法要後に僧侶や参列者と会食することを「お斎(おとき)」といいます。お斎の存在は知っていても、仏事における意味やマナーについて詳しくない方もいるでしょう。この記事では、お斎の由来や意義、施主としてのマナーなど、施主としてお斎を執り行う際に覚えておくべきポイントを解説します。
さらに、新型コロナウィルス感染症の感染予防対策のために、お斎を省略する場合の対応策についても触れていきますので、ぜひ参考にしてください。
<この記事の要点>
・お斎とは法事で施主が僧侶や参列者に振る舞う食事のこと
・お斎は故人の供養になり、僧侶や参列者に感謝を伝える場でもある
・お斎の席を設けない場合は、参列者に持ち帰りの弁当や食事券を渡すことが多い
こんな人におすすめ
お斎の由来や意義を知りたい方
お斎を執り行う際に覚えておくべきポイントを知りたい方
お斎を省略する場合の対応策を知りたい方
仏事には「お斎」という風習があります。ここでは、お斎の読み方や本来の意味、そして現代におけるお斎の捉え方についてまとめました。まずは仏事に欠かせないお斎がどのような役割を持つのかについて知りましょう。
お斎は「おとき」と読み、法事の際に施主が僧侶や参列者に振る舞う食事のことです。お斎には、僧侶や参列者に対する感謝の気持ちと、故人を供養する意味が含まれているため、施主が費用を負担するのが一般的です。
以前は肉や魚を使用しない精進料理が定番でしたが、現代では精進料理にこだわらず、故人や参列者の好みに合わせた料理を提供するケースも増えています。お斎を執り行う場所も、自宅やレストラン、料亭などさまざまです。
仏事における会食には、お斎の他に「忌中払い(きちゅうばらい)」や「精進落とし(しょうじんおとし)」があります。
忌中払いとは、喪明けとされる四十九日に僧侶や親族など故人の供養に関わった方が集まり会食をすることです。仏教では、故人の供養のため喪が明けるまでは肉や魚を使わない精進料理を食べる風習があります。忌中払いのタイミングで、精進料理以外(肉や魚を使った料理)を食べることは「通常の生活に戻る」という節目の意味もあるでしょう。
地域や宗派によって忌中払いを「精進落とし」と呼びます。ただし忙しい現代社会では、何度も親戚を集めることが難しいため、葬儀後に初七日法要と合わせて行うケースも少なくありません。
本来お斎は「僧侶の食事」を指す言葉でした。仏教には「出家者は正午を過ぎてから食事をしない」という戒律があります。斎の漢字には「つつしむ」という字義があり、身を慎んで清浄な生活を送るという意味から、正午前の食事を「斎」と呼ぶようになりました。そして現代、仏事のときの食事全般をお斎と呼ぶようになったのです。
神道やキリスト教にも、お斎のような会食があるのをご存じでしょうか。神道には、神事の最後に供物やお酒を飲食する「直会(なおらい)」があります。神様にお供えしたものを口にすることによって身体を清め、神事を手伝ってくれた方々への感謝を示すものです。
キリスト教の場合は、式の後にサンドイッチやお菓子、お茶などで参列者をもてなす会食をします。キリスト教の会食ではお酒を出すことは少ないでしょう。会食においては、地域性や宗教ごとの考え方によって、あり方に違いがあるのも事実です。
お斎を含め、仏教において僧侶や参列者との食事は重要な場です。その理由には、法要を行う目的や禅宗系の食事が大きく関わっています。ここからは、なぜ仏教で食事が重要視されているのかを見てみましょう。
お斎が供養になることを説明する前に、まずは法要の目的を解説します。法要とは、故人が悟りを開き成仏することや、故人がより良い世界に生まれ変わることを願って執り行う儀式です。
仏教では、現世の人々の「善い行い」が故人の供養につながるといわれており、食事を振る舞うこともそのひとつと考えられます。そのためお斎は故人の供養になるとされ、重要視されているのです。ただし現代においては、僧侶や参列者に感謝を伝えて親族の親睦を深める場としての意味合いも強くなっています。
仏教の禅宗系では、「五観の偈(ごかんのげ)」という食事の前に唱える偈文があります。「五観の偈」は、食事を頂ける現状を尊ぶことを5つの観点で表したものです。ここからは、曹洞宗で実際に唱えられている「五観の偈」を紹介します。
一 計功多少 量彼来処
一つには、功(こう)の多少(たしょう)を計(はか)り、彼(か)の来処(らいしょ)を量(はか)る。
二 忖己德行 全缺應供
二つには、己(おのれ)が徳行(とくぎょう)の全欠(ぜんけつ)を忖(はか)って供(く)に応(おう)ず。
