近年、都市部を中心に「家族葬」などの小さなお葬式が一般的になりつつあり、葬儀の規模が縮小化される傾向にあります。形式や体面にとらわれないお葬式の形が広まる中、自分の葬儀については「したくない」「しなくて良い」と考える人も増えているようです。
では、葬式をしない場合は、亡くなった方はどのように見送られるのでしょうか。現実的な方法と、事前に準備しておいた方が良いことについて解説していきます。
<この記事の要点>
・葬式をしなくても法律的に問題はない
・葬式をしたくない場合は、本人が生前にその意思を明確に示しておくことが大切
・葬式をしない場合は火葬のみの「直葬」になる
こんな人におすすめ
お葬式をしたくないという方
遺言の書き方が知りたい方
遺族が葬儀をしない選択をした場合について知りたい方
人が亡くなったらお葬式をするのが一般的になってはいますが、葬式は法律で義務付けられているものではありません。「葬式をする・しない」はそれぞれの家が自由に決めることができ、行わなくても法律的には全く問題ありません。
亡くなったときにしなくてはならないことで、法律で決められているのは、役所への届け出と土葬または火葬だけです。遺族は、死亡の事実を知った日から7日以内に、市町村役場へ死亡届の提出を行わなければいけません。また、日本では土葬が認められている地域は限定されており、基本的には火葬を行うことになります。なお、火葬は死後24時間以上経過してからでないと行えないことも、法律で定められています。
死亡届は医師が書く死亡診断書と同じ用紙の左半分になっており、遺族が記入、押印することになっていますが、役場への提出は葬儀社などに代行してもらってもかまいません。
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法的には葬式を行わなくても問題ありませんが、葬式をしないことによる周囲への影響には配慮する必要があります。
亡くなった後も、遺された人たちの人間関係は続いていきます。たとえ本人が葬式をしないことを望んでいたとしても、本当に行わなければ遺族が非難されたり、バラバラと弔問に訪れる人の対応で、かえって負担が増えたりすることがあります。
「自分は死んでしまったら関係ない」というわけにはいかないこともあります。もし葬式をしないことを望むのであれば、後々の人間関係のことも考えた上で準備をしておくことをおすすめします。
本人の意思を尊重して、大規模な葬儀は行わないという形が定着しつつある昨今。「葬儀をしないための準備」がきちんとできていれば、周りの理解を得ることは難しくないかもしれません。
「葬儀をしないための準備」とは、主に以下の二点です。
自分のお葬式をしたくないのであれば、本人が生前にその意思を明確に示しておくことが大事です。最近の葬儀の形は、本人の意思が尊重されやすくなっているので、しっかりと意思表示されていれば、比較的スムーズに、意思通りのお別れをすることができるでしょう。
意思は家族に口頭で伝えるだけでなく、文書にして残しておくことをおすすめします。文書があれば生前の意思を皆が客観的に確認することができるからです。
特に決まった形式はありませんので、家族への手紙やエンディングノート、遺言書などに記して、その存在がわかるようにしておきましょう。
お葬式をしない場合は、亡くなったら納棺して火葬するだけの「直葬(ちょくそう)」という形をとることになります。通夜や葬儀などの儀式を行わなくても、遺体搬送や納棺、火葬場の手配などは必要になりますので、直葬の場合でも葬儀社を利用するのが一般的です。
近年では直葬の需要が増えてきており、多くの葬儀社が直葬に対応するようになっていますが、中には直葬を扱っていない葬儀社もあります。また、費用についても葬儀社によって異なります。
直葬を希望する場合は、対応してくれる葬儀社を探して見積もりをとり、依頼先を決めておくと良いでしょう。決定する際には家族と相談しておけば、トラブルを防ぐこともできます。
また、生前契約という形で、事前に自分の希望する葬儀を決めて葬儀費用を支払っておき、葬式をしないという意志を伝えることもできます。生前契約とは、元気なうちに葬儀を契約しておくことで、他者に負担をかけたくない場合や、ご自身の思い描いた通りの葬儀を実現したい場合などに向いています。
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亡くなってから確認できない事柄を、あらかじめ本人の遺志として残しておくための遺書。お葬式が不要と感じる場合は、その旨も記載しておくと安心です。もちろんこれ以外にも書くべき内容は多数あります。よく知られている財産処分をはじめ、4点についてご紹介します。遠方で関わりが少ない人も、親族との齟齬が起きないよう内容を抑えておきましょう。
遺言書を書くときにとくに意識しておきたいのが、財産の処分についてです。通常は配偶者・子どもにあたる「法定相続人」への相続が原則となることはご存知の方も多いでしょう。このほか、法定相続人以外の第三者への遺贈を決めることができます。
第三者とは、言葉の通り血縁関係のない人のことを指します。例えば、お世話になった人に遺贈したい場合はその旨も書き記しておきます。また、個人のみならず団体への遺贈を指定することも可能です。
遺産相続の際には、法定相続人やその他の人物を指す個人名だけでなく、具体的な割合も明記しておきましょう。法定相続人への相続分は、配偶者が2分の1、子ども2人で4分の1ずつと定めてあります。
これを自由に変更できるのは遺言者のみです。相続分に迷う場合は、第三者に委託して決定することもできます。また、相続開始から5年間は「分割させない」ことも可能で、遺産相続によるトラブルを避ける方法でもあるのです。
未成年の子どもがいて、すでに離婚している・配偶者が亡くなっているなどの場合は、第三者から保護者となる「後見人」を決める必要があります。後見人の指名は、複数名の記載があっても有効です。さらに法人を後見人として指名することも可能になりました。
