて作成したり業者に作成を依頼したりすることもできますが、手書きをすればより丁寧な印象となり、気持ちも伝わりやすいでしょう。
手書きの場合には、奉書紙という和紙を使用します。奉書紙は罫線などの入っていない白い厚手の和紙であり、古くから大切な内容を伝えるために使用されてきました。毛筆で書かなくてはいけないという決まりはなく、筆ペンや黒いペンで書いても問題ありません。
なお、毛筆で書く場合には、四十九日までは悲しみを表すため薄墨を使うというルールがありますが、忌明けの挨拶状は濃い墨を利用するのが一般的です。ただし、一部には薄墨を使う地域もあるため確認するとよいでしょう。
挨拶状を入れる封筒は奉書封筒を使用します。二重封筒は不幸が重なることをイメージさせ縁起が悪いとされるため、一重の封筒を選びましょう。表には「ご挨拶」と書き、裏には喪主の名前を書きます。
挨拶状を封筒に入れる際の折り方にも注意しましょう。挨拶状は縦にして、間隔をそろえてきれいに重ね折りします。A4サイズの場合は三つ折りが一般的ですが、地域によっては異なる場合もあるので確認が必要です。
なお、香典返しをしないケースを除き、忌明けの挨拶状は香典返しと一緒に渡すため封筒は糊付けしません。
挨拶状は、奉書紙を用いずはがきに書いても問題ありません。ただし、はがきは封書よりも簡略なイメージがあります。
例えば、香典返しの品は葬儀のときに渡している場合など、あまり仰々しい挨拶状を送りたくない場合などにおすすめといえるでしょう。
はがきは奉書紙よりも書ける文字数が限られるため、内容を簡潔にまとめるのがポイントです。また、はがきに印刷するよりは手書きのほうが丁寧な印象になります。
香典返しや忌明けを伝える挨拶状を受け取った場合には、お礼や返信はしないのがマナーです。香典返し自体が香典に対するお礼の意味を持つため、お礼に対してさらにお礼をすることは失礼であると受け取られてしまいます。
また、故人への供養の節目となる忌明けに行う香典返しや挨拶状に対して返信をすることは、「不幸が長引く」という捉え方にもつながります。
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遺族が故人の喪に服す期間を終えるタイミングである忌明けには、四十九日法要を執り行うとともに、香典返しなども行います。
返礼品には無事に忌明けを迎えた報告と香典へのお礼を兼ねた挨拶状も添えるのが一般的です。香典返しを渡さない場合は、挨拶状だけを郵送で送ります。挨拶状の作成にはさまざまなマナーがあるので、しっかり押さえておきましょう。
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