日本の法事の多くは仏式で執り行われます。そのため、神道の法事のマナーや準備物ことが分からず、悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、神道の法事の概要やマナー、御玉串料の包み方や書き方について解説します。故人と遺族の方々に失礼のないように、神道の法事の基本を知っておきましょう。
<この記事の要点>
・神道の法事では「御玉串料」が仏式の香典にあたる
・神道の法事には「神葬祭」「十日祭」「五十日祭」などがあり、五十日祭は仏教の四十九日に当たる
・神式では、お菓子や酒などのお供え物のことを「神餞物」という
こんな人におすすめ
神道の法事に参加する予定のある方
神道の「御玉串料」について知りたい方
御玉串料の不祝儀袋の書き方を知りたい方
神式の法事で、現金を包んで遺族に手渡すものは、御玉串料(おたまぐしりょう)または玉串料(たまぐしりょう)と呼ばれます。仏式の香典にあたるものと考えてよいでしょう。
「玉串」という名称は、天照大御神が現れることを願う祭事において、真榊(まさかき)という祭具に玉や鏡などを装飾したことに由来しています。お供え物として手渡す、お菓子や酒などは「神餞(しんせん)」と区別されているので、間違えないように気をつけましょう。
「法事」「法要」は故人の供養のために定期的に設ける仏教の儀式です。本来この呼び名は仏教用語であり、神道でこの言葉は使いません。また、儀式の様式も異なります。ここでは、神道で法事にあたる儀式の種類を確認しましょう。
神道にも法事や法要にあたるものがあります。故人が亡くなってから100日までに行われる儀式は「霊祭」または「霊前祭」です。その後に行われる儀式は「式年祭」と呼ばれます。神道の儀式をまとめたのが以下の表です。
実施される時期 | 名称 | 区分 |
亡くなった直後 | 神葬祭(しんそうさい) |
霊祭(霊前祭) |
亡くなった日を1日として10日目 | 十日祭 | |
同50日目 | 五十日祭 | |
同51日目~100日目 | 合祀祭(ごうしさい) | |
同100日目 | 百日祭 | |
1年後 | 一年祭 |
式年祭 |
3年後 | 三年祭 | |
5年後 | 五年祭 | |
10年後 ※以後、10年単位で行われる |
十年祭 |
神道では、お葬式にあたる儀式を「神葬祭」と呼びます。故人が亡くなったことをご先祖様に伝え、功績を偲んで玉串を納める儀式です。
神葬祭は故人の自宅またはセレモニーホールで行われ、神社は使われません。神葬祭が執り行われた後は火葬と埋葬が行われて終了です。神葬祭の翌日は一般的に親族だけでご先祖様に神葬祭を無事に終えたことを報告する「翌日祭」を営みます。
「十日祭」は、仏式の初七日に近い儀式です。故人の霊が神社に移るという節目に当たります。五十日祭とともに重要な儀式のひとつです。
十日祭では神主が祝詞奏上をし、親族や関係者による玉串奉奠(たまぐしほうてん)と続きます。玉串奉奠とは仏式の焼香にあたり、玉串を神前に捧げることです。
その後にある二十日祭、三十日祭、四十日祭は、自宅や墓前などで身内を中心に執り行われるのが一般的です。しかし、現在ではこれらの儀式は省略され、五十日祭をすることが多くなりました。
神道は五十日祭をもって「忌明け」とされる、仏式での四十九日法要にあたる重要な儀式です。そのため、一般的に五十日祭では自宅や墓前、セレモニーホールに神主を呼んで執り行われます。儀式が一通り済んだら、神棚や祖霊舎(屋内にある神殿)に貼っていた白い紙をはがして終了です。これをもって、故人が家族の守護神になったとします。
合祀祭は故人が亡くなってから51日~100日の間に設ける儀式です。仮の霊舎にいた故人の霊を祖先の霊が祀られる正式な霊舎に合祀する、という意味があります。
なお、この合祀祭は、「百日祭」と一緒にすることも一般的です。また、身内だけの簡素な形式にすることも多くあります。
「百日祭」は命日から100日目に行われます。仏式には、遺族の悲しみに区切りをつけるための法要として「百箇日(ひゃっかにち)」がありますが、これに相当する神道の儀式が百日祭です。合祀祭と同じく、簡素に実施することが多く、儀式にしないことも珍しくありません。
