エンバーミングという遺体保存技術をご存知でしょうか?例えば旅行や出張などで海外に滞在中に亡くなった場合、その遺体は日本に搬送されます。しかし、遺体をそのまま運ぶということはできず、葬儀を行うまで遺体の状態を保存しておく必要があります。この時、遺体を保存するために利用されるのがエンバーミングという技術です。
この記事では、エンバーミングとは何か、必要性、メリット、手順などについて解説します。
<この記事の要点>
・エンバーミングとは、遺体の腐敗を防ぎ衛生的に保存するための技術
・エンバーミングを実施する場合、基本料金は日本遺体衛生保全協会(IFSA)によって定められている
・遺体の修復も行われるため、見た目を元気だった頃の姿に近づけることができる
こんな人におすすめ
エンバーミングにかかる費用について知りたい方
エンバーミングの流れを知りたい方
エンバーミングのメリットとデメリットを知りたい方
エンバーミングとはどのような技術であり、日本ではどの程度普及しているのでしょうか。また、いくらくらいの費用がかかるのかも気になるでしょう。エンバーミングの概要と費用について解説します。
エンバーミングは、「死体防腐処理」などと訳され、その名の通り遺体の腐敗を防ぎ衛生的に保存するための技術です。
亡くなってからしばらくの間火葬を行えないなど、遺体を長期間保存する必要がある場合に施されます。日本では1995年の阪神・淡路大震災などで広く知られるようになりました。
その結果、下記の表を見ると分かるように、エンバーミングの処置件数は年々増加しており、1995年から2020年の25年程で約5倍になっています。
1995年 | 2020年 | |
日本での処置件数 | 8,415件 | 42,760件 |
出所:一般社団法人 日本遺体衛生保全協会HP(2020年調査)
日本でエンバーミングを実施する場合、基本料金は日本遺体衛生保全協会(IFSA)によって定められており、かかる費用はおおよそ15万円~25万円程です。遺体の状態にもよりますが、どの葬儀社でも同程度の費用がかかります。
この金額には、施設への搬送代が含まれていることが一般的ですが、遠方の場合には追加料金が発生する可能性もあるので注意が必要です。
エンバーミングは、どのようなときに必要とされるのでしょうか。感染症を防止する、遺体を修復する、火葬までの日数がかかる、海外から空輸で遺体を搬送するという4つのケースについて解説します。
人間や動物が死亡すると、体内の自己融解酵素や微生物などによって、細胞単位での体の分解が始まります。この現象を「腐敗」と呼びます。
病原体が原因で亡くなった場合、菌は死亡後も遺体の中に残り続けることになります。腐敗していく体とこの病原体が合わさることで、病原体の危険性は生前よりも高まってしまいます。
また、遺体の腐敗と同時に死肉食性の昆虫も集まり、感染症の拡大に大きな影響を与えます。腐敗を抑えて感染症を防止するというのが、エンバーミングを行う大きな理由です。
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遺族からすれば、遺体はできるだけきれいな状態に保っておきたいと思うもの。そのためには、遺体の損傷を出来る限り抑えなければなりません。
病気に対する治療の結果、顔がむくんでいることがあります。逆に元気だった頃とは違って痩せてしまっていることもあるでしょう。あるいは、怪我によって遺体が損傷しているケースもあります。
エンバーミングは防腐処理を施す以外にも、キズなどを隠したり、全身を洗浄してきれいにしたりという作業も行います。遺族がきちんと故人を見送れるようにするのも、エンバーミングを行う理由の1つです。
故人が亡くなってからすぐに火葬が行えない場合があります。火葬場の予約が取れなかったり、遺族がすぐに来られなかったりするケースなどです。
数日間であればドライアイスなどで冷却保存が可能ですが、保存が長期間に渡る場合には遺体の状態を保つことが難しくなり、費用もかさんでしまいます。エンバーミングであれば、安全に10日間~2週間くらい保存できます。
海外で亡くなった方の遺体を日本に搬送したいケースでは、航空機を利用しますが、機内ではドライアイスを使用できません。逆に、日本で亡くなった方の遺体を海外に搬送したいケースもあるでしょう。
そのような場合には、エンバーミングを施せば空輸での遺体搬送が可能になります。
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小さなお葬式で葬儀場をさがす
遺体保存技術であるエンバーミングを施すと、いくつものメリットが発生します。主なメリットを2つ紹介します。エンバーミングを行うかどうか検討する際の参考にしてみてください。