三 防心離過 貪等為宗
三つには、心(しん)を防ぎ過(とが)を離(はなる)ることは、貪等(とんとう)を宗(しゅう)とす。
四 正事良薬 為療形枯
四つには、正(まさ)に良薬(りょうやく)を事(こと)とするは、形枯(ぎょうこ)を療(りょう)ぜんが為(ため)なり。
五 為成道故 今受此食
五つには、成道(じょうどう)の為(ため)の故(ゆえ)に、今この食(じき)を受(う)く。
現代の言葉に直すと、以下のようになります。
一つ、この食事を頂くまでに、どれだけの支えや苦労があったかを考えます。
二つ、自分はこの食事を頂けるだけの徳行を積んだのかを振り返ります。
三つ、心を正しく保ち、もっと食べたいなど欲深い心を持ちません。
四つ、食事は、身心を健全な状態に保つためのものであることを忘れません。
五つ、仏道を歩み続けるために、この食事を頂きます。
仏教の浄土真宗系では、食事の前と後に唱える「食事の言葉」があります。
【食前のことば】
多くのいのちとみなさまのおかげにより、このごちそうをめぐまれました。深くご恩を喜び、ありがたくいただきます。
【食後のことば】
尊いおめぐみをおいしくいただき、ますます御恩報謝につとめます。おかげで、ごちそうさまでした。
現代の言葉に直すと、以下のような意味になります。
食事は、多くの命や周りの方たちの苦労によって頂けるものです。仏さまのご恩に深く喜び、「仏恩報謝」につとめましょう。
お斎の準備をする際には、料理内容や費用、会場選びのポイントなど知っておきたいポイントがあります。ここではお斎の準備に必要が情報とともに、お斎の席順や僧侶が欠席する際の対応方法についてまとめました。
お斎で提供する定番料理は和食です。その中でも一人前3,000円~1万円のコース料理を選ぶ方が多く、7品から10品ほどの料理が順に出てくるスタイルが一般的でしょう。その他に、仕出し弁当を提供するケースもあります。
お斎には「和食でなければならない」という決まりはありません。故人の好きだった料理や、遺族・参列者の意向で提供する料理を決めることもできます。
数ある会場の中からお斎の会場を選ぶには、以下のポイントを押さえることが必要です。
・お子さまメニューの有無
参列者の中に子どもがいる場合は、お子さまメニューに対応しているお店がおすすめです。
・法要会場からの距離
参列者の負担にならないよう、法要会場から遠くない場所を選びます。
・送迎の有無
法要会場からお斎会場までの、送迎の有無をチェックします。特に、高齢の参列者がいる場合は会場までの送迎が必要です。
お斎会場では座敷なら床の間に近い場所、レストランなら出口から一番遠い場所が上座、入り口付近が下座です。上座には僧侶が座り、続いて施主、親族の中での年長者、一般参列者、親族、遺族の順に座ります。地域によっては施主や遺族が下座に座るケースもあるため注意しましょう。
ただし最近は、新型コロナウィルス感染症の予防対策として、ソーシャルディスタンスを保つために、はす向かいに座ることもあります。
特別な理由がない限り僧侶にも参加をお願いしますが、僧侶がお斎に出席されない場合は、食事の代替費用として「御膳料(ごぜんりょう)」をお渡しするのがマナーです。
御膳料は5,000円~1万円を目安に用意し、お布施(おふせ)やお車代(おくるまだい)とは別にお渡しします。御膳料を僧侶にお渡しするのは法要後、僧侶の帰り際です。上からお布施、お車代、御膳料の順に重ね、切手盆に乗せてお渡しします。
献杯の音頭をその日に依頼されたら、戸惑ってしまう方も多いでしょう。献杯の音頭は当日ではなく、事前にお願いするのがマナーです。献杯の音頭は年長者や本家筋の方に依頼するのが一般的ですが、施主が挨拶をした後に行う場合もあります。
お斎を執り行う際に必要となるのが、施主の挨拶や献杯の音頭です。ここでは、施主が挨拶する際の文例や注意点などを紹介します。あらかじめ挨拶の言葉を決めておくと、スムーズに挨拶できるでしょう。
お斎は施主の挨拶で始まります。お斎開始時の挨拶文例を見てみましょう。
「本日はお忙しい中、父の〇回忌法要にお集まりいただきありがとうございます。多くの方にご参加いただき、父もさぞ喜んでいることでしょう。ささやかではございますが、お料理をご用意いたしました。お時間が許す限り、生前の父を偲びながらお召し上がりください。本日はありがとうございました」
お斎が終了したら、施主が終了時の挨拶を行います。お話をされている方もいるため、一度声かけをしてから、挨拶を始めるのがおすすめです。