命日からちょうど1年が経つ頃に設ける式年祭が「一年祭」です。その後は三年祭、五年祭となり、十年祭を行った後は、二十年祭、三十年祭のように10年周期で続けていくこともあります。いずれも故人追悼の意味をもって祝詞の奏上と玉串奉奠が行われ、その後、会食へと進む流れです。
式年祭は一年祭と三年祭の規模が大きく、その後は徐々に小規模になります。五年祭からは家族のみで行われることが多いでしょう。なお、神道の三年祭は3年後ですが、仏式の三回忌は命日から2年後であり、1年のずれがあることに気をつけましょう。
ここでは、神道の法事に参加する前に知っておきたいマナーと注意点を4つ解説します。仏式の法事とは異なる考え方も多いため、根幹となる部分も理解しておきましょう。
神道では、故人は守護神となって家族を守ってくれるという死生観を持っています。例えば、三途の川を渡って彼岸へと去るというような仏教の考え方はありません。以下に、神道に適した言葉遣いと、使用を控えるべき言葉の代表例をまとめました。
神道に適した言葉遣い | 神道に適さない言葉遣い(仏式) |
平安、拝礼、御霊 ・御霊のご平安をお祈りします ・拝礼させていただきます など |
成仏、往生、冥福、供養、線香 ・ご冥福をお祈りします ・お線香をあげさせていただきます (※神道では線香をあげない) など |
迷った場合は、以下のような一般的な言い回しを使うとよいでしょう。
・心からお悔み申し上げます
・このたびは、誠にご愁傷様でした
・どうかお力落としのないように
神道の法事では、遺族が料理を用意する都合上、案内状の返事は早めに出しましょう。代理人に出席してもらうときは、その旨を伝えます。
欠席の際はお詫びの言葉を添えて連絡しましょう。それでも気持ちが足りないと思うときには、事前にお菓子や果物などを届ける方法もあります。
神道の法事を執り行う場所は、自宅かセレモニーホールです。案内状が届いている場合は、確認しておきましょう。仏式では寺院を会場とすることもありますが、神社で行わないことにも注意が必要です。
神道の法事は喪服または準喪服が基本です。他の宗教の服装マナーと変わりません。遺族から案内があった場合は、平服で参加してもよいとする慣習も同じです。
具体的には、男性の場合は黒のスーツに白のワイシャツを着用します。女性の場合は黒のアンサンブルまたはワンピースです。子どもも参列するときは、黒やグレー、紺などダークカラーの服装を選ぶか、学校の制服にしましょう。いずれの場合も目立つアクセサリーの着用は避けます。また、数珠は仏式のアイテムのため必要ありません。
御玉串料は仏式の香典にあたるものです。どのような袋に、どのように入れたらよいか、目安としていくらぐらい包めばよいか、分からない方も多いかもしれません。ここでは御玉串料を用意する際のポイントを解説します。
一年祭の場合の御玉串料を例に確認しましょう。目安は以下の通りです。おおまかには、仏式の香典と同じように考えておけばよいでしょう。
故人との関係 | 御玉串料 |
自分の親 | 1万円~5万円 |
祖父母 | 1万円~3万円 |
兄弟姉妹 | 1万円~3万円 |
配偶者の親 | 1万円~3万円 |
配偶者の祖父母 | 1万円~3万円 |
配偶者の兄弟姉妹 | 1万円~3万円 |
親戚のおじおば | 1万円~3万円 |
近くない親戚 | 1万円~3万円 |
元上司 | 1万円 |
重要な儀式である十日祭と五十日祭では、多めの金額を包む傾向があります。会食の有無や故人との親交の深さを考慮して決めるようにしましょう。
御玉串料を入れる袋は、結び切りかあわじ結びの水引の不祝儀袋です。水引の色が双銀、または黒白のものを選びましょう。袋は、仏教を連想させる蓮の花や模様が描かれたものは避け、無地を選びます。ただし、これらは一般的なマナーなので、地域の風習によって異なる可能性があることに注意しましょう。
また、金額によって袋を選ぶ慣習もあります。目安としては、5,000円以下は水引がプリントされたもの、1万円~2万円は7本~10本の水引、3万円以上は10本以上の水引といった具合です。