後見人については、保護者としての役割はもちろん、子どもへの相続財産管理を依頼することもできます。このとき、第三者を未成年後見人にする旨とともに、後見人の氏名・住所・職業・生年月日といった事項も漏れがないよう注意しましょう。
法律的な婚姻関係にある夫婦の子どもは嫡出子(ちゃくしゅつし)、そうでない場合は非嫡出子(ひちゃくしゅつし)と言います。非嫡出子の認知とは、「自分の実の子どもである」と認めること。認知していない状態では、本来法定相続人である子どもとしてみなされません。
非嫡出子に遺産を相続する場合は、遺言書に非嫡出子の認知を明記することで対象となります。なお、母親から生まれたことは明確なので、父親にのみ必要な記載内容です。
故人の遺言書に「葬式は必要ない」と書いてある場合、それは故人の意思として有効です。しかし、法的に必ずそれを守らなければならないという決まりはありません。
遺言書に関する法律には、必ず守るべきもの、つまり法的な効力をもたせるものは10項目定めてあります。前述した財産の処分や未成年後見人、非嫡出子の認知が10項目の中にあります。葬式をするかしないかの遺言は、10項目のいずれにも当てはまりません。
つまり、最終的な判断は遺族の意思によるということを表します。故人を送り出したいという思いから実行すること、そして故人の意思を尊重して実行しないことも、どちらも遺族の大切な気持ちなのです。周囲からはいろいろな意見があるかもしれませんが、まずは親族内で相談して決めていくとよいでしょう。
小さなお葬式で葬儀場をさがす
直葬は、祭壇を設けず、通夜や葬儀の一切を行わないシンプルなお別れの形です。では、直葬はどのような流れで行うのでしょうか。
直葬で行うのは火葬のみですが、火葬は亡くなってから24時間経過後からしかできないと、法律で定められています。そのため、それまで自宅か火葬場の霊安室などにご遺体を安置します。その間に、死亡届の提出、火葬許可証の交付、火葬場の予約手続きなどをして、火葬の日を迎えます。
火葬場によっては、炉前での最後のお別れやお経をあげてもらうことができない場合があります。希望するのであれば、できるかどうか事前に確認しておきましょう。
直葬では、儀式を行わず装飾などもないため、シンプルな形で静かにお別れをすることが可能です。また何より、葬儀にかかる費用を大幅に抑えることができます。
しかし、直葬はごく身近な方だけで行うため、その他に故人とお別れをしたい方がいる場合、その場を設けることができません。後日お別れ会を開くのでなければ、しばらくの間は自宅に弔問客が訪れることを考えておきましょう。また、葬儀をしないことを受け入れられない方がいる可能性があることも念頭に置いておきましょう。
小さなお葬式がおこなった調査では、直葬における火葬料金を含む葬儀費用の全国平均は約36万円※という結果になりました。ここから火葬料金を除いた平均金額は約32万円※です。(※対象期間:2021年2月~2022年5月 2022年5月 自社調べ)
ただし、この金額はあくまでも目安に過ぎません。地域に依頼する葬儀社によっても金額は変わってくるので、検討の際は見積もりを取ることをおすすめします。
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【第1回調査】直葬にかかる費用相場(全国編)
葬式を行わずに直葬となった場合は、かつての知人・友人が参列する機会も設けません。したがって、葬儀で渡すことの多い香典は、辞退という手段をとることになります。万が一「香典を渡したい」といった申し出があっても、直葬を行う旨を伝え、礼を添えてお断りするのが通例です。
もちろん、「直葬だから香典はNG」というルールがあるわけではありません。あくまでも通例として覚えておくといいでしょう。また、香典ではなくお供え物を用意するための費用としていただいた場合は、気持ちを尊重し頂戴しても問題はありません。故人にお別れが告げら厚意を受けて故人を見送るようにしましょう。
お葬式縮小化の流れの中で、お葬式をしない選択をする方は今後ますます増えていくかもしれません。
ただ、遺される人たちのためにも、きちんとお別れの場は設けなければなりません。遺族が納得して直葬を行い、短い時間の中でもしっかりとお別れができるよう、「お葬式をしない場合」は、本人が主体となって、いざというときの準備をしておくことをおすすめします。
小さなお葬式で葬儀場をさがす
葬式に比べて必要な準備や費用が少ない直葬ですが、少なからずデメリットもあると覚えておきましょう。どのような形式で故人を送り出すかを決める大切な段階ですので、葬儀の有無を迷っている場合も、しっかりチェックしておきましょう。故人・遺族ともに未練を残さないためにも、注意したい2つのポイントを解説していきます。
「故人を見送る=葬式」という考え方が深く根付いている日本では、直葬はまだ認知度の低い手段とも言えます。特に、小さな町や代々続く家系であれば、直葬に対して強い抵抗を感じる人もいるかもしれません。そのため、葬儀社によっては直葬に対応していないこともあります。
また遺族で意見が分かれると決めづらくなってしまうため、直葬を考えている場合は生前からみんなで相談しておくと安心です。
葬儀を行わないと、故人に別れを告げる時間が大幅に減るということになります。故人の生前の言葉や遺言書の内容を尊重して決めた直葬でも、火葬でお別れするまでの段階が少なく、遺族が気持ちを整理する前にすべてを終えてしまう可能性もあります。
古来より葬儀という儀式は、故人を送るためだけでなく「故人の死を受け入れる時間」という意味を含んでいます。これは遺族だけでなく知人・友人などの第三者にも当てはまります。自宅で時間を作り、故人にできるだけ落ち着いて別れを告げることができるようにしましょう。
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