「本日はお忙しい中、故人のためにお集まりいただき、誠にありがとうございます。お話は尽きませんが、お開きのお時間となりました。今後も変わらぬご指導ご鞭撻をお願いいたします。本日は、ありがとうございました」
施主がお斎開始の挨拶をした後に、献杯の挨拶を始めます。施主以外の方に挨拶を依頼している場合、施主は挨拶後に「献杯の挨拶を○○さん、よろしくお願いいたします」など紹介を入れるとよいでしょう。
「故人の友人の〇〇でございます。本日は故人との楽しい思い出を、存分に語り合いたいと思います。僭越ながら献杯の発声をさせていただきます。お手元にグラスの用意をお願いいたします。献杯。ありがとうございました」
お斎の挨拶をする際は、以下のような点に注意しましょう。
・挨拶は簡潔にまとめる
・故人や参列者に背を向けない
・故人の具体的な闘病の様子などは避ける
・「重ね重ね」や「ますます」といった言葉(重ね言葉)は、不幸が重なるという意味があるため使わない
・「死」や「生きていたとき」など直接的な表現は避ける
施主には押さえておくべきマナーがあります。最も大切なのは、僧侶や参列者に気配りをすることです。ここでは、わきまえたい4つのマナーを紹介します。
1.施主がお斎の料理に手をつけるのは最後です。会食中はグラスが空になっている方はいないか、食事の数が間違っていないかなど周りをよく見ましょう。
2.施主の車は、会場入り口から最も遠い場所に駐車するのがマナーです。特に参列者の中に高齢者がいる場合は、入り口から近い駐車場に停めていただくよう配慮します。
3.施主の靴は、下座に置きましょう。
4.お斎が終わったら、施主は僧侶や参列者を見送ってから会場を後にします。その際、会場内に忘れ物等がないか確認しましょう。
お斎は、故人の供養および僧侶や参列者への感謝を示す意味で施主が執り行います。そのため、お斎の費用は施主側が負担するのが一般的です。しかし実際は、施主が赤字にならないよう香典にお斎の費用を上乗せして包むのが参列者のマナーとされています。
法要後にお斎の用意があるなら、お斎の料金を考慮し、香典を多めに包むようにしましょう。なお、お斎の費用を上乗せした場合の香典目安は1~3万円です。
仏教において重要な意味を持つお斎ですが、新型コロナウィルス感染症の感染拡大を防止するため、中止や延期にするケースも増えているようです。ここからは、新型コロナウィルス感染症がお斎に与える影響や、お斎をしない場合の対応策などを解説します。
新型コロナウィルス感染症は、飲食の場で感染リスクが高まるといわれています。そのためコロナ禍においては、法要後に複数人で集まって会食をするお斎の席を設けないケースも少なくありません。参列者の中に高齢者がいる場合は尚更配慮が必要でしょう。お斎を執り行うにしても、感染防止対策のため少人数で行う家族が増えています。
家族もしくは気心の知れた親戚しか集まらない法要の場合は、法要後の食事の席を省略することも少なくありません。いつも会っているメンバーのため、あらためて食事をする必要性がないと考えられるからです。特に、法事の参列者が10名を下回ると、お斎は省略されやすい傾向にあります。
法要後にお斎の席を設けない場合は、お斎の代替として参列者に持ち帰り弁当や食事券などをお渡しするケースが増えています。ただし、これらの対応に明確なルールはありません。地域性や親族間の考え方などによって対応は異なります。どのような対応をすべきか迷う場合は、僧侶や親族の年長者、その地域に詳しい料理業者に相談するとよいでしょう。
お斎を設けない場合は、以下のようにその旨を法事案内状に添え書きする必要があります。
謹啓 ○○の候 皆様におきましてはご健勝のことと存じます
このたび 亡〇〇の一周忌法要を営ませていただくこととなりました
ご多用中恐縮ではございますが ご臨席賜りますようご案内申し上げます
なお 法要後のお斎の席は設けておりませんが ささやかながら〇〇をご用意してございますので お持ち帰りくだされば幸いに存じます
何とぞご理解の程お願い申し上げます
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故人への供養や、僧侶・参列者に感謝を伝える意味を持つお斎は、仏事において大事なものです。施主としてお斎を執り行う場合は、本来の意味やお斎のマナー、挨拶の仕方などを押さえておく必要があります。
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