エンバーミングを施さない場合には、一般的にはドライアイスか保冷室を使用して遺体を冷却して保存します。ただし、ドライアイスは遺体の腐敗の進行を遅らせることしかできません。冷却が長期間に渡ると皮膚が黒ずんできてしまいます。
また、保冷室に入れる場合には、故人に付き添うことはできません。さらに、どちらの方法も冷却し続けるためには、1日ごとに費用が発生してしまいます。エンバーミングを行えば、遺体を冷やさずに保全できるのです。
エンバーミングでは遺体の修復も行われます。表情や顔色もよくなりますし、傷も修復され、まるで眠っているような元気な頃の姿を取り戻せます。
見送る遺族や友人の心が癒され、故人とのお別れを安らかな思い出として残せるようになるでしょう。
エンバーミングを行う前に、デメリットがあることも理解しておきましょう。費用と時間に関するデメリットについて解説しますので、判断の材料にしてください。
エンバーミングを行う場合、葬儀代とは別に、15万円~25万円程度の費用がかかります。費用が高額であることがデメリットです。
ただし、長期間ドライアイスで遺体を冷却する場合に比べると、かえって費用が抑えられる場合もありますので、費用が高額かどうかはケースによるともいえます。
エンバーミングを施す場合には、遺体を専用施設まで移動させなければなりません。施設が近隣にない場合には、移動にも相応の時間が必要となってしまいます。
また、処置を行うのに3時間~4時間ほどの時間がかかります。その間は、故人に付き添うことはできません。
小さなお葬式で葬儀場をさがす
エンバーミングは「エンバーマー」と呼ばれる専門の技術者や、医学資格を持った医療従事者によって行われます。
実際にどのような手順でエンバーミングが進められるのかについて、把握しておきましょう。遺体の洗浄から始まり、死化粧で終わる一連の流れについて解説します。
まずは遺体を洗浄し、消毒します。さらに鼻や口の中も含めた洗顔、洗髪、希望によってはひげ剃り、産毛剃りを行います。目と口を閉じて、保湿剤を塗り、含み綿なども用いて表情を整えます。
腹部に小さな穴をあけ、胸腔や腹腔に残った血液あるいは消化器官、食物などを鋼管で吸引し、同時にその部分にも防腐剤を注入します。
切開した部分を縫合し、怪我などによる損傷があれば修復し、傷痕はテープなどで隠します。最後にもう一度全身を洗浄します。
故人が好きだった服、宗教にのっとった服など、遺族から指定された衣服を故人に着せます。最後にもう一度、表情と髪を整えます。遺族からの希望に応じて、死化粧を施して納棺します。
納棺は行わず施設から自宅などに搬送し、その後に納棺する場合もあります。
欧米諸国では、エンバーミングは一般的な技術として確立しています。欧米諸国の場合、キリスト教を信仰している方が大多数を占めており、キリスト教では死者の復活という概念があり、埋葬方法は土葬が一般的です。
そういった宗教観の中で、エンバーミングが急速に発展するようになったのは、アメリカの南北戦争がきっかけだといわれています。戦争をすれば当然ながら多くの死者が出るわけですが、当時は交通手段も今ほど整っているわけではなく、遺体の搬送に非常に時間がかかるものでした。
日本の場合は現地で火葬にして遺骨を届けるということも可能でしたが、土葬の場合は遺体をそのまま搬送しなければなりません。その際に、遺体保存の技術が必要となり、エンバーミングが発達したとされています。
1965年、ローマ・カトリック教会が火葬禁止令を撤廃したことで、火葬はキリスト教の教義に反しないということになりました。その結果、欧米諸国でも火葬が少しずつ許容されつつあります。それでも、いまだに土葬が多いアメリカのエンバーミング率は90%以上を誇っていて、欧米諸国ではなくてはならない技術だということがわかります。
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火葬がメインの日本にとって、遺体の長期保存という観点でのエンバーミングはあまり需要がありません。しかし、遺族の希望で遺体をきれいに整える場合には利用されています。今はまだエンバーミングに関する法律が整備されておらず、エンバーマーも日本ではなく外国の規格を元にしている場合が多いです。
それでも、エンバーマーの養成機関が発足するなど、日本でもエンバーミングに対する認知度は上がってきています。感染症防止と遺族へのケアという観点においては、日本でもエンバーミングは必要とされているのです。
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この記事では、エンバーミングの必要性、メリット、デメリット、手順などについて解説しました。エンバーミングについてよく理解し、納得できる故人とのお別れをしましょう。
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