御玉串料の袋に入れるお金は、新札を避けて使用感のあるお札を選びます。理由は仏式と同じで、「あらかじめ用意していたのではないか」「新たな不幸を呼ぶのではないか」などと遺族に思わせ、不快感を与えないためです。
ただし、汚らしいお札を包むことも失礼にあたるため、新札またはきれいなお札を折って包む方法がよくとられます。手元に新札しかない場合も、このようにしましょう。
ここでは、御玉串料を入れる不祝儀袋の書き方を、外袋と中包みに分けて紹介します。仏式と大きく異なるのは表書きです。印字されているものを選ぶ場合も注意しましょう。
外袋の表書きの真ん中上部に「御玉串料」または「御榊料」「御霊前」などと書きます。「御神前」と書いてよいのは、故人が守護神となった後の式年祭からです。仏式の香典と同じく、筆または筆ペンを用いましょう。
次に、外袋の表書きの真ん中下部に、自分の氏名を書きます。あらかじめ表書きが書かれた袋を用意してもよいでしょう。
中包みの表面には、包んだお金の額を書きます。「壱、参、伍、拾、阡(仟)、萬」のように大字と呼ばれる漢数字を使って記入しましょう。1万円では「金壱萬圓也」となります。
ただし、横書きの記入欄がある中包みでは、アラビア数字で書いても失礼にはあたりません。この場合は「10,000円」などとカンマで数字を区切りましょう。なお、中袋には黒のボールペンやサインペンを使っても問題ありません。
中包みの裏面には、自分の氏名と住所を書きます。住所は縦書きで書き、漢数字(一、二など)を使います。住所には大字を用いません。
会社関係で御玉串料を渡す場合の住所は、会社の所在地を記入します。ただし、社長の名前に法人名を添えて渡す場合には、社長の自宅の住所を記載することもあります。
ここでは、御玉串料の入れ方と持ち運び方、お供え物の選び方を解説します。法事の場合、施主に直接渡すのが一般的です。到着後すぐの挨拶時に渡すとよいでしょう。
お札は中袋の裏面から見て、右上に金額の数字が来るようにそろえて入れます。こうすると、中袋の裏側を見ながら取り出したときに、お札の表面(人物像が描かれている側)が上向きに出てくるからです。
ただし、一部の地域では、表面を下向きに入れたり、表面にお札の表側を向けたりする風習もあります。なお、中袋がない場合は、外袋に対して、お札の面と向きをそろえましょう。
袱紗とは御玉串料や香典、祝儀袋などを包むための小さな風呂敷です。御玉串料のような大切なものは、袱紗で包んでおけば汚れがつくのを防げます。また、マナーとしても、丁寧な印象を持っていただけるでしょう。
不祝儀袋にあたる御玉串料を包む袱紗の色は、灰色や深緑、紺、紫色など落ち着いたものを選びます。紫色の袱紗は、弔事だけでなく結婚式など慶事でも使えるので、一枚持っておくとよいでしょう。百円ショップなどでも購入できます。
「神餞物(しんせんぶつ)」または「神饌」とは、菓子折りや酒などのお供え物のことです。もともと神に捧げる食事という意味があるので、食べ物か飲み物を選ぶのが一般的です。仏式で一般的なお花や線香、ろうそくは、神式ではお供え物にはふさわしくありません。
神餞物では、故人が好きだった魚やお菓子、餅などを選んで持参することもあります。これは、法事で神餞物を捧げる対象に、ご遺族の守護神になった故人が含まれているからです。
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神道にも仏式の法事に相当する儀式があります。葬儀である神葬祭があり、初七日にあたる「十日祭」、四十九日にあたる「五十日祭」などの儀式が続きます。
神道の法事では、御玉串料を包む不祝儀袋には蓮の模様がないものを選びますが、不祝儀袋の選び方などは仏式と重なる部分もあります。神道には独特の考え方が多くあることに注意しましょう。
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忌引き休暇は、実は労働基準法で定められた休暇ではありません。ホゥ。